平澤徳高,原 隆,三星 亨,岡崎二朗,秦 和彦(日水大分海洋研)
ホシガレイ及びマダイ卵の消毒に適した発生段階と,安全で且つ殺菌効果の得られるヨード剤濃度を検討した。ホシガレイでは,心臓拍動期が適しており,有効ヨウ素濃度 75 ppm, 15 分,マダイの場合は,桑実期,有効ヨウ素濃度 100 ppm, 5 分の処理で消毒可能であった。消毒卵から得た仔魚の飼育試験では,ヨード剤処理は,マダイ仔魚の初期の生残にのみ悪影響を及ぼしたが,これは卵質が関与しているものと推測された。これらの結果は,魚種によって適正な消毒条件が異なることを示している。郭 又 ,青海忠久,田中 克(京大農)
ヒラメ仔稚魚の栄養状態判定の指標を作るために,摂食群と飢餓群の飼育を行い,両者間での形態学的及び組織学的な差異とその発育に伴う変化を調べた。形態計測結果では,肛門位での体高と前肛門長が飢餓に非常に敏感であることが示された。組織学的形態では,腸及び直腸の上皮細胞の高さと胆のうの体積が敏感に飢餓の影響を受けた。これらの形質のいくつかは,発育に伴って形質固有の変化を示し,特に変態開始期と完了期に大きく変化した。天然魚の栄養状態の評価に際しては,飢餓に敏感な形態及び組織学的な指標の組み合せが有効と考えられた。徳田有希,豊原治彦(京大院農),喜納辰夫(京大再生研),坂口守彦(京大院農)
ヒラメ血清免疫グロブリン(Ig) に対するモノクローナル抗体を作製し,これを用いてヒラメリンパ球亜群を解析した。フローサイトメトリーの結果,末梢血リンパ球の一部は膜 Ig を発現していたが,胸腺細胞はほとんど発現していなかった。ナイロンカラムにより分離した末梢血リンパ球について調べたところ,ナイロンカラム吸着性細胞の 91.0% と非吸着細胞の 3.2% が膜 Ig を発現していた。この結果は,マウス B 細胞の場合と類似するものであった。Estu Nugroho,谷口順彦(高知大農)
カンパチのマイクロサテライト DNA 領域を検出し,それらの PCR 用プライマーセットを 6 組み設計した。これらのプライマーを用いて,カンパチおよびその近縁魚種,ブリ,ヒラマサ,ヒレナガカンパチのマイクロサテライト DNA を検出した。カンパチでは 4 遺伝子座が,その他の魚種では 3 遺伝子座が多型的であった。対立遺伝子数は 2-16,ヘテロ接合体率は 0.350-0.800 と遺伝的多様性が高かった。それらの内ヒラマサが最も高く,ヒレナガカンパチが最も低かった。これらのマーカーにより遺伝的距離を算出したところ,従来の分類学に準じた明確な種の同定ができた。これらのマーカー遺伝子は Seliola 属の遺伝的多様性の評価や集団遺伝学的研究に応用できる可能性を備えている。外丸裕司(愛媛大連合農),川端善一郎(愛媛大農),中川健一(内海海洋セ),中野伸一(愛媛大農)
本研究は愛媛県内海湾において,アコヤガイ稚貝の鉛直分布を観測した。1997 年 6 月 18 日から 8 月 22 日にかけて,内海湾内において水深 1~10 m まで 1 m 置きに,それ以深は 15, 20, 30 m 深度に付着器を吊るした。稚貝の付着器への付着は主に水深 10 m 以浅で起こっており,水深 6 m で特に多かった。水深 15~30 m における稚貝の付着量は,10 m 以浅に比べると著しく少なかった。また稚貝の付着パターンと現場環境との関係から,稚貝鉛直分布には,水柱混合,水温,塩分およびクロロフィル量は影響していないと考えられた。本報告では,光強度と水圧の稚貝鉛直分布に対する影響を考察した。藤尾芳久,中嶋正道,アンナ A. バリノワ(東北大農)
グッピーを二つに分け,60 リッター水槽あたり 500 から 600 個体のクローズドコロニーとして 16 年間継代飼育を行った。16 年間の AAT-1* と PGM-1* 遺伝子座の遺伝子頻度の変化を調べたところ,遺伝子頻度は調べた時期ごとに変化していた。遺伝子頻度の変化からクローズドコロニーにおける集団の有効な大きさを推定したところ,最初の集団の有効な大きさが約 623 と 413 であったのに対して,16 年後は約 18, 24 と減少した。このような集団の有効な大きさの減少は 16 年間にたびたびクローズドコロニーから成魚が採集されてきたことによると考えられる。山口峰生,板倉 茂(瀬戸内海水研)
