水 産 学 会 に つ い て
日本水産学会長

 水産とは、水のなかから魚・貝・エビ・海藻などの食料をとって、
直接あるいは加工して食卓へのせる産業のことで、ここでいう水は海(外洋・沿岸)・湖・川のことです。
そして、ときには、食料以外のもの、たとえばしんじゅやさんごなどの美術品材料もとる対象にしています。

人は、石器時代から水産生物を食用にしてきたことは、貝塚や遺跡の調査からわかっていますし、
効率的にとる技術を工夫したりほかのところへ移してふやしていったことも記録にのこっています。
水のなかの食料生物は、いくらとってもへらないと最近まで思われてきましたが、
いまではとりすぎれば絶滅する心配もあるので、
そうならないようにとりかたを工夫しなくてはならないことに気がつき、
「管理型漁業」が大切と考えられるようになりました。

また、稚魚を放流したり、それらが成育する環境を保護する「栽培漁業」や、
陸上の池や海の生簀で大きく育ててから食用にする「養殖」も有用です。

 水産は、このように食料を確保するためだけではなく、海(川や湖も含めて)の環境や生態系を破かいすることなく、
よい状態にたもつこと(保全)も目的にしています。

また、水辺の景観や自然とのふれあいを大切にする役割もはたしています。

さらに、漁村にくらす人びとが都会の人と交流するための場を用意することも大切なはたらきのひとつです。

 水産の研究は、はじめは、日本人が必要な食料を確保するための科学技術を進歩させることが目的でした。
いまでも必要なタンパク質確保はもちろん、さらに安全で安心な食料を供給するための研究が大切ですが、
それに加えて環境の保全や海運の保証のための研究もおこなわなければなりませんし、
人びとへやすらぎを提供するテーマも大切にしなくてはなりません。

日本水産学会は、そのような研究と技術開発をめざす研究者の集まりです。