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カマボコは、室町時代にはすでに日本で食べられていた、
600年以上の古い歴史をもつ加工食品だ。
あまりに身近なカマボコなんじゃが、実はたいへんな謎を秘めておる。
我々は、その謎の解明にいまも挑戦し続けているんじゃ!

かまぼこは食べ物だよ。足なんかあるわけないでしょ!

もちろん、歩くための足ではない。
かまぼこのシコシコとした弾力、
あれをかまぼこの足というんだ。
足はかまぼこの品質を決める最も重要な要素、
つまりかまぼこの生命といっても過言ではないのじゃ。

1)頭やないぞうなどのいらない部分をすばやく取りのぞく

かまぼこの材料って、魚でしょう?
魚の肉に何をたしたら、あんなにシコシコするの?

かまぼこの作り方を見てごらん。秘密は塩にある。
魚の肉に塩を入れて練ると、
細胞からたんぱく質の繊維がとけ出してきて、
網の目のようにからまるんだ。
そのまま熱を加えると、それがばらばらにならずに
まとまって、弾力が出るわけだ。

2)身を水あらいし、採取機(さいしゅき)にかけ魚肉だけを選んで取り出す

塩を加えるまえのすり身

塩を加えて練ったすり身

3)らいかい機(石うす)あるいはサイレント・カッター等で調味料・食塩・でん粉などを加え、すりあげてすり身を作る

かまぼこに使われている魚の肉って、
水でジャブジャブ洗うんだね。何のためなの?

匂いや血液、余分な油を取り除くことと、もう一つ、
かまぼこの足をつくる働きをじゃまする物質を、
洗い流すという働きもある。


昔の人は、それをわかっていたのかなあ。すごいね!

4)手付けほうちょう、あるいは成型機(せいけいき)によってかまぼこの形に整える

足があるくらいだからなあ。
かまぼこが坐っても別に驚かないけどね。

そうかい?十分びっくりしているようじゃが…。
もちろん椅子に坐るわけではない。
「坐る」というのは、練ったすり身を、
一定の時間そのままで放置しておくことなんだ。

5)低温(40度くらい)で加熱した後、高温(90度くらい)で蒸す

容器につめて…

30℃で30分加熱し、坐らせる。半透明の柔らかいゲル状になっている

6)加熱(かねつ)の終わった製品はすばやく冷やす
イラスト提供:八水蒲鉾株式会社

つやが出て、弾力が出た

ネバネバしていたすり身は15時間ほど坐らせると、
半透明になってプルプルのゲル状になる。
これが、かまぼこのいい「足」をつくるのに、
欠かせないんだ。坐らせたあとに加熱した方が、
足の強いかまぼこになる。
不思議なことに、この性質は魚の種類によって
異なるのじゃ。不思議じゃ。不思議じゃのう!


「坐る」と、「足」が強くなるんだ。おもしろいねえ!

さて、最後にようやくかまぼこの本当のミステリーに挑戦じゃ。
さて、きみたちは例えば、コイやウナギのかまぼこを
見たことがあるかね?

ないよ、そんなの。

タコやイカのかまぼこは?

イカボールとか、そんなのなら食べたことがあるよ。

それは、他の魚のすり身にイカやタコが入ってできたものだ。
100%イカだけ、ウナギだけ、というかまぼこは見かけないね。
他にもカツオやサケのかまぼこもないね。
これらの魚ですり身をかまぼこを作ろうとしても、
弾力が出ないので、かまぼこにならない。どうしてだろう?


だって、魚が違うとそういうこともあるんじゃないの?

でも、魚のたんぱく質の構造というのは、みんなほとんど同じなんだ。
同じ構造のたんぱく質なのに、どうしてある魚ではシコシコになって、
ある魚ではならないのか?ここが最大の謎なんじゃよ。


サバやアジ100%のかまぼこも、そういえばないもんね。

スケトウダラとサバの、たんぱく質の違いはなんだろう?
スケトウダラの中の、何がシコシコを作る役割をしているのか?
「足」の素になるたんぱく質は見つかったが、
どうしてスケトウダラとサバで違うのか、これがいまだに解明されていないんじゃ。
今、遺伝子操作の実験を繰り返しながら、それを明らかにしようとしている。
かまぼこのなぞに、我々はバイオテクノロジーの技術でいどんでいるわけだね。
このシコシコをつくり出す理由がわかれば、いろいろな素材を
かまぼこのような食べやすい加工食品にできるかもしれないからね。

すり身のたんぱく質を
電気泳動分析しているところ







  写真提供:東京海洋大学 石崎松一郎