伊藤祐介(北大院環), 安間洋樹,益田玲爾,南 憲吏(京大フィールド研セ), 松倉隆一(水研セ水工研), 守岡佐保(徳島農水総技セ), 宮下和士(北大フィールド研セ) |
カタクチイワシシラスのような無鰾魚を対象に音響計測を実施する場合,わずかな姿勢角変化がターゲットストレングスに大きく影響する。本研究では,頭部を上向きにした状態で遊泳する傾向が強いこと(Avg.=12.8, s.d.=±22.1),また,シラスを取り巻く環境(流速)が変化することでこの傾向が強くなることを明らかにした。また,4 パターンの流速下で得られた姿勢角を 2 ケースに分け TS の平均化を行ったが,標準偏差が大きく,平均値もわずかな違いであったことから,両ケースにおける平均 TS の差は小さかった。
Mohamed Salah Mahjoub,武田誠一, 林 敏史,塩出大輔,有元貴文,東海 正(海洋大) |
二つのコッドエンド(目合 60 mm の試験網と目合 18 mm の対照網)からなるズボン式網を用いてマアジとカイワリのコッドエンド選択性を SELECT 法で推定した。両魚種とも,AIC によって,操業間で分割率に変動を認めつつ選択性曲線は平均的とするモデルが選ばれた。50% 選択性体長と選択レンジは,マアジでは全長 11.4 と 3.36 cm であり,カイワリでは尾叉長 8.83 と 0.93 cm であった。カイワリやヒラツメガニなどでは多くの個体が試験網に,一方マアジだけはほとんどが対照網に入った。この不均等な分割率を,コッドエンド前における動物行動の水中ビデオ観察結果から考察した。
川上達也(東大大気海洋研),大河内裕之(水研セ), 有瀧真人(水研セ西海水研), 青山 潤,塚本勝巳(東大大気海洋研) |
ニシン Clupea pallasii の卵内発生と卵・孵化仔魚の形態を記載した。ニシン卵はほぼ球形で直径は 1.33~1.46 mm であり,卵膜は厚く粘着性で,囲卵腔は広く,卵黄には亀裂が認められた。平均水温 9.6℃ において 271 時間 45 分後までに大部分が孵化した。孵化仔魚の全長は 7.1~7.7 mm であり,筋節は 53~56 本が数えられた。胚発生中のイベントはゼブラフィッシュおよび Alosa sapidissima と類似しており,ニシンは一般的な硬骨魚類と同様の発生過程を経ると考えられた。しかし,他のニシン亜目魚類に比べてより発達した段階で孵化した。
淡路雅彦,松本才絵,山野恵祐(水研セ養殖研), 北村真紀子,原 彰彦(北大院水) |
エゾアワビ卵巣濾胞細胞(濾胞細胞)の卵黄タンパク質(ビテリン,Vn)合成と卵母細胞への Vn 蓄積過程について,抗 Vn 抗体による免疫染色と Vn 前駆体遺伝子の in situ ハイブリダイゼーションで組織学的に検討した。その結果,前駆体遺伝子が濾胞細胞で転写,翻訳されることが示され,合成された卵黄タンパク質は濾胞細胞と卵母細胞が接する卵柄部で卵母細胞内に輸送されると示唆された。また濾胞細胞の形態と抗 Vn 抗体への反応性は隣接する卵母細胞の発達と密接に関連し,Vn 合成と蓄積において濾胞細胞と卵母細胞間に相互作用が存在すると推定された。
黒木洋明,岡崎 誠(水研セ中央水研), 望岡典隆(九大院農),神保忠雄(水研セ南伊豆栽培セ), 橋本 博(水研セ志布志栽培セ), 高橋正知(水研セ中央水研),田和篤史(九大院農), 青山 潤,篠田 章,塚本勝巳(東大大気海洋研), 田中秀樹,玄浩一郎,風藤行紀(水研セ養殖研), 張 成年(水研セ中央水研) |
