Fisheries Science 掲載報文要旨

スルメイカを対象とする三陸の小型イカ釣り漁業における操業戦略の変化

後藤友明,髙梨愛梨

 1970-2008年のスルメイカを対象とした小型いか釣り漁業における操業戦略について,岩手県における属人漁獲量,主要港の水揚量,知事許可隻数,原油価格の長期変動に基づき評価した。その結果,1970年代から1980年代前半にみられたスルメイカ資源の減少に伴い,高単価と低原油価格に支えられた適応的な漁場選択がみられた。1980年代は低い資源水準下で三陸沖での操業主体を維持したが,1990年代以降,主に経済的要因により隻数が減少した一方,昼釣りの三陸沖選択により他県船とともに前浜での操業主体となった。

86(1), 1-11 (2020)
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東シナ海における灯光漁船の水平分布を衛星輝度から推定する技術開発

齋藤 類,佐々木宏明,山田東也,
廣江 豊,稲掛伝三,齋藤 勉

 東シナ海は水産資源を過剰に漁獲する灯光漁船の影響を受け続けており,これらの動向を解析することは資源管理に不可欠である。本研究では,衛星輝度を収集するスオミNPP衛星が東シナ海上空を通過した夜間に船舶レーダー画像と灯光漁船種別の目視データを収集した。レーダー画像から漁船の位置を検出し,対応した衛星輝度と比較した。抽出した衛星輝度を解析し,灯光漁船種別の輝度範囲を特定した。中国灯光かぶせ網漁船の輝度範囲は他の灯光漁船種別から区分されたため,衛星輝度から当漁船種別の水平分布が推定出来るようになった。

86(1), 13-25 (2020)
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卵期のクロアワビおよびメガイアワビに与える塩分低下と暴露時間の影響

Albert. V. Manuel, Phan Thi Cam Tu,
筒井直昭,吉松隆夫

 クロアワビHaliotis discus discusおよびメガイアワビH. giganteaの人工受精卵を用いて,急激な塩分低下とその暴露時間の影響を小規模な室内実験で検討した。その結果,孵化管理水塩分の低下と暴露時間の増加に伴って,孵化までの所要時間は有意に長くなった。また両種ともに低塩分への暴露時間の増加に伴って顕著に孵化率が低下し,さらに形態異常の幼生の出現も増加した。また両種の比較においては,メガイアワビのほうがクロアワビより低塩分に長時間暴露させたときの影響は小さく,塩分変化に対する耐性に両種間で異なる傾向が認められた。

86(1), 27-33 (2020)
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クロミンククジラのDNAメチル化による年齢推定

田辺 敦,清水里紗,大澤 結,鈴木茉智,伊藤 咲,
後藤睦夫,Luis A. Pastene,藤瀬良弘,佐原弘益

 個体の年齢は,鯨類を含む野生動物の生態研究や資源管理において重要な情報である。近年,野生動物の新たな年齢指標として,ゲノムDNA中のCpG部位のメチル化修飾の変化が注目されている。そこで,本研究ではザトウクジラで発見されたGRIA2遺伝子とCDKN2A遺伝子の加齢依存的CpG部位について,クロミンククジラの場合でも加齢依存的にメチル化頻度が変化するか否かを調べた。その結果,クロミンククジラではザトウクジラとは異なるCpG部位で加齢依存的にメチル化頻度が変化していることがわかった。

86(1), 35-41 (2020)
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人為催熟ニホンウナギにおける母性mRNAの量および局在と卵質との関係

堀内萌未,泉ひかり,マークロックマン,
井尻成保,足立伸次

 卵内母性mRNAと卵質の関係はほとんど分かっていない。本研究では,ニホンウナギ卵内の母性mRNA, grip2, dazl, sybu, trim36, pou5f3, npm2の局在を調べた。その結果,細胞質縁辺部に局在する卵,および,それより内側に局在が広がる卵の2つの局在様式が認められた。また,後者の卵が多い個体は卵質が悪い傾向にあった。他方,mRNAの量的差は卵質との関連が認められなかった。この結果から,母性mRNAの量的差がなくてもその局在が乱れることで卵質が悪化することが示唆された。

