筒井直昭,金 利![]() |
定量的 RT-PCR 法により,天然条件で成熟した個体,および眼柄切除により人為的に成熟を誘導した個体についてビテロジェニン遺伝子の発現動態を調べた。天然成熟個体では,成熟段階が進むにつれ,肝膵臓と卵巣の両組織において遺伝子発現量の増加がみられた。眼柄切除個体では,卵巣でのみ発現量の増加が顕著であった。これらの結果から,眼柄切除ではビテロジェニン遺伝子の正常な発現過程を再現できないこと,ビテロジェニン遺伝子の発現は肝膵臓と卵巣とでは異なった制御を受けていることが示唆された。
芦田貴行(万田発酵,福山大生命工),沖増英治(福山大生命工) |
植物発酵産物(FVP)が,ヒラメ白血球の貪食とスーパーオキサイド(O2-)産生に対する効果を検討した。腹腔内滲出白血球の貪食活性は,3 mg/kg 体重以上の FVP 添加により有意に(p<0.05, 0.01)高い値を示した。また,cytochrome c 還元法によって測定した,白血球の O2- 産生は,低濃度の FVP の添加で上昇した。
FVP を投与したヒラメでは,白血球の貪食活性と O2- 産生能が対照と比較して有意に(p<0.05, 0.01)促進され,リゾチーム活性も有意に(p<0.05)高い値を示した。
岡本峰雄(海洋大),野島 哲(九大),古島靖夫(JAMSTEC),William C. PHOEL (URFI Inc.) |
サンゴの幼生から移植用稚サンゴを育成するため,石棒の側面に直径 4 mm,深さ約 5 mm の孔を空けた着床具を用い,海域実験を行った。石西礁湖の水深 4 m の場所に,2001 年 5 月,2 種の着床具 131 本と比較用の着床板 288 枚を設置した。一斉産卵は翌日夜に確認された。設置約 3 ヶ月後,着床具 61 個と着床板全数を回収した。着床具の穴の中に計 59 個,穴の外に 12 個のサンゴを確認した。着床板の下面に 267 個,また上面に 12 個のサンゴが付いていた。これにより,効果的な着床具を開発する目処を得た。
坂見知子,横山 寿,石樋由香(養殖研) |
三重県五カ所湾のマダイ養殖漁場で,底泥中の微生物群集の菌体外加水分解酵素;ロイシンアミノペプチダーゼと β グルコシダーゼの活性を周年測定した。両酵素活性は 12~4 月に低く,5~11 月には変動しながらも高い傾向を示し,また 6, 10 月を除き,養殖給餌量が多い時に高くなる傾向が見られた。6 月の測定時には直上水の溶存酸素も枯渇しておらず,他の要因が活性低下に関わっていたと考えられた。本養殖漁場での両酵素活性の比は文献値と比べて小さく,底泥における有機物分解の様相が質的に変化していることが考えられた。
Tran Thi Thanh Hien, Tran Ngoc Hai,Nguyen Thanh Phuong(カントー大学),尾形 博,マーシー・ワイルダー(国際農研セ) |
メコンデルタでオニテナガエビの種苗生産に用いられる人工配合飼料は高価なため,手製飼料の作成が求められている。そこで,脂質とレシチンが稚エビの生育に及ぼす影響を調べた。鶏卵と脱脂粉乳をベースとした稚エビ用飼料に異なった含量の大豆油またはイカ油とレシチンとを組み合わせ,稚エビに投与した。イカ油を投与された稚エビでは,変態後の体長および生存率が最大となった。また,レシチンの添加により生存率の向上が認められた。以上の結果から,イカ油 3 % とレシチン 1.5% を含むカスタードが種苗生産に適していることが示された。
須賀友大(北大院水),赤松友成(水工研),澤田浩一(水工研),橋本博明(広大院生物圏),河邊 玲(北大フィールド科セ),平石智徳,山本勝太郎(北大院水) |
