Fisheries Science 掲載報文要旨

トラフグ DNA データベースより開発されたマイクロサテライトマーカー座の評価

高木基裕(愛媛大農),佐藤仁泉,門林千恵,青木邦匡(水大校),辻 俊宏(石川水総セ),
畑中宏之(福井栽漁セ),高橋 洋,酒井治己(水大校)

 トラフグ DNA データベースにおけるマイクロサテライト領域の存在様式を検索したところ,DNA 配列全体に占めるマイクロサテライト領域の割り合いは 0.96% と少なかった。また,2 塩基単位の繰り返し配列が 90% 以上占めた。12 種のマイクロサテライトプライマーを開発したところ,顕著な多型性が認められた。また,ナルアリルが検出されたと考えられる 2 種のマイクロサテライトマーカー座を除き,各マーカー座のメンデル遺伝の証明がなされた。1 対 1 交配のトラフグ種苗のバンド共有度(BSI )が 0.525 であったのに対して,野生魚では 0.124 と低い値を示した。
69(6), 1085-1095 (2003)
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摂餌開始期におけるカタクチイワシ仔魚の核酸比を用いた栄養状態の指標

河野悌昌,塚本洋一,銭谷 弘(水研セ瀬戸内水研)

 摂餌開始期におけるカタクチイワシ仔魚の栄養状態を判断するための指標として,核酸比(RNA/DNA)を用いて基準値を求めた。飼育実験から 20℃ と 25℃ では point-of-no-return (PNR)は摂餌開始後 1~2 日目の間にあると判断された。PNR を越えた 2 日目以降の平均核酸比は 20℃ で 0.47,25℃ で 0.54 であった。1 日当たりタンパク質増重量 Gp と核酸比 R,飼育水温 T との関係は Gp=44.5R+0.822T-60.2 (r2=0.689, P<0.001)で表された。
69(6), 1096-1102 (2003)
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遊泳脚の外部形態の差異からみたスジエビとテナガエビの遊泳能力について

山根 猛(近大農),平石智徳(北大院水),山口恭弘(長大水)

 テナガエビとスジエビの遊泳脚の外部形態の差異から両種の遊泳能力を比較した。遊泳脚のアスペクト比 AR(遊泳脚長2/遊泳脚面積)は種内では性差がなかった。種間では後者の AR が大きかった。遊泳脚長 L に対する遊泳脚縁辺の剛毛長 d の比 R (d/L)は前者では性差はなかった。後者では性的二型性が現れた。スジエビの遊泳脚はパトリング時の水力学的性能がテナガエビより高い。
69(6), 1103-1108 (2003)
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若狭湾沖におけるズワイガニ属幼生の分布

今  攸(越前がにミュージアム),安達辰典,鈴木康仁(福井水試)

 1999-2000年 1~6 月に,若狭湾沖でズワイガニ属幼生を採集し,分布を調べた。ふ化時期は 2~4 月で,盛期は 3 月とみられた。第I期ゾエアは 3 月に,第II期ゾエア(ZII)は 4 月に,メガロパ(M)は 4~6 月に,それぞれ対馬暖流域内で濃密に分布していた。しかし,成長につれ,より深い水深帯へ移動し,6 月以降に M は変態の準備をして日本海固有水へ降り,海底に達し,カニへ脱皮すると考えられた。ZIIと M に日周期的な垂直移動が認められた。ゾエアの生活期間はそれぞれ約 20 日間,M は約 60 日間と推定された。
69(6), 1109-1115 (2003)
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タイリクスズキの心臓ヘネガヤ症原因粘液胞子虫新種 Henneguya lateolabracis

横山 博(東大院農),川上秀昌(愛媛魚病セ),安田広志(宮崎水試),田中真二(三重科技セ)

 タイリクスズキの新しい粘液胞子虫病について,寄生虫学的,病理組織学的に調べた。病魚は鰓の貧血,粘液分泌過多,動脈球の肥大などが特徴的であった。粘液胞子虫は動脈球の組織内で発育し,大量の胞子が鰓弁内に流入した結果,鰓毛細管の閉塞や鰓上皮の剥離および崩壊が起きた。平均胞子長 10.7 μm,尾端突起長 37.7 μm であった。タイリクスズキの心臓ヘネガヤ症原因粘液胞子虫を新種 Henneguya lateolabracis として提案する。
69(6), 1116-1120 (2003)
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伊勢湾の 2 種のヒトデの食性

