Fisheries Science 掲載報文要旨

水生無脊椎動物の多価不飽和脂肪酸合成に関わる不飽和化酵素および鎖長延長酵素(総説)

オスカー・モンロイグ(トレデラサル養殖研,スペイン),
壁谷尚樹(東大院農)

 無脊椎動物は水圏生態系,とりわけ海洋において大きな割合を占めるバイオマスであり,進化発生生物学のモデルとしても集約的に研究されている。そのため近年では,ゲノムやトランスクリプトームといった大規模シーケンス解析が多様な動物群において行われており,これら研究により構築されたデータベースは無脊椎動物の多価不飽和脂肪酸(PUFA)生合成系を解明する上で非常に有用な情報源となっている。本総説では特に,水生無脊椎動物のPUFA生合成において不可欠な役割を担っている不飽和化酵素および鎖長延長酵素遺伝子の種類およびその機能について近年の知見をまとめた。具体的には,海綿動物,刺胞動物,軟体動物,環形動物,甲殻類,輪形動物,棘皮動物,および脊椎動物に属さない脊索動物(ナメクジウオとホヤ)から単離されたωx不飽和化酵素,front-end不飽和化酵素,および鎖長延長酵素の三つの酵素種について解説する。これらの研究より,無脊椎動物のPUFA生合成系には,複雑な系統関係を示し機能的に多様化した遺伝子ファミリーが関わっていることが示されている。本領域の発展により,オメガ3脂肪酸の生物工学的な生産に利用可能な遺伝子という潜在的価値の高い分子ツールを供給することが期待される。

84(6), 911-928 (2018)
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中国の3つの河川で捕獲されたチュウゴクモクズガニ集団の養殖成績と生殖腺発達の比較

Xugan Wu,Hengliang Zhao,Xiaodong Jiang,
Jie He(上海海洋大淡水水棲生物遺伝学研),
Naigeng Liu(パンジングアンヒカニ工場),
Yongxu Cheng(上海海洋大淡水水棲生物遺伝学研,中国)

 チュウゴクモクズガニは中国の重要な養殖種であり,その主な養殖地は遼河,黄河,長江の河川流域である。この研究は,同じ池で飼育されたこれら3つの川からの野生のチュウゴクモクズガニ集団の飼育成績と生殖腺の発達を比較するために行った。これら3集団の平均体重,増重率,成長率および生殖腺の発達は異なっていた。長江集団が最も飼育成績は良かった。それぞれの集団における成熟時期,脱皮時期や生殖腺の発達時期に違いが見られた。よって,選抜育種を行うことにより,このカニの市場期間を延ばすことが出来ると思われた。
(文責 廣野育生)

84(6), 929-937 (2018)
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回流水槽およびin situ実験による,タチウオ曳縄の深度と挙動を推定するための静的,動的手法の検証

Gebremeskel Eshetu Kebede,Chun Woo Lee,Subong Park(釜慶大),
Mun Kwan Kim(済州海洋漁業研,韓国)

 タチウオの漁獲効率の改善を目的とし,曳縄の水中での形状を調査した。1:10にスケールダウンした回流水槽での実験,およびタチウオ漁場における漁船上でのフルスケール実験を実施した。フルスケール実験は,シンカーの重さ,牽引速度,ワープラインの長さを変化させながら行った。フルスケールの曳縄にばね-質量系を用いて開発した動的手法においては,漁具の動きを支配する外的,内的な力を考慮した4次のルンゲ・クッタ法を解き,非線形微分方程式を導いた。また,全ての条件で平衡的な漁具構造を知るために,静的な手法についても検証を行った。動的手法では,水中での曳縄の挙動をより正確に予測できていた。
(文責 安間洋樹)

84(6), 939-952 (2018)
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光学式カメラと音響カメラによるサケ定置網に侵入したゼニガタアザラシPhoca vitulina stejnegeriの行動観測

藤森康澄(北大院水),
越智洋介,山崎慎太郎(水産機構水工研),
伊藤遼平(北大院水),小林由美(北大院農),
山本 潤(北大フィールド科セ),
田丸 修(水産機構水工研),
蔵本洋介(環境省,北大院水),
桜井泰憲(函館頭足類科学研究所)