イカナゴ稚魚の聴覚閾値曲線を聴性脳幹反応(ABR)により計測した。加算平均した ABR の振幅は通常でている脳波からなる電気的ノイズと比べ大きくなった。イカナゴ稚魚は 128 Hz から 512 Hz の低周波の音に 115 dB から 125 dB の音圧で ABR を示した。刺激周波数が低くなるにつれ聴覚閾値も低くなり,128 Hz と 181 Hz の刺激で閾値は約 116 dB となった。低周波の音が聴こえていることは示されたが鰾がないため他魚種より聴覚閾値は高くなったと考えられる。
楠田 聡(道孵化場・北大院水),小出展久,川村洋司,寺西哲夫(道孵化場),中島淳一郎(北大院水),山羽悦郎(北大フィールド科セ),荒井克俊(北大院水),太田博巳(近大農) |
イトウ精子の凍結用保存液に含まれる耐凍剤と希釈液の適切な組合せを,解凍 10 秒後の運動精子比を指標に検討した。グリセリンと DMSO は牛胎児血清(FBS)で,メタノールは 300 mM グルコース溶液(GS)で希釈した保存液が,他の希釈液との組合せよりそれぞれ高い運動精子比を示した。この 3 種の保存液は,10% の耐凍剤濃度で最も高い運動精子比を示した。以上からイトウ精子の保存液として,10% グリセリン+90%FBS, 10%DMSO+90%FBS, 10% メタノール+90%GS の 3 種が適していると考えられた。
孔暁瑜,喩子牛,郭天慧,姜艶艶(中国海洋大),庄志猛,金![]() |
黄海および東シナ海由来のカタクチイワシ Engraulis japonicus のミトコンドリアのチトクローム b およびチトクローム c オキシダーゼサブユニット I 遺伝子配列には多様性が見られ,さらにハプロタイプも確認された。これらの遺伝子配列の多様性のほとんどはサイレント変異であった。これら配列の多様性は高いものであったが,黄海および東シナ海間に差は認められなかった。異なる海域において遺伝的多様性が認められなかったことは,日本イワシの回遊性や稚魚がプランクトンのように分散することが理由として考えられた。
(文責 青木 宙)
井口恵一朗(水研セ中央水研),渡辺勝敏(京大院理),西田 睦(東大海洋研) |
アユ人工種苗の遺伝的多様性を間接的に測る指標として,FA (fluctuating asymmetry) の妥当性が検討された。二つの天然個体群および継代飼育数の異なる四つの人工種苗個体群を材料に,胸鰭ならびに腹鰭の分枝軟条における左右性のゆらぎが計測された。人工種苗では,個体群間の鰭条数に変異が生じていたものの,遺伝的多様性の低下に伴って FA 個体の出現頻度が増加する傾向が認められた。このことにより,FA は,継代飼育による遺伝的多様性の変化をモニタリングするツールとして利用の可能性が明らかにされた。
吉田将之,長峰麻妃子,植松一眞(広大院生物圏科) |
魚類の情動反応性すなわち新奇環境における行動特性を調べるため,swimway test を開発した。この手法を用い,ブルーギル,ギンブナ,キンギョの情動反応性を比較した。その結果,ブルーギルがもっとも情動反応性が低く,ギンブナの情動反応性が最も高いことが定量的に示された。この結果は,経験的に知られているそれぞれの魚種の行動特性と一致した。Swimway test は,新奇環境における魚の種依存的な行動特性を評価するための簡便な手法として応用され得る。
山崎裕治,嶋田名利子(富大理),田子泰彦(富山水試) |
富山県神通川におけるサクラマスとアマゴとの交雑を明らかにするために,ランダム増幅 DNA 多型(RAPD)法を用いた種判別および交雑個体検出法の開発を行った。増幅が認められた亜種特異的バンドを用いて,3 年間に神通川に遡上した個体について,交雑個体を確認した結果,いずれの年においても,両亜種の交雑第一代個体に加え,交雑第二代以降あるいは戻し交雑をしたと判断される個体が確認された。このことから神通川において,移入アマゴによる在来サクラマスへの遺伝子汚染が深刻な状態にあると推察される。