モントン・ガンマニ,成田光好,飯田慎也,関口秀夫(三重大生物資源)

 1 年間にわたって採集された試料をもとに,伊勢湾のメガベントスとして卓越する 2 種のヒトデ類(スナヒトデ,モミジガイ)の食性を調べ,その結果をこれら 2 種および貧酸素域の時空間分布と関連させた。スナヒトデは湾口部を除く伊勢湾全域に分布し,その胃内容物は主としてクモヒトデであった。一方,モミジガイは主として湾口部を中心に分布し,その胃内容物は主として小型の巻貝や二枚貝であった。これら 2 種のヒトデの食性の相違は,伊勢湾における貧酸素域の発達や消滅と結びついたそれぞれの空間分布の相違に起因していた。
69(6), 1121-1134 (2003)
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マハゼ 2 型ビテロジェニンを指標とした日本沿岸環境のエストロジェン強度評価

大久保信幸(北水研),持田和彦(水研セ瀬戸内水研),足立伸次,原 彰彦(北大院水),
堀田公明,中村幸雄(海生研),松原孝博(水研セ北水研)

 マハゼ雄をエストラジオール-17β(E2),ビスフェノール A(BPA),ノニルフェノール(NP)を含む海水にそれぞれ暴露したところ,E2 では 10.5 ng/L から,NP では 19 μg/L から 2 型ビテロジェニン(Vg)濃度が上昇したが,BPA では 134 μg/L でも Vg を誘導しなかった。全国のマハゼ雄血中 Vg の検出率と濃度は大都市で高く,10.5 ng/L の E2 暴露と同程度であった。海水中の E2 や NP 濃度の測定結果から,検出されたエストロジェン強度は E2 に加えて他の物質との複合作用と考えられた。
69(6), 1135-1145 (2003)
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富栄養化した底泥有機物の有用細菌添加による分解促進と無機栄養塩の溶出

モハメド・A・カリム,深見公雄,アルン・B・パテル(高知大農)

 内湾底泥中から極めて有機物分解活性の高い中温細菌 Enterobacter sp. 9410-O 株および低温耐性菌 Pseudomonas sp. W-4 株を分離した。9410-O 株を多孔質担体に付着して底泥表面に添加し,26℃ で培養したところ,底泥の分解による水中への DIN・DIP の溶出量が無添加の 4~5 倍に促進された。一方 W-4 株を同様に添加して 13℃ で培養したところ,栄養塩溶出量は約 3 倍に増加した。以上の結果から,両菌株をそれぞれ異なる季節に用いることで,富栄養化した底泥有機物の分解活性が促進可能であり,環境浄化に有望であることが示唆された。
69(6), 1146-1157 (2003)
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ニシキゴイおよびキンギョにおける補助餌料パプリカの体色鮮明化効果のコンピューター映像分析による評価

Csaba Hancz, István Magyary, Tamás Molnar (Univ. Kaposvar),
佐藤 将(新潟内水試),Péter Horn (Univ. Kaposvar),谷口順彦(東北大院農)

ニシキゴイおよびキンギョにおける補助餌料パプリカの体色鮮明化効果(赤色)を評価するため,RGB 値解析による評価試験を行った。両魚種の赤色の発現に関して,RGB 値は異なる変動を示した。B 値はパプリカを投与しても徐々に減少し,パプリカの投与効果は見られなかった。G 値についてはパプリカ投与後,赤色は変化がないかわずかに強くなった。R 値は緩やかに増加し,試験開始 4 週間以内では有効性が認められた。
69(6), 1158-1161 (2003)
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絶滅危惧種リュウキュウアユにおける集団間の遺伝子流動の欠如

池田 実,布川 誠,谷口順彦(東北大院農)

 奄美大島に残存する絶滅危惧種リュウキュウアユについては,島の西側と東側の集団間に遺伝的分化が存在することが示唆されてきた。これら 2 集団について,過去の標本も含めたミトコンドリア DNA 調節領域の PCR-RFLP 分析を行い,集団間の現在の遺伝子流動の有無について調べた。その結果,両集団に共通のハプロタイプは観察されず,完全に隔離されていることが示された。さらに,ハプロタイプの類縁関係についても検討した結果,集団内のハプロタイプは互いに近縁で,両集団が互いに独立して形成されてきたことが示唆された。
69(6), 1162-1168 (2003)
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トロール網漁獲選別装置 TREND の流速分布

