滝澤 敬(水大校),高見東洋,大橋 裕,村田作男(山口外海栽培セ)
山口県外海栽培漁業センターのアユ種苗生産事業における生物生産過程を,線形モデル Population Balance Model (PBM) を用いて推定した。また,アユの成長・生残に関するパラメータを,種苗を採取した親魚の由来別に比較した。成育途上における全長組成の分散の変化率は,1 日あたり 3.21×10-2-5.24×10-1 mm2 となった。これらの値を PBM に代入して生産終了時の現存量を推定し,事業報告書の記載結果と比較したところ,推定値は記載値よりも平均値で 9.04 kg 高くなった。また,アユの成長速度は孵化時の水温と正の相関関係にあることが示唆された。高木基裕,庄司栄治郎,谷口順彦(高知大農)
アユ DNA より 7 種のマイクロサテライト DNA 遺伝子座を単離したところ顕著な多型性が認められた。マイクロサテライト(マーカー)の多型解析を行ったところ,両側回遊型,陸封型アユともに高い遺伝的多様性を示すとともに,対立遺伝子頻度には両品種間に顕著な遺伝的分化が認められた。一方,絶滅危惧種のリュウキュウアユの遺伝的変異保有量は著しく低く,本邦系アユとの間に顕著な遺伝的分化が認められた。今後,マイクロサテライト多型は,本邦系両側回遊型アユの集団構造の解析において有力なマーカーになることが示唆された。F.-G. Liu,I.-C. Liao(国立台湾大学)
6 種類の異なる給餌方法を用いて,平均体重 12.5 g のハイブリッドシマスズキを水温 23.5-26.5℃ で 56 日間飼育し,成長や魚体組成に及ぼす影響を調べた。給餌方法は,1 日 1 回給餌,8 時と 14 時の 2 回給餌,14 時と 20 時の 2 回給餌,8 時,11 時および 14 時の 3 回給餌,8 時,14 時および 20 時の 3 回給餌,8 時,11 時,14 時および 17 時の 4 回給餌の 6 種類である。最も優れた成長は,6 時間間隔の 1 日 3 回給餌で得られた。給餌方法の違いにより,魚体組成の内,水分と粗脂肪は影響を受けたが,タンパク質と灰分含量に差はなかった。Uthairat Na-Nakorn,谷口順彦,Estu Nugroho,関 伸吾,Wongpathom Kamonrat
タイナマズ Clarias macrocephalus のマイクロサテライト DNA 増幅用プライマーを設計した。検出された 4 遺伝子座のうち,3 遺伝子座が多型的であることが判った。タイ国内の 4 地点(Pattani, Pattalung, Chiangra, Prachinburi) から採集した標本群について,3 つの多型的マーカーを検出した。1 遺伝子座あたりの平均対立遺伝子数は,それぞれ 8.0, 8.7, 6.0 および 10.0 であった。平均ヘテロ接合体率は 0.708, 0.637, 0.620, 0.718 であった。標本群間の遺伝的距離は 0.230 (Pattalung と Prachinburi 間)から 0.535 (Pattalung と Chiangrai 間)の範囲となったが,地理的距離の間に相関は認められなかった。芦田貴行,沖増英治,宇井雅俊,平郡光弘,小山泰明,雨村明倫(福山大・内海生物資源研)
ヒラメに免疫賦活剤とホルマリン不活化菌体(FKC) を含む餌料を単独もしくは併用して与え,その効果を血清中凝集抗体価及び細菌感染後の延命により評価した。3 週間の餌料投与の結果,FKC 併用投与区は対照区に比べ有意に(p<0.05) 抗体価が上昇した。また FKC と 2 種類の免疫賦活剤を併用することによりエドワジエラ細菌感染に対して高い防御効果が示され,免疫賦活剤を用いた魚類経ロワクチンの有用性が示唆された。難波謙二(東大海洋研),武田 潔(弘前大農),東原孝規(工技院),大和田紘一(東大海洋研)