豊原治彦,細井公富,林 勇夫(京大院農),久保田 賢(高知大院黒潮圏),橋本寿史(名大生物機能開発利用セ),横山芳博(福井県大海洋資源) |
ムラサキイガイの環境温度変化に対する細胞レベルの応答機構を知る目的で,外套膜における HSP70 の熱応答性を検討した。その結果,タンパク質及び mRNA レベルにおける熱応答性の発現誘導が認められた。さらに熱ショックを与えた外套膜 cDNA ライブラリーより,689 残基と 637 残基の演繹アミノ酸配列をもつ cDNA を得た。両 HSP70 は,HSP70 共通のドメイン構造に加え,細胞質型 HSP70 に特徴的な EEVD 配列を有していたことから,細胞質型 HSP70 と推測された。
阪田和弘,近藤拓哉(九大院農),竹下直彦(水大校),中園明信,木村清朗(九大院農) |
九州の山地渓流における河川型ヤマメの移動を知る目的で,標識再捕法による調査を行った。標識されたヤマメの大部分(78%)は,最初に捕獲されたプールで再捕された。しかし,繁殖期では大型個体の方が小型個体より高い頻度で移動した。雄の大型個体も繁殖期に移動する傾向が高かった。また,繁殖期には比較的長距離を移動する個体もみられた。一般に河川性サケ科魚類に認められるようにヤマメも定住性が高いが,繁殖期においては成熟した雄が雌を求めて活発に移動していることが考えられた。
Anthony S. Ilano, Richard Marcelo T. Miranda(北大院水),藤永克昭(道都大),中尾 繁(北大院水) |
シライトマキバイの索餌能力,餌嗜好性,食物摂取量,および同化効率を実験室で調査した。シライトマキバイはゆでた餌よりも生餌によく反応し,エビやイカに比較して魚,多毛類,および二枚貝を好んだ。最も大きな食物摂取量(一日当たり)はイワシで観察され,次がホタテガイ,多毛類,カキの順であった。殻長と食物摂取量との間には正の相関が認められ,イワシ,ホタテガイ,多毛類,およびカキでは比較的高い決定係数が得られた。また,これらの餌生物は比較的高い同化効率を示した。本調査はシライトマキバイの摂餌生態に関する最初の報告であり,今後はエネルギー収支のようなより詳細な研究が望まれる。
松本太朗,川村軍蔵(鹿大水) |
心拍数変化を指標とする古典的条件付けで淡水魚のコイ Cyprinus carpio とナイルティラピア Oreochromis niloticus の近赤外放射受容能と感覚器官の所在を調べた。その結果両種は 865 nm の近赤外放射を受容でき,松果体でなく眼が近赤外放射受容器である事がティラピアで明らかになった。865 nm の近赤外放射を照射したティラピア網膜は不完全な暗順応であった。近赤外放射受容細胞は赤錐体と推測されるが,桿体の関与も否定できない。
豊原治彦,吉田真梨華,細井公富,林 勇夫(京大院農) |
環境浸透圧変化に対するタウリントランスポーターの発現応答を知る目的で,ムラサキイガイ外套膜における発現変化について免疫学的手法により調べた。その結果,免疫組織化学的観察により,低浸透圧ストレスによってタウリントランスポーターが発現誘導されることを認めた。ウエスタンブロット分析では,62 kDa と 65 kDa の 2 種類のバンドが検出されたが,62 kDa のバンドの染色強度の変化が免疫組織学的観察の結果と一致したことから,62 kDa のタウリントランスポーターが低浸透圧適応に関わっている可能性が示唆された。
邱萬敦,黄娟娟(高雄海技学院),鄭利榮(Fortune Inst. Technol.),陳哲聰(高雄海技学院,台湾海洋大) |
台湾南西部沿岸海域で採集した台湾産アキアミの胃内容物と摂餌習性を調べた。2002 年 7 月と 9 月における二回の定時的サンプリングにより本種の一日における摂餌周期が明らかとなった。本種の主要な餌料は植物プランクトンであり,中でも渦鞭毛藻類が最も重要である。本種は動物プランクトンなども摂餌する。季節により摂餌餌料は異なり,摂餌活動は主に夜間に行なわれる。本研究で得られた結果は,本種は捕食者を避け安全に摂餌するために,夜間に鉛直移動を行なうという,著者らによる仮説を支持するものである。
