原田真美,東海 正,木村倫代,胡 夫祥(海洋大),清水詢道(神奈川水技セ) |
東京湾で,異なる 7 種類の水抜き孔内径(3, 9, 13.5, 14, 15, 17 および 19 mm)のあなご筒を使った比較操業実験を行い,水抜き孔によるヌタウナギとマアナゴに対するサイズ選択性曲線のマスターカーブを,多項分布に基づく SELECT モデルを用いて求めた。2 種共に,水抜き孔の内周と同じ胴周を持つ個体のほとんどがその孔を通り抜けることから,水抜き孔から抜け出す能力が高いことが示された。この 2 種の資源を維持しながら漁獲するための最適な水抜き孔のサイズについて考察した。また,複数の漁具を使った繰り返し比較操業実験を行った際のデータの合算条件も示した。
清水孝士(北大院水),高木 力(近大農),Holger Korte(University of Rostock),平石智徳,山本勝太郎(北大院水) |
著者らが開発した網地形状シミュレータ NaLA (Net shape and Loading Analysis system) をスケトウダラ底刺網に適用し,実操業における漁具の挙動を算定した。この計算モデルはランプドマス法をベースに,底刺網を構成する網地,浮子,沈子,綱類に配置された質点の運動方程式を連立して解くことによりその形状と運動を算定する。算定された流速と網挙動の関係を実操業において測定されたデータと比較した結果,両者の傾向は良く一致し,NaLA は底刺網にも適用可能であることが確認された。
横田高士(京大院情報),益田玲爾(京大フィールド研セ), 竹内宏行(水研セ宮津セ),津崎龍雄(水研セ玉野セ),荒井修亮(京大院情報) |
放流後のアカアマダイの行動と関係する指標を飼育下で見出すため,水槽内で日周性を観察した個体を舞鶴湾において超音波テレメトリーにより放流追跡した。水槽内で朝方に最も活動性を増大させた個体が舞鶴湾中央部に定着した一方,特に朝方に活動性が増大しなかった個体は定着しなかった。定着個体間では,水槽内で活動量が多かった個体ほど放流地点から遠くへ移動して定着した。飼育下での放流個体の日周性から放流海域へ定着・非定着が,また飼育下での活動量から放流後の拡散度合が予測できるようになる可能性が示唆された。
松本憲尚,吉田将之,植松一眞(広大院生物圏科) |
不動化条件および遊泳中のキンギョ小脳内ニューロン活動を記録した。不動化条件で細胞外記録されたニューロン活動は,記録波形と記録深度に基づき 5 つのタイプに分類され,小脳内のニューロン構成との対応が推定された。頭部に装着する防水型プリアンプと埋め込み式電極を開発し,遊泳中のキンギョから小脳内ニューロン活動を慢性記録することに成功した。さらにプルキンエ細胞および広樹状突起細胞と推定されたニューロンの活動と旋回運動との間に関連性が認められた。本手法は魚類の行動発現における脳内神経機構の研究に応用され得る。
瀧 憲司(水研セ遠洋水研) |
1997 年 3 月~翌 2 月に,道東,三陸,常磐沿岸域のオキアミ類の分布と現存量の季節変化を調べた。オキアミ類は全部で 7 属 26 種が出現し,亜寒帯―遷移帯性のツノナシオキアミは各域で周年優占した。また,亜寒帯性の Thysanoessa inspinata は道東と三陸で周年出現した。その他の亜寒帯性 Thysanoessa 属 3 種は冬季~春季の道東,暖海及び遷移帯性表層種は秋季の三陸・常磐にそれぞれ分布が限られた。このような分布特性について,本州北東沿岸域における海況変動の特徴や捕食者の食性と照合し,考察した。
田中庸介(水研セ遠洋水研),毛利雅彦(水大校),山田陽巳(水研セ遠洋水研) |
