Fisheries Science 掲載報文要旨

沿岸漁業の共同管理に関するトランスディシプリナリー研究:豊後水道のタチウオひき縄漁業を例として

牧野光琢,亘 真吾(水産機構中央水研),
廣瀬太郎,小田憲太朗(水産機構開発調査セ),
廣田将仁(水産機構中央水研),
武井 篤(水産機構本部),
小河道生,堀川博史(水産機構開発調査セ)

 複数の目的変数を現場漁業者と共に設定し,現地傭船調査により漁業者が実感できるデータを収集した。現地加工・流通業関係者らと協議会を設立し,卓越年級群の流通戦略等を策定した。これらの結果を反映したオペレーティングモデルを用いて検討した結果,卓越年級群に依存しないが初期の経済的負担が大きいシナリオと,卓越年級群を順応的に保護・活用するシナリオが示された。このモデルと結果を現場関係者と共有し合意形成を促すとともに,行政に県間・漁業種間調整を提言することにより,実際の管理の改善に貢献した。

83(6), 853-864 (2017)
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豊後水道におけるタチウオの季節発生群を考慮した資源構造と資源管理

亘 真吾(水産機構中央水研),
徳光俊二(大分水研),
廣瀬太郎,小河道生(水産機構開発セ),
牧野光琢(水産機構中央水研)

 豊後水道周辺海域のタチウオの漁獲量は,近年減少傾向で効果的な資源管理方策の検討が急務である。春と秋の季節発生群を考慮した資源解析を行ったところ,両群とも減少傾向であるが,2007年以降の春群の減少が顕著で,近年の漁獲量減少の要因と考えられた。現状の漁獲圧は,経験的管理基準値より高く,将来予測においても資源水準の維持が困難であると示された。再生産成功率の経年変化より,春群で卓越年級が発生すると考えられた。管理方策として,卓越年級発生の翌年の漁獲圧削減も,資源と漁獲の増加に効果があることを明らかにした。

83(6), 865-878 (2017)
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タチウオ曳縄漁業における大型疑似餌による小型タチウオの保護とその漁業に与える影響

廣瀨太郎(水産機構開発セ),櫻井正輝(鹿児島県庁),
亘 慎吾(水産機構中央水研),
小河道生(水産機構開発セ),
牧野光琢(水産機構中央水研)

 新たに開発した大型擬似餌をタチウオひきなわ漁業に導入することにより,小型魚(とくに漁獲規制サイズ)の漁獲抑制が可能かどうかを検証した。従来から用いられている擬餌針および新たな大型擬似餌を使った擬餌針を,豊後水道における実際の曳縄操業で比較した。従来擬餌針に比べ,大型擬似餌を用いた擬餌針では,漁獲規制サイズの個体および雌未成魚の漁獲が抑制された。また,価値の高い大型魚の漁獲を増やすことが可能であった。大型擬似餌の導入は,タチウオ資源保護とタチウオ曳縄漁業に有益であると考えられた。

83(6), 879-885 (2017)
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夏季における北太平洋中部・東部イワシクジラの資源量推定(2010-2012)

袴田高志,松岡耕二(日鯨研),
村瀬弘人(水産機構国際水研),
北門利英(海洋大)

 国際捕鯨委員会が実施している北太平洋鯨類生態系調査データを用いて,ライントランセクト法により夏季の北太平洋中部・東部におけるイワシクジラ資源量を推定した。正面発見確率を1と仮定し,発見関数の関数形や共変量による資源量推定値への影響を検討した。発見関数間のAICの差が小さいにも関わらず,資源量推定値に差があることから,赤池の重みづけによる加重平均により資源量を推定した結果,本種の資源量推定値は29,632頭(CV=0.242,95%信頼区間:18,576-47,267)と推定された。

83(6), 887-895 (2017)
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貿易自由化は国内漁獲を減らす?

