Fisheries Science 掲載報文要旨

コウイカの行動における視覚の役割,視野および視精度

綿貫尚彦,川村軍蔵,金内祥平(鹿大水),岩下 徹(熊本水研セ)

 コウイカの視覚機能を行動実験と組織観察によって調べた。暗黒下の水槽では入かごと摂餌は減退し,両行動は光量依存であることを示した。光学的手法により測定した単眼視野は水平面で 253°,両眼視野は前方が 86°,後方が 60°であった。網膜には視細胞密度の高い部位が光学的赤道のやや上に帯状をなした。視細胞密度分布は特定の視軸の存在を示さなかった。コウイカの餌視認距離と餌の大きさから計算された視力は 0.36,視覚的赤道上の視細胞密度とレンズの焦点距離より計算された視力は 0.89 であった。魚類に比較するとコウイカの視力は格段に鋭かった。
66(3), 417-423 (2000)
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定置網における混獲防止のためのサケ稚魚の箱網脱出行動の解析

藤森康澄(北大院水),阿部康二(泰東製綱),清水 晋,三浦汀介(北大院水)

 サケ稚魚の混獲防止法開発の基礎資料を得るため,水槽において箱網揚網時の網内容積の減少過程を考慮し,サケ稚魚の網目に対する通過行動を調べた。実験には網目サイズ 14.0, 15.6, 17.2, 20.5 mm (伸張内径)の菱目(Hanging ratio : 約 0.5, 0.70,約 0.8) と角目の網地パネルを用いた。菱目での網目通過率は Hanging ratio 0.70 で最も高くなった。また,この菱目の通過率はいずれの網目サイズでも角目の通過率よりも高かった。これらの結果から,混獲防止には縮結 0.70 の菱目が適切と判断された。ただし,菱目は張力によって変形するため,使用においてこれを防ぐ工夫が必要である。
66(3), 424-431 (2000)
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霞ヶ浦におけるワカサギ大小二群の成長

工藤貴史,水口憲哉(東水大)

 霞ヶ浦に生息するワカサギには,1977 年以降,同一年級群内に体サイズの異なる二型が見られる。1992 年 5 月~1998 年 2 月に漁獲されたワカサギの体長組成から大小二群の成長式を求め,また積算水温と成長との関係について明らかにした。成長式としては大小二群とも成長率が 1 年間に 2 周期で変化する Gompertz の式または Logistic 式が選択された。この式は春季と秋季は成長が増大し,夏季と冬季に成長が停滞するといった霞ヶ浦におけるワカサギの生物学的特徴をよく表示している。積算水温と成長との関係は,9 月までは積算水温が高いほど成長が悪く,9 月以降は積算水温に関係なく小型群は約 82 mm まで,大型群は約 108 mm まで成長し続けることが明かになった。
66(3), 432-441 (2000)
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北海道石狩湾およびその周辺域におけるソウハチ仔稚魚および若魚の分布と移動

富永 修(福井県大),渡野辺雅道(稚内水試),羽生勝和(北大院水),土門和子,渡辺安廣(道中央水試),高橋豊美(北大院水)

 石狩湾と周辺域でソウハチの成育場および親魚群への加入過程を調べた。産卵期は 5 月下旬から約 4 カ月間続くと考えられるが,浮遊仔魚は 7 月下旬以降にだけ採集された。着底直後の稚魚は 8 月下旬~9 月に水深 30 m~69 m で採集され,冬季~春季に分布の中心域は 30 m 水深へ移った。その後分布域は 50 m 以深に移ったが,翌春 2 歳魚が再び浅い水深帯に出現した。この時期,1 ・ 2 歳魚の分布域で 3 歳魚以上はほとんど採集されなかった。
66(3), 442-451 (2000)
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人工河川におけるアユとオイカワの種間干渉

片野 修,阿部信一郎(中央水研),松崎 賢(福井内水面総合セ),井口恵一朗(中央水研)

