Fisheries Science 掲載報文要旨

魚類の卵形成タンパク質(総説)

原 彰彦,平松尚志(北大院水),藤田敏明(八戸工大)

 魚類の性判別に関し,免疫学的手法により卵を有する個体血中に特異的な抗原の存在が 1910 年代に報告された。この抗原は雌肝臓で合成され血中を介して,卵へ取り込まれることから卵黄蛋白前駆物質,ビテロジェニンと呼ばれ卵黄形成の主要な蛋白質として知られる。近年この蛋白質は複数存在することが蛋白質,遺伝子解析から明らかとなった。1980 年代にはビテロジェニン同様,エストロジェンにより血中に誘導される卵膜蛋白前駆物質,コリオジェニンも新物質として報告された。これらは,水圏の環境ホルモンの影響評価のバイオマーカーとなっている。

82(2), 187-202 (2016)
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英国における遊漁の現状:自然資本,生態系サービス,脅威,管理(総説)

Ian J. Winfield(ランカスター大 環境センター,英国)

 英国の約 6 千 5 百万人の人口のうち,釣人は 3 百万人を超える。淡水域の遊漁の脅威としては,乱獲,生息場の改変,酸性化,化学汚染,富栄養化,内分泌攪乱物質,マイクロプラスチック,侵入種,気候変動が挙げられる。そのため,科学的知見に基づいた管理施策が既に取り組まれて,公的機関に市民活動も加わって展開されている。今では生態系に基づく管理が当たり前になり,釣人やそれ以外の市民を含め,水域から離れた場にも活動が広がっている。英国の遊漁は多くの課題に直面し続けているが,将来を楽観できる根拠も存在している。
(文責 片山知史)

82(2), 203-212 (2016)
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超音波バイオテレメトリーシステムを応用した小型漁具深度モニタリングシステムの開発および性能試験

長谷川浩平(海洋大院・JSPS 特別研究員),
宮本佳則,内田圭一(海洋大院)

 小型漁具を対象とした,漁具深度をリアルタイムで測定・表示するシステムの開発を行った。開発したシステムの性能試験として,測定深度の精度評価とタチウオ漕釣り漁具への実装実験を行った。本システムの測定深度の精度は 0.4 m であった。実装実験では,漁具深度を連続的に測定・表示することにより,漁具深度の調整を支援することができた。本システムにより,効率的な漁具の操作が可能になる。

82(2), 213-223 (2016)
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道西日本海におけるホッケ Pleurogrammus azonus 雌の成熟過程と成熟特性

高嶋孝寛,岡田のぞみ(道栽水試),
浅見大樹,星野 昇(道中央水試),
志田 修(釧路水試),
宮下和士(北大フィールド科セ)

 道西日本海に分布するホッケ雌の成熟過程を観察し,成熟と体サイズおよび年齢との関係を検討した。卵黄形成は 8 月から観察されたが,9 月にはすでに吸水卵が出現し,それらは 11 月までに複数回にわたって産出されると考えられた。このことからホッケ雌の成熟は他のアイナメ科魚類と同様に卵群同期発達・多回産卵型に分類された。成熟率は体サイズに依存しており,50% 成熟標準体長は約 240 mm と推定された。産卵期前の 1 歳魚標準体長は 50% 成熟体長の周辺にあるため,それまでの成長が毎年の親魚量に強く影響を及ぼすことが示唆された。

82(2), 225-240 (2016)
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太平洋東部海域におけるバショウカジキの遺伝的多様性と集団構造

Griselma G. Rubio-Castro,
Casimiro Quiñonez-Velázquez,
Francisco J. García-Rodríguez
(メキシコ国立中央工科大,メキシコ)

 メキシコ,エクアドル周辺におけるバショウカジキの集団構造を,mtDNA マーカーを用いて解析した。調節領域の 250 塩基配列から 134 ハプロタイプを検出した。遺伝的多様性は他のカジキ科魚類よりも低かった。遺伝的組成はエクアドルの 1 サンプルがメキシコの 4 サンプルとは異なっており,地理的な距離と遺伝的距離が有意に相関していた。系統地理学的な解析によって,80,000-215,000 年前に集団の急激な拡大が生じたと推定された。しかし,遺伝的分化は明瞭では無く,関係国による資源全体の管理が必要である。
(文責 片山知史)

82(2), 241-249 (2016)
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渤海,黄海,東シナ海におけるサワラ Scomberomorus niphonius の個体群構造:耳石の特徴に基づくランダムフォレストからの証拠

Chi Zhang,Zhenjiang Ye,Zengguang Li,
Rong Wan,Yiping Ren(中国海洋大),
Shuozeng Dou(中国科学院海洋研,中国)