 北海道えりも地域のサケ定置網におけるゼニガタアザラシによる漁業被害は,近年の個体数回復にともなってより深刻となっている。本研究では,アザラシ防除法の検討材料を得るため,光学式カメラ (TrawlCamera) と音響カメラ (DIDSON) による網内の観測を試みた。昼間,TrawlCameraによってサケの入網状況を観測できたが,アザラシの出現は一度のみであった。一方,DIDSONによる観測(15:30-21:00)では,日没前後から夜間にかけてアザラシは頻繁に確認され,網内のアザラシの体長と体幅はそれぞれ1.0-1.6 m,0.15-0.35 mと推定された。また,計測された遊泳速度は0.4-2.6 m/secであり,特に日没前後に増加していた。

84(6), 953-961 (2018)
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中国安寧川におけるコイ科魚類Gymnocypris firmispinatusの生殖特性

Baoshan Ma,Kaijin Wei,
Bin Xu,Jin Xu,Xiangyun Zhu,
Yuanyuan Nie(中国水産科学研究院,中国)

 中国安寧川に生息するコイ科魚類Gymnocypris firmispinatusの生殖特性を明らかにするため,582個体を供試して肉眼的,組織学的観察結果をとりまとめた。雌が雄に比べて全長,体重ともに大きく,雄は全長83.4mm,2.4年で,雌は全長130.7mm,5.9年で成熟に達することが明らかとなった。生殖腺の発達と卵母細胞サイズの頻度分布から3-5月に高い同調性をもって産卵していることがわかった。1-3月の雌ではGSIとHSIが逆の傾向を示した。産卵数には全長,体重,卵巣重量と相関が見られた。本研究の結果はG. firmispinatusが河川の開発に極めて脆弱な生殖特性を持つ魚種であることを示唆している。
(文責 舞田正志)

84(6), 963-974 (2018)
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幾何学的形態測定法および従来の計測法による,東シナ海産主要4種のタコ類顎板の同定

Zhou Fang(上海海洋大・中国水産科学院・農業省),
Jiangtao Fan(上海海洋大・中国水産科学院),
Xinjun Chen(上海海洋大・農業省),
Yangyang Chen(上海海洋大,中国)

 マダコ属は水産上重要であるが,シノニムの存在や遺伝子情報の不足のため分類学上の問題がある。頭足類の顎板は種同定に適しており,形のほうが長さよりも重要視されている。本研究では,中国浅海域に生息する4種のタコ類 (Amphioctopus fangsiao, A. ovulum, Octopus minor, O. sinensis) について,幾何学的形態測定学を用いた手法(以下GM法という)と,長さを測定する従来の計測法を比較した。種判別分析を行うとGM法は従来法よりも良く,また,機械学習法を用いると線形の判別分析よりも高い正答率が得られた。GM法は頭足類の顎板形態を再現性よく記述するのに適しており,異なった種を効率的に判別することが可能である。
(文責 田川正朋)

84(6), 975-985 (2018)
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ベトナムにおけるウナギ属魚類Anguilla spp.の種組成と分布

Anh Tuan Nguyen(オタゴ大,ニュージーランド・フエ農林大,ベトナム),
塚本勝巳(日大生資),
Mark P. Lokman(オタゴ大)

 2014年10月から2015年2月までベトナムの海岸沿いの12州においてウナギ属魚類の分布と種組成の調査を行った。ウナギは中央ベトナムの州からのみ採集された。得られた77個体について形態形質とCOI遺伝子の塩基配列によって種同定を行ったところ,Anguilla marmorataが58個体と優占し,次いでA. bicolor pacificaが17個体で,A. japonicaも2個体出現した。これらの知見はウナギ属の分類さえ十分に確立されていないベトナムにおいて,信頼に足る初めての調査となった。

84(6), 987-994 (2018)
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インドべンガル湾北部沿岸水域における栄養段階モデル

Isha Das,Sugata Hazra,Sourav Das,
Sandip Giri,Abhra Chanda(Jadavpur大),
Sourav Maity(INCOIS),
Shubhadeep Ghosh(CMFRI,インド)

