Fisheries Science 掲載報文要旨

韓国沿岸で発生した麻痺性貝毒の原因渦鞭毛藻類 Alexandrium 属の毒分析

金 忠載(国立水産科学院),金 昌勲(釜慶大養殖),左子芳彦(京大院農)

 韓国産の有毒渦鞭毛藻 Alexandirum 属を分離して 28S rDNA の塩基配列の解析から種同定を行うとともに,麻痺性貝毒の分析を行ってその特徴を明らかにした。A. catenella からは GTX1, 2, 3, 4, 5, dcGTX2, 3, C1+2, neoSTX と STX が検出され,A. tamarense では GTX1, 2, 3, 4, dcGTX3, C1+2, neoSTX が検出され,両種の毒組成において違いが認められた。両種の代表株を用いて種種の増殖段階における毒分析を行った結果でも種特異的な毒組成を示した。

71(1), 1-11 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


オキアミ由来粗タンパク分解酵素活性の季節変動

吉富文司(日水中研)

 アゾカゼイン法を用いて,船上にてオキアミ由来タンパク分解酵素(Crude krill protease: CKP)活性の季節変動を測定した。その結果,CKP 活性は夏場に高く,冬場に低い傾向を示した。この傾向はオキアミの摂餌率と高い相関関係を示し,南極海水温度の周年変化がさほど大きくなく,しかも CKP 活性の低温域(10℃ 以下)における温度依存性が低いことなどを併せて考慮すると,CKP 活性の季節変動は海水温度変化の影響ではなく,オキアミの餌料とする生物の消長に依存することが示唆された。

71(1), 12-19 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


アンダマン海におけるアサヒガニの繁殖と成長

Tassaporn Krajandara(アンダマン海漁業開セ),渡邊精一(海洋大)

 アンダマン海のアサヒガニの成長と繁殖を明らかにするため,1998 年から 1999 年にかけて Ko Similan, Ko Surin の 2 島沿岸とタイ・ミャンマー国境水域で調査を行なった。雄の方が雌より大きく,平均サイズは,1999 年では,1998 年より小型化していた。産卵期は 11 月から翌年 2 月までで,最盛期は,9 月から 12 月であった。成熟サイズは,雌雄でそれぞれ,7.44 cm,7.22 cm であった。抱卵数は 74600 から 167900 粒であった。月ごとの性比は♂:♀で 1:0.56 から 1:2.77 まで変動した。

71(1), 20-28 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


インドの海産フグ数種の肝臓脂質における生物学的安全性究明に関する生態学的調査

Somiranjan Ghosh, Alok K. Hazra Shivaji Banerjee,Biswapati Muherjee (University College of Medicine)

 ベンガル湾沿岸に生息する 4 種の海産フグ Chelonodon patoca, Sphaeroides oblongus, Lagocephalus lunaris および Lagocephalus inermis の生態調査を行った。肝臓中脂質含量は産卵期(7~10 月)にすべての種で最高となり,肝臓および卵巣は最も高い毒性を示した。しかし,これまで分析したこれらのフグ肝油は毒性を持たず,本結果は未利用原料から多価不飽和脂肪酸を豊富に含む油を安全に分離できる可能性を示した。

(文責 竹内俊郎)

71(1), 29-37 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


飼育下におけるマアナゴの卵巣発達および血中エストラジオール 17β 量の周年変化

宇藤朋子,堀江則行,三河直美,岡村明浩,山田祥朗,赤澤敦司,田中 悟,岡 英夫(いらご研)

 稚アナゴから飼育したマアナゴの卵巣発達および血中エストラジオール 17β(E2)量の挙動を 3 年間調べた。飼育開始 1 年後の秋から血中 E2 量の増大および卵黄蓄積が開始され,翌年の夏には第二~第三次卵黄球期に達した。しかしその年の秋から冬にかけて卵巣の退行が起こり,それ以上に発達することはなかった。その後退行が進行した冬,新たに卵形成を開始した未熟な卵母細胞群が出現し,翌年の夏にかけて再び卵巣の発達が観察された。これらのことから飼育下において本種の卵巣発達には年周期性があることが明らかになった。