 本研究では,サワラ Scomberomorus niphonius の個体群構造を耳石の特徴の地理的な変異に基づき検討し,ランダムフォレストが分類器として導入された。標本は漁船の流し網を用いて,中国沿岸の 8 か所の主な産卵場から集められた。耳石の形は,形態変数とフーリエ係数の主成分によって記述され,最適な変数の組み合わせが探索された。中間的な数の変数(13 個中 8 個)が最も識別力があり,8 か所は 64.5% の大域的精度で 3 つの系群に分けられた。判別結果は通常の回遊軌跡の表現型の証拠を与え,さらに大きなスケールでのサワラのメタ個体群の存在を裏付けた。
(文責 平松一彦)

82(2), 251-256 (2016)
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相対成長モデルによるオニテナガエビ Macrobrachium rosenbergii の postlarva と juvenile の第 6 腹節長の比較

川村軍蔵,Annita Seok Kian Yong,Chiau Yu Chen,
Leong Seng Lim(サバ大ボルネオ海洋研,マレーシア)

 オニテナガエビは幼生,postlarva (PL), juvenile(稚エビ)を経て成エビに成長する。本研究では相対成長モデルを用いて PL と稚エビの第 6 腹節長の比較を行った。全長と第 6 腹節長の対数値の関係は負のアロメトリーを示した。第 6 腹節長の全長に対する相対成長は 2 つの直線で表され,それらは相対成長 12.6%(全長 15 mm)に交点があった。この相対成長より大きいものが PL,小さなものが稚エビであると判断された。

82(2), 257-260 (2016)
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河口偶来種の 2 魚種(ウグイとクロダイ)は非出生浸透圧環境での水温適応能力が低下する

中村政裕(東大院農),
益田玲爾(京大フィールド研セ),
塚本勝巳(日大生物資源),大竹二雄(東大院農)

 河口偶来種であるウグイとクロダイについて,出生浸透圧環境と非出生浸透圧環境に対する順応可能な水温帯を比較した。出生浸透圧環境では両種とも全ての水温区において 48 時間生存した。一方,非出生浸透圧環境では馴致水温である 20℃ ではほぼ全ての個体が生存したが,低温区(ウグイ,6℃;クロダイ,10℃)と高温区(ウグイ,30℃;クロダイ,33℃)では 24, 48 時間後の生存率は大きく低下した。この結果は,河口偶来種における非出生浸透圧環境への順応可能な水温帯が出生浸透圧環境に比べて狭くなることを示す。

82(2), 261-268 (2016)
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ホンモロコ放流用種苗の遺伝的多様性の評価

亀甲武志,岡本晴夫,氏家宗二,臼杵崇広,根本守仁,
三枝 仁,石崎大介,藤岡康弘(滋賀水試),
甲斐嘉晃(京大フィールド研),中山耕至(京大院農)

 琵琶湖漁業の重要な水産資源であるホンモロコの漁獲量は減少傾向にあるため,増殖事業が行われている。ホンモロコ放流用種苗の遺伝的多様性を評価することを目的に,琵琶湖の野生集団と放流用種苗のミトコンドリア DNAcytb 領域の部分塩基配列を解析した。琵琶湖の野生集団では明瞭な遺伝的集団構造はみられなかった。放流用種苗は野生集団と比較して,遺伝的多様性が低下する傾向はみとめられず,遺伝的な分化は検出されなかった。遺伝的多様性の保全の観点から,現在の放流種苗はホンモロコ増殖対策として適していると考えられた。

82(2), 269-278 (2016)
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ミトコンドリア 16S rRNA の 5′末端側塩基配列に基づく頭足類の DNA バーコーディング法の検討

Gustavo Sanchez,笘野哲史,
海野徹也(広大院生物圏科),
若林敏江(水大校),酒井光夫(水研セ東北水研)

 ミトコンドリア 16S rRNA の 5′末端側塩基配列を用いた頭足類の DNA バーコーディングを検討した。頭足類 28 種 114 個体から得られた部分配列約 500bp に基づく樹系図は,外部形態による種分類に対応していた。種内および種間でのペアワイズ遺伝的距離と NJ 解析から,本領域が持つ遺伝変異は一般的に用いられる 16S rRNA 領域より高いことが示唆された。本研究によって,DNA バーコーディングを補足しうる DNA マーカーとして 16S rRNA の 5′末端側塩基配列の有効性が確認された。

82(2), 279-288 (2016)
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日本におけるアイゴ Siganus fuscescens の遺伝的集団構造