86(1), 43-56 (2020)
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カンパチの血漿中ステロイドホルモンを指標とした性判別法

青木隆一郎,中田 久,鷲尾洋平,升間主計,家戸敬太郎

 本研究では孵化後412から1150日齢までの養殖カンパチSeriola dumeriliを用い,性ステロイドホルモンを対象とした性判別の有効性を検証した。血漿中の雌性ホルモンであるエストラジオール-17β(E2)および雄性ホルモンである11-ケトテストステロン(11-KT)の濃度を測定し,性判別率を算出した結果,E2ホルモンによる判別精度は78.7%であったのに対し,11-KTを使用した判別精度は96.7%と高い精度であった。以上の結果から,雌雄の血漿中11-KT濃度により性判別が可能である事が明らかとなった。

86(1), 57-64 (2020)
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九州南西部沖におけるチダイ雌の繁殖

リンドン・ハビマナ,大富 潤,増田育司,
ミゲル・バスケス・アーチデイル

 九州南西部沖におけるチダイの卵巣の成熟段階,成熟サイズ,成熟サイクルを調べた。卵巣の組織学的観察を行った結果,本種は非同調的成熟を示し,一産卵期中に複数回の産卵を行うことが示唆された。最も発達した卵母細胞の発達段階と排卵後濾胞,閉鎖濾胞の出現状況により卵巣の成熟段階を6つに分けた。本種雌の成熟サイズは尾叉長179mmと推定された。生殖腺指数および成熟個体の出現率の経月変化より,産卵期は11月から5月と推定された。一時的に成熟個体の出現が停止する年があったが,冬季の低水温に起因すると考えられた。

86(1), 65-75 (2020)
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音響テレメトリーによる夏季の高水温下の浅海域におけるマコガレイの出現状況の把握

三田村啓理,荒井修亮,堀 正和,
内田圭一,梶山 誠,石井光廣

 夏季の東京湾において超音波テレメトリーを用いてマコガレイPseudopleuronectes yokohamaeの移動を調べた。内湾で捕獲した17個体のマコガレイに発信機をつけて追跡した。海底の水温が19-23℃および溶存酸素濃度が3-5ml/lの浅海域(<30m)で6個体(35%)の位置を把握した。この結果は,マコガレイのなかには深く水温の低い水域だけでなく,比較的水温の高い浅海域に滞在する個体がいることを示す。

86(1), 77-85 (2020)
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Schizothorax o'connoriの成長にともなう腸内細菌の動的分布

Zhenda Shang, Qinghui Kong, Suozhu Liu,
Zhankun Tan, Peng Shang, Honghui Wang

 チベットのコイ科固有種Schizothorax o'connoriにおける腸内細菌叢を,16SリボゾームDNAの塩基配列を決定して調べたところ,成長にともなって多様性が高くなることが明らかとなった。合計で24門,292属(主にシュードモナス属,モラクセラ属,ゲオバチルス属)が検出された。これらの結果により,餌料中の繊維質の分解能と炭水化物の利用が確認された。S. o'connoriの成長にともなって腸の健常性と免疫状態が向上することから,成長段階は本種の腸内細菌叢に大きく影響するものと考えられた。
(文責 吉永龍起)

86(1), 87-95 (2020)
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異なる微細藻類を摂餌したミドリイガイPerna viridis pediveliger幼生の摂取,消化,成長および生存

Jean Rose H. Maquirang, Fiona L. Pedroso,
Mary Jane Apines-Amar, Lily Anne G. Pinosa,
Donna C. Rendaje, Josel F. Cadangin,
Fedelia Flor C. Mero, Carlos C. Baylon