沿岸底泥を接種源として,メタンと栄養塩類を与えた時に得られた培養は増殖中にメタンと酸素を消費し,二酸化炭素を放出することが確かめられた。また電子顕微鏡による観察では groupIの細胞内膜構造をもつメタン資化細菌細胞が優占していた。そこで大槌湾,東京湾および油壷湾の海底泥中のメタン資化細菌を MPN 法で計数し,増殖のあった最高希釈段階の一部は電子顕微鏡による観察によってメタン資化細菌の増殖の確認を行った。各試料採集域についてメタン資化細菌の計数値と従属栄養細菌数とは正の相関が認められた。また東京湾の 2 つの観測点における鉛直分布から,メタン資化細菌によるメタン消費活性と底泥中のメタン濃度との間には密接な関連のあることが示唆された。渡邉哉子(東水大),青木秀夫,山形陽一(三重水技),真田康広,日高悦久(大分海水研),
木村 創(和歌山増殖試),Kiron Viswanath,佐藤秀一,渡邉 武(東水大)
本間義治,牛木辰男,武田政衛,内藤笑美子,出羽厚二,山内春夫(新潟大医)
新潟~両津(佐渡島)航路でジェットフォイルに衝突し,吸水管に皮膚筋肉骨片を残した動物と,翌日(1997 年 5 月 3 日)100 km 余離れた柏崎市笠島海岸へ漂着したオオギハクジラとが,同一個体か否かを検討した。組織学的には,両試料は同一構造を示した。そこで,rDNA 遺伝子内の 107 塩基対を比較したところ,両者とも一致したので,同一種と推定された。さらに,他のオウギハクジラ 6 個体を加え,3 種類のマイクロサテライト(4 塩基繰り返し)の型を比較したところ,衝突相手と漂着体とは 3 遺伝子座が完全に一致し,同一個体の可能性が推定された。S.-Y. Shiau,M.-S. Lei(国立台湾海洋大学)
1 日 2 回給餌法と連続給餌法を用いてハイブリッドティラピアを 8 週間飼育し,炭水化物の利用に及ぼす影響を調べた。炭水化物源としてコーンスターチとグルコースを飼料中それぞれ 44% 配合した飼料を,平均体重 0.47 g の魚に 1 日 5 % 給餌し,水温 26℃ で飼育するとともに,実験終了後,肝臓における種々の糖代謝酵素活性を測定した。その結果,炭水化物源の違いにかかわらず,1 日 2 回給餌よりも連続給餌法の方が優れた成長を示した。さらに,種々の酵素活性も,給餌方法の違いにより有意に異なり,連続給餌の方が炭水化物の利用に有効であることがわかった。木村俊夫,菅原 庸,瀧上富美子,花井千津子,松本則保(三重大生物資源)
海洋性メタン酸化細菌(メタノトロフ)の菌学的性質を明らかにするため,内湾堆積物からメタン酸化細菌を分離した。これら分離菌株の中から生育良好な代表菌株 2 菌株(GM-1, NM-11) を選択し,菌学的性質を調べた。極鞭毛を有するグラム陰性桿菌で,タイプ 1 のメタノトロフの性質を示した。ディスク状に発達したタイプ 1 の内膜構造を持ち,主要な脂質構成脂肪酸は C16:1 と C16:0 であった。GM-1 株および NM-11 株の DNA の G+C 塩基含量はそれぞれ 51.0, 52.9%mol で,生育に NaCl を要求し,光による生育阻害が見られた。
瀬崎啓次郎(日本エヌ・ユー・エス),Rowshan Ara Begum(東大農),Prachit Wongrat (Kasetsart Univ.),
Mansha P. Srivastava (Bhagalpur Univ.),Sachi SriKantha,菊池 潔(東大農),石原 元(水土舎),