(文責 植松一眞)
大迫一史(長崎水試),Mohammed Anwar Hossain(バングラデシュ水研),桑原浩一(長崎水試),野崎征宣(長大水) |
冷凍変性に対するトレハロースの効果を,スクロース,グルコースおよびソルビトールと比較した。トレハロースを添加することにより,無添加と比較して Ca2+-ATPase 活性およびゲル形成能は保持され,不凍水量も増加した。このことより,トレハロースはタンパク質周辺の結合水をつくり,その結果すり身の冷凍変性を防止し,ゲル形成能を保持することが窺われた。また,5.0 および 7.5% 添加が,すり身の不凍水量の増大と冷凍変性抑制に高い効果を示した。これらの効果は,他の糖に比較して遜色無かった。
孔 昌淑,Kun-Young Park(釜山大),小川廣男(海洋大) |
魚肉すり身ゲルの力学的挙動を定量的に表すために,そのレオロジー的性質を小変形三要素モデルと新たに改良した大変形 Mooney-Rivlin 式とを用いて比較検討した。圧縮歪が 0.2-0.3 のとき歪は応力に比例したので応力緩和試験を 0.25 で行ったところ,弾性率と粘性率は水分の増加と共に減少した。圧縮時の試料の体積変化を考慮した本改良式は水分含量の変化による魚肉すり身ゲルの力学的挙動をよく表現した。Mooney-Rivlin 式の未知定数 C1 と C2 は,小変形理論の弾性率と比例関係があった。
小関聡美,野村かおり,今野久仁彦(北大院水) |
pH スタットを利用した ATPase 活性測定法を開発した。本法では,ATP 加水分解反応で生成したリン酸からの遊離 H+ を NaOH で連続滴定した。ATP 添加による反応初期の pH 低下を抑えるため,0.5MKCl を含む ATP 溶液を使用し,反応組成液には 2 mM の Tris を添加した。測定 pH が高いほど,H+ 濃度は増加したが,pH 7.0 の時の H+ 濃度からリン酸濃度への換算係数は 1.248 であった。筋原繊維による ATP 加水分解反応は,低塩濃度下で曲線を示したが,高塩濃度下では直線を示し,0 次解析が可能であった。
小関聡美,大竹梨絵(北大院水),加藤 登(東海大海洋),今野久仁彦(北大院水) |
冷凍すり身の品質を評価する目的で,ATPase 活性を簡便に測定するため,pH スタット法を導入した。すり身ホモジネートの調製法を確立し,全活性が定量的に測定できることを確認した。すり身由来と考えられる成分のうち,Mg2+ のみが Ca-ATPase 活性を約 5 % 阻害したが,その他の成分は影響しなかった。この新しい方法で各種冷凍すり身を分析した。全活性は,総たんぱく質量よりも,ATPase 比活性に強く影響された。等級の高いすり身は,高い活性を示す傾向にあり,全活性は,特に SA 級と陸上 2 級との差を識別した。
潘 相卿,潮 秀樹,大島敏明(海洋大) |
Erythrosine, phloxine および rose bengal を添加したリノール酸メチルを含むすり身に光を照射した場合には,12-cis, trans-および 10-trans, cis-を含む合計 6 種類のハイドロパーオキサイド(HPO)異性体が生成した。Erythrosine, phloxine あるいは rose bengal を単独で加えたエイコサペンタエン酸エチルを含むすり身を光照射に供した場合には,6-cis, trans-および 17-cis, trans-HPO 異性体が生成した。試験した 4 種類の着色料の光酸化促進効果は cochineal extracts<phloxine B<erythrosine B<rose bengal の順であった。以上の結果から,すり身のような食材に食品添加物の着色料を添加すると,自動酸化の場合とは異なる HPO 異性体が生成されることを確認した。
