Fisheries Science 掲載報文要旨

瀬戸内海におけるカタクチイワシ卵仔魚の現存量と生残率の変動

河野悌昌(水研セ瀬水研),銭谷 弘(富山水研)

 1980~2007 年における瀬戸内海のカタクチイワシについて,主産卵期の産卵量,前期仔魚量,シラス資源量,及び卵期(卵から前期仔魚)と仔魚期(前期仔魚からシラス加入時)の生残率を調べた。前期仔魚量は産卵量によって決定されたが,シラス資源量は前期仔魚量によって決定されなかった。これらの結果から,卵期の生残率は比較的安定しているが仔魚期の生残率は変動しやすいことが示唆された。1990 年代以降,シラス資源量は減少しており,これは仔魚期の生残率の低下によるものであった。

78(4), 753-760 (2012)
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北西太平洋における海盆スケールのカタクチイワシ Engraulis japonicus の分布と現存量推定

村瀬弘人(日鯨研,現水研セ国際水研),
川端 淳,久保田 洋(水研セ中央水研),
中神正康(水研セ東北水研),
甘糟和男(海洋大),安部幸樹(水研セ水工研),
宮下和士(北大フィールド科セ),
大関芳沖(水研セ中央水研)

 北西太平洋沖合域におけるカタクチイワシの分布と現存量推定に関する研究を実施した。2004~2007 年の夏季に計量魚探およびトロールにより得たデータを用いた。カタクチイワシは東経 153 度以西に分布量が多い傾向がみられた。また,9~24℃ の表面水温範囲に分布が認められた。年により調査範囲・月が異なるものの,本海域には 150~340 万トンのカタクチイワシが分布していたと推定された。

78(4), 761-773 (2012)
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富山湾のマナマコ Apostichopus japonicus における遺伝的集団構造と遺伝子流動

タハ ソリマン(富山大),
菅野愛美,木島明博(東北大),
山崎裕治(富山大)

 富山湾産アカナマコとアオナマコの資源維持管理のための基礎資料として,遺伝的集団構造と遺伝子流動を調べた。マイクロサテライト DNA に基づく解析の結果,アカナマコとアオナマコとの間には,明確な遺伝的差異が認められた。また,色彩多型内の各集団の遺伝的独自性が示された。遺伝子流動は,長い時間スケールにおいては近隣の集団との間で生じており,短い時間スケールでは集団間においてほとんど生じていないことが示唆された。これらの結果から,それぞれの集団を単位とした資源管理を行うことの重要性が示された。

78(4), 775-783 (2012)
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平衡石と軟甲解析に基づくスルメイカ秋・冬生まれ群の未成体期における成長履歴の海域間比較

ソン ヘジン(北大水),山下紀生(水研セ北水研),
木所英昭(水研セ日水研),桜井泰憲(北大院水)

 スルメイカの秋・冬生まれ群の未成体期の成長履歴を,平衡石と軟甲を用いて調べた。解析には,秋生まれ群は山陰沖の対馬暖流域,冬生まれ群は岩手沖の沿岸と沖合域の計 3 定点で採集した標本(外套長 66~158 mm)を用いた。その結果,平衡石による日齢と成長の関係から,太平洋沿岸域が他の 2 海域よりも成長速度が速かった。再捕前 1 か月間の軟甲の日間成長解析では,岩手沿岸の冬生まれ群が最も良く,山陰沖の秋生まれ群では成長履歴の個体差は冬生まれ群より大きかった。軟甲による成長解析は,今後のスルメイカ成長履歴研究に有効と判断された。

78(4), 785-790 (2012)
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太平洋クロマグロ Thunnus orientalis の lymphocyte antigen 75 (Ly75/CD205)―精原細胞表面マーカーとしての可能性とその発現解析―

長澤一衛,三輪美砂子,矢澤良輔(海洋大),
森田哲朗(日水中研),竹内 裕,吉崎悟朗(海洋大)

 クロマグロ精巣より膜タンパク質と予想される ly75 cDNA を同定し,その発現パターンを解析した。in situ hybridization および免疫染色の結果,クロマグロ ly75 遺伝子の mRNA,タンパク質が精原細胞に局在していることが明らかとなった。以上より,Ly75 抗原がクロマグロ精原細胞を濃縮する際の表面抗原として利用可能であることが示唆された。今後,本抗原と抗体を用いた精原細胞の濃縮技法を開発することにより,効率の高い精原細胞移植が可能になると期待される。

78(4), 791-800 (2012)
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ミドリイシ属サンゴにおける最適種付け密度はどのくらいか?