田中 彰(東海大海洋),谷内 透,渡部終五(東大農)
高木基裕,岡村哲郎(高知大農),張成年(遠水研),谷口順彦(高知大農)
太平洋クロマグロの DNA より,4 種のマイクロサテライトプライマーを開発したところ,顕著な多型性が認められた。大西洋クロマグロ 2 集団を含めて多型解析を行ったところ,顕著な遺伝的差異が太平洋と大西洋クロマグロの間で認められた。また,他のマグロ属魚種(ビンナガ,メバチ,キハダ)にクロマグロプライマーを用いたところ,4 種のプライマーとも全ての魚種において,豊富な多型を示す増幅断片が検出された。今後,本マイクロサテライトプライマーが,クロマグロと他のマグロ属魚種の集団構造の解析において有力なマーカーになることが示唆された。風間真紀,山羽悦郎,山崎文雄(北大水)
キンギョの始原生殖細胞(PGCs) の動態および起源を明らかにするために,組織学的な観察および実験発生学的解析を行った。PGCs は受精後 30 時間(尾芽胚)に胚体の広い範囲の様々な組織中に観察でき,この時期を出現時期と定めた。中期胞胚期に胚盤の下部を除去して発生させた胚は,受精後 10 日に対照胚と変わらない形態を示したが,PGCs の数が減少していた。胚盤上部の除去胚から発生した受精後 10 日仔魚の PGCs は減少しなかった。このことから,中期胞胚期に PGCs を生み出す割球が既に存在し,この割球は再生しないものと考えられた。梶 達也(京大農),岡 雅一,竹内宏行,廣川 潤(日栽協),田中 克(京大農)
キハダ仔稚魚の脳下垂体および成長ホルモン(GH) 産生細胞の発達を組織学的・免疫組織化学的手法を用いて調べた。脳下垂体はふ化後 2 日目に組織学的に識別され,ふ化後 16 日にはほぼ下垂状態となった。GH 産生細胞はふ化後 4 日の摂餌開始時から免疫組織化学的に検出された。GH 産生細胞の脳下垂体に対する体積比(%GH) は摂餌開始後 3 日間は非常に高かった。その後 %GH は急減し,低い値で推移した後,Postflexion 期から稚魚期にかけて著しく上昇した。キハダ仔稚魚は他の海産魚に比べて高い %GH を示し,仔魚期の後半から高い成長ポテンシャルを持つことが推測された。森岡克司,藤井伸也,伊藤慶明,劉 承初,小畠 渥(高知大農)
マルソウダの加工処理残滓(頭部,内臓)を自己消化させ,得られるエキスを調味原料として利用することを目的として,その自己消化条件について検討した。残滓中のタンパク質は,15℃ で 24 時間,中性付近で自己消化させることで効率的かつ簡単にアミノ酸として回収でき,残滓に含まれるタンパク質(アルカリ不溶性タンパク質を除く)の回収率は,約 87% であった。得られた自己消化エキスは,His, Glu, Lys. Leu, Ala などの遊離アミノ酸やペプチドを多く含んでいた。また試飲の結果,自己消化物から得られた熱水抽出エキスは旨味を持ち,調味原料として利用可能であると判断した。石川 勝,長島裕二,塩見一雄(東水大)
5 種の食用貝類(マガキ,ホタテガイ,アサリ,サザエ,ヒメエゾボラ)粗抽出液中のアレルゲンとマガキの精製アレルゲン Cra g1 との交差反応が競合 ELISA で確認され,貝類の主要アレルゲンはいずれもトロポミオシンであると推定した。4 種類の合成ペプチドを用いた競合 ELISA により,Cra g1 の IgE 結合エピトープ中の N 末端および C 末端の両領域が IgE 抗体との反応に重要であることが判明した。しかし,貝類の主要アレルゲンはトロポミオシンであるにも関わらず,その IgE 結合エピトープは必ずしも Cra g1 と共通ではないことが示唆された。飯島憲章,今吉純司,相田知早子(広大生物生産),鹿山 光(福山大工)
