Fisheries Science 掲載報文要旨

Norway lobster トロール漁業における角目網ウインドーの有効性の改善

Niels Madsen(デンマーク工科大),
René Holst(南デンマーク大),
Rikke Petri Frandsen, Ludvig A. Krag(デンマーク工科大)

 Norway lobster Nephrops norvegicus を対象とするデンマークのトロール漁業において大西洋マダラ Gadus morhua の混獲を減少させるために,4 枚の網パネルで構成され上部パネルに角目網ウインドーを配した Sorting box と呼ぶ漁具構造を開発した。漁獲試験を行ったところ,大西洋マダラと他魚種の混獲はウインドーの目合が小さいほど,Sorting box が高くなるほど増える傾向がみられたが,いずれも従来の漁具と比べて減少した。Sorting box は 2009 年よりカテガット海峡の漁業に導入されている。
(文責 松下吉樹)

78(5), 965-975 (2012)
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LED とメタルハライド灯を併用するイカ釣り漁船における段階的減灯操業の効果

松下吉樹,山下由起子(長大院水・環)

 LED (9 kW)とメタルハライド灯(MH 灯 3 kW,50 灯)を装備するイカ釣り漁船 9 隻により,全灯を約 4 時間点灯した後に MH 点灯数を 30 または 36 灯に減らして操業を行う実験を 2010 年 1~2 月に対馬海峡で実施した。この方法で操業を行った場合,燃油消費を全灯点灯操業と比べて 22~25% 減少できた。スルメイカの漁獲量は MH 減灯数にかかわらず,他の操業船と差が認められなかった。GLM 解析の結果,イカの漁獲量は点灯方法よりもむしろ月輝面比と時期の影響を受けていた。全灯点灯から段階的に減灯を行う操業方法は漁獲を維持しながら燃油の削減を期待できる。

78(5), 977-983 (2012)
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海産紅藻スサビノリの Na/H アンチポーターにおける構造解析および発現解析

宇治利樹,門間亮太,水田浩之,嵯峨直恆(北大院水)

 スサビノリの Na/H アンチポーターである PySOS1 および PyNhaD の構造解析および発現解析を行った。これらは,陽イオン/プロトンアンチポーターとしての特徴的な構造を保持しており,両遺伝子はスサビノリの配偶体および胞子体で発現していた。さらにこれらの発現は,光照射により同時に上昇したが,この発現上昇は光合成阻害剤により抑制された。以上のことから,PySOS1 および PyNhaD の協調的な働きが,光条件下における Na 輸送や pH 調節に重要である可能性が示唆された。

78(5), 985-991 (2012)
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本邦産底生性渦鞭毛藻 Ostreopsis spp. の培養法ならびに増殖特性

山口晴生(高知大農),谷本祐子(愛媛大院連農),
吉松孝倫(高知大農),佐藤晋也(英国王立植物園),
西村朋宏(愛媛大院連農),
上原啓太,足立真佐雄(高知大農)

 近年,パリトキシン様毒素を有する底生性渦鞭毛藻 Ostreopsis 属が世界各地で発生しており,その大増殖に伴う海産生物の毒化あるいはヒトへの健康被害が報告されている。本研究では,本邦産 Ostreopsis 属 4 系統群にそれぞれ属する株を培養可能な IMK および f/2 平底試験管培地を選抜し,これらを用いて有毒株の増殖能(0.619~1.04 div./day)を解明した。これより,本邦の有毒 Ostreopsis 属藻が,他の底生性有毒渦鞭毛藻と比較して,高い増殖能を有していることを初めて明らかにした。

78(5), 993-1000 (2012)
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カタクチイワシ仔魚の成長モデル

銭谷 弘,河野悌昌(水研セ瀬水研)