71(1), 38-47 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


沖縄島におけるニセクロホシフエダイの年齢,成長および成熟

下瀬 環,立原一憲(琉球大理)

 沖縄島で得たニセクロホシフエダイ 901 個体(体長 29.9~304.2 mm)を用い,年齢,成長,成熟を調べた。産卵期は,5,6 月を盛期とする 4~7 月と推定され,この時期に耳石不透明帯が形成されると考えられた。最高年齢は雌雄共に 24 歳であった。von Bertalanffy の成長式における L(mm),K および t0(年)は,雌で 276, 0.144, -5.22,雄で 247, 0.227, -3.18 であった。成熟体長と成熟年齢は,雌雄共に 175 mm,2 歳であると推定された。本種は初期成長が速く成熟年齢が低いため,近年減少した近海の個体群を漁獲規制により回復できると考えられる。

71(1), 48-55 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


禁漁区面積のフィードバック制御による資源管理

甲斐幹彦,白木原国雄(東大海洋研)

 観察された資源量に応じて禁漁区面積をフィードバック制御する資源管理方式を提案した。プロダクションモデル型の一般的な資源動態モデルと根付き資源の空間分布の時間変化を考慮した動態モデルを用いて,この方式により資源量を事前に設定した目標資源量に接近させることができるかどうかを解析的あるいは数値的に検討した。目標資源量を MSYL(最大持続生産量を与える資源量)以上に設定し,目標資源量へ過度の急接近を避ければ,漁獲量や努力量を制御せずとも,この方式により目標達成が可能なことが示唆された。

71(1), 56-62 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


スルメイカ Todarodes pacificus 生体のターゲットストレングスの測定と分布密度推定への適用

川端 淳(水研セ東北水研八戸)

 自然遊泳状態を模倣して外套膜を水平に制御した 31 個体:外套長(ML)範囲 18.0~28.4 cm のスルメイカ生体を懸垂し,周波数 38 kHz のスプリットビーム式計量魚探機でターゲットストレングス(TS)を測定し,MLTS の関係式:TS=20 log ML-73.1(dB) を得た。この関係式を使ったエコー積分方式,及びまき網 CPUE データを用いて,三陸北部漁場におけるスルメイカ分布密度をそれぞれ推定した結果,いずれも 50~400 個体/100 m2 程度であり,関係式の妥当性が確認された。

71(1), 63-72 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


個体ベース生活史モデルに基づく放流による天然個体群の近交係数増加の推移について

太田武行,松石 隆(北大院水)

 個体ベース生活史モデルを用いて,種苗放流が天然個体群に与える遺伝的影響を検討した。モデルでは,自然死亡,漁獲死亡,放流個体数等を考慮し,放流個体数,種苗生産時の親魚数,親魚の性比,漁獲死亡及び親魚の由来による遺伝的影響の差違を比較した。親魚数を雄 10 雌 90,雄 5 雌 5 としたとき,50 世代目における近交係数は,親魚数を雄 50 雌 50 としたときに比べそれぞれ 5 倍および 27 倍高くなった。親魚に天然個体を用いる場合は,過度の漁獲圧が遺伝的多様性に影響を与えることが示された。

71(1), 73-78 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


生理学的手法と行動学的手法によって求められたマダイ稚魚の分光感度特性の比較

長谷川英一(さけ・ます資管セ)

 視運動反応を指標としてマダイ稚魚の分光感度特性を計測した。本種の分光感度が比較的高い波長帯は,低照度下で 480~560 nm の範囲に高照度下ではより長い波長帯にも存在した。この結果と生理学的手法の一つである ERG による測定結果を比較したところ,両手法で測定された分光感度曲線の形状は若干異なる様相を呈した。様々な刺激-反応系に関連する生理現象と行動現象の整合性を精査する必要があると思われる。

71(1), 79-85 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


伊豆大島周辺海域のタカベの年齢と成長

亘 真吾(海洋大),米沢純爾(都水試),山田作太郎,田中栄次,北門利英(海洋大)