2008年 9 月,マリアナ諸島西方の北緯 14 度,東経 143 度付近の海域において,外洋での初記録となるウナギ Anguilla japonica の雌成魚 2 個体(全長 55.5, 66.2 cm),および孵化後間もないウナギ仔魚 6 個体を捕獲した。雌成魚の卵巣には,ごく少数の卵母細胞しか残されていなかった。雌成魚が捕獲された海域は,2008 年 6 月に同種の雄成魚が捕獲された場所より西マリアナ海嶺に沿って緯度で約 1 度北上した海域であり,ウナギの産卵海域は従来考えられていたより広範囲である可能性が示唆された。
大畑亮輔,益田玲爾,上野正博,福西悠一, 山下 洋(京大フィールド研セ) |
仔魚の被食に及ぼす濁度の影響を,視覚捕食者(マアジ)と接触捕食者(ミズクラゲ)とで比較した。水槽に 3 段階の濁度条件を設定し,捕食者を収容した。ここにアユ仔魚またはマダイ仔魚を投入し生残率を比較した。その結果,いずれの仔魚もマアジに対しては高濁度で生残率が高く,クラゲに対しては濁度間で生残率の違いはほとんどなかった。またクラゲに対するアユの生残率はマダイに比べて低かった。以上から,人為的な濁度の上昇により,仔魚の捕食者としてのクラゲの重要性が相対的に高まる可能性が示唆された。
北川貴士(東大院新領域/大気海洋研), 中川 隆((有)河童隊),木村龍治(放送大学), 新野 宏(東大大気海洋研), 木村伸吾(東大院新領域/大気海洋研) |
ホッケ若魚は 30,000~60,000 個体の群れをなし海面近くの動物プランクトンを捕食するが,海鳥に捕食されずに摂餌できるほど餌密度は高くない。そのためユニークな方法を用いて海面に留まらずに餌環境を最適化している。ホッケが定位するには上向きに泳ぐ必要があるが,周囲の水は下向きに押され,30,000 個体では 0.8~1.1 m/s の下降流が生じる。海面では収束流が生じ,直下には直径約 3.0 m,深さ 10~20 m の渦柱(ホッケ柱)を伴う下降流が形成され,海面に集積したプランクトンが運び込まれる。
巣山 哲(水研セ東北水研八戸), 大島和浩(水研セ遠洋水研), 中神正康(水研セ東北水研八戸), 川端 淳(水研セ中央水研) |
2002 年 6 月から 11 月に採集されたサンマ 0 歳魚 223 個体の耳石を観察し,日齢査定を行った。8 月までは体長,耳石径ともに日齢とともに増加していたが,それ以降は耳石径の増加が続くものの体成長は停滞するため,体長に対する耳石径の割合が大きくなると考えられた。また,7 月までは耳石は半径および厚さを増大する方向に成長していたが,8 月以降は厚さ方向の成長は徐々に見られなくなり,10 月以降は多くの個体で耳石径の方向のみに成長していた。このことから,8 月以降,耳石の成長様式も変化していることが示された。
高木修作(愛媛水試),村田 壽(宮崎大農), 後藤孝信(沼津高専),幡手英雄(宮崎大農), 延東 真(東京海洋大),山下浩史(愛媛水試), 宮武 久(大洋飼料),故宇川正治(日清丸紅飼料) |
マダイの濃縮大豆タンパク質(SPC)主体無魚粉飼料給与による緑肝発症機構とタウリン補足による成長改善効果を,タウリン補足率の異なる飼料で稚魚を 20 週間飼育して調べた。全区の血清浸透圧は類似したが,タウリン無補足区の飼育成績は劣り,組織タウリン濃度は低く,肝膵臓胆汁色素濃度は高く,赤血球浸透圧耐性は劣り,緑肝が 70% に発症した。タウリン補足により生理異常や成長は改善した。この緑肝は,タウリン欠乏に伴う赤血球浸透圧耐性低下による溶血増加により発症し,マダイ稚魚の SPC 飼料にはタウリン補足が必須なことが分かった。
