2004年の春、毒のないフグを養殖する方法が確立され、 話題になったのは知っているかな? これは、魚介類が持つ毒を研究し、もっと安心して食べられるように なればいいという研究者たちの長年の苦労の成果なんじゃ。
フグの毒って、 猛毒なんでしょう?
その名をテトロドトキシンという。 体の中に入るとまひが起こり呼吸困難になる。 たった2ミリグラムで体重50キロの大人を死亡させてしまうんだ。
天然のフグの毒は内臓にあるって聞いたよ。とくに肝臓が一番危ないんだよね。体全体に毒があるのに、フグはどうして平気なんだろう?
そこじゃよ!フグ毒のナゾを最初にといた学者も、それが疑問だったらしい。 それでは、研究の成果を順にたどっていくとしよう。
フグ毒の成分であるテトロドトキシンは、 海中にいるバクテリアの中に含まれている。 まず、それをエサとして食べた小さな巻き貝などが その毒を自分の体内にためる。 次に、その巻き貝を食べたヒトデや大きな巻き貝が その毒をため、これらを食べたフグが自分の体内に 更にその毒をためる。 この食物連鎖よってフグの内臓に 猛毒が蓄積されるんだ。 フグの毒は、毒をもつエサを食べることが 原因だったんだね。
以前から養殖場で育ったフグには 毒がないということは、 言われていたんだ。 それを実証し、 無毒のフグを育てる 100%確実な方法ができれば、 みんな安心してフグを 食べることができる。 それに挑戦したのは、 フグ毒研究40年のフグ博士、 長崎大学の野口玉雄先生だ。 2001年から2003年にかけて、6カ所の養殖場で実験を続けた。 そして、そこでイワシやアジなど特定のエサだけで育ったトラフグ4800匹の肝臓をすべて調べたんだ。 結果は4800匹全部が無毒だった。 これで、毒を持たないフグを、養殖でつくることができることが証明されたんだよ。
フグ博士の研究によると、 フグはやはり他の生物と比べて、テトロドトキシンに かなり強い抵抗力を持っていることがわかっているんだ。 フグ毒をもたない動物に比べると、 毒を体内に吸収されない仕組みを持っているらしい。 これは、フグにはフグ毒に強い遺伝子があって、 そのせいかもしれないと考えられている。それでも、 普通の動物が死んでしまう量の 何百倍ものフグ毒を注射すると、 やっぱり死んでしまうんだ。