不破 茂,中村 潤,江幡恵吾(鹿大水),熊沢泰生,平山 完(ニチモウ)

 長方形目合の 4 枚の無結節網地で構成される漁獲選別装置 TREND を身網後端部とコッドエンドの間に装着した模型を作成した。回流水槽で 4 断面の流速を 2 成分流速計で計測した。前半部の網地近傍は変化がなく,中心部では 2~4% 増加した。後半部の網地上面近傍では 7~20% 減速し,減速率は流速に比例して増大したが,中心部では 2~4% 増加した。タフト法で観察した TREND 上面近傍の流線はいずれも網外へ向き,後半部でのタフト角度は前半部の約 2 倍だった。この流れが遊泳力の小さな魚を網外へ排出すると考えられた。
69(6), 1169-1175 (2003)
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長時間潜水する動物に対するライントランセクト法

岡村 寛(水研セ遠洋水研)

 マッコウクジラのような長時間潜水する動物は,目視調査の調査線上にいるときでも見落とされる傾向がある。調査線上で見落とされる動物の割合を推定するためにこれまでに開発された方法は複雑で,モデルの仮定に影響を受けやすいといった問題があった。この論文で,より簡明で柔軟なモデルを開発した。それは目視調査の外側で得られた平均浮上率の推定値を必要とするだけで,複雑な調査デザインや仮定の影響を受けやすいパラメータを必要としない。モデルをシミュレーションデータに適用した結果は,本方法が有望であることを示唆した。
69(6), 1176-1181 (2003)
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クロダイ稚魚の脂質代謝に対する DHA と EPA の飼料への添加の影響

Ahmad Daud Om,吉  紅,海野徹也,中川平介(広大院生物圏),
佐々木敏之,岡田賢治(広島水振協),浅野雅也,中川敦史(協和発酵)

 EPA と DHA をそれぞれ強化した配合飼料をクロダイ稚魚に投与し,脂質代謝への影響を比較した。EPA 強化区では筋肉,肝臓,脂肪組織,眼球,脳の EPA が増加したが,肝臓,眼球,脳,心臓では DHA も増加した。このことから,これらの器官では EPA から DHA への転換が起こっている可能性が示唆された。一方,DHA 強化区では眼球以外の器官で DHA が高い値を示したが,EPA の増加は認められなかった。また,EPA, DHA いずれの強化によっても,脂質含量の減少,脂肪細胞の縮小,脂質動員能の向上,筋肉タンパク質動員の抑制,肝機能と乾出耐性の向上が認められた。
69(6), 1182-1193 (2003)
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魚類血漿中全コレステロール定量のための酵素センサーシステム

遠藤英明,舞田正志,瀧川美緒,任 恵峰,林 哲仁,浦野直人(海洋大),三林浩二(東医歯大)

 魚類血漿中の全コレステロールを迅速かつ連続的に定量できる酵素センサーを製作した。本システムは超薄型固定化酵素膜,クラーク型酸素電極,フローシステム,コンピューターより構成される。各魚類血漿(ブリ,カンパチ,ニジマス)におけるコレステロールの検量線を作成したところ,センサー出力との間に直線関係が得られた。一検体の分析所要時間は約 5 分で,連続的な測定が可能であった。また本システムを,養殖場で飼育されているブリのコレステロール定量に適用したところ,従来法で得られた値との間に良い相関関係が認められた。
69(6), 1194-1199 (2003)
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クリガニの精巣における成熟年周期

永尾次郎,宗原弘幸(北大フィールド科セ)

 クリガニの精巣の成熟年周期を調べるために,北海道臼尻沿岸で採集した雄の精巣組織を周年観察した。また,精巣成熟と交尾活性の関係を調べるために,3~8 月の臼尻沿岸でのペア形成率と雌の交尾栓保有率を調査した。精巣を構成する精小嚢の成熟度を 6 段階に分けて解析した結果,精巣は周年,様々な成熟度の精小嚢を同時に含んでいたが,5~6 月では未熟な精小嚢の出現頻度が増加することが分かった。また,ペア形成率と雌の交尾栓保有率の結果から,5~6 月は交尾ピークと合致し,この時期に精子形成が活発化することが示唆された。
69(6), 1200-1208 (2003)
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耳石含有微量元素による北海道周辺のスケトウダラ系群判別の試み

