Fisheries Science 掲載報文要旨

赤潮藻殺滅細菌 Flavobacterium sp. 5N-3 株の DNA プローブを用いた特異的検出・同定

足立真佐雄,深見公雄(高知大農),近藤竜二(福井県大生物資源),西島敏隆(高知大農)

 赤潮原因藻 Karenia mikimotoi を殺滅する細菌 Flavobacterium sp. 5N-3 株の 16S rRNA 遺伝子に特異的と思われる 5 種の蛍光 DNA プローブを調製した。Whole-cell hybridization 法を用いて,これらのプローブ 5 種の混合液を同時に本細菌に反応させたところ,1 種を用いた場合と比較して 8.4 倍の蛍光量が得られた。これら 5 種のプローブ混合液に由来する蛍光量は,定常期に入った細胞や‘飢餓条件下’の細胞であっても,計数可能な程度に維持された。近縁株を用いた反応交差性試験の結果,これらのプローブは本株に特異的であることが示唆された。これらの結果は,本法が天然環境中に存在する 5N-3 細胞を検出・同定する際に有用であることを示唆する。
68 (4), 713-720 (2002)
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ギンブナにおける血液および血漿性状の相関関係

Worawut Koedprang,中嶋正道(東北大院農),舞田正志(東水大),谷口順彦(東北大院農)

 ギンブナにおける血液および血漿性状の相関関係を調べた結果,赤血球数(RBC)とヘモグロビン量(Hgb),赤血球数(RBC)とヘマトクリット(Hct),ヘモグロビン量(Hgb)とヘマトクリット(Hct),平均血球容積(MCV)と平均血球血色素量(MCH),平均血球血色素量(MCH)と平均血球血色素濃度(MCHC),トリグリセリド(TG)と総タンパク(TP)の 6 組み合わせで有意な相関が観察された。このうち RBC と Hgb, RBC と Hct の組み合わせにおいてクローン系統間で回帰直線の傾き(b 値)に有意な差が観察された。個々の項目では不明確であった遺伝的差異が 2 項目間の相互関係を調べることにより明確にできることがわかった。
68 (4), 721-728 (2002)
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スサビノリの緑色型自然突然変異体の遺伝的特性とノリ養殖における異型接合型糸状体利用の意義

二羽恭介(兵庫水技セ),水田 章(兵庫淡路県民局),有賀祐勝(東京農大)

 スサビノリの緑色型変異体の特性を明らかにするため,緑色型と野生型の葉状体を用いて生長と光合成色素含量を比較し,交雑実験による遺伝分析を行った。緑色型は野生型に比べ生長が遅く,フィコエリスリン含量は著しく低かった。遺伝分析の結果,緑色型は単一の劣性遺伝子の支配を受けていることが推定された。交雑の結果生じた異型接合型糸状体(雑種糸状体)からは両親の色彩からなる区分状キメラ葉状体が高頻度で生じ,これら葉状体から放出された単胞子はすべて両親のいずれかの色彩と同じ一色彩葉状体に生長したことから,複数系統の糸状体を用いて採苗を行っている現在のノリ養殖で異型接合型糸状体を利用することの意義は大きいと考えられる。
68 (4), 729-735 (2002)
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ニホンウナギ Anguilla japonica 仔魚期における膵臓の消化酵素遺伝子の発現

黒川忠英,鈴木 徹,太田博巳,香川浩彦,田中秀樹,鵜沼辰也(養殖研)

 ウナギの膵臓からトリプシノーゲン(Try),アミラーゼ(Amy),リパーゼ(Lip)遺伝子を単離し,仔魚期における発現パターンを解析した。これら膵消化酵素遺伝子のウナギ仔魚における発現を RT-PCR で解析した結果,Try と Amy は孵化後 6 日目から発現が観察され,7 日から 8 日目にかけて発現量が増加した。一方,lip mRNA の発現がみられたのは孵化後 8 日目からであった。これらのことから,ウナギ膵臓では摂餌開始時期である孵化後 8 日目までに,全種類の消化酵素の合成が開始されるものと推察された。
68 (4), 736-744 (2002)
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炭素・窒素安定同位体比を用いたタイ国におけるエビ複合養殖の評価