日本海におけるクロマグロ稚魚の水平分布を明らかにする目的で 1999 年と 2004 年の 8 月下旬から 9 月に中層トロールによる採集調査を行った。クロマグロ稚魚は水温(0~30 m 水深の平均水温)が 24°C 以上の海域で採集され,分布水域はそれらの水温帯に限られていた。耳石輪紋解析結果から 60 日齢で尾叉長約 180 mm, 90 日齢で約 250 mm に成長し,地中海における大西洋クロマグロ稚魚の成長と類似していた。それらのふ化日は両年ともに 6 月下旬から 7 月中旬に認められ,日本海で生まれたものと推定された。
中瀬玄徳,江口 充(近大農) |
魚類種苗の生産現場における仔魚飼育水には,しばしば植物プランクトンのナノクロロプシス培養液が添加される。このナノクロロプシス培養液と共に,どの様な細菌群が飼育水に添加されているのか不明であった。DVC-FISH 法を用いた解析により,ナノクロロプシス培養液には,高い増殖活性を有する細菌群(α-proteobacteria および Cytophaga-Flavobacterium)が優占する事が明らかになった。ナノクロロプシスの飼育水への添加は飼育水の細菌群集に大きな影響を与えている。
井上誠章(三重大生資),渡部裕美,小島茂明(東大海洋研), 関口秀夫(三重大生資) |
イセエビの分布の縁辺域にあたる大原(千葉県),浜島(三重県)および五島列島(長崎県)から,2005 年 3 月,2004 年 11 月および 2005 年 1 月の期間中にそれぞれ 30, 24 および 19 個体の計 73 個体を採集し,mtDNA の COI 領域の一部分(566 bp)を決定し,その塩基配列にもとづき集団構造を解析した。この結果,上記の 3 海域の各個体間には明確な遺伝的な違いは見出せなかった。このことは,本邦の各沿岸域のイセエビ集団は一つの個体群または複数の地域個体群を含んだメタ個体群を形成していることを意味する。
Mohamed Gabr,藤森康澄,清水 晋,三浦汀介(北大院水) |
水槽において曳網速度,網目形状が小型魚の脱出行動に与える影響を照度を変えて調べた。水槽中に設置した菱目網パネルまたは角目網パネルの張られた実験用箱網に供試魚(ウグイ,平均体長 13 cm)を入れ,同箱網を水中で移動させることによりトロール曳網中の網内の状況を再現した。魚の脱出行動を箱網に設置した赤外線 CCD カメラにより記録した。いずれの網においても,魚の脱出行動への曳網速度と照度の影響は有意であった。また,曳網速度については強い負の相関が見られた。一方,菱目と角目の比較では低照度下で有意な差が認められなかった。
Xiaojin Song, Xuecheng Zhang, Nan Guo(Ocean Univ. of China), Luying Zhu (Ocean Univ. of China, Ludong Univ.), Chenghong Kuang (Ocean Univ. of China) |
ワムシおよびアルテミアへの栄養強化剤として,DHA を高濃度で含有する海産ヤブレツボカビ類 Schizochytrium limacium OUC88 の効果を検討した。3~24 時間強化した後,生物餌料中の脂肪酸を分析した。12 時間強化した時点で,両餌料に含まれる DHA 含量が最高に達し,それ以上の強化では減少した。また,強化ワムシおよびアルテミアをターボットに給餌したところ,白化率が著しく減少した。これらのことより,Schizochytrium は生物餌料の栄養強化剤として有効であるものと示唆された。
(文責 佐藤秀一)
尾崎雄一,石田宏一,斉藤康二,浦 和寛,足立伸次, 山内晧平(北大院水) |