スサビノリ藻体の粗抽出液より,熱処理,陰イオン交換セルロースを用いた段階溶出,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーによりリポキシゲナーゼ様酵素を精製した。精製酵素は,電気泳動的に単一のバンドを示し,さらに酵素の活性染色バンドとも一致した。本酵素の至適 pH は 9 付近にあり,H2O2 によって阻害されるが,KCN や EDTA では阻害されなかった。本酵素はリノール酸を最もよく酸化するが,リノレン酸に対する活性は極めて低く,アラキドン酸やイコサペンタエン酸には全く作用しなかった。二瓶義明,小檜山篤志,平山 泰,菊池 潔,渡部終五(東大農)
孵化直後のコイ仔魚から,E12 転写因子の一部をコードする cDNA を単離し,塩基配列を決定した。演繹アミノ酸配列は他の生物種の相同領域と高い相同性を示した。ノーザンブロッ卜解析を行った結果,E12 の転写産物は受精後 30 時間のコイ卵から孵化後 7 ヶ月の稚魚まで確認された。さらに,E12 遺伝子はコイ成体の筋肉およびその他組織においても発現していた。したがって,コイ E12 は発生初期の細胞の増殖および分化や,孵化後の新たな筋細胞の形成をも含めて,多くの組織特異的遺伝子の転写活性に関与することが示唆された。倪 少偉,埜澤尚範,関 伸夫(北大水)
加熱ゲル形成能が弱いコイとサケのアクトミオシンゾルに微生物由来のトランスグルタミナーゼ(MTGase) とプロテアーゼ阻害剤を添加して坐りの導入と戻りの抑制を図ったところ,両加熱ゲルの貯蔵弾性率と破断強度は著しく増大した。プロテアーゼ阻害剤の効果は MTGaseとの併用でコイで顕著に見られたが,サケではゾル中のプロテアーゼ残存量が少ないために弱かった。非プロテアーゼによる戻りは 40℃ の坐り導入で軽減された。サケの方がコイに比べてゲル形成能が優れていた。北口博隆,内田有恆(京大農),石田祐三郎(福山大工)
海産渦鞭毛藻 C. cohnii より L-メチオニン脱炭酸酵素を陰イオン交換カラム,ゲル濾過カラム等により電気泳動的に単一に精製した。本酵素のゲル濾過による分子量は 204,000 であった。本酵素は活性にピリドキサールリン酸を要求し,最適活性 pH は 7.3,最適活性温度は 30℃ であった。本酵素の反応産物は 3-メチルチオプロパンアミンであった。本酵素は C. cohnii において L-メチオニンからのジメチルスルフォニオプロピオン酸(DMSP) 生合成に関与する酵素であり,C. cohnii は他の生物で現在までに報告された経路とは異なる DMSP 生合成経路を持つと考えられる。Mita Wahyuni,石崎松一郎,田中宗彦(東水大)
凍結乾燥して得たクロカジキ肉水溶性タンパク質(WSP) をグルコース(G) あるいはグルコース-6-リン酸(G6P) の存在下でメイラード反応(60℃) させて,WSP の機能改善を図った。WSP の乳化活性,保水性,消化性は,G6P とのメイラード反応初期におけるリン酸化によって顕著に改善された。一方,G とのメイラード反応はこれら機能をわずかに改善するに留まった。WSP のグリコシル化およびリン酸化は WSP にリン酸カルシウムを溶解させる機能を付与させ,特にリン酸化でその傾向が顕著であった。以上の結果,G6P とのメイラード反応による WSP のリン酸化は,WSP 機能改善にきわめて有効であることが明らかになった。田中宗彦,國崎直之,石崎松一郎(東水大)
