Fisheries Science 掲載報文要旨

広島湾における養殖カキバイオマス推定のための水質データの適用

プット・ソングサングジンダ,松田 治,山本民次,ナラシマル・ラジェンドラン,
前田 一 (広大生物生産)

 カキの成長率と死亡率を推定するため,広島湾内 9 カ所の毎月の水質調査データを用いて,多重回帰分析を適用した。成長率はクロロフィル a (Chl a),塩分,溶存酸素(DO) の引き続く二か月間の値の差によって最も良く表すことができた。また,積算死亡率はカキのむき身重量,水温,DO, Chl a から見積もることができた。モデルでは,現場の総バイオマスがカキの取り上げ直前に最も大きくなり,収穫によって急激に小さくなることが明瞭であった。推定成長率及び推定積算死亡率は 4 小海域ではほとんど同じであることから,現場のカキのバイオマスは各小海域の養殖筏の数に比例して表すことができることを示した。この研究で行った方法は,広島湾のようにカキ養殖が濃密に行われている海域内の物質収支におけるカキの役割を評価するのに非常に有用であると思われる。

65(5), 673-678(1999)
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エクストルーダ飼料中の α-トコフェロール含量が黄疸原因菌接種養殖ブリの生体内脂質過酸化およびその防御機構に及ぼす影響

伊東尚史(鹿大連農研),村田 寿,津田友秀(宮崎大農),山田卓郎(宮崎水試),山内 清(宮崎大農),
宇川正治(丸紅飼料),山口登喜夫(東医歯大),吉田照豊,境  正(宮崎大農)

 ブリに α-トコフェロール(α-Toc) を 12(I区)または 88(II区)mg 添加したエクストルーダ飼料を 46 日間給餌後,黄疸原因菌を接種した。飼育試験の結果,II区に比べI区に多量の α-Toc が蓄積し,脂質過酸化は抑制されていた。菌接種により両区ともに脂質過酸化が進行し,黄疸が発症した。その症状はI区に比べII区の方が重篤であった。α-Toc の脂質過酸化促進作用を考慮すると,組織中のアスコルビン酸が少ないために,高 α-Toc 蓄積による脂質過酸化の進行がII区で起こり,より重篤な黄疸が発症したと考えられる。

65(5), 679-683(1999)
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MtDNA の PCR 解析による日本でのウナギ外来種の検出

張  寰,三河直美,山田祥朗,堀江則行,岡村明浩,宇藤朋子,田中 悟,元 信尭((株)いらご研究所)

 MtDNA シトクロム b 領域において PCR 及び PCR-RFLP 解析により,1997 年 8 月~1998 年 2 月に採捕された天然ウナギの種を鑑定した。1,048 尾供試魚中,832 尾(79.4%) はニホンウナギ,その他(216 尾,20.6%) はヨーロッパウナギと同定された。5 産地のうち,ヨーロッパウナギが検出されたのは宍道湖(31.4%) と三河湾(12.4%) であった。ヨーロッパウナギが日本の自然水域に分布する原因及びニホンウナギの資源に及ぼす影響を検討した。
65(5), 684-686(1999)
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濃縮ろ過海水による海産微細藻類に対する増殖抑制効果

生地 暢,澤辺智雄,絵面良男(北大水)

 1993 年 6 月から 1994 年 2 月にかけて,北海道噴火湾沿岸で採取した海水から海産微細藻類 Tetraselmis sp. および Alexandrium catenella の増殖に影響を及ぼすウイルスの探索を試みた。その結果,1993 年 9 月と 10 月の海水試料に増殖抑制効果が観察された。これらの培養上清について,増殖抑制効果を調べたところ,0.22 μm フィルターを通過するが 0.05 μm を通過せず,継代が可能,易熱性,DNase およびエーテルに耐性,RNase, Proteinase K,酸および紫外線に感受性の因子が増殖抑制を引き起こすことが示された。また,増殖抑制を受けた藻類細胞抽出液にも増殖抑制効果が認められた。さらに,本因子は A. catenella, Tetraselmis sp. および Gymnodinium mikimnotoi 無菌株にのみ増殖抑制効果を示した。従って,本増殖抑制因子は,現場環境中に存在するウイルスや未知の微生物である可能性が示唆された。
65(5), 687-693(1999)
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台湾の宜蘭湾陸棚縁辺域における DSL の日周鉛直移動