横山 寿(養殖研),日向野純也(国際農林水研セ),足立久美子(水工研),石樋由香,山田佳裕(養殖研),ポンチェート ピチックン(カセサート大)

 タイ国のエビ養殖池における複合養殖の浄化作用を評価するために,養殖用水の貯水池,エビ養殖池,およびエビ養殖池と連結され,複合養殖種のミドリイガイが配置されている処理池の食物網構造を炭素・窒素安定同位体比を用いて解析した。その結果,養殖池ではエビ飼料が,他 2 池では懸濁物や堆積物中の有機物が食物網の基盤となっていること,およびミドリイガイがエビ飼料由来有機物を同化していることが示唆された。
68 (4), 745-750 (2002)
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曳縄用潜航板の流体抵抗特性

不破 茂,石崎宗周,江幡恵吾(鹿大水),藤田伸二(長大水)

 曳縄漁業用潜航板および,これと面積が等しく同じ投影形状の平板模型と円板模型の異なる迎角での揚力,抗力とピッチング方向のモーメントを回流水槽で測定して流体抵抗特性を検討した。潜航板は他の模型より潜水性能が優れることが認められ,これはキャンバーの効果と考えられる。潜航板の形状は抗力係数には影響せず,圧力中心が先端近くにあるので潜航板の姿勢を下向きに保ち,道糸結着点と圧力中心の不一致が潜航板の姿勢を常に変えていると考えられた。
68 (4), 751-756 (2002)
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マガキ幼生の凍結保存における発生段階,海水濃度および飼育温度の影響

薄 浩則,浜口昌巳(瀬戸内水研),石岡宏子(養殖研)

 発生段階,海水濃度および飼育温度がマガキ幼生の凍結保存に及ぼす影響を検討した。DMSO 1.5 M, Trehalose 250 mM を凍害保護剤とし,媒精後 9, 12, 15, 18 および 21 時間後(21°C)の幼生を-1°C/分の速度で冷却,-8°C で 15 分間の植氷を経て-35°C または-40°C まで冷却後液体窒素中に浸漬した場合,解凍後の運動率と外観は 15 時間幼生(貝殻腺形成直前のトロコフォア幼生)が最も優れていた。凍害保護剤の希釈液として 1/4, 1/6, 1/6, 1/10 および 1/30 に希釈した海水で解凍直後の運動率に有意差は無かったが,解凍 4 日後の有殻幼生率は 1/4 希釈海水で明らかに高かった。21, 25 および 29°C で発生させたトロコフォア幼生を 8 ヶ月間の凍結保存後に解凍して 26°C で飼育した結果,飼育 6 日後では 25°C 区が生残率および正常幼生率とも最も高く,1 個体の付着稚貝を得ることができた。
68 (4), 757-762 (2002)
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ニホンザリガニと外来種ウチダザリガニの高温生存限界温度

中田和義,浜野龍夫,林 健一(水大校),川井唯史(道原環セ)

 危急種のニホンザリガニと外来種であるウチダザリガニの高温側の生存限界温度を明らかにする目的で,研究を実施した。16°C で 2 週間順化させたのち,1 週間に 1 °C の割合で水温を上昇させた。その結果,最終致死温度はニホンザリガニで 27.0°C,ウチダザリガニでは 31.1 °C であった。ウチダザリガニの個体別の致死温度は,ニホンザリガニのそれよりも有意に高かった。以上の結果をもとに,温度が制限要因の一つになると思われるこれら 2 種の分布について論議した。
68 (4), 763-767 (2002)
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加熱魚介類肉の最終到達温度の測定

Musleh Uddin,石崎松一郎,石田真巳,田中宗彦(東水大)

 加熱したカツオ,マダイ,クルマエビ,ホタテガイ肉の最終到達温度(EPT)の測定を,タンパク質凝集法,SDS-PAGE 法,酵素活性測定法により実施した。タンパク質凝集法によって 60°C から 67°C までの EPT を測定できること,EPT に対応して凝集するタンパク質は魚肉の場合乳酸脱水素酵素とグリセルアルデヒドリン酸脱水素酵素であること,魚介類肉の凍結処理は EPT にほとんど影響を及ぼさないことが判明した。一方,108°C まで加熱したクルマエビならびにホタテガイの抽出液中には,分子量約 35,000 の極めて熱に安定なタンパク質が存在し,このタンパク質がトロポミオシンのサブユニットであり,EPT の指標となり得ることを明らかにした。
68 (4), 768-775 (2002)
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リゾーブス投与によるヒメマスの体成長と性成熟に及ぼす効果