サルミンの乳化性,抗菌性を改善する目的で,凍結乾燥したサルミン-デキストラン混合物(1 : 9, w/w) をガラス転移温度(Tg) 以上で加熱して,メイラード反応により複合体を調製した。メイラード反応による複合体形成および褐変化は,Tg+30℃ 以上の温度域で速やかに進行した。180℃ あるいは 190℃ における初期段階のメイラード反応によりサルミンの乳化活性は 4~5 倍に増大したが,反応後期では激減した。グラム陽性菌に対するサルミンの抗菌性は,デキストランとの複合体化によって改善された。またサルミンは本来グラム陰性菌に対して効果を示さないが,複合体は一部のグラム陰性菌に抗菌性を示すようになった。乳化活性を併せ持つ天然抗菌剤開発の可能性が示唆された。菊池 潔,糸井史朗,渡部終五(東大農)
10 および 30℃ 馴化コイの速筋から抽出した水溶性タンパク質画分を 2 次元電気泳動に付して比較したところ,10℃ 馴化魚の 55 kDa 成分の発現量は,30℃ 馴化魚のそれに比べて約 2 倍高かった。本 55 kDa 成分をコードする cDNA をクローニングし,そのアミノ酸配列を調べたところ,他の真核生物のミトコンドリア ATP 合成酵素 β-サブユニットの配列と 72-89% の相同性を示した。ノザンブロット解析の結果,コイの温度馴化に伴う速筋中,本遺伝子の mRNA 蓄積量は,タンパク質の発現量と高い相関を示した。阿部宏喜,朴 貞任(東大農),福本由希(和洋女大家政),藤田恵理子(国立精神神経センター研),
田中直義(共立女短大生活),鷲尾卓也,大塚聡一郎,清水哲二(味の素食総研),渡辺勝子(東大農)
李 京姫,槌本六良,矢田 修(長大海研),三嶋敏雄,Abdul Jabarsyah,王 勤,
Paula Andrea Gömez Apablaza,橘 勝康(長大海研)
王 勤,槌本六良,矢田 修,李 京姫,Abdul Jabarsyah, Paula Andrea Gömez Apablaza,三嶋敏雄,橘 勝康(長大海研)
養殖マダイと天然マダイとの間で,死後硬直の進行が異なる原因を明らかにするため,Actomyosin の超沈殿反応と Mg2+-ATPase の活性および Ca2+ 感受性を種々の Ca2+ 濃度と ATP 濃度下で比較検討した。超沈殿反応は,両群とも Ca2+ 濃度の上昇に伴って高くなり,ATP 濃度の上昇に伴って低くなったが,そのレベルはいずれの場合も養殖群が低かった。Mg2+-ATPase の活性および Ca2+ 感受性の変化も,先と同様の様相を呈したが,それらのレベルは養殖群が逆に高かった。また,超沈殿反応と Mg2+-ATPase 活性との間に,両群とも有意に高い正の相関性が認められた。しかし,両値の分布位置は両群で異なり,同じ活性レベルに対する超沈殿反応は養殖群が低かった。これらの結果は,筋収縮に関連する Actomyosin の性質が養殖と天然マダイの間で異なることを示唆していた。今井秀行(東海大院海洋),藤井義弘(岡山水試栽培セ),唐川純一,
山本章造(岡山水試),沼知健一(東海大院海洋)
F. Salati(カメリノ大獣医),A. Meloni, E. Marongiu(サルジニア動物予研),楠田理一(福山大工)
1995 年 2 月から 1996 年 1 月にかけて,サルジニア島南東部のトルトリ海域において,健康な養殖イガイの肝膵臓を採取して,優占する細菌相を調べた。その結果,グラム陽性菌が 87.6% を占め,グラム陰性菌は 12.4% であった。優占する主な細菌相は Vibrio/Aeromonas, Aeromonas/Actinobacillus, Pseudomonas, Enterobacteriaceae, Moraxella および Micrococcus グループが出現した。これらのうち,最も優占して出現したのは Vibrio/Aeromonas グループであった。今回の調査では魚介類や人に病原性を示す細菌は分離されなかった。小倉未基(遠洋水研)