木村 量(水研セ中央水研),山村織生(水研セ北水研),大関芳沖(水研セ中央水研),津田 敦(水研セ北水研)

 1998, 1999 年に北海道周辺の羅臼,釧路,南茅部,武蔵碓で採集された 26 個体のスケトウダラ成魚(体長 339-576 mm)耳石に含まれる Na, K, P, Ca, Sr の 5 元素量を EPMA により定量し,特定年の産卵期に相当するデータのみを比較した。3 元素濃度の判別分析の結果,1999 年冬季のデータは釧路産と南茅部産個体群の値が近く,この 2 つを合わせた個体群は羅臼産個体群と有意に近い水準(p=0.073)で識別された。この結果は耳石含有微量元素により北海道周辺のスケトウダラの系群識別ができる可能性を示唆するものと考えられた。
69(6), 1209-1217 (2003)
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ヒラメ胚におけるストレス誘導性アポトーシス

籔 健史(水研セ中央水研,東水大),石橋泰典(近大農),山下倫明(水研セ中央水研,東水大)

 ヒラメ胚(受精 3 日後)に対するストレス処理によって生じるアポトーシスの誘導を観察した。熱ストレス(28℃ または 29℃ )および紫外線(20~100 mJ/cm2)のストレス処理によってアポトーシス細胞の発現が観察され,カスパーゼ-3 様活性が上昇した。また,C2 セラミド処理によってもアポトーシスが誘導された。これらの結果から,セラミドシグナルおよびカスパーゼ-3 の活性化がアポトーシスの誘導に関与するものと推察された。

69(6), 1218-1223 (2003)
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タイで流通するフグの毒性

Supapun Brillantes, Wararat Samosorn, Sriwanna Faknoi(タイ水産局),
大島泰克(東北大院生命)

 バンコク近郊で陸揚げされるフグ Lagocephalus spadiceusL. lunaris の毒性を 1 年間調査した。前者は全個体で無毒であったが,後者は月によって高い毒力を示し,最高は筋肉 243,肝臓 813,皮 148,卵巣 529,精巣 2,920 MU/g であった。また,毒力には顕著な季節性が認められた。生殖巣の重量から推定した成熟期の毒力は低く,高毒期には精巣が卵巣より高い毒力を示すなど,日本産フグにはない傾向が認められた。化学分析ではテトロドトキシンとその同族体のみが検出された。
69(6), 1224-1230 (2003)
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魚肉タンパク質の効率的な回収のための新たな試みとその物理化学的特性

金 英信,Jae Won Park (Oregon State Univ.),崔 暎準(慶尚大)

 パシフィックホワイティングのタンパク質の溶解度は,処理 pH が等電点(pH 5.5)から離れるほど大きく低下した。回収されたタンパク質からゲルを作成し,その物性を比較した。最も高い破断強度は pH 11 で処理したもので得られた。また,最も高い破断凹みは pH 2 あるいは pH 11 で処理したタンパク質で得られた。SDS-PAGE から酸,アルカリ処理によりタンパク質の分解が起こることが認められた。カテプシン B 活性は酸処理タンパク質に認められた。また,高いカテプシン L 活性が pH 10.5 処理タンパク質に認められ,この活性と得られた低い破断強度,破断凹みが対応していた。pH 11 処理で得られたタンパク質の高いゲル強度は,S-S 結合によるものであると推定した。
69(6), 1231-1239 (2003)
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アメフラシ由来抗腫瘍・抗菌タンパク質アプリシアニン A の抗菌活性と LAAO 活性

神保充,中西文恵,酒井隆一(北里大水),村本光二(東北大院生命科学),神谷久男(北里大水)

 アプリシアニン A はアメフラシ由来の抗菌・抗腫瘍タンパク質である。アプリシアニン A は L-アミノ酸オキシダーゼ(LAAO)のアミノ酸配列と相同な配列を持つので LAAO 活性に注目してその性状および抗菌性について詳しく検討した。その結果,本化合物は補酵素として FAD をもち塩基性アミノ酸を基質とする LAAO であることを見出した。さらにアプリシアニン A の抗菌活性はその LAAO 活性に由来することも明らかにした。アプリシアニン A は海産無脊椎動物から見出された最初の LAAO である。
69(6), 1240-1246 (2003)
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携帯型近赤外分光装置を用いたグレーズ処理したメバチ脂肪量の非破壊測定