Ramji Kumar Bhandari(北大院水),牛越設男(牛越生理研),福岡秀雄(麻布大獣医),小出展久(道孵化場),山内晧平(北大院水),上田 宏(北大フィールド科学セ)

 真菌類のリゾープス抽出物(RU)をヒメマスに長期間経口投与(20 mg/kg 飼量)して体成長と性成熟に及ぼす効果を調べた。RU 投与群は秋期と冬期に対照群に比べ雌雄とも成長が促進された。性成熟では,RU 投与群の雄においてのみ排精が促進され,血中テストステロン,11-ケトテストステロン,17α, 20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オンが増加した。RU にはヒメマスの雌雄の体成長および雄の性成熟を促進する効果があることが明らかとなった。
68 (4), 776-782 (2002)
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貯蔵初期における 3 種の生イカ肉のテクスチャー変化

香川実恵子(県立小松高),松本美鈴(青山女短大),米田千恵(お茶大生活科学),三橋富子(日本短大食物栄養),畑江敬子(お茶大人間文化)

 アオリ,スルメ,ヤリイカ胴肉を即殺後 4 °C で 120 時間まで貯蔵し,物性,タンパク質組成,コラーゲン量の変化を調べた。付着性は貯蔵初期に著しく増加した。針入度はいったん減少した後増加した。3 種のイカ共に約 580 kDa の成分が貯蔵 48 時間までに消失し,本成分と付着性,硬さの変化に高い相関がみられた。反応速度理論に基づくフィッティングの結果,付着性は 13-19 時間までに全反応の 2/3 が終了したと示された。
68 (4), 783-792 (2002)
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個体間の類縁関係によるクルマエビ天然集団の遺伝的構造の分析

菅谷琢磨,池田 実,谷口順彦(東北大院農)

 個体間の遺伝的類縁関係(γxy)により日本の 4 地域における天然クルマエビ集団の遺伝的構造を検討した。γxy はマイクロサテライト(MS) DNA により算出した。その結果,rxy の分析において,鹿児島と熊本で近縁な個体が有意に多く観察された。また,鹿児島では,それらの個体がきょうだい間と同程度の γxy を示し,ミトコンドリア(mt) DNA 分析においては共通のハプロタイプを持つ傾向がみられた。これらから,鹿児島と熊本には血縁個体が多く含まれている可能性が示唆された。しかし,MS-DNA 分析におけるアリル頻度に地域間で有意差はなかった。また,mtDNA 分析におけるハプロタイプ頻度の有意差は,鹿児島と熊本に関わる地域間のみでみられた。これらのことから,日本の天然クルマエビに地理的要因や歴史的要因による地域性はなく,熊本および鹿児島における近縁個体は人工種苗である可能性が高いと考えられた。
68 (4), 793-802 (2002)
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コクチバスが餌魚の行動,成長および生存率に与える影響についての実験的研究

片野 修,青沼佳方(中央水研)

 実験池において,キンギョはコクチバスがいるいないにかかわらず群れる傾向があり,アユおよびウグイはコクチバスがいる場合に多く群れる傾向が認められた。これらコクチバスの餌魚は主に底生藻類もしくは水生昆虫類を食べ,その餌生物組成がコクチバスの存在に影響されることはなかった。キンギョとウグイでは,コクチバスの存在下で摂食行動の頻度が減少し,キンギョでは成長率も低下した。アユの摂食行動の回数と成長率はコクチバスの存在に影響されなかったが,3 種の中でもっとも多くコクチバスに捕食された。コクチバスは小型の個体を多く食べる傾向があったが,アユの体長は他種と比べて小さくはなかった。
68 (4), 803-814 (2002)
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流れにおける平面網地の形状と張力の数値解析