ウナギ生殖腺刺激ホルモン(濾胞刺激ホルモン;FSH,黄体形成ホルモン;LH),成長ホルモン(GH),プロラクチン(PRL)およびソマトラクチン(SL)に対する特異抗体を用いて,サケ脳下垂体磨砕物(SPH)投与により人為催熟された雌ウナギの脳下垂体ホルモン産生の変化を調べた。SPH 投与により成熟が進行するのに伴い,FSH 産生細胞は減少し,LH 産生細胞は増加した。一方,GH 産生細胞は徐々に減少した。PRL 産生細胞数の変化はなかったが,SL 産生細胞数は卵黄形成後期に最高値を示し,核移動期には減少した。
米田道夫,栗田 豊(水研セ東北水研),北川大二(水研セ北水研),伊藤正木(水研セ東北水研八戸), 冨山 毅(福島水試),後藤友明(岩手水技セ),高橋清孝(宮城水研開セ) |
北日本太平洋沿岸産ヒラメの年齢と成長を調べるとともに,南北間における成長変異の可能性を検証した。耳石の各不透明帯の中には細く明瞭な標示が 1 本認められた。耳石縁辺部における標示の出現状況から,標示は年に 1 回,7~8 月に形成されると考えられた。成長解析の結果,雌は雄よりも成長が速く,大型になることが示された。各月の標本観察全長の追跡結果から,全長の急激な増加は 8~10 月にみられた。南北間における成長差は雌雄ともに明らかであり,1.25~3.00 歳において南方産ヒラメは北方産よりも有意に大型であった。
高井則之,広瀬律幸,大澤拓哉,萩原和之,小島隆人(日大生物資源),岡崎雄二(東北水研), 桑江朝比呂(港湾空港技研),谷内 透,吉原喜好(日大生物資源) |
安定同位体比分布に基づいて伊豆半島南東部沿岸域における浮魚の炭素源と栄養段階を推定した。成魚,未成魚および浮遊仔稚魚の δ13C は,主に -19~-16‰ の範囲に分布しており,懸濁態有機物や浮遊性十脚類の δ13C 分布に近かった。これらの魚類は,植物プランクトンに炭素供給を依存しているものと推察された。δ15N 分布から推算された栄養段階は,カタクチイワシ仔魚を段階 3 とした場合,成魚・未成魚で 3.1~4.5,浮遊仔稚魚で 2.9~3.7 の範囲にあった。本海域では,プランクトン食魚の栄養段階を主に 3 及び 4 に位置づけるのが妥当である。
八谷光介,西垣友和,道家章生,和田洋藏(京都海洋セ) |
若狭湾西部海域のホンダワラ藻場に面した砂浜に打ち上げられた海藻(草)を周年にわたり 10 日間隔で採集した。1 年間に打ち上げた藻体重量は海岸線 1 m あたり 1733 g(乾重)であり,そのうちの 72.9% をホンダワラ科海藻が占めた。打ち上げ量は,冬季の嵐の直後とホンダワラ科の衰退期(5~7 月)に増加したが,その最大値は冬季のほうが大きかった。また,付着器をつけた打ち上げ藻体の数は,冬季のみで増加した。これらの結果は,ホンダワラ科海藻の打ち上げにおいて,冬季波浪が重要な役割を担っていることを示唆している。
稲葉愛美(愛媛大沿岸研セ),木村武志(熊本水研セ),菊川理香(熊本水研セ), 岩崎美津子(愛媛大医),能勢真人(愛媛大医),鈴木 聡(愛媛大沿岸研セ) |
養殖ヒラメおよびその飼育海水中のマリンビルナウイルスの動態を経月的に調べた。ウイルスゲノムは PCR で肝臓,腎臓,脾臓,脳で通年検出された。ウイルス分離は脳以外の臓器で可能であった。ウイルス抗原も脳では検出されなかった。ゲノム検出率は 4~10 月まで増加し,ウイルス感染力価は 4~9 月まで高かったが,両方とも 10 月以降は急減した。ヒラメ体内での感染状態は季節ごとで変化することが明らかになった。海水中ではヒラメの場合と逆で,秋から冬にかけて検出されるようになった。
白藤徳夫,渡邊良朗(東大海洋研),武田保幸(和歌山県水産局), 河村知彦(東大海洋研) |
