Fisheries Science 掲載報文要旨

産卵期ヒラメの血清リポプロテインへのトコフェロールの親和性

徳田雅治(養殖研),山口敏康(東北大院農),涌井邦浩(福島種苗セ),佐藤年彦,伊藤正雄,竹内昌昭(東北大院農)

 ヒラメ産卵期および終了後のトコフェロールの体内動態の変化に関わる輸送担体について調べた。飼料へのトコフェロール添加(100 mg/100 g 飼料)によって成熟産卵期の血清トコフェロールは増加したが,このうち産卵期終了後に速やかに消失する血清リポプロテインと結合しているトコフェロールは全量の 10% 以上であった。また,産卵期終了後の血清トコフェロールの一部はこの時期に増加する血清リポプロテインと結合していることが明らかになった。このような異なる性質の血清リポプロテインを電気泳動により確認し,その消長が産卵期から終了後におけるトコフェロールの体内蓄積の変化を調節しているものと示唆した。
66 (4), 619-624 (2000)
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グッピーの塩分耐性を指標としたヘテロシス育種に関する検討

鹿野隆人,中立元樹,藤尾芳久(東北大院農)

 グッピーの塩分耐性を指標として,系統間交雑によるヘテロシス育種に関する検討を行った。塩分耐性は 35 ppt 人工海水浸漬後の生存時間で表した。血縁関係の遠い系統の組合わせでは多くのペアでヘテロシスの量が大きく,親と子の塩分耐性には正の相関がみられたのに対し,血縁関係の近い系統の組合わせではペアによってヘテロシスの量が大きくばらつき,親と子の塩分耐性には相関がみられないことが明かとなった。このことから,ヘテロシス育種において交雑に用いる系統間の血縁関係が重要であることが示された。
66 (4), 625-632 (2000)
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メダカ雄の受精成功における尻鰭の役割

小関右介,高田啓介(信大理),前川光司(北大演習林)

 成熟したメダカ雄の尻鰭は成熟雌のそれに比べて大きく伸長することが知られている。交尾中における雄の尻鰭の機能を明らかにするために,鰭切除実験を行った。雄の尻鰭を無切除,先端切除,半分切除の順に切除し,それぞれにおいて雌と産卵させた。その結果,鰭を半分切除された雄の卵受精率は無切除および先端切除した場合のそれに比べて有意に低かった。このことから,メダカ雄の尻鰭は生み出された卵を効果的に受精させる機能があることが明らかとなり,雄の尻鰭のサイズに選択が働いていることが示唆された。
66 (4), 633-635 (2000)
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ウナギレプトケファルスの体表レクチンとリンパ様組織

鈴木 譲(東大院農水実),大竹二雄(三重大生物資源)

 ウナギの生体防御機構発達過程を調べるため,体長 11-58 mm の天然レプトケファルスについて,体表レクチン活性,レクチン産生細胞,リンパ様組織の発達を調べた。体表にはウサギ赤血球を凝集する高いレクチン活性が認められた。また,蛍光免疫法により,レプトケファルスのみならず人為催熟した親魚から得た孵化後 8 日の仔魚においても表皮棍棒状細胞の分泌胞内にレクチンが貯留されていることが認められ,幼生期の体表での防御におけるレクチンの重要性が示された。一方,腎臓,脾臓には大型個体でも白血球が見られず,体内での生体防御能の発達は遅れていた。例外的に胸腺は発達しており,非自己の認識になんらかの役割を担っているものと推察された。
66 (4), 636-643 (2000)
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雌ウナギ成熟促進のための sGTH 投与間隔の検討と排卵誘発

佐藤成美,川添一郎,鈴木 譲,会田勝美(東大院農)