万  栄,胡 夫祥,東海 正(東水大)

 流れにおける網地の形状および張力分布を数値的に解析するために,網地をロープ直線要素で離散化し,非線形有限要素法に基づく新たな解析手法を導いた。本解析法では,網を構成するロープや網糸を弾性体と仮定し,変形によって生じる幾何学的非線形性を考慮した網目の脚張力と網地の結節座標を未知数とする非線形方程式を,Newton-Raphson 法を用いて形状繰り返し計算と荷重繰り返し計算とを併用することにより解くことで,網地形状と各要素の張力が求められる。一様流中における平面網地について解析した結果,数値シミュレーションで得られた網地の形状は水槽実験で測定されたものとよく一致した。また,実験では計測できない網地の張力分布も明らかにされ,網地の形状と関連付けて考察した。
68 (4), 815-823 (2002)
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ヒラメ稚魚の成長に対する飼料中のタウリン適正添加量

朴 光植,竹内俊郎(東水大),横山雅仁(中央水研),青海忠久(京大水実)

 北洋魚粉をタンパク質源にタウリン(Tau)およびシスチン(Cys)をそれぞれ 0.5, 1.0 および 1.5% 添加した試験飼料を用いて,平均体重 0.91 g(平均全長 48 mm)のヒラメ稚魚を 5 週間飼育した。その結果,1.0% Tau 添加区で最も優れた飼育成績が得られるとともに,飼料中の Tau 含量の増加に伴い,脳,肝臓および筋肉の Tau 蓄積量も増加し,飼料中 1.0% 添加区で最大値に達した。一方,Cys 添加区では魚体内の Tau 含量の増加はみられなかった。魚体中の Tau 排泄量を調べた結果,Tau および Cys 添加区いずれの魚もほとんど Tau を排泄しなかった。以上,この時期のヒラメ稚魚は,飼料中に 1.4% 前後の Tau を要求すること,飼料中の Tau 濃度により含硫アミノ酸代謝が影響を受けること,Tau をほとんど排泄しないこと,などが明らかになった。
68 (4), 824-829 (2002)
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ナイルティラピアのポリペプチド鎖延長因子(EF-1α)の遺伝子クローニングおよび mRNA の精巣における局在部位

持田和彦,松原孝博(北水研)

 ナイルティラピアの EF-1α 遺伝子クローニングおよび in situ ハイブリダイゼーションによる精巣における mRNA の局在部位を調べた。精巣 cDNA ライブラリーより得られた EF-1αcDNA クローンは 462 アミノ酸からなる全翻訳領域を含んでいた。予想されるアミノ酸配列は他魚種で報告された EF-1α と 90% 前後の相同性を示した。精巣における mRNA の局在部位について調べたところ,ライディッヒ細胞に顕著な局在が認められた。
68 (4), 830-837 (2002)
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ノニルフェノールによるテラピア肝細胞初代培養でのビテロジェニン合成

金 柄鎬,竹村明洋,中村 將(琉大熱生研)

 ビテロジェニン(VTG)合成におけるノニルフェノール(NP)の効果をテラピアの肝細胞初代培養系を用いて調べた。培養液に 10-3 M の NP を加えると,細胞死もしくは細胞の伸展に遅れが認められた。10-4 M では細胞死は認められなかった。2 社の NP(10-4 M)はエストラジオール-17β(10-7 M)と同レベルの VTG を誘導したが,1 社の NP は VTG を誘導しなかった。NP による VTG 誘導は tamoxifen の添加により抑制された。以上の結果から NP は雌性ホルモン作用を持ち,その効果は雌性ホルモン受容体を介しているものと考えられた。また,VTG 誘導には NP 間で差が有ることも明らかとなった。
68 (4), 838-842 (2002)
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耳石解析に基づく絶滅危急種ウケクチウグイの成長モデル

今井千文,酒井治己(水大校),桂 和彦,本登 渉,樋田陽治,高澤俊秀(山形内水試)