べーリング海の公海域での超音波テレメトリーによるベニザケ行動調査時に,非常に速い鉛直移動速度で,かつ深くまで潜水した 4 回の鉛直移動行動が観察された。最も速い潜水速度は下降時で 2.19 m/s (3.76 尾叉長/秒),浮上時で 1.41 m/s (2.18 尾叉長/秒)であった。これらは海洋における一般的なサケ属魚類成魚の鉛直移動速度である 0.5 m/s 未満よりも著しく速いものであったが,これらの行動の動機は不明である。鹿野隆人,藤尾芳久(東北大農)
シロサケの仔魚期における塩分耐性の変化を明らかにするために,各塩分濃度の海水に 24 時間浸漬した時の生残率の変化を調べた。孵化から 5 日経過した仔魚は,45 ppt 海水でも全ての個体が生存した。時間の経過に伴う塩分耐性の変化を半数致死塩分濃度(LD50) で表したところ,孵化から 5 日後の LD50 は 49.2 ppt であったのに対し,孵化から 30 日後には 35.8 ppt まで低下した。このことから,シロサケの仔魚期において塩分耐性が大きく低下することが明らかになった。林崎健一(北里大),早川康博(水大校),井田 齊(北里大)
沿岸域における水質環境データの有効利用を目的として,データベース検索とその結果のカラー等高線図等への可視化システムを試作した。本システムはインターネット上での運用が可能であり,一般の www ブラウザから容易に操作できることに特色がある。三陸沿岸大船渡湾,月別深度別の栄養塩等 11 項目の水質データを用いて実際のデータベースを構築し,湾内の水質環境を特徴づける各定点ごとの季節変化と湾縦断面のカラー等高線図への視覚化を可能とした。永井 毅(九大),稲田純児(ロイヤル),浜田盛承,甲斐徳久,田上保博,上西由翁(水大校),
中川久機,藤木和浩,中尾実樹,矢野友紀(九大)
東田裕之,栗原秀幸,細川雅史,高橋是太郎(北大水)
ヌクレオチドおよびそれらの関連化合物の大腸菌由来 β-グルクロニダーゼ(β-G) 阻害活性を検討した。調べた 14 種の化合物のうち,IMP, AMP,および ATP のプリンヌクレオチド 3 種に β-G 阻害活性が認められた。GMP に阻害がないことから,プリン 2 位の置換基は化合物の酵素への接近を妨げると考えた。IMP, AMP,および ATP の β-G 阻害は拮抗的であり,リボース-5℃-リン酸部分が基質の疑似構造となっていると考えられる。これらのヌクレオチドの阻害物質定数は既知阻害物質と比較して高い値であった。河野迪子(東大農),長澤寛道(東大院農),渡邉俊樹(東大海洋研),松居 隆,
古川 清(東大院農),古賀大三(山口大農),會田勝美(東大院農)
藤井建夫,呉 友欽,鈴木 卓,木村 凡(東水大)
イカ塩辛熟成中の旨味(アミノ酸)生成には,微生物は殆ど関与せず,主に自己消化酵素によるものであることが知られている。本研究では,抗生物質添加及び非添加の塩辛を調整し,熟成中の微生物の役割を風味(有機酸)生成の側面から検討した。その結果,抗生物質非添加の塩辛では乳酸が最大 225 mg/100 g,酢酸が 153 mg/100 g 蓄積したのに対し,抗生物質添加区では有機酸含量の増加はみられなかった。又,塩辛から優勢菌群として分離した Staphylococcus 属の代表株はいずれもイカ塩辛エキス中で有機酸を生成したことから,これらの優勢菌群が塩辛中での有機酸の蓄積に重要であると考えられた。