鈴木 豪,新垣誠司(水研セ西海水研),
鈴木 清,家久侑大(ダイクレ),
林原 毅(水研セ西海水研)

 野外でのサンゴ幼生種付けは,低コストで大規模なサンゴ修復が期待できるが,発展途上の技術である。本研究では,種付けの最適密度を明らかにするため,幼生数,着生数および生残数の関係に注目した。3 つの異なる密度(低,中,高)で比較した場合,着生数は放流幼生数に比例した。しかし,高密度条件の 1 か月後生残率は,他の密度と比較すると極端に低くなり,一方で,低密度条件で放流したサンゴは 3 か月後には生き残らなかった。ゆえに,中密度(1 m2 あたり 5000 個体)が基盤上に種付けする際に最適な密度だと考えられる。

78(4), 801-808 (2012)
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石垣島浅海域におけるイラ属魚類 2 種の着底・出現様式

山田秀秋,名波 敦(水研セ西海水研亜熱帯研セ),
太田 格(沖縄水海研セ),
福岡弘紀,佐藤 琢,小林真人(水研セ西海水研亜熱帯研セ),
平井慈恵(水研セ増養殖研),千村昌之(水研セ北水研),
秋田雄一(沖縄水海研セ石垣),河端雄毅(長大海セ)

 潮間帯における押し網採集調査ならびに海草藻場における曳き網採集調査を行い,シロクラベラとクサビベラの着底様式を比較した。両種の着底サイズ及び変態完了サイズはほぼ共通していたが,シロクラベラが 3~4 月に干潟域に着底したのに対し,クサビベラは 5~6 月頃に干潟域から海草藻場にかけての広い範囲に着底した。海草藻場における出現密度は,両種で 6~7 月頃に最大となったが,出現サイズは大きく異なった。シロクラベラは,干潟域に早期に着底した後に変態を完了させ,大型化してから海草藻場に出現することが明らかとなった。

78(4), 809-818 (2012)
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長崎県島原半島周辺の浅海成育場におけるホシガレイとヒラメ着底期仔稚魚の出現と分布

和田敏裕(福島水試),光永直樹(長崎県五島振興局),
鈴木啓太(ラバル大,カナダ),
山下 洋(京大フィールド研セ),
田中 克(国際高等研)

 島原半島東部~南西部浅海域におけるプッシュネット調査により,ホシガレイおよびヒラメ着底期仔稚魚の広域分布(2003 年 3, 4 月;9 地点)および水平分布(2003~2007 年 2~4 月;1 地点)を明らかにした。ホシガレイは半島東部干潟域(有明海 4 地点)の主に潮間帯下部に分布し,変態期仔魚(体長 12.6~16.5 mm)は 3 月のみ採捕された。ヒラメはほぼ全ての地点の潮間帯~亜潮間帯に分布し,変態期仔魚(10.0~15.9 mm)は 3, 4 月に採捕された。本研究により,ホシガレイ仔魚が成育場へ加入するための時空間的な範囲は,ヒラメに比べ狭い可能性が示唆された。

78(4), 819-831 (2012)
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空気暴露および低塩分ストレス条件下におけるクルマエビ類 Litopenaeus vannamei の甲殻類血糖上昇ホルモン動態

進士淳平(東大院農),
姜 奉廷,奥津智之(国際農研セ),
坂西綱太,大平 剛(神奈川大理),
筒井直昭,マーシー N. ワイルダー(国際農研セ)

 クルマエビ類 Litopenaeus vannamei を対象に,空気暴露および低塩分ストレス条件下におけるサイナス腺中の甲殻類血糖上昇ホルモン族ペプチド(以下 CHH 族ペプチド)の分析を行った。両ストレス条件下において,本種の既知 CHH 族ペプチドのうち SGP-G がサイナス腺中において減少した。また,このときウェスタンブロットにより血中から SGP-G が検出された。生物検定の結果,SGP-G には血糖上昇活性があることが示された。従って,SGP-G はストレス条件下のエネルギー代謝に関与していると考えられる。