 耳石解析に基づきコイ科ウグイ属の絶滅危急種であるウケクチウグイ Tribolodon nakamurai の成長モデルを構築した。星状石の長さより変動が小さい高さ OH mm を耳石サイズ指標に用いた。標準体長 L cm の予測モデルとして,Gompertz モデル,L=70.0・exp [-exp{-0.553(OH-2.73)}] が最適であった。飼育 5 歳魚の礫石に認められた透明帯は冬輪とみなされた。礫石の透明帯数を読みとり,標準体長範囲 37.0~48.1 cm の天然魚 10 個体は 7~10 歳と判定された。年齢 t の予測モデルとして,Allometry モデル,t=1.33OH1.37 が得られた。ウケクチウグイの成長曲線は延長した S 字状を示し,代表的な成長モデル,von Bertalany, Logistic, Gompertz モデルおよびこれらの一般型である Richards モデルを最尤法によりあてはめた。AIC により比較した結果,Gompertz モデル,Lt=60.2・exp [-exp{-0.258(t-4.68)}] が最適モデルに選択された。
68 (4), 843-848 (2002)
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群形成によるアユの輸送ストレスの軽減

井口恵一朗(中央水研),伊藤文成(養殖研),小川浩義(長大水),松原尚人(中央水研),淀太我(科技団),山崎継子(長大水)

 冷水病被害が深刻なアユについて,輸送状況を模した高密度条件下におけるストレス反応を調べた。通常の輸送密度の範囲内でも,乱流中におかれたアユは翻弄され,24 時間以内に血清コルチゾル濃度の急上昇が認められたが,タンク内の水の流れる方向を一定にすることで,個体数密度を変えずにストレス反応が抑制された。水流の操作によって形成される群状態は,輸送時の個体数密度によるストレスを軽減させると考えられた。
68 (4), 849-853 (2002)
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ヒラメ初期生活史における攻撃行動の発現と発達

阪倉良孝(長大水),塚本勝巳(東大海洋研)

 ヒラメの攻撃行動の発現・発達および日周性について,実験水槽を用いて観察した。攻撃行動は発育段階が稚魚期に移行したふ化後 39 日令(体長 13.2 mm)に発現し,以後その頻度は増大した。変態期に特異的な静止行動(オーム(Ω)姿勢)が観察され,その頻度は 19 日令(体長 7.6 mm)にピークを示した後減少し,稚魚期には見られなかった。攻撃行動,Ω 姿勢ともに昼行性を示した。着底様の行動は 19 日令から 30%未満の個体に観察され,39 日令には全個体が着底した。Ω 姿勢は餌の有無に関わらず観察されたこと,およびその頻度の個体発生過程から,摂餌行動ではなく攻撃行動の前駆行動と考えられた。
68 (4), 854-861 (2002)
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カサゴの味覚器応答

神原 淳,大原和広,松田智行,日高磐夫(三重大生物資源),滝井健二,熊井英水(近大水研)

 アミノ酸,核酸関連物質,有機酸に対するカサゴの味覚器応答を調べた。アミノ酸は L-プロリン(10-6~10-5 M),核酸関連物質はイノシン(10-5 M 付近),有機酸は L-乳酸(10-6 M付近)が最も閾値が低かった。味受容器の自己順応実験では,L-乳酸の 10-5 M 順応下の濃度-応答曲線には非順応下と比較して大きな変化はなかったが,10-4 M 順応下では応答が低下し曲線は高濃度側へシフトした。このことから,閾値付近の低濃度での順応とそれより高い濃度での順応での味受容機構の違いが示唆された。交差順応実験では,L-乳酸と L-アラニン間には強い交差順応が認められたが不完全で,それぞれ独立した味受容器を有する可能性が,一方,イノシンと 5′-イノシン酸は同一受容器を共有することが示唆された。
68 (4), 862-871 (2002)
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沖縄海域におけるカンモンハタの生殖の季節変化と月齢産卵周期の組織学的観察

Lee, Y. D., Park, S. H.(済州大海洋研),竹村明洋,高野和則(琉大熱生研)

