サイトマップは
こちら
 
 

赤潮は毎年春先から現れて、秋まで発生が続く。
養殖などの漁業に被害が出るとニュースになるから、聞いたこともあるだろう。
赤潮とはどんなものなのか、またどんな研究が進んでいるのか、紹介しよう!


赤潮って、海が真っ赤になっちゃうんでしょ。ニュースで見たことがあるよ。


実際には、赤とはかぎらない。ピンクやオレンジ色、茶色などいろいろあるよ。

ヤコウチュウの赤潮
瀬戸内海区水産研究所 松山幸彦

ミキモトイの赤潮
瀬戸内海区水産研究所 渡辺康範

ノクチルカの赤潮
瀬戸内海区水産研究所 渡辺康憲

コクロディニウムの赤潮/水産庁

ヘテロシグマの赤潮 白い板を入れると、海水が茶色くなっているのがわかる
瀬戸内海区水産研究所 長崎慶三

バケツにとった赤潮の海水。けむりのように
見える茶色いものが、赤潮プランクトン
瀬戸内海区水産研究所 渡辺康憲

どうして海の色が変わってしまうの?

赤潮の色というのは、実は水の中にいる微生物の色なんじゃ。
微生物というのは、おもに植物プランクトンをいう。
一つ一つは0.001〜1ミリというごく小さな生き物だが、
それがあまりにも増えすぎて、海中にびっしりいる状態になってしまうので、
海が赤や茶色に見えるわけだ。

ヤコウチュウ
瀬戸内海区水産研究所 松山幸彦

メソディニウム
瀬戸内海区水産研究所 松山幸彦

ヘテロカプサ・サーキュラスカーマ
瀬戸内海区水産研究所 松山幸彦

カレニア・ミキモトイ

コクロディニウム・ポリクリコイデス
瀬戸内海区水産研究所 松山幸彦

シャットネラ・オバータ
瀬戸内海区水産研究所 松山幸彦

赤潮が発生すると、プランクトンが大量に酸素を使うので、水中の酸素が減ってしまう。
また、プランクトンの出す物質でエラがだめになって、魚たちは呼吸ができなくなってしまう。
そのため、一度に魚がたくさん死んでしまうんだ。


すべての赤潮が、必ず被害を出すわけではないのじゃ。
日本で多い、夜光虫の大発生による赤潮は、直接魚に害をおよぼすことはないんだよ。

赤潮で大量に死んでしまったアサリ/瀬戸内海区水産研究所 渡辺康範

今から40〜50年前、下水処理や、工場からの排水の処理が遅れていたころ、
海には人間が出したちっそやリンが大量に流れ込んだ。
赤潮の発生が一番多かったのはその頃じゃ。
今は水質も少しずつ戻り始めて、各地での赤潮発生は減っておる。

赤潮がなぜ短いあいだに急に増えるのか、
くわしいことはまだ完全にはわかっていないんだ。
そのため、予想をたてるのが難しく、今でもときどき大きな被害を出してしまうんだ。

赤潮のプランクトンにも、新種があるの? なんだか、ウィルスみたいだね。

そうなんじゃ。
昔、赤潮がたびたび発生していた頃のプランクトンとは違うものが、
発見されている。そして、今までとは違う被害を出し始めているんだ。

日本で問題になっているのは、 ヘテロカプサというプランクトンだ。
最初に発見されたのは1988年。それほどたくさんの栄養がなくても、
大量に増えることができるんだ。
つまり、少しきれいになった海に出てくる種類なんだね。

このプランクトンは、魚やエビ、カニにはまったく害がない。
ところが、カキ、アサリなどの2枚貝を殺してしまう、まことに困ったヤツなんじゃ。
ヘテロカプサは、2枚貝に摂食障害や不整脈をおこす。
貝は最後にはまひして死んでしまう。
1995年には広島で発生、カキの養殖に3億2千万円の被害を出したんだ。

アメリカでは、フェステリアというおそろしい新種のプランクトンが発見されている。
このプランクトンは、なんと直接魚を食べてしまう。
大きさや姿を次々に変え、人間にも、気分が悪くなる、短時間の記憶障害がおこるなど、
いろいろな障害を引き起こすと考えられている。
海中のミクロの世界でも、いろいろな変化や進化が起きているようだね。

赤潮の研究は、いろいろな角度から進められている。
なにしろ海で発生するものだから、難しいことも多いのじゃ。
薬をまくといっても、赤潮をやっつけるにはものすごい量が必要になるし、
そんな量の薬をまいたら、海の他の生きものにも影響が出てしまう。
次々に増え続ける100分の1ミリという小さな相手と戦うためには、
次のような条件が必要なんだ。

もともと自然に海の中にあるもので、赤潮が消えるときに多く見られるウィルスから、
とくに有効なものを選び出した。プランクトンを殺すウィルス、HaV、HcVだ。

・有害なプランクトン、ヘテロシグマ、ヘテロカプサだけにきく。
 他の海の生物にも影響を与えない。
・もともと自然に海の中で存在するものだから、海に負荷をかけない。

・たとえばHaVの場合、同じヘテロシグマでも、効果のあるものと、
 効果のあまり出ないものがある。
 その原因をさぐり、より効果があがるようにする必要がある。
・大量につくるための技術を研究する。
・長い間、効果をたもったまま保存する方法を研究する。

写真:瀬戸内海区水産研究所 長崎慶三

こちらももともと海の中にある細菌で、
やはり赤潮が消えるときに多く見られるものの中から、選び出した。
赤潮が発生すると、それを異常な事態ととらえて、それをもとにもどす働きが、
自然の中にあると考えられている。その働きに関係する細菌を、数種類選び出した。

・もともと海に存在するものだから、環境への影響が少ない
・大量にまかなくても、細菌が自分で増える

・赤潮が消えるときには、数種類の殺藻細菌がお互いに影響しあって、
 プランクトンを消滅させている。その仕組みをはっきりさせることが必要。
・細菌の出す「プランクトンを破壊する物質」の正体をつきとめ、
 人工的につくるための研究をする

水クラゲという、どこにでもいる普通のクラゲ。
赤潮が消えるとき、水クラゲが増えるという現象があり、そこからヒントを得た。

 ミズクラゲ

もともと海にいる生き物だから、他の生物への影響が少ない。