Gymnodinium mikimotoi の無菌株を用いて,栄養要求と窒素あるいはリン制限下における増殖の動力学を調べた。本種は窒素源として硝酸,亜硝酸,アンモニアを利用した。尿素と尿酸は有効には利用されず,またグルタミンとトリプトファン以外のアミノ酸は全く利用されなかった。一方,G. mikimotoi は調べた 15 種の無機態及び有機態リン源をすべて有効に利用した。窒素あるいはリン制限下の半連続培養において,定常状態の希釈率(=増殖速度)は,細胞内窒素あるいはリン含量の関数として,いわゆる Droop の式で記述された。栄養塩利用特性および得られた動力学パラメータから判断すると,本種は栄養塩競合において他の赤潮鞭毛藻よりも有利であることが示唆された。Ricardo Perez-Enriquez,谷口順彦(高知大農)
マダイの放流事業における効果判定のためマイクロサテライト DNA を遺伝標識として応用することを試みた。高知県沿岸で採集したマダイの野生集団 2 標本を対象としてマイクロサテライト DNA の 5 つの座の遺伝子型を組み合わせたとき,野生集団の中に同じゲノム型が 2 例出現する確率は,1995 年は 5.7×10-9, 1996 年は 3.3×10-10 であった。これらの野生マダイと高知県産の人工種苗生産用親魚との間で親子関係について鑑定したところ,野生マダイのなかに放流魚は確認されなかった。効果判定におけるマイクロサテライト DNA 遺伝標識の有用性について,放流魚の混合率や死亡率と関連づけて考察した。S.-C. Bai, X. Wang, and E. Cho (Pukyorg Univ.)
飼料中のタンパク質(CP) 含量を 30, 40, 45, 50, 55 および 60% の 6 段階に調整した飼料を用いて,フグ Takifugu obscurus 稚魚の至適タンパク質含量を求めた。12 週間の飼育の結果,CP50% 区の増重率は CP55% 区と差はなかったが,CP 30, 40, 45 および 60% 区に対して有意に優れていた。さらに,CP50% 区は飼料効率および比肝重値も高かった。しかし,ヘマトクリット値,ヘモグロビン含量および生残率には各区の間に差は見られなかった。これらの結果から,最大成長を得るために必要なフグの至適タンパク質含量は飼料中 50% 前後であると推察された。Satuito, C. Glenn,名渡山和代,山崎瑞枝,清水克彦,伏谷伸宏(伏谷着生プロ)
ムラサキイガイの pediveliger 幼生を各種神経伝達物質に暴露し,その変態誘導活性を調べた。その結果,carbamylcholine と epinephrine が幼生に対して高い変態誘導活性を示した。Norepinephrine, L-DOPA および serotonin 幼生の変態を誘導したが,その活性はいずれも弱かった。これらの物質は 10~100 μM で活性を示したが,L-DOPA は 100 μM の濃度で毒性を示した。また,epinephrine は他の物質と比べて速効性で,3 時間の暴露時間で最も高い変態率が得られた。一方,数種の adrenaline 作働性遮断物質の活性を調べたところ,phentolamine が epinephrine による幼生の変態誘導効果を強く阻害した。ジョバート D. トレド(SEAFDEC/AQD),サルバシオン ゴレス(東水大),土居正典(SEAFDEC/AQD),大野 淳(東水大)
チャイロマルハタ仔魚の飼料としてカイアシ類ノープリウスの可能性を検討した。ふ化仔魚は 5 トン飼育水槽 5 面にそれぞれ 5 個体/l の密度で収容した。うち 4 面では仔魚を収容する 3 日前に天然のコペポダイト(主に Acartia tuensis, Pseudodiaptomus spp. および Oithona sp.) を 20-80 個体/l の密度で放養し,ノープリウスの発生を促した。ワムシの給餌はふ化後 7 日目からおこなった。他 1 面にはふ化後 2 日目からワムシのみを 5,000 個体/l の密度で給餌した。仔魚の摂餌率,消化管内容物量,成長および生残は高密度(60-80 個体/l) でコペポダイトを放養した水槽で優れていた。これらの指標はワムシのみを給餌した水槽で最も劣った。使用したカイアシ類の n-3HUFA 含有量はワムシの 2-3 倍であった。脂肪酸組成における 22 : 6 n-3 (DHA) の比率は Acartia 24%, Pseudodiaptomus 13% であり,DHA/EPA (20 : 5 n-3) 比率はそれぞれ 2.7 および 1.4 であった。Kaparang Frangky Erens(鹿連大),松野保久,山中有一,藤枝 繁(鹿大水)