 アユとオイカワを実験河川に放流し,その種間関係を調査した。アユが流れの速い場所で主に藻食行動を示していたのに対して,オイカワは雑食性で主として流れが緩い場所で,藻類のほか流下物や水面への落下物への摂食行動を示していた。両種とも同種個体を攻撃したが,優位であったのはより大型の個体だった。オイカワがアユを攻撃することは観察されなかったが,アユはしばしばそのなわばりへ侵入したオイカワを攻撃した。アユが活動すると,オイカワは藻類を食べる行動を減少させ,水面への落下物への摂食行動を増加させた。しかし,アユもオイカワも他種の存在によって成長率を低下させることはなく,オイカワが利用場所や摂食行動を柔軟に変えることによって,アユとの競争を緩和させたと考えられる。
66(3), 452-459 (2000)
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2 魚種を漁獲する漁業のための DeLury の方法の修正

山下紀生(東水大),長谷川雅俊(静水試),山田作太郎,田中栄次,北門利英(東水大),伏見 浩(福山大)

 2 目的魚種を漁獲する漁業の魚種別努力量の配分を考慮して資源量を推定する方法を提案する。努力量の配分と資源の地理的分布を確率分布で表し,未知パラメータは最尤法で推定する。この方法を静岡県田牛地先の潜水漁業に適用した。最小 AIC により選択されたモデルは努力量配分が年間と年内で変動するモデルであった。資源量推定値の CV は,アワビで 0.01~1.37,サザエで 0.01~0.03 である。
66(3), 460-466 (2000)
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エゾバフンウニ稚仔の食物消費と成長

吾妻行雄(東北大院農)

 エゾバフンウニ人工種苗のフシスジモクとホソメコンブに対する摂食量,消化・吸収量ならびに成長を飼育実験により季節的に調べた。フシスジモクに対する摂食量と消化・吸収量は,7 月から 10 月にホソメコンブよりも多かった。しかし,フシスジモクの主枝と側枝が枯死,流失した 11 月から 3 月には,本種に対する摂食量と消化・吸収量は減少し,成長もホソメコンブに比べて遅かった。フシスジモクに対する餌料転換効率はホソメコンブよりも 5 月と 6 月に高く,8 月から 10 月には低く,消化・吸収効率とは相反する季節変化を示した。この原因は海藻種間の栄養成分の組成と季節的に変化する成分量の相違に起因すると考えられた。
66(3), 467-472 (2000)
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三浦半島沿岸のアラメ・カジメ群落における地層および岩石の一軸圧縮強度と損壊度

荒川久幸,岡田 龍(東水大),岡部 久(神奈川水総研),森永 勤(東水大),谷口和也(東北大院農)

 アラメ・カジメ群落の基質の物理的性質を知ることを目的として,1)三浦半島沿岸における群落の見られる地層,2)基質の圧縮強度および損壊度,3)アラメの付着強度について調べた。結果は以下のようであった。1)群落の著しい地層は,三崎層 Ms,逗子層 Zs,初声層 Ht であった。これらは全て第三紀後期中新世の三浦層群の地層であった。2) Ms, Zs および Ht の圧縮強度(kgf/cm2) は 73.0, 86.2 および 148.9 であった。3) 損壊度(%/h) は Ms, Zs および Ht でそれぞれ 4.47×10-2, 3.64×10-2 および 2.09×10-2 であった。4)基質への付着強度(kg) は Ms, Zs および Hs でそれぞれ 25.3, 27.4 および 23.1 であった。
66(3), 473-480 (2000)
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酸素消費量測定によるサクラマス活動代謝量の算出

Jill B. K. Leonard, David R. Leonard,上田 宏(北大水洞爺湖臨湖実)

 平均体長(BL) 29.0 cm のサクラマスを用いて,12° (N=13) と 18° (N=9) における遊泳中の酸素消費量を測定し,尾鰭振動頻度(TBF),酸素消費量(MO2),水温と遊泳速度との関係を解析した。本種も他のサケ科魚類と同様に,TBF は 12° で 0.698 U (U=体長/秒)+1.560, 18° で 0.738 U+1.585 であり,log MO2 で表示した活動代謝量は 12° で 0.233 U+0.339, 18° で 0.201 U+0.643 であり,標準代謝量は 12° と 18° で各々 2.19 と 4.39 mmol/kg/h であり,温度依存性活動代謝量 Q10 は 2 体長/秒において 2.88 であった。
66(3), 481-484 (2000)
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台湾沖のクロマグロの年齢組成と体長体重関係に関する新情報

Chi-Lun Wu, Shih-Tsung Huang,Hsueh-Keng Liao(台湾水試),Chien-Chung Hsu, Hsi-Chiang Liu(台湾大海洋研)