78(4), 833-840 (2012)
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オーストラリアの乾燥地帯の河川の魚体の生理状態と再加入は乾燥期前の水量に依存する

Stephen R. Balcombe, Jaye S. Lobegeiger,
Sharon M Marshall, Jonathan C. Marshall,
Diana Ly (eWater Coop. Res. Centre),
Darry N. Jones (Griffith Univ., Australia)

 年間の水量変化の著しい水域に生息する魚類の生存戦略を明らかにする目的で,オーストラリアの乾燥地帯の河川に生息する 2 種類の魚類について,魚体水分含量と河川の水量変化との関係を調べた。その結果,直前に多くの水量を経験した場合には,乾燥環境においても魚体の水分含量を高く維持できることが示された。また,このような魚では,稚魚の加入量も多くなった。この結果から,乾燥期の前に十分な水量があった場合は,摂餌を十分位行うことができ,このことが再生産に好ましい生理状態を作り出すのに寄与したものと予想された。
(文責 豊原治彦)

78(4), 841-847 (2012)
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エゾアワビ Haliotis discus hannai およびトコブシ H. diversicolor aquatilis におけるゲノムサイズの決定とミミガイ科の系統学的検討

足立賢太,奥村誠一(北里大海洋)

 ゲノムサイズ(C 値)は,系統学的研究に対して重要な指標である。ミミガイ科は多くの種を擁し,世界中に広く分布しているため系統学的研究において興味深い。本研究はミミガイ科の系統を検討するため,エゾアワビおよびトコブシの C 値および(AT 含量%)をフローサイトメーターにより測定し,それぞれ 1.84 pg(62.3%)および 1.45 pg(66.3%)であることを明らかにした。これらの結果は,太平洋北西部(エゾアワビ)およびインド・太平洋(トコブシ)グループとして分類されるアワビ類で初めてのものであり,ミミガイ科の系統に関するこれまでの理論を支持した。

78(4), 849-852 (2012)
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ヒラメ病魚から分離された Vibrio scophthalmi の細菌学的性状

Guo Qiao(釜慶大),Deok Chan Lee (NFRDI),
Sung Ho Woo(釜慶大,韓国),
Hua Li(大連海洋大,中国),
De-Hai Xu(USDA,アメリカ),
Soo Il Park(釜慶大,韓国)

 2005 年に韓国ヒラメ養殖場で発生した大量斃死したヒラメ病魚から分離された細菌 5 株について,細菌学的性状及び病原性を調べた。分離株の性化学的性状試験,16S rRNA シークエンスの結果から Vibrio scophthalmi または V. ichthyoenteri と同定できた。dnaJ 遺伝子解析の結果,V. ichthyoenteri よりも V. scophthalmi とより高い相同性を示したことから,本分離菌は V. scophthalmi に同定された。分離された 5 株の感染実験によるヒラメに対する LD50 は 106~108 CFU/g と病原性にはばらつきが見られ,単独での感染による累積死亡率は 25% であった。しかし,Streptococcus parauberis と混合感染させると累積死亡率は 87.5% に上昇した。
(文責 舞田正志)

78(4), 853-863 (2012)
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夏季北海道オホーツク海沿岸における麻痺性貝毒の発生予測手法

嶋田 宏,澤田真由美,田中伊織,浅見大樹(道中央水試),
深町 康(北大低温研)

 夏季北海道オホーツク海沿岸における麻痺性貝毒(PSP)発生を予測するために Alexandrium tamarense (At)の出現と宗谷暖流(SWC)の勢力の関係を調べた。SWC の弱勢時に At が沖合から沿岸に輸送されるとの仮説に基づき,沿岸を南東流する SWC の勢力指標の稚内-網走間水位差(SLD)を監視する一方,ADCP を用いて SWC の測流を行った。本海域の PSP は,SLD が減少して SWC が弱勢となった時に At を含んだ沖合の低塩分水が接岸して発生することが分かった。この結果は,PSP 発生時期前に沖合の At の分布を調べた後に SLD の低下を監視すれば,PSP 発生は予測可能であることを示唆する。

78(4), 865-877 (2012)
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コロソマ Colossoma macropomum の血清に存在する抗菌性レクチンの検出