鹿児島湾奥東桜島養殖場生簀内で遊泳するマアジの発する水中音(遊泳音,捕食音)を記録し,周波数分析を行った。その結果,夏期において,大型魚,小型魚ともに水中音は似通ったパターンを示したが音圧極大値および極小値の周波数に異なる点が見られた。また冬期において,遊泳音は夏期と同様のパターンであったが,捕食音は異なった。更に,養殖生簀の内と外で同時に水中音を記録した。この時,遊泳音は近似したが,捕食音は異なったパターンを示した。矢田 崇,伊藤文成(中央水研)
酸性環境下の魚類浸透圧調節に対する内分泌調節について明らかにするため,メダカにおけるコルチゾル(F),プロラクチン(P),エストラジオール-17β(E2) 投与による血中ナトリウム(Na) 濃度保持効果を調べた。F 及び P の腹腔内投与により,酸性環境水(pH 3.8) 移行 24 時間後の血中 Na の低下が,雌雄両性において抑えられた。E2 投与による Na 保持効果が雄では見られたが,雌では見られなかった。雄の Na 保持において,P と E2 の同時投与による相乗効果は見られなかった。劉学振,古澤昌彦,峵田悦之,青山千春(東水大)
計量魚群探知機の設計方法を応用し,動物プランクトンの体積散乱強度を計測または利用するための超音波機器の送受信系の設計方法を開発した。信号対雑音比の計算式を導き,信号対雑音比と測定レンジ,プランクトンサイズ,周波数,ビーム幅,送受波器の径との関係を一望できる汎用図を作成し,各パラメータの決定方法を示した。ドップラー潮流計を用いた海上実験を行い,推定したエコー強度と実際のエコー強度とがほぼ一致することを確め,観測された雑音レベルをもとに信号対雑音比の議論を行い,本法の実用性を検討した。久米元,山口敦子,谷内 透(東大農)
677 個体をもとに,東京湾におけるテンジクダイの食性を明らかにした。全体の空胃率は,26.1% と比較的高い値を示した。主要な餌生物は甲殻類中の長尾類{出現頻度(%F), 76.2% ; 重量パーセント(%W), 73.9% ; ランキングインデックス(RI), 5631} で,中でもエビジャコ(%F, 59.2% ; %W, 56.2% ; RI, 3327) が非常に高い割合で捕食されていた。他に,コモチジャコなどの魚類(%F, 5.9% ; %W, 4.2% ; RI, 25) も見られた。本種は,一年を通じて高い割合で長尾類を捕食していたが,繁殖期に口内保育を行う,多くの雄の胃内容物中に,本種の卵塊が出現した。卵塊の表面が消化されていることから,本種が卵食(カニバリズム)を行っていることが示唆された。上田幸男(徳島水試),東海 正,瀬川 進(東水大)
徳島県沿岸域でのアオリイカ漁獲量予測のために,ある年級群の豊度とその産卵期から稚仔成育期を含む期間(4~9 月)の環境要因との関係を重回帰分析で調べた。環境要因として紀伊水道外域の水深 10 m の水温(X1) と塩分(X2) および徳島市の大気圧(X3) と降水量(X4) を説明変数に,また年級群豊度の指数としてその年級群からの漁獲量(9 月から翌年 8 月まで)を目的変数(Y) に用いて,AIC により変数を選択して重回帰式 Y=-3297.4+37.0 X1+79.9 X2 を得た。この式より,年級群からの漁獲量を予測できる。アオリイカの年級群豊度が産卵期と稚仔成育期の水温や塩分と密接に関連したことから,高水温と高塩分が加入に好影響を及ぼしたと考えられる。近藤竜二(福井県大生物資源),今井一郎(京大院農),深見公雄(高知大農),南 晶子,廣石伸互(福井県大生物資源)