 北太平洋南西部(台湾沖)で捕獲したクロマグロ Thunnus thynnus の体長と体重の関係式を求め,他海域の報告と比較した。最も代表的な関係式は W=0.000023058L2.9342 で,W は内臓除去体重(kg), L は尾叉長(cm) である。この W を 1.112 倍して全体重を計算した。北西太平洋や日本海における報告と今回の関係式間に差はなく,これらの 3 海域のクロマグロは同じ系統群である可能性を示唆した。
66(3), 485-493 (2000)
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拡張 SELECT モデルによるベニズワイガニ雄に対するかごの選択性

鄭 義哲,朴 倉斗,朴 性・(韓国水産振興院),李 珠煕(釜慶大学校),東海 正(東水大)

 6 種類の目合(95, 112, 122, 132, 152, 172 mm 目合内径)のかご網を用いた比較操業実験の結果に,努力量(使用したかご網数)を用いた拡張 SELECT モデルを適用することで,ベニズワイガニのサイズ選択性を求めた。かご網の選択性をロジスティック曲線と仮定し,95 mm 目合のかご網を対照実験として解析した。最尤法によって推定したパラメータに対して,尤度比検定と AIC の比較を行い,分割率パラメータを相対努力量から求めたモデルが最適と判断された。得られた選択性は,かご網の目合が大きくなるほど大きなカニを逃避させることを示し,網目の選択性機構によるものと考えられた。
66(3), 494-501 (2000)
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マガキの性成熟に伴う生殖巣生体成分の変動

李 旗,尾定 誠(東北大農),森 勝義(東北大院農)

女川湾養殖マガキの性成熟に伴う卵巣と精巣の形態及び生化学成分の変化を検討した。性成熟の進行につれて卵巣と精巣のグリコーゲン量は減少し,卵巣の蛋白質量は卵径と共に増加した。脂質成分の中でトリグリセリドの季節変動が最も顕著で,その量が性成熟に伴い卵巣で増加,精巣で減少した。精巣に比べて卵巣の RNA 量は高く DNA 量は低かった。RNA 量と RNA/DNA 比は卵巣成熟の良い指標であり,性成熟に伴う RNA/DNA 比の増加は卵巣内での卵黄蛋白の合成を示唆した。
66(3), 502-508 (2000)
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大型珪藻 Coscinodiscus wailesii 細胞の炭素・窒素・リンおよびクロロフィル含量とその瀬戸内海における生物量

多田邦尚,Santiwat Pithakpol(香川大農),一見和彦(東北水研),門谷 茂(香川大農)

 冬季の瀬戸内海において Coscinodiscus wailesii 細胞を採取し,その炭素・窒素・リンおよびクロロフィル a 含量を測定した。C. wailesii 細胞のクロロフィル a 含量は平均 5.1 ng/cell であり,炭素・窒素・リン含量は,それぞれ 244, 41.1, 7.49 ng/cell であった。
  C : N : P (モル比)は 84.6 : 12.2 : 1 であり,レッドフィールド比に近い値を示した。また,C/Chla は 37 で,フェオ色素含量は 0.23 ng/cell と低く,海水中より採取された C. wailesii 細胞が活発に増殖していたことが予想された。
 さらに,瀬戸内海播磨灘の観測点において,C. wailesii 由来の Chla 量は水柱内の全 Chla 現存量の 0 から 67% を占めていると見積もられた。C. wailesii は,一時的にこの海域の植物プランクトン量の季節変動に大きく寄与しており,特に冬季には量的に植物プランクトンの主要な構成種となっていることが示唆された。
66(3), 509-514 (2000)
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アメマスの耳石を用いた NIH Image による AUTO-COUNTING method の評価

高島義信(北大水),高田壮則(北海道東海大),松石 隆,菅野泰次(北大水)

 NIH Image による年齢査定法を評価するためにアメマスの耳石 439 個体について年齢査定を行った。年齢査定は A, B, C の 3 人によって行った。査定者 A と B は経験者であるのに対して,査定者 C は未経験者である。次に,NIH Image による AUTO-COUNTING method を行った。年齢査定に用いたアメマスの真の年齢がわからないため,年齢査定結果の一致率から各年齢査定者が真の年齢を導く確率(能力)を求めるモデルを開発した。その結果,査定者 A の能力が最も高く,ついで AUTO-COUNTING method,査定者 B,そして査定者 C が最も低かった。これらのことから,この年齢査定法は有効であると思われる。
66(3), 515-520 (2000)
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低水温期におけるブリのエネルギーおよびタンパク質要求量