Shih-Chin Chou, Ming-Anne Lee,Kou-Tien Lee(台湾海洋大)

 水中科学音響システム(38 kHz) を用いて,DSL の日周鉛直移動の研究を 1997 年 4 月 13-15 日及び 6 月 12-14 日に台湾北部の宜蘭湾に於いて行った。DSL は,日出 30 分前に毎分 1.4~1.7 m の速さで降下し始め,日中は 180~280 m 層に溜った。また日没 30 分前に毎分 1.5~1.9 m で上昇を始め,夜間は 10~150 m 層により,DSL の構成生物を採集した結果,体長 1.5 cm 以上の生物の中で優占したのは,サクラエビ Sergia lucens とシラエビ Pasiphaea japonica で,全採集物の 89.3% をしめた。昼間の平均分布密度は夜間の約 3 倍高かった。
65(5), 694-699(1999)
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人工飼育キハダ仔稚魚の成長,発育,および消化系の発達

梶 達也,田中 克(京大農),岡 雅一,竹内宏行,大角伸一,照屋和久,廣川 潤(日栽協)

 キハダ仔稚魚を飼育し,外部および消化器官の発達を観察した。ふ化直後に体長 2.65 mm であった仔魚は,ふ化後 37 日には 27.68 mm に成長した。摂餌開始はふ化後 4 日,外部形態からみた稚魚への移行はふ化後 30 日にみられた。ふ化後 14 日には胃腺が,16 日には幽門垂がそれぞれ分化し,成魚様の消化系が確立した。その後胃腺数等の量的形質には著しい発達がみられた。本種では外部形態の変化に先行する形で消化系が発達し,これがその後の魚食性への転換と速い成長を支える要因と考えられた。
65(5), 700-707(1999)
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ウナギシラスの脊髄内運動ニューロンと背根神経節ニューロン

吉田将之,植松一眞(広大・生物生産)

 ウナギシラスの脊髄内運動ニューロンと背根神経節ニューロンを逆行性標識した。運動ニューロンはその大きさと位置とから 2 グループに分けられた。両グループの運動ニューロンとも,レプトセファルスからシラスへの成長に伴う大型化を示したが,分布様式はほぼ同様であった。背根神経節は背根と腹根の合流部末梢側に位置し,通常の硬骨魚と異なる様相を呈した。ウナギは変態過程で体性構造が大きく変化するにもかかわらず,脊髄内運動ニューロンの構成や,感覚ニューロンを含む背根神経節の形態には大きな変化が見られないことが明らかとなった。
65(5), 708-711(1999)
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市販コイ用飼料による養殖環境へのリンの負荷量

渡邉 武,Parveen Jahan,佐藤秀一,Viswanath Kiron (東水大)

 コイ養殖から負荷される総リン量(T-P) の現状を把握するため,1966 年に茨城県霞ヶ浦で使用された 6 種類の市販飼料について,水抽出による有効リン含量およびリンの吸収率と保留率を測定し,T-P を算出した。各飼料の総リン含量は 1.07-2.09%,間接法によるリン吸収率は 26.9-37.3% で,水抽出法による値とほぼ一致したが,リンの保留率より高かった。給餌された総リンのうち,魚体に保持されなかったリンは環境水に負荷されると考えられるので,T-P の計算にはリン保留率を採用すべきであろう。リン保留率から求めた T-P は 9.1-18.8 kg/t 生産量となり,飼料間で大きく異なった。4 週間の飼育成績でも飼料間で大差がみられ,有効リン含量が不足する飼料区では典型的なリン欠乏症の 1 つである体脂肪の増加が観察された。
65(5), 712-716(1999)
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Taylor's power law を用いたデルーリー法の一般化

ピリ ハリス(タンガニイカ湖研),白木原国雄(三重大生物資源),山川 卓(三重水技セ)

 デルーリー法によりパラメータを最尤推定する際に漁獲量の確率分布を与える必要があるが,真のモデルの特定は困難である。一様分布から集中分布まで広く表現できる Taylor's power law に基づくデルーリー法の一般化の方法を提案し,タンガニイカ湖沖合性魚類の漁獲量・努力量データに適用した。比較のために 2 項分布,負の 2 項分布モデルの適用も試みた。Taylor's power law モデルは最も低い AIC を示し,その広い適用性が示唆された。
65(5), 717-720(1999)
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サバヒー用飼料への無機質添加の必要性