 未熟なニホンウナギにリポイル化ゼラチンで乳化させたエマルジョン(LG エマルジョン)に包含させたサケ GTH 画分(sGTH) を毎週(2 mg/kg) または隔週(4 mg/kg) 投与し,成熟促進効果を比較した。その結果,隔週投与群では体重や血液中の性ステロイドや GTH 濃度がホルモンを投与した翌週には増加し,投与しなかった翌週には減少するという変動を繰り返した。毎週投与群ではこの様な増減は見られず,より短期間で最終成熟に至ったことから毎週投与の方が効果的に成熟が促進されることがわかった。また,sGTH と 17 α-ヒドロキシプロゲステロンを同時に包含させた LG エマルジョンを投与して排卵誘発を行った結果,全個体で排卵が誘発された。
66 (4), 644-654 (2000)
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海洋から集積培養した CO2 耐性珪藻 Thalassiosira weissflogii H1 株の増殖と細胞内有用物質

石田祐三郎,平櫛統浩,北口博隆,満谷 淳(福山大工),長井 敏(兵庫但馬水試),吉村 実(宮城学院女子大)

 高濃度 CO2 耐性の微細藻類は緑藻と藍藻で報告があるが,養殖餌料として有用な珪藻については本研究が最初である。因島沖合からプランクトンネット(20 μm) を用いて採集した試料を,10%CO2 通気下で集積培養し,優占した CO2 耐性種 T. weissflogii H1 株の有菌クローン培養を得た。0-20%CO2 通気下で培養した場合,H1 株の最大増殖密度は 6-7×105/ml で,倍加時間は約 7 時間(20%CO2 通気のみ 14 時間)であった。H1 株を CO2 通気下で培養した場合,細胞内 EPA 含量・多糖含量は高い傾向が見られた。
66 (4), 655-659 (2000)
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ヒラメ稚魚における飼料カルシウムの必要性

M. Amzad Hossain,古市政幸(九大院生資環)

 ヒラメ稚魚(体重 0.7 g) における環境水カルシウムおよび半精製飼料に添加した第三リン酸カルシウム(TCP) 中のカルシウムの利用性を 10 週間の飼育試験で調べた。カルシウム(Ca) 無添加飼料区の魚は対照区(0.2%Ca 含有,乳酸 Ca 使用)の魚に比べて成長が有意に劣った。一方,低 TCP 添加飼料(0.2%Ca 含有)区の成長は対照区のそれと同程度であったが,高 TCP 添加飼料(2.5%Ca 含有)区では,成長と飼料効率が有意に劣り,脊椎骨の亜鉛含量も低かった。これらの結果は,ヒラメ稚魚の正常な成長の為には環境水中の Ca のみでは不充分であり,消化吸収の良い Ca 剤を飼料に添加する必要があることを示唆する。
66 (4), 660-664 (2000)
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淡水産ラン藻 Microcystis aeruginosa のレクチン産生に及ぼす培養条件の影響

山口政人,小川智久,村本光二(東北大院農),神保 充,神谷久男(北里大水)

 M. aeruginosa M228 株を種々の光強度または温度下で培養し,細胞当たりのレクチン産生量を赤血球凝集活性および酵素免疫測定法によって定量した。光強度 12 μE/m2/s で培養した時は 45~90 μE/m2/s の時に比べて,定常期でのレクチン量が 2~4 倍増加した。また培養温度を 30℃ から 15℃ に下げるとレクチン量は 9 倍に増加し,対数期の後期に最大になった。すなわち細胞の増殖速度が低下するような低光強度または低温度の培養条件下でレクチン産生が誘導されることが示された。
66 (4), 665-669 (2000)
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天然および池産サクラマスの銀化変態に伴う鰓塩類細胞の微細構造変化

水野伸也,浦 和寛,大久保直,千田祐華(北大院水),三坂尚行(道孵化場),足立伸次,山内晧平(北大院水)