 伊豆大島周辺海域のタカベの年齢と成長を 1,450 個体を用いて調べた。耳石の不透明帯の外縁を輪紋として計測した。第 1 輪は生後 1 年半の春から夏にかけて形成され,その後 1 年に 1 本ずつ同時期に輪紋が形成されると判断した。成長は生後 2 歳まで急速に進み,その後は緩やかであるが雌の方が若干大きく成長した。最尤法で von Bertalanffy, Gompertz, Logistic の 3 つ成長モデルのパラメータを推定した。AIC より極限体長と分散を性別に推定した von Bertalanffy モデルが選択された。

71(1), 86-94 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


聴性脳幹反応を利用して測定されたコイの聴覚閾値

小島隆人,伊藤洋佑,駒田朋之,谷内 透(日大生物資源),赤松友成(水研セ水工研)

 聴性脳幹反応(ABR)技術で決定された聴覚閾値を,心電図-条件付けで決定された聴覚閾値と比較するため,コイを用いてほぼ同一の実験条件下で閾値測定を行った。頭部表皮から導出された微小電位を 300 回加算平均して放音時の反応から判定した閾値は,心電図導出後条件付けを経て心拍間隔の伸びを指標とした測定,および過去に行動反応によって測定された結果とほぼ同じ形状のオーディオグラムとなり,概ね行動,ABR,心電図の順で閾値が低くなった。

71(1), 95-100 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


無嗅覚化ウナギは磁気感覚を失う

西 隆昭,川村軍蔵,三宮 幸(鹿大水)

 鹿児島で養殖された日本ウナギ 5 匹の鼻腔に沸点近いワセリン(130~140℃)を注入して無嗅覚化し,心電図―条件付け法で磁気感覚の有無を調べた。条件刺激を 192,473 nT の東西方向の人工磁場,無条件刺激を点滅光とし,暗環境下で実験した。ワセリンを注入しない対照個体 5 匹は,10 回の条件付けで条件刺激に有意な心電図応答を示したが,無嗅覚化個体は 50 回の条件付け後も条件刺激を学習しなかった。以上の結果は,日本ウナギの磁気感覚器は鼻孔またはその周辺にあり,磁気感覚器がワセリン処理で損傷されたことを示唆する。

71(1), 101-106 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ヒラメ Paralichthys olivaceus 形態異常個体に見られた甲状腺異常とホルモン感受性

岡田のぞみ(道中央水試),森田哲男(水研セ小浜),田中 克,田川正朋(京大院農)

 ヒラメの種苗生産で着底が遅れた形態異常個体が約 4 % 出現した。形態観察から,これらの個体では変態の遅延が起こっていると推測された。甲状腺濾胞は形態的に正常魚より活性化していたが,チロキシン(T4)の血中濃度は正常個体の 1/10 以下であった。また T4(0.1 ppm)を 2 週間投与した結果,仔魚型の形質が成魚型に変化したことから組織の甲状腺ホルモン感受性には異常がなかったと推測された。従って甲状腺が十分量のホルモンを産生できなかったため変態遅延が起こり,着底の遅延および形態異常に至ったと考えられた。

71(1), 107-114 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


幼形成熟性魚類シラウオ Salangichthys microdon における脳下垂体―甲状腺系の組織学的検討

原田靖子(京大院農),桑村勝士(福岡県漁政課),木下 泉(高知大海洋研セ),田中 克,田川正朋(京大院農)

 魚類幼形成熟の生理学的な特徴を明らかにするため,代表的な幼形成熟魚であるシラウオについて,消化系と甲状腺系の発達過程を調べた。近縁とされるアユでは,発育初期に消化管の屈曲や胃腺の形成,甲状腺系の活性化が起こる。一方シラウオでは,成魚期まで消化管は直線状であり,胃腺も観察されず,内部形態も幼形的であった。また,甲状腺と TSH 細胞は,成魚期には活性化したものの,性成熟直前まで不活性な状態にあり,甲状腺系の発達が著しく遅いという特徴が明らかとなった。