分布の北限に位置する和歌山県潮岬周辺海域に生息するキビナゴの繁殖生態について調査を行った。産卵期において体長 60 mm 以上の雌個体の半数以上が成熟していたことから,雌の成熟体長は 60 mm であることが明らかになった。耳石日輪に基づいて求めた仔稚魚の孵化日分布から,産卵期は 4~11 月であることがわかった。潮岬周辺海域のキビナゴは,分布の中心である熱帯海域の個体群より成熟体長が大きく,産卵期は短かった。北限に生息するキビナゴは環境の季節変化がある高緯度海域に対応した生活史特性を持つものと考えられた。
横山 博(東大院農),景山哲史,大原健一(岐阜河環研),柳田哲矢(東大院農) |
長良川で採集されたトウヨシノボリの腹腔内および尾柄部から,新種の粘液胞子虫が発見された。罹患魚は,腹腔内に形成された大きさ 10 mm 程度の粘液胞子虫シスト塊のために腹部が顕著に肥大した。組織学的観察により,寄生体は腎臓被膜内で発育し,シストの成長にしたがって他の内臓諸器官を圧迫しながら腹腔内に充満した。胞子は卵型で,平均胞子長 11.9 μm,胞子幅 9.0 μm,胞子厚 6.5 μm,極嚢長 5.5 μm であった。形態学的特徴および SSU rDNA の塩基配列から,トウヨシノボリの粘液胞子虫を新種 Myxobolus nagaraensis として提案する。
岡垣 壮,鈴木 亮,大井敦史(三重大院生資) |
従来法によりコイ普通筋から C-蛋白質を精製すると混在する消化酵素により限定分解された。筋肉から選択的に C-蛋白質を抽出する方法により,C-蛋白質の精製を一日で終了すると,分解されずに C-蛋白質を精製することができた。血合筋からも同様に C-タンパク質を精製した。普通筋 C-蛋白質は,血合筋ミオシンに対してよりも普通筋ミオシンにより多く結合した。逆に血合筋 C-蛋白質は普通筋ミオシンよりも血合筋ミオシンに多く結合した。従ってそれぞれの C-蛋白質は同じ筋タイプのミオシンにより多く結合することがわかった。
Daisy Arroyo Mora,濱田友貴(長大水),岡本 昭(長大生産研), 立石 歩,橘 勝康(長大水) |
13 または 30°C で飼育した養殖ブリを即殺(SCD)或いは苦悶死(SA)させ,32°C 保存中のヤケ肉発生とその死後変化を検討した。感覚色度(L*値)から判断したヤケ肉は SA30°C, SCD30°C, SA13°C でみられたが SCD13°C ではみられなかった。ヤケ肉は正常肉と比べて破断荷重が低く,圧出水分量が高かった。ATP 含量は SCD が SA より高かった。ヤケ肉が発生した 30°C 飼育では保存 2 時間目までに急激な pH の低下がみられ,pH と筋肉中の乳酸量は有意な負の相関を示した。組織観察では,ヤケ肉で筋細胞間の拡張が認められた。
大迫一史,藤井明彦(長崎水試),Yaowalux Ruttanapornvareesakul, 長野直樹(長崎県産業振興財団),桑原浩一,岡本 昭(長崎水試) |
ムラサキウニの精巣および卵巣中の遊離アミノ酸組成の生殖腺の発達に伴う変化を,化学的手法および組織学的手法を用いて調査した。生殖巣中の遊離アミノ酸のうち,グリシンレベルが雌雄ともに最も高く,生殖腺の発達とともに増大した。苦味アミノ酸を主とするその他のアミノ酸レベルは生殖腺の発達に依存しないか,あるいはむしろ減少した。アミノ酸組成の変化は,精巣よりもむしろ卵巣に顕著に見られた。以上の結果は,ムラサキウニの呈味性が雌雄により,また,生殖腺の発達段階により異なることを示唆した。
守屋博美,久々湊隆,細川雅史(北大院水),福永健治(関西大), 西山利正(関西医大),宮下和夫(北大院水) |