 Ecopath(version 6.4.4)を用いて,インド西ベンガル北部沿岸水域における生態系モデルの構築を行った。本モデルは18,500 km2の地域をカバーしており,非生物群集,デトリタスを含む32の機能性群集から成り立っていた。本モデルによる解析結果から,ベンガル湾北部沿岸水域の生態系は発展途上にあると考えられた。漁獲対象魚の平均栄養段階が低かったことは,この生態系で栄養段階の低い魚種を漁獲対象としていることを示しており,現在のこの水域における漁業がベンガル湾北部沿岸水域の生態系にとって持続可能性が低いものであることを示唆している。
(文責 舞田正志)

84(6), 995-1008 (2018)
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利根川河口域におけるニホンウナギAnguilla japonicaのシラスウナギの捕食

三宅陽一(東大院新領域・大気海洋研),
竹茂愛吾(水産機構国際水研),
板倉 光(神戸大院理),
伊藤 萌,恩田拓尭(東大院新領域・大気海洋研),
山口 聖(佐賀有明水振セ),
米田彬史(東大大気海洋研),
荒井考磨,羽根由里奈,
木村伸吾(東大院新領域・大気海洋研)

 本研究では,シラスウナギの捕食割合を明らかにするため,利根川河口域の捕食魚の胃内容物を調べた。胃内容物内のシラスウナギは,DNAバーコーディングにより種を特定した。二年間の調査から15分類群270個体の捕食魚を採集した。シラスウナギの捕食割合は0.7%であった(来遊盛期に限定した場合2.0%)。チャネルキャットフィッシュとヒラスズキの胃内容物からシラスウナギが発見され,これらが捕食者である可能性が考えられたが,捕食割合および胃内容物の占有率は低かった。捕食に関する理解を深めるためには,さらなる調査が必要と考えられる。

84(6), 1009-1014 (2018)
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マガキCrassostrea gigasの冬期成長の種内変動に及ぼすインスリン様成長因子の影響

Youn Hee Choi,Eun-Young Kim,Taek Jeong Nam(釜慶大,韓国)

 冬期のマガキ閉殻筋におけるインスリン様成長因子I(IGF-I),IGF受容体(IGF-IR),およびIGF結合タンパク質(IGFBP)についてイムノブロッティング法およびRT-PCR法を用いて解析した。IGF-IおよびIGF-IRβサブユニットの存在量,インスリン受容体関連受容体およびIGFBPのmRNA発現量は小さい個体の群(SI)よりも大きい個体の群(LI)で有意に高かった。IGF-IRβサブユニットおよび細胞外シグナル調節キナーゼはSIよりもLIにおいて,よりリン酸化されていた。韓国産マガキの冬期成長率の差異にIGFシステムが影響を及ぼしていることが示唆された。
(文責 舩原大輔)

84(6), 1017-1024 (2018)
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シマニキソウ葉抽出物がハイブリッドナマズClarias macrocephalus×C. gariepinusの成長,血液学的成分および体成分に与える影響について

Paiboon Panase,Bunyanuch Kamee,
Sakditad Moungmor,Prameda Tipdacho(パヤオ大),
Jaturong Matidtor(メージョー大),
Nantaporn Sutthi(マハーサーラカーム大,タイ)

 本研究は,シマニキソウ葉抽出物のハイブリッドナマズの成長,血液学的および体成分に及ぼす影響を評価するために行った。ハイブリッドナマズに異なる濃度のシマニキソウ葉抽出物添加餌料を90日間給餌した。シマニキソウ葉抽出物添加の割合によってハイブリッドナマズの体重増加,成長速度,飼料効率,タンパク質転換効率,生存率,総白血球数,異なる白血球の割合などは異なった。結論として,300 mg/kgのシマニキソウ葉抽出物は,ハイブリッドナマズの成長性能,血液学的およびいくつかの体成分を改善することができた。
(文責 廣野育生)

84(6), 1025-1036 (2018)
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Brachionus plicatilis複合種2種を給餌したヒラメ仔魚Paralichthys olivaceusのタンパク質消化酵素反応

ビリアメ・ワカレブ,本田晃伸,
松井英明(鹿大院連合農),
塩崎一弘,小谷知也(鹿大水)