 沖縄周辺に生息するカンモンハタ(Epinephelus merra)雌の生殖周期と産卵周期を組織学的に調べた。本種の生殖腺体指数は 5 月に増加し始め,6 月にピークを示した。5 月から 8 月の卵巣には卵黄球を持つ卵母細胞が観察できたが,9 月以降には未熟なそれしか観察できなかった。この結果から本種の産卵期は 5 月から 8 月まで続くと考えられた。産卵期に月齢に従って卵巣を観察した結果,満月に向かって卵巣は発達し,満月後の卵巣内には排卵後濾胞が認められた。本種の産卵が月齢(満月)に同調していると考えられた。
68 (4), 872-877 (2002)
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異なるタンパク質・エネルギー比の飼料を 2 種類の給餌率の下で飼育した大西洋サケ Salmo salar の成長と飼料効率

P. A. Azevedo, D. P. Bureau, S. Kesson,and C. Y. Cho (Univ. of Guelph)

 平均多重 7.0 g の大西洋サケを水温 15°C で 16 週間,異なる可消化タンパク質(DP)/可消化エネルギー(DE)比の飼料で飼育した。なお,その際給餌率としては 100% と 80% の 2 種類を用いた。DP/DE 比が異なっても成長に差は見られなかったが,飼料効率は DE が増加(18 から 22 MJ/kg)することにより改善された。なお,給餌率の違いによる差は見られなかった。魚体の脂質含量は,飼料脂質含量の増加と DP/DE 比の低下により増加した。飼料中の DP および DE の増加により,堆積物量,窒素およびリン排泄量が減少したが,可溶性の窒素およびリン排泄量には影響を及ぼさなかった。
68 (4), 878-888 (2002)
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ニゴロブナの性転換におけるホルモンと水温の効果

藤岡康弘(滋賀水試)

 全雌ニゴロブナを用いて遺伝的雌から機能的雄への性転換に必要な 17-methyltestosterone(17-MT)の濃度と飼育水温の関係を検討した。孵化後 20 日の稚魚を用いて 80 日間にわたり飼育水を 24°C と 30°C に保ち,飼育水に 0.01-10.0 μg/L の 17-MT を添加して飼育した。24°C では,対照ではほぼ全雌であったが 17-MT の 0.1 および 1.0 μg/L で全雄となり,10.0 μg/L で再び雌が 43% 出現した。30°C でも 24°C とほぼ同様な雄化が認められたが,対照に 22% の雄が出現した。以上の結果は,ニゴロブナの性が水温と遺伝的要因により決定されていることを示しており,雌から雄への性転換にはホルモンの濃度と飼育水温が重要であることが明らかとなった。
68 (4), 889-893 (2002)
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魚類養殖場における給餌量と底質の相互関係

ヴァイシャリ パーワー,松田 治,藤崎奈緒美(広大院生物圏)

 瀬戸内海の魚類養殖場における底質の変化と給餌された有機態炭素量の変動関係を 3 年間にわたって調査解析した。まず,底質指標である強熱減量,酸化還元電位,酸揮発性硫化物量の年平均値は有機態炭素年投与量とよく関係していた。次に底質の季節変動が何によるかを検討したところ,酸化還元電位の季節変動は水温と有機態炭素投与量の季節変動に依存していることが分かった。酸揮発性硫化物量の季節変動にも同様の関係がみられ,重回帰分析の結果からは,水温と有機体炭素投与量の両者が酸揮発性硫化物量の変動の 80% を説明することが明らかになり,中でも有機態炭素投与量の影響がより重要であると判断された。このような結果から,魚類養殖場の底質の変化は給餌量に強く依存することが結論づけられた。また底質指標の中でも,酸揮発性硫化物量が,持続的養殖のための環境管理を実現する上で,底質の酸化還元電位とともに,優れた指標性を持っていることが明らかになった。ペレットサイズの違いが底質に及ぼす影響についても示唆が得られた。
68 (4), 894-903 (2002)
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コイ成熟未受精卵に含まれるヌクレオプラスミン様タンパク質の精製と性質

佐藤孝治,飯原亜希子,酒井直行(北大院地球環境),伊藤文成(中央水研上田),野水基義,西則雄(北大院地球環境)