芳賀 穣,内木敏人,田崎陽平, 白井隆明,高木祐輔(海洋大), 田中庸介,久門一紀,塩澤 聡(水研セ奄美セ), 升間主計(水研セ宮津セ), 中村年宏,石田修三(太陽油脂),竹内俊郎(海洋大) |
全長 13.3~14.0 mm のクロマグロ仔魚にイノシン酸一リン酸を 3 % 添加したカゼインペプチド微粒子飼料,またはイノシン酸を添加していない同飼料を 12 日間給餌した。絶食区では,全ての魚が 10 日目までに斃死し,イノシン酸無添加飼料区で大きな減耗が見られた。一方,イノシン酸添加区では,実験 1 および 2 において 50% 以上の生残が得られた。対照区およびイノシン酸無添加の微粒子飼料区の魚には,消化管内容物は見られなかったが,IMP 添加区では 8 日目以降約 0.1 mg の消化管内容物が得られた。
小谷知也(福山大生命工),横田賢史(海洋大), 伏見 浩(福山大生命工),渡邊精一(海洋大) |
仔魚飼育実験では突然の大量死や定期的なサンプリングがあるために生残数の推定が難しい。本研究では指数関数モデルを使い,減少係数から生残を評価する新しい手法を提案する。このモデルの前提は初期収容尾数(N0),最終生残数(Nt),サンプリングされた個体(NSn)の数,サンプリング日(dn)および飼育日数(t)が明白なことである。さらに飼育期間中の減少係数(m)を一定と仮定する。これらの条件下を用いて Nt=e-mt(N0-∑NSnemdn) に数値を導入して逐次計算行うと減少係数が推定される。
部田 茜,宮本明美,石黒航祐,山本幸恵, 長谷川靖(室蘭工大院) |
我々は,ラット皮膚に紫外線(UVB)を照射することによって作製した傷害部分にホタテガイ貝殻から抽出した有機成分(貝殻抽出成分)を塗布することでその回復速度が増加することを示した。貝殻抽出成分の作用機構の一つとして,貝殻抽出成分が線維芽細胞から分泌される角化細胞増殖因子(KGF)の量を増加するのではないかと考え検討を行った。皮膚線維芽細胞内で発現される KGF mRNA 量および細胞外に分泌された KGF 量ともに貝殻抽出成分の存在下で増加することを明らかにした。
水口 亨(Sealord Group, New Zealand), 熊沢啓子,山下伸也(日本水産), Graham Stuart (Sealord Group, New Zealand) |
すり身にされた魚肉では,なぜ DMA の生成が顕著に抑制されるのかそのメカニズムをシログチ,マエソ,スケトウダラを用いて検討した。水晒し工程では TMAO 量,鉄量,タウリン量を低下させるのみならず,マエソでは DMA 生成促進因子,シログチ,スケトウダラでは DMA 生成抑制因子を低下させることが示唆された。またスクロースは,凍結濃縮を抑制することで冷凍中の DMA 生成を抑制することが示された。pH と DMA 生成との関係は魚種によって全く異なり,各魚種において DMA 生成に関与する因子が異なることが考えられた。
Su Myo Thwe(海洋大院・ミャンマー水産庁), 小林武志,欒 天尭(海洋大院),白井隆明(海洋大), 小野寺宗仲(岩手工技セ), 濱田(佐藤)奈保子,今田千秋(海洋大院) |
ミャンマーの 4 種類の水産発酵食品(なれずし)から γ-アミノ酪酸(GABA)産生菌を分離した。それらの菌株は全て Lactobacillus 属の乳酸菌であり,これらの代表菌株をスターターとして用いてなれずしを製造した。その結果,Lb. farciminis D323 株がなれずし中の GABA 蓄積に効果的であったので,本株は伝統的な水産発酵食品に機能性を持たせることに寄与できるものと思われた。