渡邉哉子(東水大),青木秀夫,山形陽一(三重水技セ),Kiron Viswanath,佐藤秀一,渡邉 武(東水大)

 低水温期(12.8-16.5°) におけるブリのエネルギーおよびタンパク質の要求量を明らかにすることを目的とし,三重県水産技術センター尾鷲分場の小割生簀において 745-758 g の魚を飼育した。試験飼料には可消化エネルギー(DE)および可消化タンパク質(DP)含量が明らかな市販のソフトドライペレットを用い,飽食区,飽食区の 70, 50, 30 および 10% 量を給餌する区および無給餌区を設け,週に 3 回 4 週間給餌した。成長は飽食区で最も優れ給餌率の低下とともに低下した。最大成長および体重維持に必要な DE と DP はそれぞれ 42.1 kcal と 3.3 g/kgBW/day および 14.7 kcal と 1.1 g/kgBW/day であった。また,体エネルギー含量の維持に必要な DE および DP はそれぞれ 19.6 kcal および 1.5 g/kgBW/day であった。
66(3), 521-527 (2000)
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ニジマス幼魚によるエネルギー含量の異なる飼料に対する自発摂餌量

山本剛史,島 隆夫,鵜沼辰哉(養殖研),白石 学,秋山敏男(中央水研),田畑満生(帝京科学大)

 低エネルギー飼料(LE),および LE に対してタンパク質,脂質または可消化炭水化物をそれぞれ添加した高エネルギー飼料(HP, HF, HC) を,平均体重 85 g のニジマス幼魚(10 尾/水槽)に 8 週間自発摂餌させ,飼料摂取量を比較した。1 日体重当たりの乾物飼料および総エネルギー摂取量は,LE 区が最も多く,HF 区が最も少なかったが,可消化エネルギー(DE) 摂取量は飼料に関係なく一定であった。従って,ニジマス幼魚は飼料組成に係わらず DE 摂取量を自発的に調節していることが示唆された。
66(3), 528-534 (2000)
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クルマエビの卵巣成熟過程における血中ビテロジェニン量

サフィア ジャスマニ・川添一郎・施トウイ・鈴木 譲・会田勝美(東大農)

 酵素免疫測定法を用いてクルマエビのビテロジェニン(Vg)測定系を確立した。検出濃度範囲は1.56-100ng/wellであった。標準曲線と成熟雌クルマエビ血リンパの反応曲線は平行となったが、雄の血リンパは抗体と反応しなかった。アッセイ内およぴアッセイ間変動係数はそれぞれ6.0%と10.5%であった。血中Vg量は前卵黄形成期では低かったが、内因性卵黄形成期では急増し、外因性卵黄形成期前期でピークに達した後、後期まで高値を維持した。
66(3), 535-539 (2000)
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経口免疫によるコイ腸管におけるタンパク吸収の特異的阻害

中村 修(北里大水),鈴木 譲,会田勝美(東大院農)

 魚類腸管から吸収される未消化のタンパク分子は,抗体産生を誘導しうる。免疫応答がタンパク吸収に与える影響を明らかにするため,コイをヒト γ グロブリン(HGG) で経口免疫した後に,HGG を経口投与したところ,免疫魚での血中 HGG 濃度は有意に低かった。さらに動脈球内への HGG 投与を行い,経口投与 HGG の腸管からの吸収と血中からの除去を薬理学的に解析した結果,免疫群では腸管からの HGG の吸収が特異的に減少していることが明らかになった。
66(3), 540-546 (2000)
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台湾産ハゼの毒性

林 欣榮,黄 登福(台湾海洋大),邵 廣昭(中研院動物所),鄭 森雄(台湾海洋大)