71(1), 115-121 (2005)

戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


沖縄島におけるホシギスの成熟様式

Md. Habibur Rahman,立原一憲(琉大理)

 沖縄島において,2000 年 12 月~2002 年 3 月に 414 個体(標準体長;雄:61.0-220.0 mm,雌:59.3-275.0 mm)のホシギスを採集した。これらの標本を用いて生殖腺指数の経月変化を調べ,同時に生殖腺の組織学的観察を行った。その結果,沖縄島における本種の産卵期は,ほぼ周年にわたり,盛期は 2~5 月であった。本種の雄は 0 歳で約 50% の個体が成熟し,満 1 歳以降は全ての個体が成熟していた。一方,雌は 0 歳では成熟せず,満 1 歳で 60%,満 2 歳以降全ての個体が成熟することが明らかとなった。ホシギスの孕卵数(BF)は,BF=269.5 e0.020954SL で示された。

71(1), 122-132 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


褐藻類アラメ遊走子および配偶体の生残へ及ぼす海中懸濁粒子と堆積粒子の影響

荒川久幸(海洋大)

 褐藻類アラメ遊走子の基質着生,配偶体の成長および生残が海中の懸濁粒子と堆積粒子によって受ける影響を調べた。遊走子の着生率は基質上の堆積粒子量の増加によって著しく低下し,3.0 mg/cm2 で 3.8% となった。配偶体の成長は 10 mg/cm2 までほとんど影響ないが,30 mg/cm2 で停止した。配偶体の生残率は堆積粒子 5 mg/cm2 で 39.4% となり,30 mg/cm2 で皆無となった。アラメ遊走子および配偶体の減耗率 TL(%) は次式で求められる。TL=100(1-exp (-0.0339 C-1.24 Q)),ここで,C は懸濁粒子濃度(mg/L),Q は堆積粒子量(mg/cm2)である。

71(1), 133-140 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


リポフスチンを年齢形質とした東京湾産シャコの年齢推定

児玉圭太,山川 卓(東大院農),清水詢道(神奈川水総研),青木一郎(東大院農)

 自家蛍光性色素のリポフスチンを年齢形質として,シャコの年齢推定を行った。顕微鏡下で撮影した蛍光画像の解析からリポフスチン密度を算出し,そのヒストグラムについて混合正規分布分解を行った結果,年齢群に対応する 4 つの明瞭な正規分布が検出された。リポフスチンは年間に一定速度で蓄積することが示唆された。体長組成解析では明確に年齢群を識別できなかった。リポフスチン解析より,漁獲対象となっているのは各年齢群の中で成長の良い個体であり,大部分の個体が 2 歳から 3 歳の間に漁獲サイズへ達することが示唆された。

71(1), 141-150 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


安定同位体比から見たヤマトシジミの陸起源有機物の利用

笠井亮秀,中田晶子(京大院農)

 炭素と窒素の同位体比(δ13C, δ15N)を用いてヤマトシジミ餌料を調べた。貝の筋肉組織の同位体比は上流域ほど低く δ13C で-24.8 から-16.1‰,δ13N で 8.6 から 11.8‰ まで変化した。懸濁態有機物とヤマトシジミの同位体比からその餌料を推定したところ,場所による違いはあるものの,底生珪藻や植物プランクトンの寄与は小さく,陸起源有機物が最も重要であることが分かった。

71(1), 151-158 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


メジナ 1 年魚の紫外線感覚

宮崎多恵子(三重大生物資源),山内正剛(放医研),高見真理子,神原 淳(三重大生物資源)

 メジナ 1 年魚の紫外線感覚を,網膜組織学的手法と RT-PCR 法により調べた。錐体モザイク配列は central single cone を 4 つの double cone が軸を向けて囲み,その四方形の四角には紫外線受容細胞と推定される accessory corner cone が存在した。網膜 total-RNA から得られた 6 種類の cDNA 断片はいずれも 226 残基のアミノ酸をコードしていた。相同性解析と系統樹解析により,これらは UV,青,緑(各 1 種類),赤(2 種類)のオプシンとロドプシン(1 種類)であると推定された。