 コイ成熟未受精卵から分子シャペロンであるヌクレオプラスミン様タンパク質を精製した。このタンパク質の CNBr 消化したペプチド断片の一次構造を決定したところ,ヌクレオプラスミンと同様に C 末端に Glu がつながった酸性領域を有し,またアミノ酸組成分析によりヌクレオプラスミンと類似の組成を有することが明らかとなった。このヌクレオプラスミン様タンパク質はオリゴマーとして存在していることが HPLC のゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより確認された。さらに,このタンパク質はヌクレオプラスミンと同様に熱安定性で,リン酸化されており,サケ精子核を脱凝縮することが明らかとなった。
68 (4), 904-912 (2002)
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ベトナム産魚醤油の呈味有効成分

朴 貞任(東大院農),渡辺毅彦,遠藤健一(日本たばこ産業),渡辺勝子,阿部宏喜(東大院農)

 ベトナム産魚醤油 Nuoc mam の呈味有効成分を官能試験により決定した。35 種の化合物を用いて調製した合成エキスからオミッションおよびアディションテストにより,グルタミン酸,アスパラギン酸,スレオニン,アラニン,バリン,ヒスチジン,プロリン,チロシン,シスチン,メチオニンおよびピログルタミン酸の 11 成分が呈味有効成分と判定された。多くの成分がうま味,甘味および味全体に寄与することが判明した。これら 11 成分からなる合成エキスは魚醤油の味を再現するものの,呈味強度は完全合成エキスや元の魚醤油より低かった。
68 (4), 913-920 (2002)
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ベトナム産魚醤油におけるオリゴペプチドの呈味効果

朴 貞任,石田啓史(東大院農),渡辺毅彦,遠藤健一(日本たばこ産業),渡辺勝子,村上昌弘,阿部宏喜(東大院農)

 結合アミノ酸態窒素が全窒素の 20% を占めるベトナム産魚醤油 Nuoc mam について,酸性および中塩基性画分からそれぞれ高および低分子画分を得た。呈味有効成分からなる合成エキスに各高分子画分を添加すると,風味質のみならず基本五味の増強も認められた。各画分から 17 種のジ-,トリ-およびテトラペプチドを単離し,アミノ酸配列を決定した。合成ペプチドは食塩無添加では苦味,酸味,うま味あるいは無味を示し,0.3% 食塩存在下ではいずれも甘味とうま味を与えることがわかった。
68 (4), 921-928 (2002)
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様々な温度におけるいくつかの魚肉中のトランスグルタミナーゼ全活性

塚正泰之,三宅康賀,安藤正史,牧之段保夫(近大農)

 本研究では,坐りやすさの異なるイトヨリ,シログチ,マダイ,コイ肉中のトランスグルタミナーゼ(TGase)全活性を様々な温度で測定した。25°C における TGase 全活性は,シログチが最も高く,マダイ,コイ,イトヨリの順に低くなったが,30°C 以上ではコイ TGase の全活性が最も高くなった。シログチ,イトヨリ,マダイ,コイの至適温度は,それぞれ 30°C , 40°C , 50°C , 50-55°C であった。コイでは至適温度における全活性が 25°C の 8.5 倍にも達した。
68 (4), 929-933 (2002)
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氷蔵したゴマサバからの氷核細菌の分離とその性質

陳 美伶,邸 思魁,江 善宗(台湾海洋大)

 氷蔵したゴマサバから 1 株の氷核細菌(MACK-4 と暫定的に命名)を分離し,Pseudomonas fluorescens と同定した。本細菌は 25%グリセロール添加ニュートリエント培地(NB-G)中でよく増殖し,至適増殖温度と至適増殖 pH それぞれ 15°C と 6.5 であった。15°C の培養では,54 時間後に氷核活性(INA)は最大となったが,25°C, 48 時間の培養では INA はほとんど認められなかった。また,増殖ならびに INA は NB-G に添加した塩化ナトリウム量の増加(0.0~4.0%)にともなって低下した。本菌の INA は 5~25°C, pH 4.0~9.5 の範囲で安定であったが,分離した氷核物質は,5~25°C, pH 5.5~9.0 の範囲で安定であった。
68 (4), 934-941 (2002)
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マダイ BAC ライブラリーの構築(短報)

片桐孝之,皆川園美,廣野育生(東水大),家戸敬太郎(近大水研),宮田雅人(三重大生物資源),浅川修一,清水信義(慶応大医),青木 宙(東水大)

