ええ〜っ、どういうこと!? お父さんはヤマメなのに、 ニジマスの子どもが生まれたの? お母さんはヤマメなの、 ニジマスなの?
お母さんはニジマスだ。 ニジマスのメスの卵が、 ヤマメのオスの精子と受精した受精卵から、 ニジマスがかえったということだよ。
完全なニジマスは 生まれるなんてありえないよ! 普通はニジマスとヤマメの 合いの子ができるんじゃないの?
実はお父さん、 つまりオスのヤマメの方は 普通のヤマメと違うんだ。 簡単に説明しよう。
ニジマスの稚魚(子どもの魚)から、ある細胞を取り出す。 それは始原生殖細胞といって、将来成魚になったときに 卵や精子になるものなんだ。それをヤマメの稚魚のお腹に移す。 するとその細胞は、そのままヤマメの精子を作る部分に 取り込まれて成熟した。 そのヤマメがオスとして成熟したとき、 その精子を普通のニジマスのメスの卵と受精させたところ、 生まれてきた稚魚のうち何匹かが、完全なニジマスだったというわけ。
写真提供:東京海洋大学・吉崎悟朗
ニジマスの、ふ化したばかりの稚魚。 この稚魚から始原生殖細胞を取り出す。
取り出した細胞を、ヤマメの稚魚に移植する。
先にふ化したのは、ヤマメから産まれたニジマス。かえっていない卵は、ニジマスとヤマメの雑種。
これは、将来どんなことに役立つの?
例えばマグロのように成長に時間がかかり、 養殖するには手間と費用がかかりすぎるものも、 飼育がかんたんなアジに産ませて稚魚をとれば、 もっと簡単に増やすことができるかもしれない。 日本には絶滅が心配されている魚がたくさんいるけれど、 その稚魚の始原生殖細胞さえ保存すれば、 この方法で復活させられる。
細胞は、どんな魚に移してもいいの?
いやいや、やはり近い種類のものを選んで 研究を重ねているところだよ。 今は、同じアイデアで、ふ化した稚魚が 100%ニジマスになるような方法を開発中なんだ。