71(1), 159-167 (2005)

戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


循環式養魚システムで飼育されたヒラメ Paralichthys olivaceus 稚魚における最適飼料中リン含量

Xiaojie Wang, Semin Choi, Sanghee Park, Gwangyeol Yoo(釜慶大),Kangwoong Kim(韓国水産科学院),Ju-Chan Kang, Sungchul C. Bai(釜慶大)

 循環式養魚システムで飼育されたヒラメ稚魚(初期平均体重 2.0 g)の最適飼料中リン含量を調べるため,総リン含量 0.33,0.51,0.71,0.94,1.10 および 2.12% の飼料を作成し,8 週間の給餌試験を行った。0.51% 区は 0.33% および 2.12% 区と比較し,有意に高い増重量,飼料効率,成長率およびタンパク質利用効率を示したが,0.71,0.94 および 1.10% 区と有意差は認められなかった。本試験結果から最大増重率が得られる飼料中リン含量は 0.45~0.51% であることが示唆された。

(文責 竹内俊郎)

71(1), 168-173 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


イソプレノイドキノンを用いた海洋底泥微生物群集の鉛直・水平的分布構造解析

浦川秀敏,好田 勉,西村昌彦,大和田紘一(東大海洋研)

 海洋底泥における微生物群集の鉛直構造と試料採取地点間の違いを比較するために,相模湾,駿河湾および東京湾の 3 地点から採取された底泥試料についてキノン分析を行った。底泥深度による微生物群集の変化が認められたが,試料採取地点間の違いが微生物群集組成により大きな影響を与えた。多くのキノン分子種がすべての調査地点で共通して検出されたが,一部の微量キノン分子種の分布については,試料採取地点による違いを反映した。これらのことから,キノン分析法が海洋底泥の微生物群集解析に有効な手法であることが示された。

71(1), 174-182 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


キンギョにおける餌の匂いに対する反応性と給餌時刻との関係

天野勝文(北里大水),飯郷雅之(宇都宮大農),山森邦夫(北里大水)

 キンギョ Carassius auratus を 1 日 1 回(8,12,または 16 時)および 1 日 3 回給餌群の計 4 群に分けて 3 週間以上飼育し,餌の匂いに対する反応性と給餌時刻との関係を Y 型選択水路を用いて調べた。1 回給餌群では各給餌時刻にのみ有意に誘引されたが,3 回給餌群では有意な誘引性はなかった。以上より,キンギョが給餌時刻を記憶すること,および餌の匂いの探索行動を抑制する高次中枢が存在することが推察された。

71(1), 183-186 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


長崎近海産マアジ筋肉の死後変化に及ぼす保存温度と致死条件の影響

三嶋敏雄(長大水),野中 健,岡本 昭(長崎水試),槌本六秀,石矢朋子,橘 勝康,槌本六良(長大水)

 長崎近海で漁獲されたマアジの死後変化に及ぼす保存温度(0, 5, 10, 15℃)と致死条件(延髄刺殺,苦悶死,温度ショック,脊髄破壊)の影響を検討した。保存温度実験では,ATP 量,IMP 量,乳酸量の経時変化は 10℃ が最も遅かった。K 値の上昇は 10℃ 以下であれば遅く,また破断強度の低下でも 10℃ は遅かった。致死条件実験では,ATP 量,IMP 量,乳酸量の経時変化は脊髄破壊が最も遅かった。K 値の上昇や破断強度の低下も脊髄破壊が遅かった。長崎近海産マアジの死後変化の遅延には脊髄破壊後の 10℃ 保存が最適であった。

71(1), 187-194 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


実験水槽および自然条件下の養殖池で温度馴化したソウギョ普通筋ミオシンの性状解析

陶  妍(東大院農),小林牧人(ICU),福島英登,渡部終五(東大院農)