M. G. Minoso, I. G. Borlongan(SEAFDEC/AQD),佐藤秀一(東水大)

 リン(P),マグネシウム(Mg),鉄(Fe),亜鉛(Zn) あるいはマンガン(Mn) をそれぞれ無添加としたカゼイン・ゼラチン飼料で,平均体重 2.6 g のサバヒー稚魚を 22 週間飼育した。その結果,P 無添加飼料区で成長がもっとも劣り,次いで Fe 無添加区で有意に低かった。一方,Mg, Zn あるいは Mn 無添加の成長に対する影響はほとんどみられなかった。生残率には,各種無機質の無添加の影響はなく,すべての区で 90% 以上であった。また,筋肉中および骨中の P 含量は P あるいは Fe 無添加区で明らかに低い値がえられた。骨中の Zn 含量は Zn, Mn, Mg あるいは Fe 無添加区で低くなった。以上のことより,カゼイン・ゼラチン飼料には P および Fe を添加する必要性がみとめられた。
65(5), 721-725(1999)
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瀬戸内海中央部におけるサワラ仔魚の鉛直分布と摂餌活動の日周変化

小路 淳(京大農),前原 務(愛媛中予水試東予),田中 克(京大農)

 1996 年と 1997 年の 6 月に瀬戸内海中央部において稚魚ネットによる昼夜連続の層別採集を行い,サワラ仔魚の鉛直分布と摂餌活動の日周変化を調べた。卵黄吸収後のサワラ仔魚は日中には主に中底層(10-20 m) に分布し,夜間には鰾容積の増大を伴って浮上分散する日周鉛直移動を行っているものと考えられた。サワラ仔魚は主として日中に摂餌を行う魚食性仔魚と考えられるが,摂餌個体率,胃内容物の種組成や充満度の経時的変化から,餌生物の活動が低下しはじめる日没時に一時的に活発な摂餌と捕食対象の多様化が認められた。
65(5), 726-730(1999)
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熱ストレスによるコトヒキのビタミン C 要求量への影響

簡 良潭,黄 登福,鄭 森雄(国立台湾海洋大)

 28, 32 および 36℃の水温において,コトヒキに 0, 80, 400 と 2000 mg/kg のビタミン C 添加飼料を投与し,成長,増肉係数,斃死率,奇形率,筋肉と内臓のビタミン C 濃度ならびに皮と骨の hydroxyproline/proline の比率を調べた。8 週間の飼育の結果,36℃の水温下で 400 mg/kg ビタミン C 添加飼料を用いて飼育した魚は成長が最も優れていたが,28℃の水温下,ビタミン C 未添加飼料で飼育した魚は成長が最も劣っていた。32℃以下の水温も飼育したコトヒキのビタミン C の飼料中要求量は 80 mg/kg, 36℃の水温下での要求量は 400 mg/kg となった。
65(5), 731-735(1999)
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生存性の半数体-二倍体モザイクイワナ

山木 勝(宇和島水産高),故川上清澄(あぶらびれ研究所),谷浦 興,荒井克俊(広大生物生産)

 多数の小型赤血球(89%) と少数の正常赤血球(11%) を有する生存性半数体-二倍体モザイクと思われるイワナを発見した。この個体は外見的には正常であり,成魚の大きさ(体長 335 mm,体重 324 g) に達していた。フローサイトメトリーによる DNA 量測定から,血液,肝臓,脾臓の多くの細胞は半数体であるが,脳細胞のほとんどは二倍体であることが判った。この個体の卵巣には形態異常を示す退行卵母細胞が多く見られたことから,生殖能力は無いと判断した。
65(5), 736-741(1999)
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海洋細菌 Klebsiella oxytoca CCF154 が生成する細胞外粘液物質の組成と物性

Fu-Jin Wang(中国海事商業専科学校),Chorng-Liang Pan, Ching-Shyong Wu(台湾海洋大)