阿部景太(ワシントン大,米国),
石村学志(岩手大農),鶴見哲也(南山大総合政策),
馬奈木俊介(九大工),
Ussif R. Sumaila(ブリティッシュ・コロンビア大,カナダ)

 貿易自由化は国の財を増やす可能性はあるが,水産業に対する影響についての研究は限定的である。本研究では,国際貿易を三つの部分―規模,構成そして技術効果―に分けて,貿易の自由化が国毎の水産物生産に与える影響を分析した。この研究では,貿易と収入が内生的であると仮定し,操作変数法により貿易の自由化が漁獲に与える影響を推定した。その結果,貿易自由化は漁獲を減らすことが示され,「汚染避難地」と同様に,「乱獲避難地」,もしくは,「高所得国」によく見られる環境に対する厳重な規制が原因である可能性が示唆された。

83(6), 897-906 (2017)
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カニ刺網の網の高さによる経済的重要種ワタリガニ類と非対象種に対する影響

Rizalyn M. Picoy-Gonzales,Harold M. Monteclaro
(フィリピン・ビサヤス大,フィリピン)

 網の高さがカニ刺網の漁獲性能に及ぼす影響を調べた。高さの異なる3種類の網によって,87種1290個体を採集した。一元配置分散分析により,網の高さがCPUE,漁獲対象・非対象種の総採集量,個体サイズ,種の豊度等に有意に影響していることが示された。網の高さが低い刺網は,非対象種の混獲を70%まで減少させた。Portunus pelagicusCharybdis feriatusなどの対象種のCPUEは,最も高さの低い網(メッシュ数12)では65%も低下した。しかし,メッシュ数が24と50の網では,CPUEに有意な違いは見られなかった。また,メッシュ数が24の網では大型種のP. pelagicusの捕獲が多くなった。種の豊度は,網の高さの低い網で58%まで低下した。これらの情報は,持続可能なカニ漁(特にP. pelagicus)のための漁業管理や施策に有効と考える。
(文責 片山知史)

83(6), 907-915 (2017)
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津軽海峡におけるアブラツノザメSqualus suckleyiの漁獲物体長組成と生息場所分離について

矢野寿和(水産機構東北水研・東海大海洋),
服部 努(水産機構東北水研),
田向常城(田向商店),
大下誠二(水産機構国際水研・同西海水研)

 アブラツノザメの漁獲物体長組成を明らかにするため,主要水揚港である三厩及び大間漁港で底はえ縄漁法により漁獲された本種の銘柄別漁獲量データからカーネル密度推定を用いて体長組成を推定した。三厩では体長65-85cm,大間では体長55-75cmが多獲されており,体サイズによる生息場所分離が観察された。各漁場の漁獲状況は季節的に異なり(三厩では2-6月に多獲,大間では周年漁獲),これは各漁場の底層水温の季節差により生じると考えられた。三厩では雌,大間では雄が多獲されていると考えられ,雌雄による生息場所の分離が示唆された。

83(6), 917-928 (2017)
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ノルウェーロブスター漁における選別格子の開発とその試験結果

Niels Madsen(DTU Aqua・オールボー大,デンマーク),
René Holst(オスロ大,ノルウェー)

 ノルウェーロブスター漁は混獲が多く,廃棄される割合も多い。そこで,コッドエンドを下層部と上層部に仕切り,コッドエンド前方に装着するタイプの選別格子を開発した。上層部には目合274mmで長さ3mのウインドウを取り付け,カテガット海峡とスカゲラク海峡で操業する商業船でテストを行った。コッドエンド下層部や上層部,ウィンドウ通過の漁獲物を採集したところ,大部分のノルウェーロブスターや異体類は下層部で,タラ科魚類の多くは上層部で漁獲された。コッドエンド上層部に集まったタラ科魚類と異体類のうち,ウィンドウを通過した割合は相対的に高く,魚種によっては選別に魚体サイズが影響していた。
(文責 髙木 力)

83(6), 929-938 (2017)
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三陸海岸における水深別のマコンブSaccharina japonica生活年周期とキタムラサキウニMesocentrotus nudusの生殖腺指数への影響

八谷光介,松本有記雄,佐々木系,
白藤徳夫,村岡大祐(水産機構東北水研)

 マコンブは三陸海岸で優占する海藻で,本邦で最も盛んな当海域のウニ・アワビ漁業を支えている。マコンブの生育する水深6, 9, 12m地点でその生活年周期を調べるとともに,各水深帯でキタムラサキウニの生殖腺の身入りを調べた。マコンブは3月に出現し7月まで急速に生長し,子嚢斑は9-12月に形成された。マコンブに葉状部の再生長は見られず,当地では1年生であると考えられた。マコンブの個体密度やバイオマスは年間を通じて浅い地点ほど高く,キタムラサキウニの生殖腺指数も6, 9m地点のほうが12m地点より高かった。