サケ卵脂質とニシン卵脂質の酸化安定性を 2 種類の市販魚油と比較した。酸化に伴う酸素消費量とプロパナール生成量の分析結果より,魚卵脂質は,EPA と DHA 含量が市販魚油よりも高くかつトコフェロール含量が低いにもかかわらず,市販魚油よりも酸化されにくいことが分かった。また,魚卵脂質はコレステロールを含んでいたが,これらの脂質をラットに投与しても血清コレステロールの増大は見られなかった。これは,含まれる EPA と DHA によるコレステロール低下作用によるものと考えられた。
坂本健太郎(京大院農),東畑 顕,山下倫明(中央水研), 笠井亮秀,豊原治彦(京大院農) |
ヤマトシジミがセルロースを摂餌している可能性を検討するため,消化器官のセルラーゼ活性の測定及び,セルラーゼ遺伝子の探索を行った。その結果,消化器官において,セルロースを段階的にグルコースまで分解する酵素活性の存在が認められた。また,中腸腺 cDNA より 596 アミノ酸残基からなるタンパク質をコードするセルラーゼ(エンド-1,4,β-グルカナーゼ)遺伝子を単離し,これがヤマトシジミの内源性遺伝子であること,炭水化物結合部位(CBD)を有すること,及び中腸腺において特異的に発現していることを確認した。
大井淳史,副枩久晃(三重大院生資) |
ヌクレオチドや 2 価の陽イオンはアクチンを著しく安定化することが知られている。これらの分子とコイ骨格筋アクチンの結合性を調べたところ,親和性はともにニワトリ骨格筋アクチンの場合と比較して低く,コイ骨格筋アクチンは平衡論的に不安定になりやすいことを示していた。また ATP 結合の熱力学的解析からは,コイ骨格筋アクチンでは ATP 結合に伴うエントロピー変化が抑えられており,ATP による構造的な安定化も弱いことが推察された。
内田基晴(水研セ瀬水研),村田昌一(水研セ中央水研),石川文保(ヤクルト中央研) |
海藻を乳酸発酵させる技術は,近年開発されたばかりで培養条件に関する知見が未だ乏しい。そこで,海藻発酵スターターとしての使用に適した菌種を 14 株 11 種の乳酸菌の中から検索した。市販ワカメ粉末を基質として試験した結果,既報の Lactbacillus brevis に加え,新たに Lactobacillus casei, Lactobacillus plantarum, Lactobacillus rhamnosus の使用が混入菌の生育を抑制しながら発酵を達成するのに有効であることがわかった。
安藤正史,水落慎太郎,塚正泰之,川崎賢一(近大農) |
養殖ブリについて,貯蔵温度の違いが筋肉の物性と構造に及ぼす影響を検討した。軟化現象は -1.5°C および 10°C 貯蔵において比較的抑制された。また,-0.5°C から 4°C 貯蔵では細胞間隙間の大きさが 24 時間貯蔵後までに 3.4~4.9 倍へ拡大したのに対し,-1.5°C および 10°C 貯蔵では 2.4~2.6 倍への拡大に留まった。さらに 10°C 貯蔵においてはコラーゲン繊維以外の微細構造がよく保存されていた。以上の結果より,一般的な貯蔵温度に比べ,-1.5°C および 10°C において魚肉の品質をより良く維持できると考えられた。
Li-Jung Yin (Natl. Kaohsiung Mar. Univ.), Pei-Chien Wu, Hsiu-Ho Cheung (Natl. Taiwan Ocean Univ.), Shann-Tzong Jiang (Natl. Taiwan Ocean Univ., Providence Univ.) |