 本研究では,天然および池産サクラマスの銀化変態に伴う鰓塩類細胞(CC) の微細構造変化を調べた。その結果,一次鰓弁(F) 上に天然魚では α および β の 2 型の CC が観察されたが,池産魚では α 型のみが観察された。また,二次鰓弁(L) 上では天然魚および池産魚ともに 1 型の CC のみが観察された。CC の微細構造には,天然魚および池産魚の間に相違がみられなかった。しかし,F および L 上で池産魚の CC 数は天然魚のそれに比べ,ばらつきの大きいことが確認された。
66 (4), 670-677 (2000)
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雌オニテナガエビの脱皮周期における血中ビテロジェニン量の変化と卵巣発達

奥村卓二,会田勝美(東大院農)

 雌オニテナガエビを用いて卵黄形成過程と脱皮段階の関連を調べた。生殖脱皮周期では脱皮周期と連動して卵黄形成が進み,脱皮段階 C1 期から卵母細胞に卵黄球が蓄積し始め,脱皮前期(D0-D3) では急激な卵黄球の蓄積により,卵巣が発達した。この期間,血中ビテロジェニン量は高かった。脱皮後の A 期では卵巣発達が完了し,産卵がおきた。それに対して,非生殖脱皮周期では卵黄球の蓄積が起きず,卵巣は発達しなかった。脱皮周期に連動して卵黄形成が進むことから,生殖と脱皮の間に調節機構が存在することが示唆された。
66 (4), 678-685 (2000)
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性の違いを考慮した放流魚天然魚間の遺伝子浸透に関する理論的解析

金岩 稔,原田泰志(三重大生物資源)

 簡単な数理モデルを用いて,種苗放流が天然集団に与える遺伝的影響について,特に放流量や放流魚の適応度の性差に注目して検討した。また,遺伝的影響の少ない放流方策についても検討した。その結果,放流強度や適応度の大きさだけでなく放流強度と適応度の性差が遺伝子浸透に大きな影響を与えうることを示した。さらに,多重平衡状態を持つ可能性を示し,ある一年だけでも高い放流量があった場合の危険性を明らかにした。
66 (4), 686-694 (2000)
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給餌および無給餌キンギョにおける硬組織の Ca 沈着と Ca 溶出に対するサケカルシトニンの影響

篠崎文夏,麦谷泰雄(北大院水)

 給餌および無給餌キンギョの耳石,肋骨,咽頭骨および鱗の Ca 沈着および Ca 溶出に対するサケカルシトニン(sCT) の影響を調べた。sCT は一日おきに合計 4 回投与した。給餌条件下では,sCT は血漿 Ca 濃度および Ca 沈着量に影響しなかった。しかし無給餌条件下では,sCT は血漿 Ca 濃度に影響しなかったが,肋骨,咽頭骨および鱗の Ca 沈着量を増加させた。sCT は骨および鱗の Ca 溶出に影響しなかった。以上のことから,無給餌のキンギョでは sCT は骨と鱗の Ca 沈着を促進することが示された。
66 (4), 695-700 (2000)
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エゾアワビの人為雌性発生に関する細胞学的研究

李  琪,尾定 誠(東北大院農),柏原 勝,広橋 憲(バイオメイト),木島明博(東北大院農)

 エゾアワビの雌性発生の誘起機構を明らかにするために,正常発生卵および雌性発生卵の成熟分裂および受精過程における核の挙動を調べた。紫外線照射した精子核は卵内侵入後,次第に膨潤して雄性前核を形成し,雌性前核と接着するまで正常な精子核と同様に行動したが,第 1 卵割前期には精子核が染色体に展開できないまま,核濃縮を起こし,第 1 卵割の核分裂に加わらなかった。また,この精子核は細胞質分裂終了時に,卵割溝に近い一方の割球の細胞質にとどまることが確認された。雌性発生区における幼生の染色体数分布では半数体に明らかなモードが認められたことから,雌性発生卵中の精子核遺伝子が次代に伝わらなかったことが示された。本研究では,エゾアワビ雌性発生誘起の細胞学的証拠が示された。
66 (4), 701-707 (2000)
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調味乾燥イカ製造中の成分・物性変化