 ミドリイガイpediveliger幼生に対する3種類の微細藻Isochrysis galbana (Iso), Chaetoceros calcitrans (Cc), Tetraselmis tetrahele (Tt)の摂餌効果について調べた。生存率に有意差はなかった。CC摂餌群は殻高と殻長の成長を促進した。ろ過効率に有意差はなかった。Cc群の消化効率はIsoおよびTt群よりも高かった。本研究の結果,Iso,Cc,Ttいずれも餌料として適しているが,成長と消化効率の点でCcが一番良いことがわかった。
(文責 舩原大輔)

86(1), 97-105 (2020)
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藻類ミールを用いたブリ飼料の魚油代替

深田陽久,北島レナト,品川純兵,森野はる香,益本俊郎

 ドコサヘキサエン酸を多く含む藻類ミール(AM)と混合植物油による飼料中魚油の完全代替がブリの成長と脂肪酸組成に及ぼす影響を調べた。飼料油脂源にタラ肝油のみを加えた飼料(対照)と,これをキャノーラ油とパーム油の混合油で代替し,AMを0,1,2,3または4%で添加した計6種の飼料を用いて,8週間飼育した。その結果,AM2%区で良好な成長が見られた。全魚体の脂肪酸組成は飼料のそれをほぼ反映していた。以上のことから,AMはブリ飼料における魚油の代替において有効な原料であることが示された。

86(1), 107-118 (2020)
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胚期のマダイに与える短時間の塩分および濁度変化の影響

Thi Cam Tu Phan, Albert Valdish Manuel,
筒井直昭,吉松隆夫

 研究室内での小規模実験により,短時間の塩分および濁度変化が胚期のマダイに与える影響を検討した。塩分34, 30, 26, 22, 18, 14,あるいはカオリンを用いて0,100,300,500および700NTUの異なる濁度に段階的に調製したふ化管理水に神経胚期のマダイ卵を3時間暴露し,その後のふ化率,ふ化時の全長および卵黄の大きさの変化を観察,比較した。その結果,塩分の違いによるふ化率とふ化後の生残に影響は認められなかったが,異なる濁度に暴露した場合では,濁度の上昇に伴いふ化率,成長,卵黄吸収率に負の影響が表れ,さらに形態異常個体の出現率も増加した。

86(1), 119-125 (2020)
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網敷き飼育によるヒラメ着色型黒化の防除

水谷昂栄,山田敏之,鈴木啓太,
益田玲爾,中田訓彰,田川正朋

 養殖ヒラメに出現する着色型黒化の防除を目的として,水槽内面を網(目合い4mm)で覆ってヒラメ稚魚(標準体長6cm)を飼育した。2か月後,対照区では無眼側上の黒化面積は約20%に達したが,網敷区では約0.5%と1/40に抑制された。防除が特に困難な胸鰭基部では黒化の出現は防げなったが,目合い12mmの網を用いると黒化の拡大は有意に減少した。また,網敷区では成長は5-15%抑制されたが,体高と体長の比は天然魚に近づいた。以上より網敷き飼育は,養殖ヒラメの黒化防除に有効であると考えられた。

86(1), 127-136 (2020)
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ストレプトミセス属放線菌RL8株がアルテミア幼生の生存とビブリオ耐性に及ぼす影響

Milagro García-Bernal, Pável Adrián Ossorio-Álvarezll,
Ricardo Medina-Marrero, Osmani Marrero-Chang,
Marlén Casanova-González, José Manuel Mazón-Suástegui

 アルテミア幼生にストレプトミセス属放線菌RL8株を給餌したところ,日和見感染するビブリオ菌に対して耐性の向上および増殖の抑制が見られた。続いて,放線菌を106および108CFU/mLで給餌し,ビブリオ菌に暴露した。24および48時間後に生存率を比較したところ,無給餌の対照区(70.7%)と比べて,それぞれ88.8%および86.3%と有意に高くなった。以上の結果より,ストレプトミセス属放線菌RL8株を給餌したアルテミアを魚類や甲殻類の種苗に餌料として用いることの有効性が確認された。
(文責 吉永龍起)