高橋真之,山本剛司,加藤早苗,今野久仁彦(北大院水) |
各種魚類筋原繊維の加熱変性様式を ATPase 失活,ミオシン凝集,キモトリプシン消化によるサブフラグメント-1 (S-1)とロッドの生成量,単量体量の減少速度から検討した。すべての魚種で ATPase 失活より先に,ミオシン凝集が起こった。種により,S-1 およびロッドの相対的変性速度は異なった。これは低イオン強度下でのアクチンによるミオシンの安定化の程度の違いで決定された。アクチンにより大きな安定化を受けるものほど相対的なロッドの変性速度が大きくなった。なお,安定化の大きさを決定しているのはミオシン側であった。
瀬崎啓次郎,糸井史朗,渡部終五(東大院農) |
ウナギ類 2 種 Anguilla japonica および A. anguilla につき,種特異的プライマーを用いた PCR 法による迅速かつ簡便な判別法を確立した。本法では,mtDNA の 16S rRNA 遺伝子領域を対象とし,電気泳動により A. japonica で 2 本,A. anguilla で 1 本のバンドが出現した。計 110 個体の A. japonica および A. anguilla 試料につき本法を適用したところ,従来の RFLP に比較してごく短時間かつ高感度に判別が可能であった。
内田基晴(水研セ瀬戸内水研),欧 杰(上海水産大),陳 必文(上海水産大),袁 春紅(上海水産大),張 雪花(上海水産大),陳 舜勝(上海水産大),舩津保浩(富山食品研),川崎賢一(富山食品研),里見正隆(水研セ中央水研),福田 裕(水研セ中央水研) |
醤油麹および乳酸菌 Tetragenococcus halophilus をスターターに用い,ハクレン Hypophthalmichthys molitrix を原料とした魚醤油の調製を行い,製品の性状を比較した。醤油麹の使用により,糖質,アミノ酸,有機酸等の呈味成分が増加し,アミノ酸スコアが改善されるなど品質が大きく向上した。一方,乳酸菌の使用は,発酵初期の乳酸生成と pH 低下を促進し,発酵を安定させる効果を示した。発酵終了時には,全試験区で T. halophilus が優占したことから,本菌種はハクレン魚醤油の製造過程において重要な役割を果たすと考えられた。
木村ふみ子,遠藤泰志,藤本健四郎(東北大院農),土居崎信滋,郡山 剛(日水・中研) |
乳幼児の成長には n-3 系高度不飽和脂肪酸(LCPUFA)が必要とされている。本実験では n-3 LCPUFA 供給源として魚油と微小藻類油に着目し,n-3 PUFA 不足状態の母ラットをもつ仔ラットへの油の経口投与実験を行った。母ラットの n-3 PUFA 不足により母乳および仔ラットの血中脂質の n-3 LCPUFA は減少した。仔ラットに試験油を投与した後の血中 LCPUFA の変動を経時的に測定したところ,DHA 含量はいずれの油でも上昇した。EPA は魚油投与により上昇し,微小藻類油でも上昇傾向がみられた。
謝 昌衛(台湾中興大食科),張 傑明(台湾中興大化工),柯 文慶(台湾大葉大生科) |
マグロ缶詰製造時に副生する煮汁は,機能性タンパク質および脂質を含む。その脂質をエチルエステル化後,含有する EPA と DHA は尿素付加分留によって 12.9% から 37.4% まで増加した。また,超臨界二酸化炭素抽出プロセスを用いて EPA と DHA の含量をさらに高めることを認めた。EPA と DHA エチルエステル(高分子量の成分)に対する C16 と C18:1 エチルエステル(低分子量の成分)の比率を指標としてプロセスを評価した結果,二酸化炭素密度が高いほど分離効果が低いことが判明した。1,500 psig, 328.2 K,二酸化炭素量 600 L の条件下で,煮汁からおよそ 80% の EPA と DHA を回収した。また,エチルエステル化した EPA と DHA は 37.4% から 54.3% まで増加した。