83(6), 939-946 (2017)
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アスパギン酸ラセミ法を用いたクロミンククジラの年齢査定

安永玄太,Luis A. Pastene,坂東武治,
袴田高志,藤瀬良弘(日鯨研)

 クロミンククジラの年齢査定には,耳垢栓成長層の計数が用いられてきたが,耳垢栓が破損あるいは形成が不完全なものについては,年齢を査定することができなかった。本研究では,耳垢栓法と,眼球水晶体中のアスパラギン酸ラセミ比(Asp D/L)が,年齢依存することを利用したアスパギン酸ラセミ法(AAR法)の査定年齢を比較し,その妥当性を検証した。これらの査定年齢には高い相関があり,関係式Loge{[1+(Asp D/L)act]/[1-(Asp D/L)act]}=2.30×10-3×(耳垢栓年齢)+0.0201を得た。本種において,AAR法は耳垢栓法を補完する上で,有効であることが示された。

83(6), 947-954 (2017)
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珠江河口域に生息するコイ科Black Amur breamの卵巣成熟期における腸内容物組成の18S rDNA配列解析

Yuguo Xia, Jie Li, Yuefei Li, Shuli Zhu, Yanfei Huang,
Zhi Wu, Qianhu Liu, Xinhui Li(水産科学研究院珠江水産研,中国)

 コイ科Black Amur breamの卵巣成熟期における腸内容物組成を18S rDNAの配列解析により調べた。多毛類,イトミミズ類,海綿類,昆虫類,二枚貝類,単生殖巣上目ワムシ類などが主要な餌生物として検出された。標準体長225±19.3mm(卵巣発達段階III-IV)まで成長した際に餌生物の転換が認められ,海綿類とワムシ類が減少する一方で環形動物と多毛類は増加した。この段階では稚魚期と成魚期の両方の餌生物嗜好性を示していた。また,前腸と後腸で同様の結果が得られたことから,糞にも応用できることが示された。
(文責 吉永龍起)

83(6), 955-965 (2017)
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セイバンゴイにおけるメラノコルチン4受容体遺伝子の多型と体成長との関連

Yang Yang, Qiang Li, Hu Shu, Huiqiang Zhou,
Xin Li, Liping Hou(広州大生命科学院,中国)

 体成長や代謝,食欲に関わることが知られているメラノコルチン4受容体遺伝子をセイバンゴイSpinibarbus hollandiからクローニングし,発現パターンを解析した。その結果,同遺伝子は様々な組織でユビキタスに発現しているが,脳と生殖腺で特に高い発現を示すこと,その発現量は体サイズが小さい個体で高いことが分かった。また,同遺伝子から6個の一塩基多型を同定し,そのうちの3個に体成長との相関を見出した。これらの多型は将来,セイバンゴイの育種において有益なマーカーとして利用できるかもしれない。
(文責 大久保範聡)

83(6), 967-976 (2017)
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日本海沿岸における海産顕花植物タチアマモの生育限界水深

坂西芳彦(水産機構日水研),
小松輝久(東大大気海洋研)

 深所の海産大型植物群落は気候変動下で予想される高水温の影響を回避し,レフュジアとして残存する可能性があることから,沿岸の生物多様性保全を考える上で重要な研究対象である。そこで,本州中部日本海沿岸で深所性海草タチアマモの生育水深と光環境を調べ,光環境とアマモ属の生育限界水深との関係を検討した。佐渡島と能登半島沿岸では水深20-25mでタチアマモの生育が確認され,20mにおける現存量と株密度は34.1-51.3g DW m-2, 83-112 shoots m-2であった。タチアマモの生育に必要な光量は浅所に生育する他のアマモ属に比べ明らかに低かった。

83(6), 977-986 (2017)
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北海道東部昆布森沿岸に到達した太平洋側河川起源のサケ幼稚魚の成長率特性