 海洋細菌,Klebsiella oxytoca CCF154,が分泌する粘液の有効利用を図るために,特性や粘液組成の解明を行った。培養液からの回収量は凍結試料として 0.8 g/l であった。分泌粘液(LEM) 溶液は 0.0~0.5% で濃度依存的に粘度を増した。pH 4~9 の範囲で粘度は一定であったが,その範囲を超えると急激に低下した。塩濃度も粘度に影響し,0~5% では濃度が上昇すると低下した。0.2% の水溶液で調べたところ,10~80℃で温度が上がると逆に粘度が低下した。ゲルろ過によると LEM は糖-タンパク質複合体の混合物で,主成分の糖鎖部の分子量は 1.5~1.8 MDa で,構成主要糖成分として,マンノース,ガラクトース,グルコース,アラビノースが検出されたほか,6.3% のウロン酸が認められた。
65(5), 742-749(1999)
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調味サバの脱湿曲線

Wen-Rong Fu, Yun-Yin Lin(台湾海洋大)

 乾燥工程中の水分活性を雰囲気中の湿度から,高い温度帯でも,精度良く把握できる新しい結露点測定装置の開発を試みた。7 種の飽和塩水溶液を用い検量線を得,測定誤差を調べたところ,60, 70℃では -0.8, 0.2℃で多少の補正を必要としたが,50℃以下では ±0.2℃以下と高い精度を示した。調味サバを試料とした水分吸着等温線では,30 から 50℃で変化を示さず,60 から 70℃で温度が低下すると水分活性は上昇した。吸着理論にもとずく 8 つの吸着等温線モデル式との適合性を調味サバで得られた様々なパラメーターから調べたところ,30 から 70℃では,GAB 式が測定値と良い相関を示した。とくに,3 つのパラメーターを入れた GAB 式は,平均 0.986 と言う最も高い相関係数を示した。
65(5), 750-753(1999)
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大変形理論によるデンプン添加魚肉ゲルの物性解析

孔 昌淑,小川廣男,磯 直道(東水大)

 魚肉ゲルに対するデンプンの力学的補強効果をひずみ 0.7 までの圧縮実験により調べた。力学解析はゴム弾性体の大変形理論として知られている Mooney-Rivlin 式に基づいた。魚肉ゲルはデンプンの糊化温度を考慮して 60℃と 90℃の二通りの加熱により調製した。また魚肉の水分添加量は,デンプンによる吸水を考慮して魚肉すり身と水の割合が一定になるように予め調節した。デンプンを添加した時の力学的物性は加熱前後の水とデンプンの組成比により異なることが分かった。理論解析では,理論曲線を実験値により近づけるために Mooney-Rivlin 式の第 2 項と第 3 項を考慮した場合,両者ともひずみの初期部分で,実験値と良い一致を示した。
65(5), 754-758(1999)
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体積変化を考慮した大変形理論による魚肉ゲルの物性解析

孔 昌淑,小川廣男,磯 直道(東水大)

 魚肉ゲルのレオロジー特性を,歪み 0.7 までの大変形を与えた圧縮実験と圧縮回復実験によって調べた。ゴム弾性体の大変形理論として知られている Mooney-Rivlin 式と新たに Mooney-Rivlin 式に圧縮過程による体積変化を考慮した式を用いて解析した。その結果,圧縮過程において体積変化を考慮した方がそれを考慮しない場合より,実験値によく一致した。また,圧縮過程による体積変化を考慮した式を用いることにより弾性率に対応する定数 C1 と C2 が計算しやすくなり,広い範囲の線形領域を使ってより精度よく定数 C1 と C2 を決定することが出来た。
65(5), 759-764(1999)
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メダカペプチド鎖伸長因子 1α の遺伝子構造とその発現様式

木下政人,中田隆博,足立亨介,矢部泰二郎,高橋未緒(京大農),横山芳博(武庫川女大),豊原治彦,
平田 孝(京大農),高山英次(防医大),美川 智,木岡紀幸,坂口守彦(京大農)

 我々は,メダカにおいてペプチド鎖伸長因子 1α (EF1α) 遺伝子が,ハプロイドあたりタンデムに 2 つ存在することを見出し,5°側から EF1α-A および EF1α-B と名付けた。EF1α-A は,8 つのエキソンを有し,その塩基配列はメダカ肝臓由来の EF1αcDNA と完全に一致した。EF1α-A は,他の生物種のそれらとは異なり,TATA 非依存的な転写開始点が存在することが示された。またそのプロモーター領域は,メダカ 1 日胚において強力な発現誘導活性を示した。一方,EF1α-B のプロモーター領域は発現誘導活性を示さなかった。

65(5), 765-771(1999)
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アカザラガイ・トロポミオシンの cDNA クローニングによるアミノ酸配列解析