邱 思魁,張 宏光(台湾海洋大),羅 麗珠(中國海事商業専校),藍 惠玲(台湾水試),蕭 泉源(台湾海洋大)

 原料としてムラサキイカ,アルゼンチンマツイカを用いた。炭水化物含有量は半乾製,乾製品で高く,還元糖は乾製品で高かった。b 値は加工中に起きる褐変のために上昇した。原料中のトリメチルアミンオキサイド量は 2 種で近似していたが,製品にするとムラサキイカで減少が著しかった。ムラサキイカ中の遊離アミノ酸量は煮熟工程で大きく減少したのに対して,アルゼンチンマツイカ中では加工中大きな変化がなかった。核酸関連物質量は,イノシン,ヒポキサンチンも含め,半乾製,乾製品で有意に上昇した。これらの成分変化は調味液の影響を受けていると考えられた。
66 (4), 708-715 (2000)
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韓国産天然および養殖アユの筋肉ならびに卵の脂質クラスと脂肪酸組成

B.-Y. Jeong, S.-K. Moon, W.-G. Jeong(慶尚大),大島敏明(東水大)

 韓国の天然および養殖アユの筋肉と卵の脂質クラスおよび脂肪酸組成を比較した。非極性脂質(NL) は総脂質の大部分を占め,天然魚よりも養殖魚の筋肉と卵に多かった。筋肉リン脂質含量には天然魚と養殖魚の間に差はなかった。卵の脂質含量は筋肉のそれの約 3 倍であった。筋肉 NL を構成する主な脂質クラスはトリグリセリド(TG) と遊離コレステロールであった。卵の NL ではこれらの他にコレステロールエステル(SE) が含まれていた。養殖魚の筋肉と脂質は天然魚に比べて TG の割合が高く ST の割合が低かった。天然アユ筋肉脂質は 16 : 1n-7, 18 : 3n-3 および 20 : 5n-3 の組成比が高かったが,異なる棲息水域の天然アユの間で脂肪酸組成に大きな違いはなかった。養殖アユは 18 : ln-9, 18 : 2n-6 および 22 : 6n-3 の組成比が高かった。
66 (4), 716-724 (2000)
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スケトウダラ筋原線維画分中のトリメチルアミン-N-オキシド脱メチル化酵素の存在と性質

木村メイコ,関 伸夫(北大院水),木村郁夫(日水中研)

 スケトウダラ筋肉から調製した筋原線維(Mf) 画分には標記酵素(TMAOase) 活性が存在した。Mf 画分中の本酵素活性の至適 pH は7.0-7.5,活性化エネルギーは 15-35℃ と 0-15℃ でそれぞれ30.7, 55.9 kJ・mol-1・deg-1 を示した。本酵素活性は 30℃ 以上の加熱で失活し,高濃度の NaCl により抑制された。Mf 画分中の TMAOase は活性化に Fe2+,アスコルビン酸,システインを必要とし,各単独では効果は無かった。Fe2+ はこれら還元剤の存在下で Fe3+ に置換できた。
66 (4), 725-729 (2000)
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養殖のマダイとヒラメにおける背部普通筋中の筋小胞体の Ca2+ ポンプの比較

李 京姫,槌本六良(長大海研),三宅俊夫(長大水),呉 茲華,Abudul Jabarsyah,橘 勝康(長大海研)

 養殖のマダイとヒラメにおける死後硬直進行の顕著な違いを明らかにする研究の一環として,本研究では,Ca2+ に着目し,筋小胞体(SR) の性質について比較検討した。筋収縮率(25℃) および Caffeine 拘縮(15℃) の進行は,その速度も到達レベルも養殖マダイが養殖ヒラメに比べて顕著に高かった。SR の Ca2+ の取り込み能と放出能および SR Ca2+-ATPase 活性は,いずれも養殖マダイが高かった。また,サルコメアに対する SR の表面積率も養殖マダイが高かった。従って,両魚種間の SR の性質の違いが,死後硬直進行の違いに影響を及ぼすと考察した。
66 (4), 730-736 (2000)
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ヒラメ GAPDH cDNA のクローン化および構造解析