本多健太郎(水産機構北水研),
川上達也(東大院農・東大大気海洋研),
鈴木健吾,渡邉久爾,斎藤寿彦(水産機構北水研)

 日本の太平洋側河川起源のサケ幼稚魚は,北海道東部の昆布森近海を経由してオホーツク海まで移動すると考えられている。本研究では,2005-2014年に昆布森で採集した,太平洋側河川起源のサケ幼稚魚計369尾の耳石の日周輪解析を行った。結果,遠方河川起源の個体は降海後の成長率が高く,採集時の体サイズが大きい傾向にあったが,大型個体(尾叉長90mm以上)で比較した場合,成長率に地域差は認められなかった。以上より,特に遠方起源の個体では,一定以上の成長率の維持が昆布森到達の条件であると推察された。

83(6), 987-996 (2017)
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水温変化時のクロソイのストレス反応及び非特異免疫に及ぼす光波長の影響

C.Y. Choi, T. H. Kim, Y. J. Choi, J. Y. Choi,
S.-Y. Oh, B.-S. Kim(韓国海洋大,韓国)

 LEDライトが水温変化に対するクロソイのストレス反応及び非特異的免疫指標に及ぼす影響を調べた。水温を20℃から14℃に変化させると,血漿コルチゾル,グルコース,エラNa+/K+-ATPase,HSP70発現量はいずれも有意に上昇し,血漿IgM量及びライソザイム活性は有意に低下した。さらにコメットアッセイによる肝細胞DNA損傷は低水温暴露によって有意に増加した。これらの変動はグリーン(ピーク波長530nm)LEDライトに暴露することで緩和された。
(文責 舞田正志)

83(6), 997-1006 (2017)
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沖縄県西表島のマングローブ域の微細生息場所間におけるカニ類群集構造の違い

川井田俊(東大院農),南條楠土(水産機構水大校),
金井貴弘(水産機構中央水研),河野裕美(東海大沖セ),
佐野光彦(東大院農)

 西表島浦内川のマングローブ域にみられるカニ類群集の構造を3つの微細生息場所間(砂干潟,泥干潟,林内)で比較した。群集構造は微細生息場所間で明瞭に異なり,種数と総個体数は林内で最も多かった。種組成も砂干潟,泥干潟,林内の間で顕著に異なり,それらの違いは主に,各微細生息場所に出現する優占種の違いに起因していた。このような優占種の違いには,微細生息場所間の物理環境(たとえば,マングローブの呼吸根の存在,底土の有機物量や水分含量,地盤高など)の違いが影響を及ぼしていることが示唆された。

83(6), 1007-1017 (2017)
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グルタミンとその前駆体がコイの成長およびタンパク合成経路に与える影響

Zhigang Zhao(中国水産科学研究院),
Fangjie Song(南京農業大),
Qiyou Xu(中国水産科学研究院,中国)

 コイのタンパク合成におけるグルタミン(Gln)の役割を調べるために,Glnとその前駆体が,Gln同化とアンモニア排泄に与える影響を調べた。コイの成長,グルタミン合成酵素(GS)活性,血中アンモニア濃度,およびGS,Rh糖タンパク(Rhag, Rhbg, Rhcg), TOR, 4E-BP1の遺伝子発現を測定した。7つの飼料区,すなわちグルコース(対照),Gln, glusate (Glu), α-ketoglutarate (AKG), l-ornithine-α-ketoglutarate (OKG), l-arginine-α-ketoglutarate (AAKG)およびα-ketoglutarate sodium (2Na-AKG)を設け,各々の飼料で乾燥重量あたり1.5%のグルコースを置換した。その結果,飼料転換効率(FCR)はAKGとAAKG区が対照より低くなった(P<0.05)。鰓のRhbg遺伝子発現は,AKG,AAKGおよび2Na-AKG区が対照より高かった(P<0.05)。消化管のTOR遺伝子発現は,AKGとGluの2区が対照より高かった(P<0.05)。したがって,AAKGの飼料添加はコイのFCRを下げ,増重率(WGR)とタンパク効率を上げると判断した。Glnは鰓のアンモニア排出量を下げ,AKGはアンモニア排出効率を上げることが分かった。飼料へのGln, Glu, AKGおよびAAKGの添加は魚体のタンパク合成を促進すると考えた。また,Gln, Glu, AKGおよびAAKGは消化管のGS遺伝子発現を上昇させるが,GS遺伝子発現量とGS活性の間に有意な相関は検出されなかった。
(文責 阪倉良孝)