 瀬戸内海燧灘におけるカタクチイワシ仔魚の成長,生残を記述するための水温,餌量指数,体サイズを関数とした成長モデル式を考案し,各個体の耳石成長解析で推定される成長率と成長モデルで計算される成長率の残差平方和を最小にするようにモデルパラメータ Hewett-Johnson p 値と Q10 を推定した。p 値は 0.86,Q10 は 2.11 であった。成長モデル式から計算した成長率ゼロの餌量指数を指標として燧灘における餌量の多寡を判定したところ,餌不足は確認されなかったが,低餌量が加入率の低下を起こす可能性が示唆された。

78(5), 1001-1011 (2012)
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Scartelaos gigas(ハゼ科)の酸素消費量とリズムに及ぼす低酸素の影響

Jung-Ah Lee, Jong-Wook Kim, Sung-Yong Oh,
Soon-Kil Yi (Korea Inst. Ocean Sci. Technol.),
Il Noh (Korea Maritime Univ.),
石松 惇(長大海セ),
Wan-Soo Kim (Korea Inst. Ocean Sci. Technol.)

 マッドスキッパーの 1 種 Scartelaos gigas の低酸素耐性を評価するため,空気呼吸を妨げた状態で数段階の低溶存酸素(DO)環境に曝露し,酸素消費量(OCR)とそのリズムについて検討した。対照区(DO 6.96~7.78 mg/l)の平均 OCR は(0.12 mlO2/g 湿重量/h)で,OCR に強い概日リズムが認められた。DO 2.06-2.87 mg/l では,ピーク振幅がやや減衰したものの,概日リズムは変化しなかった。DO 1.23-2.05 mg/l では,OCR リズムの振幅が著しく減少し,周期も大きく変化した。しかし,平均 OCR は,対照条件下での値とほぼ同じであった。

78(5), 1013-1022 (2012)
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アユ耳石とアユが棲息する河川水および海水の Sr 同位体比

天川裕史(東大大気海洋研),
鈴木隆史(東大大気海洋研 国際沿岸セ),
高橋俊郎,巽 好幸(JAMSTEC IFREE),
大竹二雄(東大大気海洋研 国際沿岸セ)

 日本の 4 つの河川より採取したアユの耳石の Sr 同位体比を共に採取した河川水と併せて分析,比較を行った。耳石のサンプリングにはマイクルミリング法と嘴状突起部(rostrum)切除法の 2 つの方法を用い,両手法のデータはほぼ一致した。河川水と海水の Sr 同位体比と耳石の Sr 同位体比を比較すると,河川生活期および海洋生活期いずれに対応する部分とも良い一致を示した。これは,日本国外の他の魚種において検証された傾向と同じであり,アユ耳石の Sr 同位体比がアユの回遊を研究する上で極めて有用な同位体比トレーサーであることを意味する。

78(5), 1023-1029 (2012)
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ケンサキイカ Loligo edulis のミトコンドリア DNA 全塩基配列

竹元賢治,山下倫明(水研セ中央水研)

 ケンサキイカ(ケンサキイカ型)のミトコンドリア DNA は 17,360 bp であった。日本海西部に秋季から冬季にかけて出現する形態的特徴が異なるケンサキイカ季節群(ブドウイカ型)のミトコンドリア DNA は 17,351 bp であった。両者の比較から全塩基配列の 99.9% が一致し,コード領域に 8 塩基の置換が認められた。塩基配列および ND1 遺伝子のハプロタイプの比較から,ケンサキイカ型とブドウイカ型は,同一の遺伝的背景を有することが推定された。

78(5), 1031-1039 (2012)
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高温選抜系および標準系ニジマスの鰓における包括的遺伝子発現解析

陳 盈光,チャニンヤー ウォワランカナ,
木下滋晴(東大院農),
鈴木 穣,大島健志郎,服部正平(東大院新領域),
稲野俊直,田牧幸一,毛良明夫(宮崎水試),
武藤光司,矢田 崇(水研セ増養殖研),
北村章二(水研セ本部),
浅川修一,渡部終五(東大院農)