青木 宙,仲 浩章,片桐孝之,廣野育生(東水大)

 ヒラメ glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) cDNA をクローン化し,塩基配列を決定した。ヒラメ GAPDH は 333 アミノ酸残基から成り,ニジマスよりもアフリカツメガエル,ニワトリおよび哺乳類の GAPDH に対して高い相同性を示した。ヒラメの各臓器での GAPDH の発現を RT-PCR 法により調べたところ,いずれの臓器あるいは組織においてもこの遺伝子の発現が認められた。GAPDH は遺伝子発現の有無を調べる際のポジティブコントロールとして有用であることが示唆された。
66 (4), 737-742 (2000)
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ホタテガイ外套膜上皮組織に存在するミオシンの単離と性状

荒木隆宏,長谷川靖(室蘭工大・応化)

 ホタテガイの組織では,平滑筋(キャッチ筋)ミオシンが心臓,精巣,外套膜において発現していることが報告されている。私たちは,外套膜上皮組織からミオシンを単離,精製しすでに性状がよく知られている横紋筋,平滑筋ミオシンとの比較を行った。外套膜上皮ミオシン重鎖のトリプシンによる切断速度は筋肉ミオシンとは異なっており,さらにその Mg2+-ATPase 活性は筋肉ミオシンに比べ有意に低い値を示した。これらの結果は,外套膜上皮組織には筋肉ミオシンとは異なるタイプのミオシンが存在していることを示している。
66 (4), 743-747 (2000)
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二枚貝貝柱筋のアデノシンデアミナーゼの精製及びその性質

陳 一新,内田博之,右高良久,林 智敬,上島孝之(福井大工)

 ホタテガイ Patinopecten yessoensis とバカガイ Mactra chinensis の貝柱筋からアデノシンデアミナーゼ(ADA) を電気泳動的に単一まで精製した。精製した酵素のサイズ,至適 pH 及び基質特異性は脊椎動物の単量体 ADA と類似していた。ホタテガイの貝柱筋から精製した ADA に対するマウス抗血清は,バカガイの貝柱筋および牛小腸由来の ADA と反応したが,ホタテガイ中腸腺由来の ADA とは反応しなかった。
66 (4), 748-754 (2000)
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ロブスター 3 種筋肉の死後初期における ATP 相当量の変化

島田玲子,潮 秀樹,山中英明(東水大)

 ロブスター 3 種の筋肉を 0, 5, 10℃ に貯蔵し,ATP,アルギニンリン酸(PA) および乳酸含有量の経時変化から ATP 相当量を算出し,死後の初期段階における ATP 分解量について検討した。いずれのエビにおいても ATP と PA は減少し,同時に L-乳酸の蓄積が認められた。0, 5℃ におけるイセエビの各成分の変化は緩慢で,10℃ では速かった。ロックロブスターでは貯蔵温度の上昇に伴って速やかに変化し,オマールエビではいずれの温度でも速かった。ATP 相当量はオマールエビで最も早く減少し,いずれのエビでも死後 24 時間までに大きく減少した。3 種ロブスターの死後筋肉における ATP 生成および分解の速度と貯蔵温度との関係は種によって異なるものと考えられた。
66 (4), 755-760 (2000)
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高温馴化過程のコイ普通筋におけるミオシン重鎖アイソフォームと MyoD および MEF2 ファミリー転写産物量の変化

小檜山篤志,二瓶義明,平山 泰,中谷操子,菊池 潔,渡部終五(東大院農)