 1996 年 8 月から 1998 年 7 月にかけて,台湾水域から漁獲されたハゼ 12 種 305 個体につき,組織別毒力を調べたところ,ツムギハゼは 1045 MU/g 内臓,1020 MU/g 鰭などの高い毒性を示した個体がみられた。他方,これまで調査例がなかった Prachae tarichthys palynema では 88 MU/g 頭部,52 MU/g 筋肉など,同様に Radigobius canimus では 30 MU/g 内臓,18 MU/g 生殖巣などを示す個体が認められ,いずれも有毒種と判定された。次に毒組成を電気泳動や HPLC 法で分析したところ,いずれも tetrodotoxin に加え,そのアンヒドロ体が検出された。
66(3), 547-552 (2000)
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マダイ筋肉中のコラーゲン含量の季節変動

東畑 顕,田中正隆,豊原治彦(京大院農),田中秀樹(養殖研),坂口守彦(京大院農)

 マダイ筋肉の破断強度とコラーゲン含量との関連性について検討するために,コラーゲン含量の年間変動を調べた。コラーゲン含量は,各個体毎にコラーゲン中のプロリンの水酸化率の違いで補正して算出した。その結果,雌雄とも破断強度の変動とほぼ一致し,雄では 6 月と 9 月に高く 7 月に低いことが,雌では 9 月に高いことが認められた。さらに,各月における破断強度とコラーゲン含量との間に雌雄とも正の相関(p<0.05;雄,r=0.686 ; 雌,r=0.742) が認められたことから,筋肉中のコラーゲン含量の季節変化が,筋肉の破断強度の変化に寄与している可能性が示唆された。
66(3), 553-557 (2000)
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サバ塩すり身の劣化に及ぼすカテプシン L およびカテプシン L 様,カルパインの影響

何明根,陳俊宏,江善宗(台湾海洋大)

 サバ塩すり身にはカテプシン B, L および L 様,カルパイン,カルパスタチンが存在し,-20°, 8 週間貯蔵後もその活性の 77% が残る。ミオシン重鎖(MHC) 分解に対する最適条件はカテプシン L および L 様では 40-55°, pH 5.5-7.0 で,カルパインでは pH 7-7.5 であった。さらに,塩すり身にカルパインを加えても得られるゲルの強度は低下しかったが,カテプシン L および L 様を加えて 55°, 2 時間加熱すると著しく低下した。したがって,すり身中に残存するカテプシン L および L 様は MHC を分解することによってゲルの強度を低下させるが,カルパインは MHC を分解しないことが示唆された。
66(3), 558-568 (2000)
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いわし糠漬け熟成過程でのタンパク質加水分解要因としての塩汁プロテアーゼの特徴

八並一寿,竹中哲夫(玉川大)

 いわし糠漬け(FSR) 製造時に添加される塩汁の役割を明らかにするため,塩汁プロテアーゼ(BP) の特徴を明らかにした。BP の活性は,イワシ内臓や筋肉から調製した粗酵素より高く,至適温度は 55° であった。BP は温度安定性が高く,NaCl の存在下でも安定で,pH8 で最大活性を示した。BP は STI や DFP で阻害され,トリプシン様,キモトリプシン様,アミノペプチダーゼ様活性を示した。BP は,主に内臓由来のセリンならびに金属プロテアーゼで,FSR 熟成に関与すると推察した。
66(3), 569-573 (2000)
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産卵期のアユ筋肉におけるゼラチン分解活性の誘導

久保田賢(高知大農),木下政人(京大院農),横山芳博(武庫川女大バイオ研),豊原治彦,坂口守彦(京大院農)

 産卵期のアユ筋肉コラーゲンの分解に関わるプロテアーゼを知る目的で,産卵期の筋肉抽出液を DEAE-セルロース,CM-セルロース,ゼラチンアフィニティーのカラムクロマトグラフィーに供した。その結果,ゼラチンカラム非吸着画分に 80 kDa のセリン型プロティナーゼによる活性が,吸着画分に 68 kDa のメタロ型プロティナーゼによる活性が検出された。これらの活性は成長期のアユ筋肉では検出されなかったことから,産卵期特有のコラーゲン代謝への関与が推測された。
66(3), 574-578 (2000)
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ウナギ血清,培養肝細胞の分泌タンパク質及び肝細胞膜におけるアポリポタンパク質 A-Iと A-IIの分布

加藤洋教,戈応平,Djibril Ndiaye,林 征一(鹿大水)