 本研究では高温耐性を示すニジマスの系統(高温選抜系)と通常のドナルドソン系統(標準系)につき,次世代シーケンサを用いて包括的な遺伝子発現解析を行った。鰓で発現する 13,092 種類の遺伝子を比較した結果,標準系に対し,高温選抜系で 2 倍以上発現が上昇している遺伝子を 324 種類検出した。複数の熱ショックタンパク質遺伝子,さらには c-fos およびその関連タンパク質遺伝子が高温選抜系で発現が上昇していた。本手法は,ニジマスの高温耐性関連遺伝子の探索に極めて有効であった。

78(5), 1041-1049 (2012)
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高温選抜系と標準系ニジマス間で作出された F1 雑種からの F2 稚魚における熱ショックタンパク質の発現差異

尾島信彦,馬久地みゆき(水研セ中央水研),
稲野俊直,田牧幸一,毛良明夫(宮崎水試),
木下滋晴,浅川修一,渡部終五(東大院農)

 高温選抜系と標準系ニジマス間で作出された F1 雑種からの F2 稚魚を用い,高温耐性の原因遺伝子候補として HSP の発現を調べた。F2 稚魚から低耐性群(平衡喪失時間<30 分)と高耐性群(平衡喪失時間≧60 分)を選定して尾鰭を解析した結果,高耐性群では Hsp70, Hsp60, Hsp40 の発現量が通常温度下で低耐性群より有意に高かった。特に Hsp70 は高耐性群にのみ検出され,Hsp70 が高温耐性の主因タンパク質であることが示唆された。

78(5), 1051-1057 (2012)
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ウマヅラハギの飼育下での自然産卵による効率的な採卵方法

水野かおり(愛媛水研),
山口園子,三浦智恵美,三浦 猛(愛媛大南水研)

 効率的な採卵方法を確立するため,産卵基質の種類,面積,粒径を検討した。砂,塩化ビニール板,人工産卵藻,遮光ネットを比べると,砂が産卵に最も適していた。水槽底面全体(7085 cm2)と移動式産卵床(400 cm2)で基質面積による差を比較したところ産卵頻度に違いはなく,異なった粒径の砂(425~1180 μm)も産卵頻度とふ化率に違いをもたらさなかった。最適条件での大規模採卵試験では,平均全長 28 cm の 20 ペアの親魚から 2 日間で平均 33 個の卵塊が得られ,40 万尾の仔魚がふ化したことから,この方法が商業的規模に対応可能であることが示された。

78(5), 1059-1064 (2012)
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海藻由来放線菌が産生する抗菌性ベンズアルデヒド化合物

Ji Young Cho (Soonchunhyang Univ.),
Myoung Sug Kim (NFRDI,韓国)

 海藻から強い抗菌活性物質を産生する放線菌を分離した。最も強い抗菌性物質を産生する放線菌は 16S rDNA の解析により Streptomyces atrovirens と同定された。NMR 及び高速原子衝撃質量分析による構造解析の結果,本放線菌の産生する 2 つの抗菌性物質の構造が明らかとなった。このうち 1 つの抗菌性物質は新規のベンズアルデヒド誘導体であることがわかった。異なる培地で抗菌性物質産生量を調べたところ,A1BFe 培地での産生量が最も多かった。本研究で分離した抗菌性物質は,数種のグラム陽性及びグラム陰性魚病細菌に対して,既承認の合成抗菌剤と同等の抗菌活性を示すことがわかった。
(文責 舞田正志)

78(5), 1065-1073 (2012)
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ブリにおけるコレシストキニンおよび消化酵素の飼料原料に対する応答

古谷尚大(愛媛大院連合農),
益本俊郎,深田陽久(高知大農)