柳下直己,山口敦子(長大院水環)

 日本産アイゴの集団構造について,ミトコンドリア DNA シトクロム b 遺伝子の部分塩基配列を基に推定した。系統解析では,日本産の個体は,本種に見られる分岐の深い 3 つのクレードの内の 2 つに含まれた。階層分散分析では,沖縄―九州以北の地理的集団からなるグループ間で集団構造は見られなかった。しかし,FST 値は,全個体を用いた場合も同一クレードの個体のみを用いた場合も,沖縄―九州以北の各地理的集団間で有意であった。よって,沖縄―九州以北の地理的集団間には,遺伝的流動の制限による僅かながらの分化があると考えられた。

82(2), 289-301 (2016)
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異なる光波長の LED 灯に対するスルメイカの眼の生理反応

松井 萌(北大院水),髙山 剛(水研セ水工研),
桜井泰憲(北大院水)

 スルメイカの眼に青,緑,赤,白の 4 色の LED 灯をそれぞれ照射し,眼の生理反応を調べた。全色で LED 灯の照射開始直後から瞳孔反応が起こり,光に対し素早く反応した。青,緑,白を照射すると低照度で瞳孔反応が生じ,青を照射し続けた場合,色素移動も低照度で生じた。一方で,赤を照射した場合は,瞳孔反応・色素移動ともに高照度でも反応は低かった。青,緑,白の光には,その光がスルメイカの眼の視感度のピーク(482 nm)に近い波長を含むため敏感に反応し,赤には光が視感度のピークに近い波長を含まないため,反応がにぶいためと推察された。

82(2), 303-309 (2016)
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夏季の北日本沖合域におけるカタクチイワシ卵仔魚の分布

林  晃,張  愷,猿渡敏郎,河村知彦,
渡邊良朗(東大大気海洋研)

 1990 年代末の資源量増加に伴って,カタクチイワシ太平洋系群の産卵場は黒潮域から北日本沖合の親潮域へと拡大した。本種の産卵場拡大の実態を知るために,北日本沖合における卵仔魚分布と海洋環境を調べた。100 m 深水温 5℃ 以下の親潮域では,表面水温がおよそ 15.9℃ 以上の水域で卵が採集された。調査海域で卓越した南西流によって,卵や仔魚はより温暖な水域へ輸送されると考えられた。カタクチイワシは,夏季の季節的昇温を利用して産卵場を亜寒帯水域まで拡大することがわかった。

82(2), 311-319 (2016)
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凍結乾燥ウシ初乳を給餌したドラド類 Salminus brasiliensis 稚魚の消化器官,肝臓および筋肉組織の発達

Wiolene Montanari Nordi,Débora Botéquio Moretti,
Thaline Maira Pachelli da Cruz,
José Eurico Possebon Cyrino,
Raul Machado-Neto(サンパウロ大,ブラジル)

 凍結乾燥したウシの初乳(LBC)が,Salminus brasiliensis 稚魚の消化器官,筋肉および肝臓組織の発達に及ぼす影響について調べた。LBC 含有飼料の摂取はインシュリン様成長因子タイプ I 濃度に影響を及ぼさなかったが,筋肉のRNA量や RNA/DNA 比は 60 日間投与で下がった。60 日間では 20%LBC 投与区に比べて 0 および 10%LBC 投与区で肝臓 DNA の濃度が高かった。以上の結果から,LBC は消化器官,筋肉および肝臓組織の適切な発達を促すものと考えられた。
(文責 潮 秀樹)

82(2), 321-326 (2016)
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コウライエビ(Huanghai No. 1 系統)のトランスクリプトーム解析

Yuying He(中国水産科学院),Zhaoxia Li(青島農業大),
Ping Liu,Qingyin Wang,Jian Li(中国水産科学院,中国)

 中国北部で養殖されるコウライエビ(Huanghai No. 1 系統)は,近年に数回の選抜育種が行われている。本系統の遺伝的特性を明らかにするために,筋肉と血球由来のサンプルを 454 パイロシークエンシングに供し,907,945 リード(平均,467.5 bp)から 867,245 個の高品質リードを得た。遺伝子オントロジー解析により,細胞の構成要素(28.2%),生物学的プロセス(20.5%),分子機能(5%)に分類された。またパスウェイ解析により,15,461 個の転写産物は 223 個のパスウェイに分類された。さらに,成長,繁殖,免疫応答に関わることが予想される遺伝子群が同定された。
(文責 吉永龍起)

82(2), 327-336 (2016)
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ホタテガイの中腸腺由来金属結合タンパク質の分離