 高密度リポタンパク質(HDL) のアポリポタンパク質 A-I(apoA-I)及びアポリポタンパク質 A-II(apoA-II)に対するモノクローナル抗体を用いてウナギ血清,培養肝細胞の分泌タンパク質中及び肝細胞の細胞膜中での apoA-I,apoA-IIの分布を調べた。血清及び分泌タンパク質中には,遊離の apoA-Iが存在したが,遊離の apoA-IIは存在しなかった。肝細胞膜中に apoA-I及び apoA-IIが存在することが分かった。肝細胞を抗 apoA-II抗体で処理すると,HDL の肝細胞ヘの結合が阻害された。
66(3), 579-585 (2000)
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養殖コイにおける各筋タイプの生化学的及び生理学的性質の比較

アブドゥル ジャバルシャー,槌本六良,矢田 修(長大海研),小鶴泰俊,三宅俊夫(長大水),三嶋敏雄,王 勤,橘 勝康(長大海研)

 魚類の死後硬直進行と筋タイプの関係を明らかにするため,コイを用い,各筋タイプ(白筋:W,ピンク筋:P,赤筋:R) の生化学的及び生理学的性質を比較した。生化学的性質では,筋肉中 ATP 総量は W>P>R,グリコーゲン量は W≪P≒R であった。LDH 活性は W≒P≫R で,筋原線維 Mg2+-ATPase 活性は W≒P≫R であった。筋小胞体(SR)Ca2+-ATPase 活性は W≒P≫R で,SR の Ca2+ の取り込みと放出は双方とも W>P>R であった。生理学的性質では,カフェイン拘縮は P≫W>R であった。SR のサルコメアに対する表面積及び容積率は双方とも W<P≫R であった。Actomyosin (Am) の超沈殿反応は W≪P<R であった。以上より,P は,Am の収縮の能力が高いのみならず,嫌気条件下の ATP の再生,SR による細胞内 Ca の調節能力も優れていると考えられ,P の死後硬直進行は W よりも収縮が大きいと考えられた。
66(3), 586-593 (2000)
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短期運動時とその回復時におけるコイの筋肉および肝膵臓の酵素活性および代謝中間体濃度の応答

杉田 毅,示野貞夫,中野伸行,細川秀毅,益本俊郎(高知大農)

 運動を負荷したコイでは,筋肉の phosphofructokinase 活性は増大してグリコーゲン含量は減少し,血清のグルコースおよび乳酸の含量は,肝膵臓の glucose-6-phosphatase および fructose-1,6-bisphosphatase の活性とともに増大した。休息時には多成分は回復傾向にあったが,肝膵臓の両糖新生酵素活性は高く推移した。以上の結果から,運動時の筋肉では解糖が促進し,生成した乳酸は肝膵臓で糖新生されて,筋肉に移行すると推察された。また休息時には,肝膵臓の糖新生が筋肉成分の修復に寄与しており,糖代謝の臓器相関が示唆された。
66(3), 594-598 (2000)
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クロマグロ筋肉から Met-Mb 還元酵素の単離と性状

彭 清勇,邱 思魁,江 善宗(台湾海洋大)

 硫安分画,イオン交換クロマトグラフィー,有機水銀アガロース・アフィニティクロマトグラフィーによってクロマグロ普通筋から精製したメトミオグロビン還元酵素の電気泳動的均一性を調べた。SDS-PAGE によって推定した分子量は 100 kDa であった。メトミオグロビン還元の至適 pH と至適温度は pH 7.3 と 25° であった。本酵素は pH 7.0~7.3 と 4°~15° で極めて安定であった。精製した酵素は K によって強く賦活され,Na+ と Mn2+ で中程度賦活され,Ni2+ で影響されなかった。Li+, NH4, Mg2+ および Co2+ によって中程度阻害された。メトミオグロビンと NADH の還元の Vmax は 0.32 と 0.43 mmol/min/mg であり,Km は 2.3×10-5 と 24.4×10-5 M であった。
66(3), 599-604 (2000)
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網走湖産ワカサギの初期発育段階区分

虎尾 充(東農大)