 水温を 20℃ から 30℃ に 1 日かけて変え,35 日間コイを飼育した。その結果,普通筋の 10° 型ミオシン重鎖アイソフォームの mRNA 蓄積量は水温の上昇後に大きく減少し,逆に 30℃ 型は増大した。また,myogenin の mRNA 蓄積量は水温上昇直後に一時的に大きく増大した後,減少した。一方,MEF2 ファミリーおよび E12 の mRNA 蓄積量は温度馴化期間中,減少傾向にあったが,MyoD の mRNA 蓄積量はほとんど変化しなかった。
66 (4), 761-767 (2000)
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香りをもつ魚類の血漿,血球および肝臓に見られる高含量のホスファチジルコリンハイドロパーオキサイド

Janthira Kaewsrithong,喬 條非,大島敏明,潮 秀樹,山中英明,小泉千秋(東水大)

 数種魚類血漿,血球および肝臓中のホスファチジルコリンハイドロパーオキサイド(PC-OOH) 含量を定量した。
 カンパチ,ヒラメ,マダイ,ブリおよびニジマスなどの香りをもたない養殖魚類血漿の PC-OOH 含量は 1.2~5.1 nmol/ml であった。これに対して,ワカサギ,キュウリウオ,シシャモおよびアユなどの香りをもつ魚類の血漿 PC-OOH 含量は 10.0~29.4 nmol/ml であり高かった。とくに,アユとワカサギで高値であった。香りをもたない魚類赤血球(RBC) の PC-OOH 含量は 23.4~25.2 fmol/105 RBC であった。一方,香りをもつ魚類の赤血球 PC-OOH 含量は 122~419 fmol/105 RBC であった。さらに,アユ肝臓の PC-OOH 含量は香りをもたない魚類肝臓のそれよりも 5 倍以上高かった。アユとニジマスの血液のリン脂質含量および高度不飽和脂肪酸組成に顕著な差は見られなかった。
66 (4), 768-775 (2000)
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魚肉血合肉および普通肉におけるカテプシン群の分布

青木恭彦,山下剛司,上野隆二(三重大生物資源)

 魚類筋肉中に存在するカテプシン B, L, D,カテプシン B 様酵素および潜在型カテプシン L の活性を測定した。海産赤身魚,海産白身魚および淡水魚の計 24 魚種を用いてカテプシン群の分布を検討したところ,カテプシン B, L,カテプシン B 様酵素および潜在型カテプシン L は,海産赤身魚の血合肉および普通肉に多く含まれていた。カテプシン D は海産赤身魚,海産白身魚および淡水魚において広く分布しており,魚種間の違いは認められなかった。
66 (4), 776-782 (2000)
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マアジすり身のゲル形成能とゲルの熱耐性に及ぼす各種タンパク質の影響

陳 輝煌(宜蘭技術学院)

 マアジすり身に弾力補強剤として生卵白,血漿タンパク質粉末,小麦グルテン粉末,乳清タンパク質粉末を加えると,熱ゲル化温度が低下するとともに戻りが抑制された。とくに血漿タンパク質粉末ではすり身が著しく硬くなり,ゲル形成能が改善された。また,これらの添加によって,得られるかまぼこのゲル強度と熱耐性が高められた。血漿タンパク質粉末を加えたかまぼこはゲル強度が高く,弾力性に富み,70℃ 以下で加熱しても,なお高いゲル強度を示した。さらに,これらの添加は加熱による褐変を抑制した。
66 (4), 783-788 (2000)
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卵黄形成期のサクラマス雌魚における血中成長ホルモン(GH) およびビテロジェニン(Vg) 量の変化(短報)

深田陽久,平松尚志,北村真紀子,清水宗敬,原 彰彦(北大院水)