Chattonella antiqua 殺藻性滑走細菌 Cytophaga sp. J18/M01 株,Heterocapsa circularisquama 殺藻細菌 Cytophaga sp. AA8-2 と AA8-3 株,および Gymnodinium mikimotoi 増殖阻害細菌 Flavobacterium sp. 5N-3 株の 16S rDNA の塩基配列を決定し,系統解析を行った。その結果,AA8-2 株と AA8-3 株の塩基配列は全く同一であった。J18/M01 株と AA8-2 株の相同性は 98.5% と高く,異なった時期および海域から分離されたにも関わらず,系統的に非常に近縁であった。5N-3 株は Psychroserpens burtonensis と最も近縁であったが,その相同性は 92% でしかなかった。既存のデータベースと比較すると,これらの赤潮殺藻細菌は全て海洋性の Cytophaga/Flavobacter/Bacteroides クラスターに属した。Cytophaga sp. J18/M01 株に特異的な配列を基に作成したプライマーを用いて,系統的に近縁な数種の細菌株も含めて PCR を行ったところ,本殺藻細菌株の 16S rDNA だけが増幅されたことから,本手法は殺藻細菌を特異的に検出する方法として有効であると考えられた。沖 大樹,多部田修(長大海生研)
以西底びき網漁業により,1995 年 5 月~1998 年 2 月に漁獲されたキントキダイ 2,863 個体を用い,年齢と成長について研究し,以下の結果を得た。年齢形質には中翼状骨を用いた。尾叉長と中翼状骨の関係には雌雄で有意な差が認められ,標示形成は 5~6, 12~1 月の年 2 回であった。満年齢の推定体長は同年齢群で雌が大きい値を示した。既往の報告と比較すると体長組成より推定された東シナ海産は近い値を示したが,鱗による台湾周辺海域産より満 2 歳以上で大きい値を示し,体長組成より推定された香港周辺海域産より小さい値を示した。Maricar Prudente(ラサール大),市橋秀樹(日鯨研),Supawat Kan-atireklap,渡辺 泉,田辺信介(愛媛大農)
1994 年および 1997 年にフィリピン沿岸で採取したミドリイガイのブチルスズ(BTs),有機塩素化合物(OCs),重金属濃度を測定した。BTs 汚染は広域で認められたが,港湾部のイガイで高濃度であったことから,船底塗料が汚染源と考えられた。一方,養殖域のイガイは低濃度を示した。BTs の組成は TBT>DBT>MBT で,このパターンは今なおこの物質の使用が続いていることを示唆している。OCs 濃度は BTs より低値であったが,マニラ湾で高濃度がみられた。重金属は低濃度を示したことから,人為起源由来の汚染はなく,人への影響も低いことが示唆された。本研究は,イガイを生物指標にして BTs, OCs,重金属によるフィリピン沿岸の海洋汚染の現状を明らかにした最初の報告と考えられる。東海 正(東水大),上田幸男(徳島水試)
徳島県沿岸の餌木(擬餌針)釣りと定置網のアオリイカ漁獲物の外套背長(ML) 組成に拡張した SELECT モデルを用いて,餌木の漁獲選択性を求めた。期間中に数回行った努力量が不明な同日の漁獲物資料を用いるために,測定毎に ML 別資源密度や漁獲性能が異なる場合に合わせて SELECT モデルを拡張した。餌木の漁獲選択性 r(l) は外套背長 l として r(l)=exp(-10.0+0.485 l)/[1+exp(-10.0+0.485 l)]と推定された。ここではエビを模した餌木の体長 12 cm (既製品)や 15 cm (漁業者自作品)より大きなアオリイカが漁獲され,この選択性がアオリイカの餌サイズ選択によるものと考えられた。東由美子,今野久仁彦(北大水)
コイミオシン・サブフラグメント-1 (S-1) の -20℃での凍結変性では Ca2+-ATPase が失活しても濁度上昇が起こらず,超遠心分離でも少量の S-1 しか沈殿しなかった。失活した S-1 は Sepharose CL 4B のゲル濾過では単量体 S-1 ピークの前半に軽鎖を保持したままで溶出され,失活してもあまり大きな構造変化をしていないことが推定された。これらの結果より,S-1 の凍結変性では失活しても軽鎖結合能が失われず,このことが失活した S-1 間での大きな凝集反応を抑制し,濁度上昇が起こらないことが推定された。これは S-1 の加熱変性様式とは明かに異なり,凍結では独自の変性様式を示すことが分かった。また,凍結により失活した S-1 はトリプシン消化により小断片化され,すでに報告した加熱失活 S-1 の場合と同じであった。尾島孝男,樋口智之,西田清義(北大水)