 摂餌開始期のヒラメ仔魚に汽水産ツボワムシ類SS型またはL型を給餌した時にタンパク質分解能(加水分解能,トリプシン活性)に違いがあるか評価した。SS型給餌区により,3,5,6および7日齢で高いタンパク質分解能を有した。生物餌料による仔魚のトリプシン画分に対する寄与率は,5,6日齢でSS型の方が高かった。一方で,両種のワムシからの外因性トリプシンの効果は仔魚のトリプシン総活性に比較すると低かった。これらを総合すると,ヒラメ仔魚は異なる形態のワムシを摂餌するとタンパク質消化能が変化すると考えられる。

84(6), 1037-1049 (2018)
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Lactococcus lactis K-C2株がカンパチSeriola dumeriliの成長,腸内アミノ酸含量及び微生物フローラに及ぼす効果

Nguyen Thi Hue Linh(宮崎大院農工),
永井節子,永坂典子,岡根誠佳,田岡洋介(宮崎大農)

 Lactococcus lactis K-C2株がカンパチの成長,腸内細菌フローラ及び遊離アミノ酸組成に及ぼす影響を検討するため,K-C2株添加飼料(2×1010 cfu/g)と未添加飼料を25日間給餌した。未添加区と比較して,添加区のカンパチの成長は有意に高かった。添加区の腸内遊離アミノ酸5種 (Ast, Sar, Tau, Ala, Arg) 及び可食部のアミノ酸13種の含量が,未添加区と比較して有意に高かった。腸内フローラに於いて,Sphingomonas, Propionibacterium, Mycobacteriumが共通して検出された。Acinetobacter, Acidobacteriaは未添加区のカンパチ1尾より検出され,L. lactisは添加区のカンパチ1尾でのみ検出された。本研究により,プロバイオティックL. lactis K-C2株の経口投与は,カンパチの成長を促進することが明らかとなった。

84(6), 1051-1062 (2018)
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ブリ稚魚の成長と体成分に及ぼす高水温飼育の影響

外山義典(水産機構北水研),
横山佐一郎,石川 学,越塩俊介(鹿大水),
橋本 博(水産機構西海水研),
奥 宏海(水産機構増養殖研),
安藤 忠(水産機構西海水研)

 個体識別したブリ稚魚を適水温(25℃)と高水温(30℃)下で70日間飼育し,成長指標,体成分,および体サイズと体組成の関係を検討した。高水温下で飼育したブリ稚魚の成長は適水温に比べて劣り,個体群内における体サイズの変動は増大した。適水温飼育下のブリ稚魚は個体サイズの違いにかかわらず一定の肥満度,比肝重,および体一般成分量を示したが,高水温飼育下のブリ稚魚における体サイズとこれらの指標は比例関係にあった。また,体構成アミノ酸の中でも糖原性および芳香族アミノ酸は高水温飼育により減少した。

84(6), 1063-1071 (2018)
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バフンウニHemicentrotus pulcherrimus幼生の初期発生における多環芳香族炭化水素による骨片形成抑制の分子機構解析

関口俊男,谷内口孝二(金沢大),
清本正人(お茶の水女子大),小木曽正造(金沢大),
和田修一(長浜バイオ大),田渕圭章(富山大),
Chun-Sang Hong(韓国外国語大,韓国),
Ajai K. Srivastav(ゴラクプール大,インド),
Stephen Archer(オークランド工科大,ニュージランド),
Stephen B. Pointing(オークランド工科大・エールNUSカレッジ,シンガポール),
早川和一,鈴木信雄(金沢大)

 我々は,バフンウニ受精卵への多環芳香族炭化水素類:BaAとその代謝産物:OHBaA添加による幼生骨片の抑制を報告している。本研究における小割球培養によるin vitro実験とウニ胚でのin vivo実験の結果,これらの化合物は,小割球からの骨片形成に直接影響を与えず,外胚葉から放出され骨片を誘導する血管内皮細胞増殖因子の発現を抑えること,内胚葉マーカーの発現を下げることを明らかにした。従って,BaAとOHBaAの作用機序は外胚葉を介した骨片形成抑制と,内胚葉機能の抑制であることが示唆された。

84(6), 1073-1079 (2018)
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雷魚の体重が皮の化学組成とコラーゲン含量におよぼす効果