 コレシストキニン(CCK)は,消化酵素分泌を促進するホルモンである。ブリにおいて,飼料原料の投与試験(試験 1:魚粉,魚油;試験 2:魚粉濃度 1%, 20%(w/v);試験 3:魚粉,大豆油粕,精製大豆タンパク,コーングルテンミール,グルタミン酸発酵粕)を行い,CCK と消化酵素の遺伝子発現量の変化を測定した。その結果,CCK と消化酵素の遺伝子発現量は魚粉(20% w/v)の投与によってのみ増加し,ブリにおいてタンパク質の濃度と種類が CCK 合成と消化酵素分泌に重要であると示唆された。

78(5), 1075-1082 (2012)
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三宅島沿岸域における紅藻マクサ胞子の基質着生への海底堆積粒子の影響

荒川久幸,大井洋平,松本 陽(海洋大),
滝尾健二,木本 巧,川辺勝俊(都島しょ総セ)

 三宅島沿岸域では 2000 年の火山活動により,紅藻類マクサ群落が荒廃し,現在でも回復していない。その要因の一つとして火山灰由来の海底堆積粒子に着目し,マクサ胞子の基質着生への影響を調べた。胞子の着生率は堆積粒子量が多くなるほど下がること,堆積粒子の粒径が小さいほど着生への影響が大きいこと,がわかった。三宅島の海底堆積粒子量は,9.3~1815.4 mg/cm2 であった。堆積粒子量と粒径からマクサ胞子の着生率を概算すると,著しく低かった。現在の三宅島では,海底堆積粒子による着生阻害が大きいと考えられた。

78(5), 1083-1090 (2012)
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アンダマン海のミャンマー南部沿岸域における植物プランクトン調査:特に潜在的有害種を含む渦鞭毛藻群について

Su-Myat, Maung-Saw-Htoo-Thaw(広大院生物圏科),
松岡數充(長大院水),
Khin-Ko-Lay(ミャンマー DOF),
小池一彦(広大院生物圏科)

 ミャンマー南部沖,Mergui 群島に出現する渦鞭毛藻の詳細なリストを初めて構築した。プランクトン試料からは,モンスーン前後それぞれにおいて 57 種および 26 種の渦鞭毛藻が同定された。その内,有害種は以下の通りであった:赤潮種の Prorocentrum spp. と Alexandrium affine,麻痺性貝毒(PSP)原因種の A. tamiyavanichii,下痢性貝毒原因種の Dinophysis spp.。加えて,PSP 原因種の Gymnodinium catenatum のシストも見出された。有害種以外では,モンスーン季前に外洋性種である Ornithocercus spp. が出現した。このことはインド洋からの南西流の接岸を示す。季節を通じて多様な Protoperidinium 種が優占しており,このことは,当海域が湧昇流などによって豊富で多様なプランクトン餌生物を維持していることを示す。

78(5), 1091-1106 (2012)
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エゾバフンウニ Strongylocentrotus intermedius 消化管からセルラーゼの精製および生化学的性状解析

長谷川嵩人,浦 和寛,田中啓之,尾島孝男,
都木靖彰(北大院水)

 本研究では,ウニ類における餌の消化機構を明らかにすることを目的とし,エゾバフンウニ消化管からセルラーゼを精製し生化学的性状解析を行った。セルラーゼの至的温度は約 30℃ で,至的 pH は 8.0 であった。また,酵素の熱安定性を調べた結果,約 32℃ で 50% の活性に至ることが明らかとなった。さらに,エゾバフンウニの生息温度 5-20℃ では,活性は高い値を維持したが 20℃ を超えると活性が急激に低下することが明らかとなった。これらのことから,エゾバフンウニは 20℃ 以下の水温で飼育するのが適していることが示唆された。

78(5), 1107-1115 (2012)
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生ワカメを長期間保存するための簡便な凍結及び解凍法

Jae-Suk Choil, Bo-Bae Lee (RIS Center),
Sun Ju An (Seojin Gijang Fishery Association Co.),
Jae Hak Sohn (Silla Univ.),
Kwang Keun Cho (GNTECH),
In Soon Choi (RIS Center,韓国)