高 加龍(広東海洋大,中国),
石崎松一郎,長島裕二(海洋大院)

 ホタテガイをカドミウム,銅または鉛を含む人工海水に暴露した後,金属の蓄積能および金属結合タンパク質の存在を調べた。いずれの金属も中腸腺に顕著に蓄積され,その蓄積量はカドミウム,銅,鉛の順に高かった。中腸腺から分子量約 28, 37 および 42 kDa の金属結合タンパク質が精製され,これらのアミノ酸部分配列解析により,Coccidioides immitis の calcium-binding protein または Pleurocapsa sp. の ion-transporter 類似タンパク質と高い相同性を示すことを明らかにした。これらのタンパク質はホタテガイの金属蓄積または解毒メカニズムに関与していることが示唆された。

82(2), 337-345 (2016)
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エツ Coilia nasus 膵臓由来ペプチド Y の分子クローニング,組織・発生段階別遺伝子発現解析および食欲調節効果

Siyu Yanga(南京農科大),
Gangchun Xu(南京農科大・中国水産科学院),
Fukuan Du(中国水産科学院),
Pao Xu(南京農科大・中国水産科学院,中国)

 エツ Coilia nasus 膵臓由来ペプチド Y の cDNA クローニングを行った。リアルタイム PCR により,当該ペプチド Y の組織別遺伝子発現解析を行ったところ,脳,腸および肝臓での高い発現が見られる一方,他の各組織においても普遍的に発現していた。また,ペプチド Y の mRNA は,胚発生の初期段階から検出され,発生の進行とともに増加した。さらに本種におけるペプチド Y の mRNA は,絶食時初期に減少した後,増加する傾向が見られたことから,食欲の調節に関与している可能性が示唆された。
(文責 岡田 茂)

82(2), 347-355 (2016)
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制御されたメイラード反応によるアルギン酸オリゴ糖修飾はシロザケ筋肉由来抗炎症物質の開発に有効な手段である

西澤瑞穂,三枝武蔵,佐伯宏樹(北大院水)

 温湿度を調節した環境下でのメイラード反応(MR)を用いて,シロザケ筋肉タンパク質(Mf)をアルギン酸オリゴ糖(AO)修飾した(Mf-AO)。このペプシン-トリプシン(PT)消化物(AO 結合量 49.6 μg/mg)は,RAW264.7 細胞からの炎症関連物質の分泌を,LPS 誘導遺伝子群の発現制御を介して抑制した。また経口投与した Mf-AO は,PT 消化の有無によらずマウス-カラゲニン浮腫の増悪を軽減した。以上より,制御された MR による AO 修飾は魚類 Mf 由来抗炎症物質の開発に有効な手段といえる。

82(2), 357-367 (2016)
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褐藻ヒジキ抽出物のジエチルエーテル画分による抗アレルギー効果

杉浦義正,木下祐一,阿部真比古,村瀬 昇,田中竜介,
松下映夫,臼井将勝,花岡研一,宮田昌明(水大校)

 褐藻ヒジキの抗アレルギー性を確認するため,メタノール/クロロホルム抽出物からジエチルエーテル画分を調製し,マウス耳介浮腫抑制や炎症関連酵素の活性阻害,肥満細胞の脱顆粒抑制により評価した。その結果,試料を経皮および経口投与した何れの場合も,耳介浮腫は抑制された。酵素活性の阻害作用もみられ,その 50% 阻害濃度は陽性対象のエピガロカテキンガレートと同等であった。また,濃度依存的に脱顆粒は抑制された。以上より,ヒジキ含有成分の抗アレルギー性が示唆され,ヒジキの機能性食品への利用可能性が見出された。

82(2), 369-377 (2016)
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エビ加水分解物を含んだ魚豆腐の物理化学および微生物学的特性

Sunantha Ketnawa(Mae Fah Luan大),
Soottawat Benjakul(Prince of Songkla 大,タイ)

 エビ加水分解物を 0.05, 1.00, 2.00% (w/w)含む魚豆腐を調製し,物理化学的,微生物学的および官能的特性を評価した(4℃, 14 日間)。加水分解物の割合が高い魚豆腐ほど脂質の酸化を抑制したが,加水分解物が入っていない魚豆腐(コントロール)と比較して脂質割合が低かった。総細菌数,酵母およびカビは 2.00% の魚豆腐で顕著に減少した。豆腐表面の色は貯蔵期間と共に L*値と b*値が増した。一方,内部の L*値は減少したが一定の白さを保っていた。加水分解物を添加した魚豆腐はコントロールより柔らかかった。
(文責 濱田友貴)

82(2), 379-389 (2016)
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