井上 晶,尾島孝男,西田清義(北大水)

 アカザラガイ横紋筋のトロポミオシン(Tm) をコードする cDNA を単離した後,塩基配列を解析し,アミノ酸配列を演繹した。この Tm のサブユニットは,他種の筋肉 Tm と同じく,全 284 アミノ酸残基から成ることが判明し,分子量は 32,540 と算出された。その配列は種々の Tm の中ではヒラマキガイおよびムラサキイガイの Tm と高い相同性(それぞれ 73% および 70%) を示した。また,アカザラガイ Tm は脊椎動物 Tm において知られているアクチン結合に必須な領域(残基 1-9) およびトロポニン T 結合領域(残基 150-180 付近)に相当する配列をよく保存しており,同等の機能を保持していると考えられた。一方,重合に関かわる両末端部分のうち C 末端部 9 残基が脊椎動物 Tm の配列と極めて低い相同性を示したことから,標記 Tm と脊椎動物 Tm の head-to-tail 重合能は異なる可能性が示唆された。
65(5), 772-776(1999)
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サバヒーすり身のゲル形成能及び色調に及ぼす各種食品添加物の影響

陳 文麗(台湾輔英技術学院),周 照仁(台湾国立高雄海洋技術学院),落合芳博(茨城大教育)

 水晒ししたサバヒー背肉にそれぞれ 11 種の食品添加物を加えて作成したかまぼこについて,ゲル形成能,保水性,pH,および色調(L, a, b 値)への影響を調べた。ソルビトールはゲル強度の増加や白度の増加に有効で,1 % の添加で十分と認められた。主に白度の増加に効果が認められたのは,過酸化水素,アスコルビン酸,エリソルビン酸ナトリウムおよびシスチンであった。他方,卵白,塩化カルシウム,臭素酸カリウムの効果はほとんど認められなかった。
65(5), 777-783(1999)
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瀬戸内海中央部の燧灘におけるマイワシの年 2 回産卵(短報)

小路 淳(京大農),前原 務(愛媛中予水試東予),田中 克(京大農)

 瀬戸内海中央部の燧灘に面する河原津漁港において,1996 年 3 月から 1997 年 3 月に毎月 1-3 回の灯火採集を行い,マイワシ仔魚の出現状況を調査した。5-6 月および 12-2 月に合計 209 尾(8.3-30.1 mm SL) の仔魚が採集され,耳石日輪より,それらの孵化日は 4 月下旬から 6 月上旬および 10 月中旬から 1 月中旬と推定された。近隣海域で孵化したと考えられる 10 mm SL 未満の個体の孵化日は,5 月上旬から 6 月上旬と 11 月下旬から 1 月上旬に分かれたことから,調査海域周辺においては 1 年のうち水温上昇期と下降期にマイワシの産卵が行われていたものと推察された。
65(5), 784-785(1999)
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大阪湾で発生した Heterosigma akashiwo 赤潮崩壊時に分離した H. akashiwo 殺藻細菌のリボタイプ解析(短報)

吉永郁生,金武燦(京大農),辻野耕實,中嶋昌紀,山本圭吾(大阪水試),内田有恆(京大農),石田祐三郎(福山大工)

 1997 年 6 月に大阪湾で発生したラフィド藻 Heterosigma akashiwo 赤潮に際し,MPN 法によって H. akashiwo 殺藻細菌(HAKB) を計数したところ,赤潮崩壊時に HAKB 数が増加した。その時に分離した 18 株の HAKB について,16S リボゾーム DNA を PCR 増幅し,5 種の制限酵素で消化後,その断片長多型(RFLP) を解析したところ,1994 年と 1995 年に広島湾で発生した H. akashiwo 赤潮崩壊時に優占した 3 種の HAKB が多数を占めた。このことから,異なる海域で発生した赤潮であっても同種の HAKB 数が増加し,赤潮の崩壊に関与している可能性が示唆された。
65(5), 786-787(1999)
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スサビノリ養殖株及び自生株におけるリボソーム RNA 遺伝子 ITS1 領域の塩基配列変異(短報)

水上 譲,鬼頭 鈞,上西由翁,村瀬 昇,國本正彦(水大校)