Elba V. M. M. Carvalho, Rosiely F. Bezerra,
Ranilson de Souza Bezerra, Janete M. de Araujo,
Athie J. G. Santos, Maria Tereza dos Santos Correia,
Luana C. B. B. Coelho (Univ. Federal de Pernambuco,ブラジル)

 コロソマ Colossoma macropomum は南米アマゾンにおける養殖魚として最も重要な魚種である。レクチンは糖を特異的に認識するタンパク質であり,生物活性を持つ。血球凝集活性を持つコロソマ血清レクチン(ComaSeL)は pH 4.0 から 9.0 まで安定で,70℃ で完全に失活した。ComaSeL は D-galactose, 1-O-methyl-D-galactopyranoside および D-fucose を認識し,グラム陰性細菌に対する抗菌性を有した。その活性は夏季と冬季で有意に異なり,コロソマが冬季に細菌や菌類による疾病に罹患しやすくなることと一致した。コロソマの免疫システムにおけるこれらのタンパク質の機能をより理解するための新たなツールが開発され,コロソマ養殖の技術革新につながるものと考えられる。
(文責 潮 秀樹)

78(4), 879-887 (2012)
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タマキビガイ・アルギン酸リアーゼの熱安定性と一次構造

王 玲(上海海洋大・北大院水),
Mohammad M. Rahman,井上 晶,尾島孝男(北大院水)

 タマキビガイ・アルギン酸リアーゼの主要アイソザイムである LbAly35 の熱安定性をアワビの酵素と比較するとともに,cDNA 法により一次構造を解析した。その結果,本酵素の変性速度はアワビの酵素の 1/20~1/45 であること,また本酵素は多糖リアーゼファミリー 14 に分類されることが明らかになった。また,LbAly35 の N-末端領域は他の領域よりも大きく変異しており,この領域が高い熱安定性と関連している可能性が示唆された。

78(4), 889-896 (2012)
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ホタテガイ貝殻抽出液は 3T3-L1 前駆脂肪細胞の分化を抑制する

高橋浩司,佐藤和美,方川未来,部田 茜,長谷川 靖(室蘭工大・くらし環境系領域)

 我々は,以前ホタテガイ貝殻粉末を約 3% 含む餌を食餌させたラットにおいて脂肪組織重量が減少することを報告した。この作用機構を明らかにするため,貝殻から抽出した有機成分(貝殻抽出液)が 3T3-L1 前駆脂肪細胞の分化におよぼす効果を検討したところ,貝殻抽出液が,濃度依存的に 3T3-L1 の脂肪細胞への分化を抑制することを見出した。この分化の阻害は,貝殻抽出液が転写因子である PPARγ, C/EBPα の発現量を減少させること,前駆脂肪細胞の増殖を抑制することによっておこるものと考えられた。

78(4), 897-903 (2012)
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ホテイアオイの糖化液作成条件の検討と発酵酵母の選択による効率的バイオエタノール生産

高木俊幸(海洋大),内田基晴(水研セ瀬水研),
松嶋良次(水研セ中央水研),
石田真巳,浦野直人(海洋大)

 本研究は,ホテイアオイの糖化液作成条件の検討と発酵酵母の選択による効率的バイオエタノール生産を目的とする。ホテイアオイの 3% 硫酸処理に加えてセルラーゼ処理を行うことで,グルコース 5.3±0.2 g/L,還元糖 9.7±0.1 g/L の糖化液が得られた。さらに,減圧・70℃ 下で糖化液を約 4 倍濃縮すると,糖化濃縮液はグルコース 21.5±2.9 g/L,還元糖 33.3±2.1 g/L の糖化濃縮液が得られた。これを水圏由来酵母 Saccharomyces cerevisiae TY2 で発酵させて,バイオエタノール 9.6±1.1 g/L と,前報告の 11.2 倍量のエタノールを得ることができた。

78(4), 905-910 (2012)
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経口摂取クロマグロ皮タンパク質によるマウスの肝機能保護作用

田中照佳,髙橋賢次,岩本直樹(近大農),
阿川泰夫,澤田好史(近大水研),
吉村征浩,財満信宏,森山達哉,
河村幸雄(近大農)