プロテアーゼ,アミラーゼおよびセルラーゼを産生する Bacillus subtilis の培養条件を最適化し,これら酵素のサバおよびアスパラガスの加水分解活性を明らかにする目的で本研究を行った。サバ肉およびアスパラガス加水分解物の DPPH ラジカル消去活性は,培養時間を延長するに従って増大した。還元糖,可溶性タンパク質およびペプチドの加水分解前後の変化より,B. subtilis の菌体外酵素はサバ肉およびアスパラガスを加水分解することにより,抗酸化能を付与できることが示唆された。
(文責 大島敏明)
中尾将志(近大農),瀬岡 学(近大水研),塚正泰之,川崎賢一,安藤正史(近大農) |
生後 22~31 ヶ月の完全養殖クロマグロを用い,内臓および筋肉に含まれる水銀濃度と脂肪量を測定した。水銀濃度は同サイズの地中海産天然クロマグロよりも低く,しかも体重の増加と相関しなかった。また,脂肪量と水銀濃度との間に有意な相関は見られなかった。養殖クロマグロは小型魚のみを餌とするために水銀の蓄積が進みにくいと考えられたことから,より水銀濃度の低い魚種を餌とすることで養殖クロマグロの水銀濃度を減少させることが可能であると思われた。
清本節夫(水研セ西海水研) |
クロアワビ稚貝の被食に対する腐肉食者の影響を明らかにするために,巻貝のヒメヨウラクと主要な捕食者であるベラ類を用いて,水槽実験を行った。ヒメヨウラクは直接アワビ稚貝を捕食することはほとんどなかったが,シェルターからの離脱を促し,シェルターを離れた稚貝はベラ類により捕食されやすくなったと推定された。したがって,クロアワビ人工種苗の放流に際しては,直接的な捕食者の存在ばかりでなく,間接的に稚貝の被食率を高める可能性のある生物についても考慮が必要である。
鬼倉徳雄(九大農),竹下直彦(水大校),松井誠一(九大農),木村清朗 |
有明海流入河川の鹿島川周辺で 1994~1997 年に採集された標本を用い,ヤマノカミの成熟について調べた。雌の GSI は 12 月に急激な増加傾向をみせ,1 月に最大となり,雄では 11 月から増加を始め,12~翌 2 月に高い値となった。生殖腺組織を観察したところ,雌では産卵盛期と推察される経産卵期のものが 2~3 月に,雄では放精期のものが 1~3 月に観察され,雄の成熟が先に始まることが予測された。また,雌の卵径分布は完全な二峰型で,排卵痕を持つ雌組織に成熟卵が観察されることから,複数回産卵することが推察された。
芹澤(松山)和世(JAMSTEC),山本真紀(東大院新領域),藤下まり子(東大院新領域), 遠藤博寿(北大院水),芹澤如比古(東海大海洋),田畑哲之(かずさ DNA 研), 河野重行(東大院新領域),嵯峨直恆(北大院水) |
スサビノリのゲノムサイズを蛍光顕微測光法により測定した。葉緑体の自家蛍光が測定の妨げとなるので,葉緑体を持たない配偶子(精子)を試料とした。基準試料には分裂直後のイーストを用いた。スサビノリのゲノムサイズは約 260 Mbp と推定され,名高いモデル植物のシロイヌナズナとイネの中間の値であった。この結果は全ゲノム解析を含むゲノム研究の進展のためにスサビノリが妥当なゲノムサイズであることを示唆している。
高木雅哉,滝谷潤子(京大院農),中尾賢治,金子周二(京大院薬), 豊原治彦(京大院農) |
海水レベルのカルシウムイオン濃度におけるホタテガイ 2 価金属輸送体のカルシウムイオン輸送機能について検討した。カルシウムイオン取り込みにより発生する膜電流の変化を 2 電極膜電位固定法により検出したところ,0.5 mM, 1.0 mM 及び 10 mM の濃度において輸送活性が検出されたが,輸送活性は海水中のカルシウムイオン濃度に相当する 10 mM において最大であった。この結果は,ホタテガイ 2 価金属輸送体が生理的な環境下でカルシウムイオンを取り込む可能性を強く示唆するものであった。