 スサビノリのリボソーム小亜粒子 RNA 遺伝子 ITS1 (内部転写スペーサー 1) 領域の塩基配列 371 塩基を解析し,養殖スサビノリの品種間及び自生株の個々の葉体間で比較した。調査した 11 品種のうち 9 品種は同一の塩基配列を示し,2 品種はこれらの塩基配列と 1 塩基のみ異なっていた。自生株では調査した葉体すべてが互いに異なり,6 枚の葉体間で 1~14 塩基の違いがみられた。これらの結果から,養殖品種間の著しい遺伝的類似性と自生株葉体における遺伝子多型の存在が示唆され,養殖品種の由来及びアマノリ育種における自生株葉体利用の必要性が考察された。
65(5), 788-789(1999)
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琵琶湖水系産陸封型アユの流入河川間卵サイズ変異(短報)

井口恵一朗(中央水研),桑原雅之(琵琶湖博物館)

 琵琶湖に流入する 17 河川において,陸封型アユ産卵群の産着卵サイズを同時期に調査した。平均卵サイズは河川間で変異し,その規模は両側回遊型アユから知られている卵サイズの地理的な変動幅に匹敵した。しかし,陸封型アユ卵の変異パタンには地理的なクラインが見出されず,一方で,卵サイズと河川流程の間に負の相関関係が検出された。河川規模に応じて産卵場付近の水温が変異することを仮定することにより,琵琶湖流入河川におけるアユの卵サイズ変異は,異なる水温条件に対する適応現象である可能性が示唆された。
65(5), 790-791(1999)
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体表粘液を利用したカンパチ雌の生殖活性の免疫化学的評価(短報)

竹村明洋(琉大・熱生研),竹内宏行,照屋和久,岡 雅一,兼松正衛(日栽協)

 日本栽培漁業協会八重山事業場(石垣市)で飼育中のカンパチを用いて,血中と体表粘液中のビテロジェニン(VTG) 量の周年変化を調べた。マンシーニ法で測定した血中 VTG 量は 12 月から 5 月まで高い値で推移し,本種の卵黄形成が 6 カ月間続くことが推察された。酵素免疫測定法で測定した体表粘液中の VTG 量は 1 月から 5 月まで高い値で推移し,その後はほとんど検出できなくなった。血中と体表粘液中の VTG 量には正の相関関係があった。以上の結果から,体表粘液中の VTG 量の変化を測定することによりカンパチの雌の生殖活性の変化を推定することが可能であった。
65(5), 792-793(1999)
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パントテン酸欠乏がニジマスの血漿遊離アミノ酸組成に及ぼす影響(短報)

益本俊郎,三木健夫,伊藤慶明,細川秀毅,示野貞夫(高知大農)

 パントテン酸(PA) 無添加と添加飼料(40 mg/kg diet) をそれぞれ平均体重約 40 g のニジマスに与え,パントテン酸欠乏症状出現時における,血漿遊離アミノ酸量を測定した。両飼料を等給餌率で給与したにもかかわらず,パントテン酸欠乏飼料区において分枝鎖アミノ酸が添加飼料区より高く,逆にセリン濃度は添加飼料区より低かった。これらの結果から PA あるいは PA の誘導体であるコエンザイム A はこれらのアミノ酸の代謝に深く関っていると考えられた。
65(5), 794-795(1999)
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酸化的ストレスを受けた魚のヒドロキシ脂質の蓄積(短報)

田中竜介(九大農),肥後吉和(九大農),村田 寿(宮大農),中村 孝(九大農)

 天然,養殖ブリ,四塩化炭素を投与したタイの過酸化脂質(LPO) とヒドロキシ脂質レベルを測定した。天然,養殖を問わず普通肉<血合肉<肝臓の順にヒド口キシトリグリセリド(TG-OH) の蓄積が確認され,養殖ブリでは肝臓に比較的高含量の TG-OH の蓄積が確認された。また,四塩化炭素を投与したタイにおいても LPO に比べ TG-OH の著しい肝臓への蓄積が観察された。
65(5), 796-797(1999)
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マウス骨髄性白血病 M1 細胞に対する DHA 結合型リン脂質の分化誘導能及びアポトーシス誘導能(短報)

細川雅史,南 圭一(北大水),甲野裕之(金沢医大),田中幸久,日比野英彦(日本油脂)