 網走湖産ワカサギの初期発育過程を Phase A~G の 7 期に区分した。A 期と B 期の区分は卵黄の有無を指標とした。背鰭鰭条原基の形成を指標として B 期と C 期に区分した。C 期と D 期の区分は尾鰭の形状の変化を指標とした。E 期は鰭条が定数に達した段階とした。F 期は稚魚的体形への移行が進み,G 期は体形が安定し成魚とほぼ同じになる段階とした。A 期が yolk sac larvae, B 期が pre-flexion larvae, C 期が flexion larvae, D ・ E 期が post flexion larvae, F ・ G 期以降が juvenile に相当する。また,降海する遡河回遊型集団は Phase F より発育の進んだ個体であった。
66(3), 605-607 (2000)
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AIC の有限修正の有効性

庄野 宏(遠洋水研)

 水産資源分野におけるモデル選択の指標として情報量規準 AIC が広く用いられているが,この AIC は漸近理論を用いて導出しているため,小標本の場合やパラメーター数の標本数に占める割合が大きいときには偏りを生じてしまう。
 このような場合に適用可能な情報量規準 c-AIC を用い,成長式推定を扱った実際例におけるモデル選択を行ったところ,AIC や Bayes 型情報量規準 BIC と異なる結果が得られた。小標本の場合の CPUE 標準化を想定した分散分析型モデルを用いてシミュレーション実験を行った結果,AIC 及び BIC に比べて c-AIC のパフォーマンスが良いことが確かめられた。
66(3), 608-610 (2000)
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ブリ仔稚魚の脳の成長に及ぼすドコサヘキサエン酸の影響(短報)

石崎靖朗(東水大),植松一眞(広大生物生産),竹内俊郎(東水大)

 ブリ仔稚魚をドコサヘキサエン酸(DHA),エイコサペンタエン酸(EPA) あるいはオレイン酸(OA) で強化したワムシ(実験I)およびアルテミア(実験II)で飼育し,経時的に採集したブリ仔稚魚の脳総体積,視蓋および小脳の体積,さらに後 2 者の脳総体積に対する相対体積を指標に脳の成長に及ぼす DHA の影響を調べた。実験Iでは,視蓋および小脳の相対体積においていずれの試験区間にも有意差は認められなかった。実験IIの OA 区は,いずれの部位の発育も全長 11.5 mm 以降他の試験区より劣っていた。相対体積では,DHA 区の視蓋が全長 12~15 mm で最大に達し,15 mm 以降減少したが,EPA 区では全長 20 mm で DHA 区の最大値に達した。小脳では,DHA 区が全長 12 mm 以降他の試験区より有意に大きくなり,20 mm まで急激に増加する傾向が見られた。
66(3), 611-613 (2000)
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キタクシノハクモヒトデ Ophiura sarsi L"utken の脂質にみられる高濃度のテトラコサヘキサエン酸(24 : 6n-3)(短報)

川崎賢一,鍋島(伊藤)裕佳子(富山食品研),石原賢司,金庭正樹(中央水研),大泉 徹(福井県大生物資源)

 若狭湾内で採集したキタクシノハクモヒトデの脂肪酸組成を検討した結果,主要脂肪酸として 16 : 0, 18 : 1, 20 : 1, 20 : 5n-3 とともに 24 : 6n-3 (THA) を含有することを認めた。本種の総脂質中の THA の含有率は 13.9% であり,従来報告されている棘皮動物やそれらの捕食動物中の含有率よりもかなり高かった。また,本種の THA はトリアシルグリセロールよりもリン脂質に多く分布していた。
66(3), 614-615 (2000)
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異なる方法で測定したアルギン酸塩のグルロン酸含量の比較(短報)

篠原雅史(共成製薬(株)),西田隆一(堺化学工業(株)),青山貴子,加茂野秀樹(共成製薬(株)),坂東英雄(北海道薬科大),西澤 信(共成製薬(株))

 1H-NMR スペクトル法(NMR 法)で測定した 11 種のアルギン酸ナトリウムのグルロン酸含量(G%) を,完全加水分解法(CH 法)と部分加水分解法(PH 法)で測定した値と比較した。NMR 法で測定した G% は PH 法で測定した G% より高く,2 種の試料を除いて CH 法で測定した G% より低かった。PH 法で得られた M-ホモポリマー部の G% は 19.4-40.4% の範囲にあり,これが PH 法の G% が低い原因で,CH 法の G% が高いのは加水分解中のグルロン酸とマンヌロン酸の回収率が文献値と異なることによると考えられる。アルギン酸の G% (M/G 比)の測定には 1H-NMR 法が推奨される。
66(3), 616-617 (2000)
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