83(6), 1019-1026 (2017)
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水槽底面の凹凸によるヒラメ着色型黒化の抑制

中田訓彰(京大院農),山本一毅(京大農),
深山義文,中丸 徹(千葉県水総研セ),
益田玲爾(京大フィールド研セ),
田川正朋(京大院農)

 ヒラメの増養殖における着色型黒化の防除をめざし,底砂の有する個々の属性について黒化抑制効果を検討した。底面が砂と同様に見える水槽や底面に砂を貼り付けた水槽にも抑制効果は認められたが,底面になだらかな凹凸をつけた水槽が最も効果的であった。底面の凹凸化は単独でも効果があるが,薄い色で着色することでさらに効果が強くなった。凹凸面と平面について無眼側の接地部位を検討すると,非接地部位に黒化が起こりやすい傾向があった。以上より,凹凸底面ではより広い部位が接地することで,着色型黒化が抑制されると推測された。

83(6), 1027-1035 (2017)
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バイオフロック飼育システムに添加する炭素源はバイオフロック生産量,水質及びアフリカナマズ稚魚の生理状態に影響を及ぼす

Akeem Babatunde(マレーシアプトラ大,マレーシア・Federal Univ. Dutsin-Ma,ナイジェリア),
DaudaNicholas Romano, Mahdi Ebrahimi,
Murni Karim, Ikhsan Natrah,
Mohd Salleh Kamarudin(マレーシアプトラ大),
Julie Ekasari(ボゴール農業大,マレーシア)

 異なる炭素源(ショ糖,グリセリン及び米糠)をアフリカナマズのバイオフロック飼育システムに添加して,稚魚の生残,成長,体組成および肝臓組織への影響を調べた。グリセリン区は有意にバイオフロック生産量が増加し,グリセリン区とショ糖区は対照区に比べて溶存態窒素が低かった。米糠区では2週目に溶存態窒素が大きく上昇し,生残率が低下した。稚魚の成長には差がなかったが,生残率はグリセリン区が高かった。バイオフロック生産量,水質および生残率からナマズのバイオフロック飼育システムに添加する炭素源はグリセリンが良いと考えられた。
(文責 古板博文)

83(6), 1037-1048 (2017)
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福島原発事故による水産物の風評被害に関する分析

若松宏樹,宮田 勉(水産機構中央水研)

 近年,福島県産水産物の放射能物質レベルも基準以下に落ち着いており,福島漁業も再開を見据える時期に来ている。しかし,水産物の安全性が確保されても風評被害がないとは限らない。本研究では,福島周辺の水産物と国産水産物の評価の乖離を調査した。選択実験の結果,福島県産の水産物は国内産のものと比べかなり割り引かれ,近隣県産の水産物も無視できないものとなっていることが判明した。対象的に,地場産の表記をされているものについてはプラスの効果があった。水産エコラベルを付けた水産物についてもプラスの効果が認められた。

83(6), 1049-1057 (2017)
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韓国近海のサワラに対する生物経済モデルの応用

Sang-Don Yun, Jongoh Nam(釜慶大,韓国)

 本研究では,単一魚種を対象とした複数種類の漁業に注目し,主に韓国の大型底引き網漁業,きんちゃく網漁業,大型二そう引き底引き網漁業で獲られたサワラの資源評価を行った。3漁業の漁獲努力量の標準化には一般化線形モデルを用い,ゴンペルツ成長関数に基づいた余剰生産モデルであるクラーク=吉本=プーリー(CYP)モデルを用いた。3漁業間の経済的相互関係を分析し,推定されたABCから得られる3つの漁場で生じた3つの異なる軸の純利益を比較した。分析結果は,サワラの漁獲努力が韓国近海で最近生じたが,過剰漁獲が原因で資源は減ってきたことを示した。韓国のサワラを維持するために総許容量管理は単一魚種を対象とした複数種類の漁業で必要である。
(文責 大石太郎)

83(6), 1061-1076 (2017)
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