嶌本淳司,長谷川薫(静岡水試),服部誠吾,服部幸夫(カネトモ),水野俊博(FANTEC)

 携帯型近赤外分光装置を用いてグレーズ処理されたおよび解凍したメバチ脂肪量の非破壊測定を行った。グレーズがついている状態の凍結メバチでは,近赤外(NIR)分光法による精度の高い検量線は得られなかった。グレーズを取り除けば検量線精度は高くなり,さらに解凍した生マグロで精度が高くなった。メバチの脂肪量を NIR 測定するのに適正な部位は,肛門の腹部上部が最も適当と判断された。凍結メバチは,グレーズを取り去り温度補償型統合検量線により,脂肪量を推定できると判断された。
69(6), 1247-1256 (2003)
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加圧下における食塩無添加魚タンパク質の自己消化

岡崎 尚,重田有仁,青山康司(広島食工技セ),難波憲二(広大院生物圏)

 食塩無添加で魚醤油を製造するために,加圧下における自己消化を行った。自己消化中の腐敗は 50 MPa 以上の加温加圧によって抑制できた。自己消化に対する圧力の影響は 50-250 MPa の範囲で認められなかった。自己消化に対する最適温度と時間は 50℃ で 48 h であった。同条件で調製したカタクチイワシの分解液は,全窒素 2.6% ,ホルモール窒素 1.4%,遊離アミノ酸 11.6% であった。官能評価の結果,本分解液は,塩味と刺激臭は弱かった。本技術は,食塩無添加で,短時間で高品質の魚醤油様分解液を製造する新しい方法として有効である。
69(6), 1257-1262 (2003)
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マダイの 3 種グループ IB PLA2 イソフォームの組換えタンパク質の発現

藤川愉吉,下川摩里子,渡部晶子,竹原晶子,内山 智(広大院生物圏),林 征一(鹿大水),
江坂宗春(広大院生物圏),宮本浩士,万倉光正(池田食研),飯島憲章(広大院生物圏)

 3 種のマダイグループ IB PLA2 を大腸菌により GST 融合タンパク質として発現させた。得られた可溶性画分をアフィニティ精製した後,Trypsin により切断した。逆相 HPLC によって精製した 3 種の標品を SDS-PAGE により分析した結果,単一バンドを示し,それらの N 末端から 11 番目までのアミノ酸配列は,推定アミノ酸配列と一致した。また質量分析から求めた組換え sPLA2 の分子量も,推定分子量とほぼ一致した。組換え sPLA2 の至適 pH や至適カルシウムなどの酵素性状は native 酵素と同じであった。
69(6), 1263-1270 (2003)
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冷凍保存中におけるエソすり身のゲル形成能と変性に及ぼす魚残滓酵素分解物の影響

モハメド・アブ・アリ・カーン,モハメド・アノアル・ホセイン(長大院生産),
原 研治,長富 潔,石原 忠,野崎征宣(長大水)

 5 魚種の加工残滓を酵素処理し,魚タンパク質加水分解物(FPH)を調製した。FPH の主要成分はペプチドであり,非タンパク態窒素化合物は 82.3-85.8% であった。5%FPH 添加エソすり身を-25℃ で保存し,冷凍中のゲル形成能,Ca-ATPase 活性,不凍水量の変化を測定した。FPH 添加によりすり身のゲル形成能と Ca-ATPase 活性の低下は,強く抑制された。それに対応するように FPH 添加すり身中の不凍水量の低下も抑制された。これらの結果は,FPH が Mf 周囲の水和水を安定化することにより,Mf の冷凍変性を抑制していることが示唆された。
69(6), 1271-1280 (2003)
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アイゴ肉のかまぼこ形成能の季節的変動

大迫一史,桑原浩一(長崎水試),野崎征宣(長大水)

 アイゴの高度有効利用のため,2001 年 7 月から翌年 8 月にかけて長崎沿岸海域で漁獲されたアイゴのゲル形成能の季節的変動を検討した。清水晒肉のゲル形成能は,産卵期および産卵期後には低く,さらに坐りにくい傾向を呈し,冬季および春季のゲル形成能は高く,坐りやすい傾向を示した。よって,アイゴ清水晒肉は産卵期および産卵期後を除けば非常に高いゲル形成能を有し,かまぼこ原料として利用可能であることが明らかになった。
69(6), 1281-1289 (2003)
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DSC および DMA を用いたカツオ節のガラス転移に関する研究