 クロマグロ未利用部位の有効利用を計る目的で経口摂取クロマグロ皮タンパク質(TUS)のマウス肝機能保護作用を検討した。TUS の摂取により四塩化炭素(CCl4)によって増加した肝臓壊死領域や血清 AST と ALT 活性,肝臓 TBARS レベルは有意に減少した。核内転写因子 NF-κB の核内移行レベルを調べた結果,TUS の摂取は IκB のリン酸化を下方制御し,NF-κB の核内移行を抑制することがわかった。したがって,TUS の経口摂取は NF-κB を通して,肝保護作用を示すことが明らかとなった。

78(4), 911-921 (2012)
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ろ紙電気泳動法による魚粉ジゼロシンの簡易・迅速分析方法

陶 志華(広工大・中国,東北大院農),
佐藤 実(東北大院農),呉 克剛(広工大・中国),
清田洋正,山口敏康,中野俊樹(東北大院農)

 魚粉に含まれるジゼロシンの簡易・迅速測定法を確立した。魚粉を 5 倍量の 0.1 N HCl 溶液で抽出し,抽出液 10 μL をペーパーディスクに浸み込ませ,電気泳動ろ紙に置き,800 V で 18 分間の電気泳動を行った。ろ紙を乾燥後パウリ試薬で発色させ,ジゼロシン発色スポットを画像解析ソフトで処理,定量した。この方法により,ジゼロシンはヒスタミンなどのパウリ試薬陽性化合物と明確に分離された。ジゼロシンは,スポット当たり 30~1000 ng の範囲において発色積分値との間で高い相関を示した(R2=0.99)。

78(4), 923-926 (2012)
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ツルアラメ由来のフロロタンニン類の LDL 酸化阻害活性

Hye Eun Moon, Bo Ra Ahn(釜慶大),
Hyun Ah Jung(全北大),
Jae Sue Choi(釜慶大,韓国)

 低比重リポタンパク(LDL)の酸化は動脈硬化の主な原因の 1 つと考えられる。この影響を抑える化合物を食用褐藻のツルアラメから探索した。海藻の抽出物を溶媒分画およびカラムクロマトグラフィーにより精製して 6 種類の既知のフロロタンニンを得た。これらのうち,エコール,フロロフコエコール,ジエコール,および 7-フロロエコールは,銅イオン存在下での LDL の酸化を顕著に阻害した。特に,ジエコールは高脂血症薬のプロブコールと協同的に作用した。
(文責 松永茂樹)

78(4), 927-934 (2012)
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好塩性乳酸菌 Tetragenococcus muriaticus 由来ヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子をコードするプラスミドの構造解析

里見正隆(水研セ中央水研),
小柳(森)真由美(石川県水産総合センター),
小善圭一(富山県庁),古下 学(水大校),
及川 寛(水研セ瀬水研),矢野 豊(水研セ北水研)

 日本産水産発酵食品より分離された好塩性乳酸菌 Tetragenococcus muriaticus 由来のヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子群をコードしているプラスミドの塩基配列を決定し,解析した。ヒスタミン生成菌 16 株が保有していたプラスミドは約 21~23 kb の環状プラスミドで,挿入配列の有無を除き,基本構造は同一であった。複製に関与する遺伝子群は T. halophilus が保有していたプラスミドと同一であり,本プラスミドは Tetragenococcus 属の 2 つの種に存在し,機能している事が示唆された。

78(4), 935-945 (2012)
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資源の利用と管理の視点から見た熱帯島嶼漁業における漁民コミュニティの持続性:ミクロネシア連邦ポンペイ,タンザニア国マフィア島,フィリピン国ギマラス島における比較研究

エスター・ジャフェット・ムリーラ(鹿大水),
松岡達郎,安樂和彦(鹿大連大農)

 漁業構造,漁具・漁船及び所有形態,水揚げ地及び市場,漁業管理及び漁民参加について,ミクロネシア連邦,タンザニア,フィリピンの 3 島 127 名の漁民を対象に野外調査を行った。各島の漁業で,都市市場と家族間支援に支えられた若年漁民の参入,市場距離による流通阻害,雇用者・漁業労働者関係と漁具共有,地域基盤型組織への参加,資源と生業へのリスクなどの特徴を見出した。これらに基づき,漁業への参入年齢,市場・流通から得られる利益,漁民間の結合,生業面での漁業依存度を指標とする概念「漁民コミュニティの持続性」を提案する。

78(4), 947-964 (2012)
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