 サクラマス雌魚における卵黄形成期の血中 GH 量の変化を観察することを目的として,酵素免疫測定法により GH 量を測定した。血中 Vg 量を一元免疫拡散法で測定し,成熟の指標とした。血中 GH 量は 5 月にそれまでの 2 倍量まで一時的な増加を示した。この GH の上昇後,体重,GSI および血中 Vg 量の有意な増加が観察された。これらのことから GH はサクラマスにおいて体成長だけでなく卵黄形成にも関与していることが示唆された。
66 (4), 789-791 (2000)
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ウナギ催熟時におけるサケ GTH 投与後の血中性ホルモンの変化(短報)

佐藤成美,川添一郎,鈴木 譲,会田勝美(東大院農)

 ウナギ催熟時におけるサケ生殖腺刺激ホルモン画分(sGTH) 投与後の血中性ホルモンの動態を詳細に調べた。sGTH を LG エマルジョンおよび生理食塩水にそれぞれ包含させ,雌化ウナギに毎週連続投与した。1, 2 及び 8 回目投与時及び投与後 1, 3, 5, 7 日目に採血し,血液中のテストステロン,エストラジオール 17β 及び sGTH の濃度を RIA により測定した。その結果,sGTH の投与にともない,血中の性ホルモンも短い周期変動を繰り返していることが明らかになった。
66 (4), 792-794 (2000)
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煮干による摂食抑制効果(短報)

中島 滋(文教大短),濱田 稔(宮崎医大),土屋隆英(上智大理),奥田拓道(愛媛大医)

 煮干のラットに対する摂食抑制作用を調べた。カゼイン,煮干,アコヤガイをタンパク質源としてラットを飼育した。これらの栄養価はほぼ等しいにも関わらず,全飼育期間を通じて,体重増加量および飼料摂取量はアコヤガイ食群が最も高く,次いでカゼイン食群,煮干食群の順であった。これらの結果から,煮干による摂食抑制効果が認められた。体重増加割合および飼料摂取量はタンパク質源のヒスチジン含量と反比例していたことから,煮干の摂食抑制効果はヒスチジンにより生じた可能性があると考えられた。
66 (4), 795-797 (2000)
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魚介類可食部のエラスターゼおよびコラゲナーゼ阻害活性(短報)

山内理央,向山大吉,山口勝己(農工大工)

 26 種の魚介類の可食部をメタノール抽出し,水溶性画分と脂溶性画分に分け,両酵素の阻害活性をスクリーニングした。エラスターゼの場合,水溶性画分は,サザエとツブガイが 100% の阻害活性を示したが,脂溶性画分は弱い促進活性を示すものが多かった。一方,コラゲナーゼⅠ型の場合,ほとんどの種が両画分とも阻害活性を示したが,特に強い活性は認められず,最高がナンキョクオキアミの脂溶性画分の 65.0% であった。以上の結果から,魚介類には種によって,低分子性で副作用のない阻害物質が含まれることが示唆され,機能性食品として,これらの酵素が関与する疾病の予防・治療に役立つ可能性が考えられる。
66 (4), 798-800 (2000)
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ドチザメ・ミオシンの表面疎水性に及ぼす尿素の影響(短報)

加納 哲,谷口淳一郎,山田智代,丹羽栄二(三重大生物資源)

 ドチザメ普通筋のミオシン,サブフラグメント-1(S1) およびロッドの表面疎水性に及ぼす尿素の影響を ANS 試薬で調べた。その結果,最大測定濃度の 2M まで,尿素濃度の増大に伴ってミオシンおよびロッドの蛍光強度は単調に減少した。一方,S1 では 1M 尿素で最大 126% に達し,さらに高濃度では逆に減少した。対照のコイ S1 およびロッドの蛍光強度はドチザメのものとほぼ同様の尿素濃度依存性を示したが,コイのミオシンはむしろ S1 と似た傾向を示した。以上より,ドチザメのミオシンはコイのそれより尿素抵抗性があり,S1 とロッドの結合部位周辺がその差を特徴づけていることが示唆された。
66 (4), 801-803 (2000)
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