スケトウダラ LMM (タラ LMM) の加熱による unfolding を CD スペクトルとキモトリプシン(CT) 消化により解析した。5℃で 88% であったタラ LMM の α-helix 含量は 50℃まで温度上昇させると 15% に減少したが,再び 5℃に冷却しても 68% までしか回復せず,一部が不可逆的に unfold したと考えられた。この LMM を CT 消化すると N-端側約 2/3 領域の 42-kDa 断片と C-端側 1/3 領域のペプチド断片が生成した。42-kDa 断片の加熱による unfold は可逆的であることが CD スペクトルにより示された。これらの結果より,タラ LMM の N-端側 2/3 および C-端側 1/3 領域は,それぞれ加熱により可逆的および不可逆的に unfold すると推定した。徳田有希,東畑 顕,木下政人,豊原治彦,坂口守彦(京大院農),横山芳博,
市川富夫(武庫川女子大バイオ研),山下伸也(日水中研)
アブドゥル ジャバルシャー,槌本六良(長大海研),小鶴泰俊(長大水),三嶋敏雄,矢田 修,橘 勝康(長大海研)
各魚種の普通筋を構成する筋タイプパターンをアクトミオシン ATPase 活性による組織化学的方法を用いて判定するとともに,各魚種死後硬直の進行を測定し,死後硬直の進行に及ぼすピンク筋の影響を検討した。多くの魚種の普通筋中にピンク筋がモザイク状に確認され,普通筋を構成する筋タイプはピンク筋と白筋のIIa とIIb,ピンク筋と白筋のIIa あるいはIIb,白筋のIIa とIIb のみ,白筋のII a あるいはIIb の 4 パターンに識別された。死後の筋収縮率は普通筋にピンク筋が介在する魚種が介在しない魚種より大きいかった。以上より,普通筋部に対するピンク筋の介在は死後硬直の進行に影響することが示唆された。四方崇文,白田光司(石川水総セ)
スルメイカの産卵海域では外套膜が極度に薄くなった個体がしばしば漁獲される。この外套膜の薄化機構を明らかにするために雌スルメイカ外套筋の酸性プロテアーゼ活性とタンパク質含量を測定した。性成熟とともに外套膜は薄くなり,外套膜が薄い個体ほどプロテアーゼ活性は高く,逆にタンパク質含量は低い傾向が認められた。したがって,雌スルメイカでは,性成熟とともに外套筋のプロテアーゼ活性が上昇し,筋タンパク質が活発に分解・動員される結果,外套膜が薄化すると考えられた。梶 達也,田中 克,田川正朋(京大農)
クロマグロ,キハダおよびスジアラ卵黄仔魚を,細胞培養用プラスチックシャーレに様々な密度になるように移槽し,無給餌状態でその後のへい死を計数した。3 種とも移槽後 12 時間以内にはハンドリングによると思われる死亡の増大が認められたが,予想に反して仔魚密度が高いほど生残率は高い傾向にあった。同様の現象はヒラメでも確認されており,他の魚種にも広く見られる現象である可能性がある。平澤徳高,原 隆,岡崎二朗,秦 和彦(日水大分海洋研)
先の研究にて,マダイ卵の安全且つ効果的なヨード剤による消毒条件を検討し確立した。そこで,この条件を用い,自然産卵期間中における卵のヨード剤に対する感受性を調べた。産卵は 1 月 26 日から開始され,2 月 7 日,14 日に得た産卵初期の卵は,ヨード剤処理の影響を受け,孵化率及び正常孵化率が明らかに低く,産卵ピークとなる 3 月 18 日以降に得た卵では,孵化率,正常孵化率とも対照と同等となった。以上の結果から,産卵初期の卵はヨード剤に対し,感受性が高いことが考えられた。高木基裕,吉田一範,谷口順彦(高知大農)
ヒラメ DNA より 5 種のマイクロサテライト遺伝子座を単離した。単離した遺伝子座はそれぞれ豊富な多型性を有していたが,その程度は遺伝子座によって異なった。一方,従来の分子生物学的手法であるエチジウムブロマイドおよび銀染色法を用い,PCR 増幅断片多型を検出したところ,その遺伝子型は放射性同位元素(RI) により検出された遺伝子型と一致した。これらの結果は,単離したマイクロサテライト遺伝子座がヒラメの遺伝的多型解析において有力なマーカーになることを示すとともに,本簡易 Non-RI 法がマイクロサテライト多型の検出に有効であると考えられた。朴 仁錫(群山大),金 治弘(水産振興院),金 東秀(釜慶大)