86(1), 137-144 (2020)
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キノボリウオ養殖餌料におけるアメリカミズアブ前蛹の魚粉代替材としての有効性評価

Bounsong Vongvichith,森岡伸介,杉田 毅,
Nokjalia Phousavanh, Phonaphet Chanthasone,
Phoutsamone Pommachan,中村 達

 キノボリウオの養殖に際し,魚粉を主タンパク源とした餌料と(粗タンパク32.5%,T1),その一部(同30.0%,T2)もしくは全量(同25%,T3)をアメリカミズアブ前蛹粉により置換した餌料を用いた場合(飼育期間123日),粗タンパク含量が劣るT2とT3餌料でも,T1と同等の成長が観察された。餌料T2/T3では,タンパク質効率や蓄積率が餌料T1よりも有意に高く,このことが餌料T2/T3が低タンパク水準であってもT1と同水準の成長を示した要因と考えられた。

86(1), 145-151 (2020)
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ソウギョの腸から分離されたBacillus paralicheniformis FA6株の接着および定着性について

Di Zhao, Shangong Wu, Wenwen Feng, Ivan Jakovlić,
Ngoc Tuan Tran, Fan Xiong

 プロバイオティクスが宿主の腸内に定着するために,組織への接着および定着は重要である。しかし,養殖生産量の多いソウギョの腸内でのプロバイオティクスの付着は未だに明らかにされていない。本研究ではソウギョの腸から分離された新規プロバイオティクス候補Bacillus paralicheniformis FA6株について接着および定着性について調べた。FA6株と8種類の細菌株とで疎水性能を比較したところ,FA6株が高い疎水性を有することがわかった。さらに,FA6株が高い接着能力を持ち,長期間にわたってソウギョの腸に定着できることが示唆された。
(文責 廣野育生)

86(1), 153-161 (2020)
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2系統のクルマエビにおける耐熱性における生理学的および分子生物学的違いについて:臨界温度最大値および熱ショックタンパク質70

Hongbiao Dong, Yong Mao, Yafei Duan,
Yongquan Su, Jun Wang, Jiasong Zhang

 温度は水生生物に影響を与える最も重要な因子の一つです。本研究では2系統のクルマエビの耐熱性における生理学的および分子生物学的違いについて調べた。生理学的には臨界温度最大値を調べ,分子生物学的には熱ショックタンパク質(HSP40,HSP60,HSP70およびHSP90)の発現量について調べた。酸素消費量についても調べた。2系統のクルマエビにおいて臨界温度最大値,酸素消費量および熱ショックタンパク質mRNAの蓄積量に違いが見られた。これらの結果は,クルマエビ養殖に有用な情報を提供する。
(文責 廣野育生)

86(1), 163-169 (2020)
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セレノネインのチロシナーゼ阻害によるメラニン合成抑制作用

世古卓也,今村伸太朗,石原賢司,山下由美子,山下倫明

 新規セレン化合物であるセレノネインにチロシナーゼ阻害活性を見出した。セレノネインの添加により,マウスのメラノーマ細胞と3次元培養したヒトメラノサイトでメラニン量の減少が認められた。メラニンの前駆体であるL-DOPAと精製チロシナーゼを用いた試験ではセレノネインがチロシナーゼ活性を阻害した。その分子機構を予測するため,分子シミュレーションによる解析を行ったところセレノネインはチロシナーゼの銅イオンをキレートし,酵素活性を阻害することが推測された。

86(1), 171-179 (2020)
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ベトナムカインホア省における3種の巻貝Nassariusに含まれるテトロドトキシン

Ha Viet Dao, Ky Xuan Pham, Ben Xuan Hoang,
谷岡真里,渡邊龍一,鈴木敏之

 Nassarius巻貝の喫食によって生じる神経性食中毒がベトナムで散発的に報告されている。そこで,Nassarius conoidalis, N. glans, N. pullusを2016年5月にベトナムのカインホア省で採捕し,LC/MS/MSによる毒分析に供した結果,テトロドトキシンが主要毒であった。そのうち,N. glansは最も高い毒性を示し,次いでN. conoidalis, N. pullusであった。本研究で用いた試料の有毒個体の頻度が極めて高かった。さらに,それら毒性は,日本におけるフグ消費の安全レベル(10MU/g)をすべてで越えていた。本研究から,3種の巻貝はベトナムでは食品として適さないことが判明した。