橋本朋子,萩原知明,鈴木 徹,高井陸雄(海洋大)

 示差走査熱量測定(DSC)および動的粘弾性測定(DMA)を用いて,カツオ節のガラス転移に関する研究を行ったところ,カツオ節がガラス状物質であることが明らかとなった。水分 14.8% のカツオ節のガラス転移温度(Tg)は約 33℃ であった。市販されているカツオ節の水分は一般的に 14-18% 程度であるが,この程度の水分を含むカツオ節の Tg は 10-30℃ であり,この温度はほぼ室温に近い値であると言える。更に,カツオ節の Tg は強い水分依存性を示し,水分 0-18% の時,Tg は 165-11℃ まで変化した。
69(6), 1290-1297 (2003)
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サバ,ニシン,ニジマスから調製した溶血物が洗浄タラ筋肉中の脂質酸化に与える影響(短報)

M P Richards and H O Hultin (Univ. Massachusetts)

 ニジマス,タイセイヨウサバおよびタイセイヨウニシンの血液から調製した溶血物を等ヘモグロビン濃度になるよう,洗浄タイセイヨウマダラ筋肉に加え,2℃ で 3 日間保存し,チオバルビツール酸反応物(TBARS)の定量および官能検査を行った。その結果,サバおよびニシンから調製した溶血物は,官能的に,また TBARS でも脂質過酸化作用がニジマスより強かった。
69(6), 1298-1300 (2003)
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河川型オショロコマにおける銀毛化能力(短報)

岸 大弼(北大フィールド科セ苫小牧),前川光司(北大フィールド科セ)

 1999年 8 月に知床半島イダシュベツ川において河川型オショロコマ当歳魚 60 個体を採捕し,北海道大学苫小牧研究林の水槽で飼育した。2001年 3 月に数個体に銀毛化の兆候が現われ,同年 6 月には 60 個体中 14 個体が銀毛となった。銀毛個体の尾叉長は,パー個体に比べ有意に大きく,野外における事例同様に成長の速い個体が銀毛となるものと考えられた。このことから河川型オショロコマに潜在的な降海能力が保持されていることが示唆された。
69(6), 1301-1302 (2003)
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宮城県気仙沼湾における Dinophysis fortii D. acuminata の出現時期の水温・塩分について(短報)

星合愿一(宮城水研開セ),鈴木敏之,神山孝史(水研セ東北水研),
山崎 誠(水研セ養殖研),一見和彦(香川大)

 宮城県気仙沼湾の D. fortii 及び D. acuminata の出現時 100 細胞/L 以上の水温・塩分を解析した結果,D. fortii の出現時の平均水温は D. acuminata の場合に比べ有意に低く,平均塩分は有意に高かった。水温・塩分の分散は D. fortii の出現時が D. acuminata の場合に比べ有意に小さかった。このことから,D. fortii は低温・高塩分環境のみに出現する種で適応範囲が狭く,D. acuminata は適応範囲が広く,高温・低塩分環境にも出現できる種であると考えられた。
69(6), 1303-1305 (2003)
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マイクロサテライト DNA マーカーにおけるキハダのメンデル遺伝と変異(短報)

高木基裕(愛媛大農),張 成年(水研セ遠洋水研),岡村哲郎(国土環境),
Vernon P. Scholey (Achotines Lab.),中澤昭男(Overseas Fish. Coop. Found.),
Daniel Margulez (Inter-Amer. Tropic. Tuna Commission),谷口順彦(東北大院農)

 クロマグロより開発された 4 種のマイクロサテライトマーカー座(Ttho-1*, -4*, -6*, -7*)を用い,キハダのオス・メス 1 対 1 交配により得られた仔魚のメンデル遺伝の証明を行った。解析された仔魚は,全てのマイクロサテライトマーカー座において推定されたアリル型に分離し,キハダ仔魚におけるマイクロサテライトマーカーのメンデル遺伝の証明がなされた。また,各マイクロサテライトマーカー座の遺伝的変異性について検討したところ,いずれも多型的でハーディ・ワインバーグ平衡にあったが,個体によっては増幅断片の検出されないマイクロサテライトマーカー座がみられた。
69(6), 1306-1308 (2003)
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