 クローンマダイの精子を用いて巨大 DNA 断片を保持する Bacterial ariticial chromosome (BAC) ライブラリーを構築した。作製したライブラリー中のクローン数は 138,500 であった。インサート DNA のサイズは 35 kb~150 kb で,平均サイズは 113 kb であった。1,500 クローンについてインサート DNA の有無を調べたところ,91% のクローンはインサート DNA を保持していた。平均インサートサイズ,クローン数およびインサート DNA 陽性クローン率から,今回作製したライブラリーはマダイゲノムを 14.5 倍含むことが推定された。
68 (4), 942-944 (2002)
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アルゴス衛星システムで調べられたアカウミガメ雄成体の外洋域利用(短報)

畑瀬英男,松沢慶将,坂本 亘(京大院農),馬場徳寿(遠洋水研),宮脇逸朗(串本海中公園)

 1998 年 11 月 27 日,和歌山県串本町大島樫野の定置網で捕獲された 1 個体(標準直甲長 783 mm)にアルゴス発信器を装着後,同日放流し,35 日間にわたって回遊経路を追跡した。放流直後の 4 日間は,黒潮に乗って回遊したが,その後,黒潮南方の外洋へ向かった。これは Sakamoto et al. (1997) と同様の結果であった。非繁殖期に日本沿岸で捕獲される雄成体には,黒潮南方の外洋を摂餌越冬域としている個体がいることが確認された。
68 (4), 945-947 (2002)
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長良川における放流アユの産卵(短報)

大竹二雄,山田千秋(三重大生物資源),内田和男(中央水研)

 長良川における放流アユの産卵を確認するため,耳石 Sr:Ca 比を用いて 9 月下旬~11 月下旬(1995~1998 年)に産卵場(岐阜市河渡)に来遊したアユを天然遡上魚と放流魚とに判別した。耳石中心部の Sr:Ca 比により両者は明瞭に判別された。全供試魚(360 尾)の 11%(40 尾)が放流魚であった。放流魚の 75% が産卵前期(9 月下旬~10 月上旬)に出現し,同時期に採集されたアユの 25% を占めた。これより放流魚は早期に産卵するが,天然遡上魚との間で交雑のあることが強く示唆された。
68 (4), 948-950 (2002)
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岩内湾におけるアミ類 Neomysis czerniawskii のエネルギー量(短報)

小岡孝治,柳田大介(北大水),大崎正二(道原子力環セ),鈴木祐介,高津哲也(北大水)

 北海道岩内湾において,ヒラメ稚魚の餌と考えられるアミ類の Neomysis czerniawskii を採集し,エネルギー量および豊度の季節変化を検討した。10 月 24 日に採集された N. czerniawskii のエネルギー量はそれ以前の時期に比べて有意に減少していたものの,その差は小さかった。本種の豊度は成体と亜成体を加えた場合は 6 月と 10 月で大きな差は認められなかったが,未成体では 10 月 24 日に顕著に増加した。エネルギー量と餌の豊度という点からヒラメの種苗放流は,岩内湾では 10 月に行うのが良いのかもしれない。
68 (4), 951-953 (2002)
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オナガザメ筋肉加水分解物および内臓抽出物由来アンジオテンシンⅠ変換酵素阻害物質の精製(短報)

野村 明(高知工技セ),野田なほみ,丸山 進(工技院生命研)

 オナガザメ筋肉加水分解物および内臓熱水抽出物から Sephadex LH-20, DEAE-Toyopearl, SP-Toyopearl および逆相 HPLC を用いてアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)を阻害する 7 種類のペプチドを分離精製した。筋肉加水分解物由来の ACE 阻害ペプチドは Val-Trp (IC50 値;1.68 μM), Met-Trp (3.76 μM), Leu-Trp-Ala (12.7 μM), Val-Ser-Trp (23.2 μM), Val-Thr-Arg (135.9 μM) および Phe-Arg-Val-Phe-Thr-Pro-Asn (9.59 μM) であり,腎臓熱水抽出物由来の ACE 阻害ペプチドは Ile-Lys-Trp (0.54 μM) であった。
68 (4), 954-956 (2002)

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