86(1), 181-186 (2020)
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高脂肪食によって引き起こされる白色脂肪組織の炎症とリポファジー異常に対する魚油の効果

齋藤かなえ,吉村智大,孙露川阳,楊  敏,
王  曜,谷山茂人,原 研治,村山文仁,
二川 健,橘 勝康,平坂勝也

 本研究では,高脂肪食誘導性肥満に対するω3高度不飽和脂肪酸を含む魚油の抗炎症あるいはリポファジー活性化効果について検討した。糖・インスリン負荷試験において,高脂肪魚油食(HFD-FO)群は高脂肪食(HFD)群よりも改善効果が見られた。脂肪組織浸潤性マクロファージや炎症シグナル関連タンパク質の発現はHFD群に比べ,FO群にて有意に低値を示した。一方,HFD-FO群とHFD群間でリポファジー関連蛋白質やmRNAレベルは変化なかった。以上より,魚油は抗炎症作用を介して高脂肪食誘導性肥満を改善することが示唆された。

86(1), 187-196 (2020)
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煮沸によるエビ筋肉の主要アレルゲン・トロポミオシンの低減

小澤秀夫,山村 晃,君島健夫,石崎松一郎,落合芳博

 甲殻類の主要アレルゲンはトロポミオシン(TM)であり,煮沸処理によりその除去を目指した。エビ筋肉を10倍量の沸騰水で20分間処理したところ,残存量を7.1%に減少させることができたが,水量を2,000倍に増やしても除去効果は改善しなかった。しかし,水量を増やし121℃で処理すると除去効果の改善が見られた。同一条件で連続3回の処理では,TM残存量が10μg/筋肉g(換算タンパク質量)以下にまで低減したことから,エビ類の低アレルゲン化に有効と考えられた。
86(1), 197-202 (2020)
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ウニの精巣および卵巣におけるエキス成分の組成:種,雌雄,成熟度による比較

村田裕子,吉村祐一,鵜沼辰哉

 国産食用種として利用されるウニ生殖巣のエキス成分組成を調べた。配偶子形成前のバフンウニとアカウニではグリシン(Gly),アラニン(Ala),リジン,アルギニン(Arg)が多く,成熟に伴いGlyとスレオニンが増加しArgとヒスチジンが減少した。バフンウニのAlaとセリン(Ser),アカウニのイソロイシンも成熟に伴い増加した。配偶子形成前のバフンウニでは,アデニル酸,イノシン酸,酢酸も多かった。配偶子形成初期のムラサキウニ,エゾバフンウニ,キタムラサキウニではGlyが最も多くAlaとArgが続き,シラヒゲウニではArgが少なくSerとプロリンが多かった。

86(1), 203-213 (2020)
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豆腐ようを模倣したすり身発酵食品の開発とその化学成分ならびに抗酸化性,ACE阻害活性の変化

吉岡美和,松尾 悠,根本友里香,小櫛満里子,
小野寺宗仲,吉江由美子

 日本の伝統食品である豆腐ようの加工工程を模倣して蒸しすり身またはかまぼこを,室温で麹発酵させ,6か月まで賞味期限を延長し,健康増進効果が高く,旨味と甘味が増強された新規食品を得た。6か月間発酵させたかまぼこで,豆腐ようと同等の銅還元能力,ACE阻害活性を示し,豆腐ようよりも有意に高いDPPHラジカル除去能力を示した。サイズ排除クロマトグラフィーによって得られた,最も抗酸化性が高い画分は分子量900-1300,糖ならびにアミノ酸構造を有すると確認できた一方で,ACE阻害活性を示す顕著なピークは認められなかった。

86(1), 215-229 (2020)
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