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ほとんどの生き物は、体のどこかに固い部分をもっている。
骨や歯、貝殻、甲羅などがそうだ。
ぐにゃぐにゃに見えるタコやイカにも、もちろんある。
最近、海の生き物のこういった「固い部分」に、にわかに注目が集まってきた。
なぜだろう?
まずは観察から始めてみよう。全ての研究は、観察が基礎なんじゃ!

なにこれ!?貝に歯なんてあるの?

まあ、あわてないで。ゆっくり説明しよう。
貝に歯があるからといって、そんなに驚くことはないよ。
ほら、カタツムリを思い出してごらん。
カタツムリを飼ったとき、
ニンジンやきゅうりをエサにしただろう?
食べあとはどんなふうになっていたかな?

なんだか、動いたあとがへこんでて、
ざらっとしたもので削ったみたいな感じ。

そうそう。カタツムリは腹側に口があり、
その奥にやすりのような部分がある。
その一部を口から出して、回転させるようにして
エサを削り取って食べているんだ。
そのやすりのような部分を
歯舌(しぜつ)というんだよ。
それと同じものが、貝にもあるのさ。
歯舌で海藻などを削り取って食べているんだ。

マツバガイ

腹側はこんな感じ(写真はコシダカガンガラ)

これはマツバガイの歯。ずいぶん固そうだね。
マツバガイの歯は、ごらんのように並んで列を作っているが、
この列がなんと、500以上もある。
おまけにすり減ったりおれたりしても、すぐ新しい歯ができる。
サメも真っ青な、不死の歯だ。
ちなみに、アサリのように、海水や砂を吸い込んで、
中のプランクトンをこしとって食べる2枚貝には、歯舌はないよ。

まずクイズ。さあ、このイカのどこに歯があると思う?

イカって、くちばしみたいなものもあるね。
これ、お母さんがイカのお刺身つくるときに、見たことがあるよ。

カラストンビと呼ばれているね。
腕でとらえたエサを、この口と中の歯舌で細かくするんだ。
イカの歯は、カラストンビの奥にある。
顕微鏡でみるとこんなふうにギザギザしている。
活きのいいイカをお母さんが買ってきたら、
さばく前にちょっと観察してごらん。
10倍のルーペなら、ある程度見ることができる。

うわ〜っ!!これがザリガニの石なの!?

さよう。これは、ザリガニの胃の中にある。
体長10Bくらいのザリガニには、
直径1センチくらいの石がある。

こんな石が入ってて、ザリガニは平気なの?
おなかがゴロゴロしないのかなあ。

はははっ、もちろん平気だよ。
これは、必要があって胃の中にあるんだ。
ザリガニは脱皮をして大きくなることは知っているね。
この石は、脱皮直前になると作られる。
殻を作るためには、
たくさんの炭酸カルシウムが必要なんだけど、
淡水で暮らすザリガニにとって、
炭酸カルシウムをたくさん取り込むのは
難しいことなんだ。
そこで脱皮前になると
殻からカルシウムを溶け出させて
胃の中に石としてためておく。
そして脱皮したあとに、その石をまた溶かして
血液を通して上皮まで運び、固い殻を作るんだ。

すごいね!体の中で、石をリサイクルしてるんだ。

さて、ここでなぜ固い部分が
注目を集めるようになったか、
その話に戻ろう。
例えばカキの殻じゃが、
すばらしい秘密をもっている。
研究の結果、殻には
仕組みのちがう4つのことなる
層があって、それが重なり合って
一枚になっていることがわかった。
写真を見てごらん。
外からの刺激から殻を守る部分、
少しやわらかい部分、とても固い部分、
いろいろな性質をもつところが、
はっきりとした境目(さかいめ)を
つくらずにつながって一体となり、
それで殻をとても強くしているわけだ。

これは、どんなことの役にたちそうなの?

この、「はっきりとした境目(さかいめ)をつくらずに
つながって一体となる」ところを、貝殻をお手本に研究して
人の役に立つ新しい材料を作ろうとしているんだ。
たとえば建築材料、人工の歯や骨、宇宙へ行くロケットを
つくる材料としても研究されている。