山城秀之(名桜大観光),屋 宏典,翁長恭子(琉球大遺実セ) |
沖縄産サンゴの脂質組成に及ぼす白化の影響を調べた。1998 年に瀬底島で採取した白化サンゴの脂質含量は正常サンゴに比べて有意に低く,ワックス濃度も減少していた。白化による脂質濃度減少の度合いはサンゴの群体型により異なっていた。概して塊状サンゴは樹枝状サンゴよりも脂質濃度が高い傾向にあった。白化サンゴ内の共生藻数と脂質含量には相関が認められ,共生藻による脂質供給がサンゴの生存に重要であることが示唆された。
呉 紅艶(中国科学院水生研),高 坤山,馬 増嶺(中国汕頭大),渡辺輝夫(海南 DIC 微藻工業) |
太陽光を用いた紫外線(UVR)照射実験を行い,屋外大量生産におけるスピルリナ Spirulina platensis のバイオマス量と色素含量に及ぼす UVR の影響を調査した。光合成有効光(PAR)と太陽光を対照区とし,太陽光に調光フィルターを通し,290-320 nm と 320-400 nm の UVR をそれぞれ除去した PAR+UVA と PAR+UVB を処理区とし,それら 4 種類を照射し,スピルリナのバイオマス量と色素含量を測定した。その結果,屋外大量生産培養スピルリナ株のバイオマス量が UVR により抑制されるという効果は見られず,カロテノイド/クロロフィルの比率を増大することにより UVR に耐性を持つことが明らかとなった。
(文責 竹内俊郎)
宮木廉夫(長崎水試),中野昌次(水研セ五島),太田博巳(近大農),黒倉 寿(東大院農) |
クエ精液を 13% 及び 15% トレハロース溶液で 5 倍及び 3 倍に希釈後,ストロー管に封入し,試験管を介して液体窒素中(-196°C)に凍結保存した。保存期間が 11 日及び 343 日間の運動精子比(運動開始 60 秒後)は,11 日保存で 42%, 343 日では 52% を示した。次に,雌 5 尾から得られた各々の卵に各解凍精子を媒精した結果,受精率は各々 93.8, 94.6% (11 日間保存),75.0%(同 343 日)及び 67.0, 74.4%(同 344 日)を示した。以上のことから,トレハロースはクエ精子凍結保存溶液として単独で使用できることが判った。
奈良(小竹)英一,菅原達也,長尾昭彦(食総研) |
ネオキサンチンとフコキサンチンは,主に,それぞれ高等植物と褐藻類の葉緑体に含まれるキサントフィルで,ヒトは食物を通してこれらを摂取している。我々は以前,これらが PC-3 ヒト前立腺癌細胞にアポトーシスを誘導し,細胞生存率を著しく低下させることを示した。本研究では,B16 マウスメラノーマ,HCT116 及び Caco-2 ヒト大腸癌細胞,2 種類のヒト正常細胞 MRC-5 及び HUC-Fm の生存率に対する影響について検討した。その結果,フコキサンチンは,PC-3 同様,HCT116 の生存率を極めて強く低下させた。
D. M. S. ムナシンハー(鹿大連大),大久保 武,境 正(宮崎大農) |
冷蔵貯蔵したブリミンチ肉のマロンアルデヒド(MA),カルボニル修飾タンパク質(CP)および塩可溶性タンパク質(SSP)含量の変動を 10 日間測定した。さらに,電気泳動分析により SSP 中の個々のタンパク質の変化を調べた。MA および CP 含量はともに 7 日目までは 0 日に比べ有意に増加せず,10 日目で有意に増加していた。MA と CP には有意な相関が認められた。SSP は貯蔵期間中有意な変動は認められなかった。SSP の電気泳動パターンは,細胞質タンパク質よりも筋原繊維タンパク質の方が安定であることを示していた。