Rosmawati(Hasanuddin大),
Effendi Abustam(Muhammadiyah Kendari大),
Abu Bakar Tawali, Muhammad Irfan Said,Dwi Kesuma Sari(Hasanuddin大,インドネシア)

 雷魚の皮は高濃度の有機物を含む利用価値のある水産副産物である。本研究は,新鮮な雷魚を体重により3つのグループに分けて行った。皮の性状は,一般組成,アミノ酸量,コラーゲン量,微細構造およびミネラルについて調べた。その結果,雷魚の皮は体重の増加に伴い水分と灰分が減少,タンパク質は比較的安定,脂質は増加する傾向がみられた。体重に関わらずグリシンとプロリンの割合が多かった。コラーゲン含量は,体重で顕著な差はみられなかった。微細構造とミネラルの研究は,経済的価値を高める情報として利用できると考えられた。
(文責 濱田友貴)

84(6), 1081-1089 (2018)
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貯蔵中の乾燥したカタクチイワシの物理化学的および微生物学的性質の変化

Jeong Ah Park,So Young Joo,Mi Sook Cho,
Ji Eun Oh(梨花女子大,韓国)

 本研究では2,-1,-5および-20℃で貯蔵した乾燥カタクチイワシのpH,TBA値,揮発性塩基窒素(VBN),色(L*, a*, b*値),剪断力,および生菌数を測定した.すべての温度で貯蔵期間の増加とともに,TBA値および剪断力は減少し,VBNおよび生菌数は増加した.また,L*値は減少したが,a*およびb*値は増加した.pHは9か月後に低下した.今回の結果より,2℃で3か月以内の貯蔵が可能であるが,それ以上の場合は-5℃で貯蔵すべきことが示唆された。
(文責 久田 孝)

84(6), 1091-1098 (2018)
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氷蔵でのインピーダンスを用いた魚類生鮮度の非破壊測定

Pengxiang Yuan,Yao Wang(長大院水環),
宮﨑里帆(東筑紫短大),Jia Liang(浙江海洋大),
平坂勝也,橘 勝康,谷山茂人(長大院水環)

 長崎近海産の8魚種を氷蔵し,経時的に背部普通筋のK値と周波数2,5,20,50,100kHzでのインピーダンス(Z値)を求めた。K値は全魚種で約40%まで保存時間の延長に伴い直線的に上昇した。Z値は全魚種で保存24時間目以降に保存時間の延長に伴い概ね低下した。保存24時間目以降のK値とC値(Z値2 kHz/Z値100 kHz)との間には有意な正の相関関係が認められた。従って,海産魚類の生体インピーダンスはATP関連化合物の変化を概ね反映しており,C値はK値に代わり氷蔵24時間目以降の生鮮度を簡便かつ非破壊で評価できるであろうと考えられた。

84(6), 1099-1108 (2018)
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東日本大震災が牡蠣市場に与えた影響:差分の差分分析による接近

阪井裕太郎(アリゾナ州立大,米国),
若松弘樹,宮田 勉(水産機構中央水研)

 本研究では東日本大震災が日本の牡蠣市場に与えた影響を分析する。1970-2015年の県レベルデータを使った差の差の推定の結果,被災地では牡蠣の生産量が65%減少したことが明らかとなった。この負の影響は2012年に最大となり,2015年時点でも消えていない。一方で牡蠣の価格については26%程度の増加が明らかとなったが,統計的には有意度は低い。またこの影響は震災後ほぼ一定の値を保っていた。生産量と価格の変化に明確な対応関係がないことの背景には,放射能汚染を懸念した需要の低迷があるものと考えられる。

84(6), 1109-1118 (2018)
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安全な水産物に対して放射能汚染があるとして購入を避けるのは誰か

宮田 勉,若松宏樹(水産機構中央水研)

 福島県と隣接する宮城県と茨城県産マダラとシラスを分析対象とした,ラテントクラスモデルによるコンジョイント分析やロジスティック回帰分析によって,不買する人々の特徴を明らかにした。27.5%は当該水産物を不買する人々,41.0%はタラを低く評価する人々であった。当該水産物を不買する人々は,放射能検査結果を信頼せず,水産物を低い頻度で購入し,エコラベルのMSCを認識しておらず,比較的所得が高く,比較的年齢が高い特徴があった。

84(6), 1119-1133 (2018)
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