韓国産のスズキ Lateolabrax japonicus およびいわゆる“ホシスズキ”Lateolabrax sp. の両種について核型と DNA 量を調査した。両種とも染色体数は 2n=48 を示し,核型は端部着糸型染色体のみより構成されていた。調査した範囲で異数性,染色体多型および性染色体は認められなかった。L. japonicus の 5 番目の染色体対にサテライトが認められたが,L. sp. には見られなかった。赤血球核の DNA 量(2C) は各々 1.68+0.01, 1.72+0.01 pg であり,L. japonicus のゲノムサイズは L. sp に比べ小さく,それに伴い,赤血球核径,表面積,体積が減少していた。芦田貴行,沖増英治,雨村明倫(福山大・内海生物資源研)
サポニン投与がブリ連鎖球菌症に与える効果を感染後の生残率と臓器組織内熱ショック蛋白質(hsp60) 発現動態より評価した。魚は試験餌料を 2 週間投与し,腹腔内注射により感染させた。その結果サポニン投与魚は,感染後高い生残率を示し,腎臓 hsp60 発現が誘導,維持され,そのことが感染ストレスを軽減し,感染後の高い生残率をもたらす一要因となったと推察された。金子豊二,長谷川早苗(東大海洋研)
塩濃度の異なる環境水で飼育したメダカ仔魚の水飲みを,レーザ顕微鏡を用いて観察した。淡水および 80% 海水に移したメダカ仔魚を,FITC 標識 dextran を溶解した環境水で飼育し,水飲みにより腸管内に取込まれた水の挙動を経時的に調べた。FITC による蛍光の分布をレーザ顕微鏡を用いて可視化することで,時間の経過とともに飲み込まれた環境水が腸管の前部から後部に広がる様子が観察された。また水飲みは淡水中よりも 80% 海水中で顕著であった。レーザ顕微鏡による水飲みの観察は,仔魚期の浸透圧調節を調べる上で有用な手法となる。我妻建太郎,杉山淳一,西中 悟,木村純二(青学大理工)
神奈川県三浦半島で養殖された紅藻スサビノリの脂質成分を検討したところ,ジテルペノイド化合物が得られた。すなわち,メタノール抽出物のエーテル可溶物をカラムクロマトグラフィーにより分離し,Z-およびE-3,7,11,15-テトラメチル-2,3-エポキシデカナールを単離した。この化合物はフィトールからの光酸化反応によって生成する可能性が考えられたが,種々検討した結果,人為生成物でないことが明らかとなった。徳田雅治,竹内昌昭(東北大院農)
試験飼料の α-トコフェロール(Toc) を対照飼料の 100 倍量の 1,000 mg/100 g に調整し,これを投与し飼育したニジマス稚魚の血清脂質量ならびに筋肉脂質量および組成をそれぞれ対照区と比較した。40 日後には,血清脂質(mg/100 ml) の平均値は対照区より低い 842 となった。また,6 ヶ月後の筋肉脂質含量は平均 5.98% であり,これも対照区より低い値であった。このように,大量の Toc を投与し続けると体内の脂質分布にまで影響を及ぼすことが明らかになった。近藤秀裕,川添一郎,中谷操子,菊池 潔,会田勝美,渡部終五(東大農)
ウナギ血漿を等電点電気泳動と SDS-PAGE からなる二次元電気泳動分析に供したところ,主要タンパク質として等電点の異なる二つの 28 kDa 成分が認められた。両成分を N 末端アミノ酸配列分析に供したところ,高および低等電点側の成分はそれぞれ,大西洋サケのアポリポタンパク質 A-I およびゼブラフィッシュのアポリポタンパク質 E と相同性を示した。さらに密度勾配超遠心分離を行ったところ,両成分はいずれも高密度リポタンパク質画分に含まれることが明らかとなった。津島己幸,松野隆男(京都薬大)
淡水魚(コイ目)の皮および鰭には β-carotene triol および tetrol が広く分布している。カマツカから調整した triol 画分より(3S, 4R, 3'R)-β, β-carotene-3,4,3'-triol を,tetrol 画分からは(3 S, 4R, 3'S, 4'R)-β, β-carotene-3,4,3',4'-tetrol を主成分として単離した。これらは(3R, 3'R)-zeaxanthin から(3S, 3'S)-astaxanthin に至る酸化的代謝系路の中間体と考えられる。