 室内の実験水槽および養殖池で季節的に温度馴化したソウ ギョの普通筋からミオシンを調製した。10,20℃ 馴化魚および秋季,冬季魚のアクチン活性化ミオシン Mg2+-ATPase 活性は 30℃ 馴化魚および春季,夏季魚ミオシンのそれより 1.6-1.8 倍高かった。10℃ 馴化魚ミオシンの変性速度恒数(KD)は 20 および 30℃ 馴化魚ミオシンのそれより 3-4 倍高く,秋季,冬季魚ミオシンの KD は春季,夏季魚ミオシンのそれより 4-7 倍高かった。DSC 分析では,ほとんどのミオシンは 38 および 45-46℃ に吸熱ピークを示した。一方,32-33℃ の吸熱ピークは 10℃ 馴化魚,秋季および冬季魚ミオシンに特徴的であった。

71(1), 195-204 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


養殖コイの白筋,ピンク筋,赤筋におけるイノシン酸及びリン酸パラニトロフェノール分解活性の比較

槌本六秀,Paula Andrea Gomez Apablaza,槌本六良,王  勤,橘 勝康(長大生研)

 養殖コイ骨格筋から白筋ピンク筋,赤筋を分取し,K 値の経時的変化とイノシン酸(5′-IMP)及びリン酸パラニトロフェノール(p-NPP)分解活性を測定した。氷蔵及び 32℃ 保存中における各筋タイプの K 値上昇は,赤筋>ピンク筋>白筋であった。至適 pH 付近における 5′-IMP 及び p-NPP 分解活性は,赤筋>ピンク筋>白筋であった。各筋タイプの pH 7.0 における 5′-IMP 分解活性と 32℃ における K 値上昇率の間には正の相関関係が認められた。以上の結果より,白筋,ピンク筋,赤筋の各筋タイプにおける K 値上昇の違いには 5′-IMP 分解活性の違いが関係していることが示唆された。

71(1), 205-212 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


スルメイカ筋肉自己消化物からのヘビーメロミオシンの調製

吉岡武也,木下康宣(北工技セ),加藤早苗(旭川医大),趙永濟(釜慶大),今野久仁彦(北大院水)

 スルメイカホモジネートを 0.5 M NaCl 中,25℃ で保持することで,自己消化によりミオシンをヘビーメロミオシン(HMM)とライトメロミオシンに切断させた。生成した HMM は硫安分画法で単離できた。単離した HMM は重鎖内部で切断が起きておらず,2 種類の軽鎖も保持していた。また,ミオシンの性質を反映した 3 種の ATPase 活性を示し,Ca2+ 感受性も認められた。キモトリプシンで切断すると,サブフラグメント-1 が生成した。HMM を Ca2+ 存在下で加熱すると変性速度が小さくなり,Ca2+ による安定化が認められた。これはアクチンと結合した場合に顕著になった。

71(1), 213-219 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


脱水に伴うエソ筋原繊維の水の状態と変性に及ぼすエビ頭部のタンパク質酵素分解物の影響

ヤオアラックス ルタナポーンバレサクル(長大院生産),池田美佐子,原 研治(長大水),大迫一史(長崎水試),オラワン コンパン(タイ水産局),野崎征宣(長大水)

 3 種のエビの頭部タンパク質酵素分解物(SHPH)を調製した。SHPH をエソ筋原繊維(Mf)に乾重量で 5 % 添加し,脱水過程における Mf の水の状態と,変性に及ぼす SHPH とグルタミン酸ナトリウム(Na-Glu)との効果を,脱水収着等温線と Ca-ATPase 活性の比較によって評価した。SHPH 添加 Mf は無添加 Mf(対照)に比べて水分活性が低下し,単分子および多分子収着水量が多く,高い Ca-ATPase 活性を示した。しかし,SHPH の効果は Na-Glu よりは小さかった。SHPH の Mf 脱水変性抑制効果は,SHPH の Mf 周囲の水和水の安定化への寄与に起因していることが示唆された。

71(1), 220-228 (2005)

戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


マガキ外套膜に存在する主要コラーゲンの特性

水田尚志,宮城智之,吉中禮二(福井県大生物資源)