 収穫した生ワカメを簡便で効果的に長期間保存するための方法の開発が求められている。本研究では,最適な保存法を確立するために,いくつかの凍結及び解凍法を適応したワカメの品質を調べた。4 種類の凍結温度及び 4 種類の解凍条件を用い,色,引張り強度,全菌数,大腸菌群数を測定した。保存期間は,いずれも-20℃ で 2 ヶ月とした。その結果,-30℃,50% 海水中で凍結し,水道水で 6 時間解凍する方法が,ワカメの品質を保つのに最適であった。この最適条件を用いたワカメの小売りディスプレイ中での品質変化を調べたところ,10℃ で 2 日間の保存まで有意な変化は見られなかった。
(文責 森岡克司)

78(5), 1117-1123 (2012)
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コートジボアールの伝統的な発酵魚である“adjuevan”の微生物学的特性とアミノ酸組成

Amenan Clémentine Kouakou (UFR-STA, CIRAD),
Kouadio Florent N'Guessan (UFR-STA),
Noël Durand (CIRAD), Dadie A. Thomas (UFR-STA),
Didier Montet (CIRAD, France),
Marcellin Koffi Djè (UFR-STA, Ivory)

 コートジボアールで製造される伝統的な塩蔵発酵食品である“adjuevan”について,異なる 2 つの製法,すなわち原料魚にラウンドあるいはフィレーを用いた場合,これらが製品の微生物組成および化学組成に及ぼす違いを検討した。原料魚には Galeoides decadactylus を用いた。製法に関わらず,製品の pH は 6 前後であり,酢酸と酪酸が有機酸成分として含まれていた。主要なアミノ酸はいずれの製品もバリン,ロイシン,アラニン,アスパラギン酸,およびグルタミン酸であったが,ラウンドを原料とした方がより良いアミノ酸組成を示した。細菌は Staphylococcus 属が優勢であった。また,乳酸菌のうち特定種を用いれば特有の香気を有する栄養価の高い製品が製造可能であることが示唆された。
(文責 大迫一史)

78(5), 1125-1136 (2012)
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魚肉すり身ゲル中の水とゲル構造との関係

駱 盧佳,田代有里,小川廣男(海洋大院)

 魚肉すり身ゲルの水分保持機構を検討した。水分の増加と共に網目鎖数が減少し,架橋点間分子量は増加した。塩分 10%,水分 79% 付近で網目鎖数は最小値になり,ゲルの弾性率は著しく減少した。水分 78% まで増加すると,比表面積は約 1.5 倍に増加した。アクトミオシンゲルとミオシンゲルについても魚肉すり身ゲルと同様に,それぞれ同じ挙動を示した。以上から,特定の水分含量において,ゲルの網目鎖構成繊維は開裂したことが示唆された。

78(5), 1137-1146 (2012)
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クラゲの発生が韓国漁業に及ぼす経済的被害の推定

Do-Hoon Kim, Ju-Nam Seo(TMC, NFRDI,韓国)

 クラゲの発生は原子力発電所の取水口を塞いで電力供給を妨げたり,漁業活動に損失をもたらす等,さまざまな問題を引き起こす。当研究では,クラゲ観測データを用いて,漁業がクラゲ発生によって被る直接的被害額を推定した。その結果,漁業類型毎の漁獲量の減少幅は 6.5% から 33.7%,漁獲額の減少幅は 6.8% から 25.3% であった。クラゲの発生期間について 2 か月と 6 か月の 2 つのシナリオを設定して推定した結果,年間の被害額は,それぞれ 6,820 万米ドルと 2 億 460 万米ドルとなり,クラゲの発生は水産業に対して有意な被害を及ぼしていると言える。
(文責 多田 稔)

78(5), 1147-1152 (2012)
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