 DHA 結合型ホスファチジルエタノールアミン(PE) は,M1 細胞に対してリゾチーム活性の発現と DNA の断片化を誘導した。DHA 結合型ホスファチジルコリン(PC) 単独ではリゾチーム活性のみが誘導されたが,レチノイン酸(RA) との併用処理によりリゾチーム活性の誘導が高められ,更には DNA の断片化も認められた。これらの結果は,M1 細胞に対する DHA 結合型リン脂質の分化及びアポトーシス誘導作用が,その極性基により異なることを示唆するものであった。
65(5), 798-799(1999)
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キンギョの生殖腺刺激ホルモンIIβ サブユニット遺伝子の塩基配列(短報)

孫 永昌,吉浦康壽,末武弘章,小林牧人,会田勝美(東大農)

 キンギョの生殖腺刺激ホルモンIIβ サブユニット(GTHIIβ) 遺伝子をクローン化し,その全塩基配列および 5'上流 1440 bp までの塩基配列を決定した。本遺伝子は 3 エクソン 2 イントロンから構成され,5'上流域には推定の発現制御配列が認められた。5'上流 480 bp までの塩基配列を既知のコイおよびサケの GTHIIβ 遺伝子の上流 480 bp と比較したところ,コイとは 93.7%,サケとは 47.9% の相同性を示した。この結果,コイ科の GTHIIβ 遺伝子の発現制御機構は科内で保存されている可能性が示唆された。
65(5), 800-801(1999)
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ニジマス Pit-1 による魚類成長ホルモン遺伝子プロモーターの魚種選択的活性化(短報)

山田彰一,山下伸也(日本水産中央研)

 成長ホルモン遺伝子の転写因子である Pit-1 が魚種間で特異的に働くかどうかを明らかにするため,5 種類の魚類成長ホルモン(GH) 遺伝子プロモーターへ及ぼすニジマス Pit-1 の影響をトランスフェクッションアッセイによって調べた。その結果ニジマス Pit-1 によってティラピアの GH プロモーターはニジマスと同程度活性化されたが,コイ,ヒラメ,ブリにはほとんど影響しなかった。魚類において Pit-1 は魚種選択的に作用する可能性が示された。
65(5), 802-803(1999)
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両側回遊型アユにはガロキサンチンが存在しない(短報)

山下栄次(京都薬大),飯田 伸(四国くみあい飼料),谷口順彦(高知大),松野隆男(京都薬大)

 両側回遊型アユにおけるガロキサンチン存在の有無を調べた。前報において琵琶湖産(陸封型)成熟コアユより魚類から初めて単離したアポカロテノイドの 1 種,ガロキサンチンは検出されなかった。よって,アユにおいてガロキサンチンは陸封型アユと両側回遊型アユとを区別する有効的な指標物質となることが判明した。
65(5), 804-805(1999)
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西部太平洋熱帯域で採集されたカツオ稚魚および幼魚における高ドコサヘキサエン酸含有について(短報)

田・智唯(遠洋水研),鈴木敏之(東北水研),小倉未基(遠洋水研),渡辺 洋(中央水研)

 カツオの稚魚および幼魚の全魚体総脂質の脂肪酸組成を分析し,ドコサヘキサエン酸(DHA) の含有率を明らかにした。21 個体の供試魚を大きさ別に 5 グループに分けて分析した結果,それぞれの脂質含有率は 2.24~4.09% であった。DHA 含有率は 29.1~37.2% で,どのグループにおいても常に最も高い割合を占めた。また,脂肪酸組成も稚魚期から幼魚期にかけてほぼ一定していた。これらの結果から,本種が生活史の初期段階からすでに高濃度の DHA を蓄積していることが示された。
65(5), 806-807(1999)
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シオミズツボワムシに含有される 5-オクタデセン酸の同定(短報)

安藤靖浩,森田慎一,田所菜子,太田 亨(北大水),杉本 卓,堯丸禮好(北海道栽培セ)

 シオミズツボワムシ Brachionus plicatilis の脂肪酸を毛細管 GLC で分析したところオクタデセン酸の異性体を検出した。メチルエステルの高分解能 GC-MS,二硫化ジメチル付加物の GC-MS,並びに酸化オゾン分解生成物の GLC により,この成分を 5-オクタデセン酸(18:ln-13) と決定した。なお,淡水産クロレラで一次培養したワムシの場合 18:ln-13 の含量は総脂肪酸の 1.3-2.1% であった。
65(5), 808-809(1999)
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