 塩化ナトリウムを用いる分別沈殿法またはホスホセルロースを用いる陽イオン交換カラムクロマトグラフィーによりマガキ外套膜に存在する主要コラーゲンおよびそれを構成する 2 種類の α 鎖(α1 鎖および α2 鎖)を単離した。SDS-PAGE,ペプチドマッピングおよびアミノ酸分析によりこれらの生化学的性状を調べたところ,これら 2 種類の α 鎖が互いに遺伝的に異なることが判明し,さらに,主要コラーゲン分子が 2 本の α1 鎖および 1 本の α2 鎖から成るヘテロトリマーであることが示唆された。

71(1), 229-235 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


遠州灘西部沿岸海域へのカタクチイワシ卵の輸送量がシラス漁獲量に及ぼす影響(短報)

兪俊宅,中田英昭(長大水),中村元彦(愛知水試)

 遠州灘西部で春季にカタクチイワシ卵数の急激な増加傾向が見られた 1995 年以降の各年について,その海域の沿岸側(200 m 以浅)と沖合側(200 m 以深)それぞれのカタクチイワシ卵数と,舞阪の潮位から推定した黒潮系水の流入に伴う西向きの移流流速から,シラス漁場が形成される遠州灘西部沿岸海域への卵の輸送量を見積り,シラス春漁期の漁獲量との関係を調べた。その結果,1995 年以降のカタクチイワシ春シラスの漁況には,沿岸への卵の輸送量の変動が大きな影響を及ぼしていることが分かった。

71(1), 236-238 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


卵割阻止処理による 4 倍体作出率の早期ならびに簡易診断(短報)

張 雪蓮, 六川広一郎,小野里 坦(信大理)

 卵割阻止は 4 倍体や完全同型接合体を作出する上で重要な手法であるが,成功率が極めて低く手法の改善が求められている。処理後早い時期に倍数化率が推定できれば最適処理条件を求める上で好都合である。倍数化が成功した胚の卵割ステージは対照に比べ 1 細胞周期分遅れると考えられる。本研究はニジマスの卵を用い第 1 卵割の中期の前後に高温または水圧処理を行い,倍数化率と処理胚の 8 細胞期における卵割の遅れとの相関を調べた。その結果,高い相関(r=0.96)が認められ,卵割期に倍数化率が推定できることを明らかにした。

71(1), 239-241 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ハタハタ飼育稚魚の成長と発育に伴う潜砂の発現(短報)

森岡泰三(水研セ厚岸)

 ハタハタ飼育稚魚が潜砂を始める全長と形態学的特徴を調べた。仔魚は全長 25 mm で稚魚期に移行し,27 mm から体表面の黒色素が腹腔内壁へのグアニンの蓄積を伴いながら急速に増大した。全長-各部長比は 25~40 mm に変化点を認めた。実験終了時の平均 39 mm の稚魚は体型と体色がほぼ成魚様となったが,完全な不透明ではなかった。潜砂の開始は手網で脅かす条件で 27~37 mm に認めた。稚魚は変態完了までに潜砂可能になると推定されたが,成魚のように日常的に潜砂するには発育と成長がさらに進む必要があると考えられた。

71(1), 242-244 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ニジマス肝臓中のシスタチオニン γ-リアーゼの性状(短報)

後藤孝信,長田侑子,船津浩之,杉山広樹(沼津高専),高木修作(愛媛県庁),望月明彦(沼津高専)

 ニジマス肝臓中のシスタチオニン γ-リアーゼの性状について調べた。基質のホモセリンから生成する α-ケト酪酸量は,反応混液中の基質濃度の増加と共に上昇し,20 mM までは直線的に増加した。また,酵素活性はトリス-塩酸緩衝液(pH 8.9)を用いた時に最も高くなった。ニジマス肝臓ホモジネート中では,4.78 nmol/min/mg protein の速度でケト酪酸を生成したが,この値は同条件で測定したマウスの半分以下であり,さらに,ニジマスの酵素活性はプロパルジルグリシンやシステインの添加により著しく阻害された。

71(1), 245-247 (2005)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法