Fisheries Science 掲載報文要旨

ノルウェーのベラ類漁業の発展とサケ養殖における駆虫魚としての利用(総説)

Enrique B. Gonzalez(Univ. Agder,ノルウェー),
Femke de Boer(Univ. Aberdeen, UK)

 ノルウェーの大西洋サケSalmo salar養殖は世界をリードしており,世界中で消費されている。しかし,ノルウェーのサケ養殖ではサケジラミの寄生が大きな問題となっている。サケ養殖のサケジラミ駆除について,天然で漁獲した駆虫魚(主にベラ類)の利用が,他の駆虫法よりも経済的にも環境的にも優れた手法として推奨されている。我々はノルウェーにおけるベラ類漁業の発展とその駆虫魚としての利用について総説する。まず,サケジラミ症の現状,駆虫魚として代表的なベラ類の種とそれらのクリーニング行動を紹介し,次にサケ養殖業とともに発展したベラ類漁業について述べ,最後に天然由来駆虫ベラ使用の集中によって起こる問題を挙げ,ベラ類漁業の将来の方向性とともに,人工種苗生産した駆虫ベラの供給の発達についても議論する。
(文責 阪倉良孝)

83(5), 661-670 (2017)
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クロスズキの資源量評価におけるシステマティック順応クラスターサンプリングの応用

Daniel W. Cullen,Bradley G. Stevens(メリーランド大,米国)

 本研究は,中央大西洋バイト(MBS)の岩盤海底環境におけるクロスズキの資源量を評価するため,システマティック順応クラスターサンプリング(SACS)を応用したものである。解析に使用するクロスズキの計数データは自動水中ビデオに記録から集計され,また2種類のSACSと1種類のシステマティックサンプリング(SS)によりクロスズキの平均分布密度と総個体数が推定された。その結果,SACAにより最小の分散と高い精度のパラメーターが推定された一方,平均分布密度と総個体数はSSで最大となった。以上より,本海域でのクロスズキの資源量を評価するにあたり,SACSは,SSと比較してより効果的でサンプリングコストの観点からも優位であることが示された。
(文責 宮下和士)

83(5), 671-682 (2017)
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2周波判別ソナー(DIDSON)のイメージを基にした魚群分布密度推定法

Danxiang Jing,Jun Han,Xiaoding Wang,
Guanyu Wang(浙江大),
Jianfeng Tong,Wei Shen,Jin Zhang(上海海洋大,中国)

 本研究は,2周波判別ソナーのイメージを基にした新しい魚群分布密度推定法を提案するものである。提案する手法は,イメージより単体の検出,トラッキング,計数が可能である。対象魚は,深さ優先検索アルゴリズムにより取得しそのエッジはソーベル演算を基に検出される。また複数の対象魚は,最近傍法とカルマンフィールターによりトラッキングされる。本手法の評価は,上海のQingcaoshaダムにより実施された。また本手法の比較には,ソナーイメージからのマニュアル抽出法が利用された。解析の結果,本手法による検出個体数はマニュアル抽出法の個体数と比較してその誤差は5%以下であり,その統計誤差も約10%であった。
(文責 宮下和士)

83(5), 685-697 (2017)
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メキシコ・カンペチェ州沿岸に生息するナマコHolothuria floridanaの生殖周期

J. Ramos-Miranda,R. del Río-Rodríguez,
D. Flores-Hernández(カンペチェ自治大),
R. I. Rojas-González(Instituto Nacional de la Pesca),
M. Gómez-Solano,A. D. Cu-Escamilla,F. Gómez-Criollo,
A. Sosa-López,Y. E. Torres-Rojas,
P. Juárez-Camargo(カンペチェ自治大,メキシコ)

 メキシコ湾南部カンペチェ湾に生息するHolothuria floridanaの生殖腺の解剖学的,組織学的観察を12ヶ月間行った。1938個体を調査し,体重,体長(それぞれ内臓除去)は15-225g,5-21cmであった。生殖腺指数(GI,生殖腺湿重量×100/内臓除去体重)は12-4月に増加,5月に急減,その後低い値を保った。GIは生息地水温と負の相関を示し,塩分との相関はなかった。生殖腺発達度の5ステージ(I, recovery; II, growing; III, early mature; IV, mature; V, spent)では,ステージIII-Vが周年観察され,配偶子形成が周年進行し3-4月と9月が産卵期と推定された。性比は1:1-1.37:1(雌:雄)の範囲にあり,生物学的最小形は体長13.4cm,体重87.0gと推定された。
(文責 淡路雅彦)

83(5), 699-714 (2017)
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トゲノコギリガザミにおけるアポトーシス阻害因子cDNAの単離と性状解析:空気曝露ストレス下での抗アポトーシス能

Wen-Bin Gu,Zhong-Kai Zhou,Dan-Dan Tu,
Yi-Lian Zhou,Miao-An Shu(浙江大,中国)

 中国南東部で広く養殖され,水を入れずに内陸までコンテナ輸送されることの多いトゲノコギリガザミからアポトーシス阻害因子(IAP)cDNAを単離し,空気曝露ストレスで誘起されるアポトーシスに対する耐性への同遺伝子の関与を検討した。演繹されるタンパク質は,既知のIAPと共通のモチーフを有し,他の甲殻類のIAPと分子系統的にも近かった。発現は調べた全ての組織で検出されたが,肝膵臓で最も高かった。12時間の空気曝露により,肝膵臓での発現は増加した。RNA干渉により発現を抑えると,24時間の空気曝露後の細胞アポトーシス率は減少した。以上より,抗アポトーシス反応へのIAP遺伝子の関与が示唆された。
(文責 井上広滋)

83(5), 715-723 (2017)
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生育水温がケンミジンコParacyclopina nanaの成長および脂肪酸合成に及ぼす影響

Seung-Hwi Lee(湖南大・漢陽大),
Min-Chul Lee,Jayesh Puthumana,Jun Chul Park(成均館大),
Sujin Kang(漢陽大),Jeonghoon Han(成均館大),
Kyung-Hoon Shin(漢陽大),Heum Gi Park(江陵原州大),
Ae-Son Om(漢陽大),
Jae-Seong Lee(成均館大,韓国)

 ケンミジンコParacyclopina nanaの水温変化に対する応答を調べた。水温25℃で飼育した対照区に比べ,低水温(15および20℃)で飼育した試験区では,脂肪酸伸長酵素遺伝子のmRNA量および体内の油滴が増加した。これに対し,高水温(30℃)で飼育した試験区では,当該mRNA量および油滴は減少し,脂肪酸含量も低下した。さらに,ノープリウスからコペポダイトあるいは成体への成長速度,および成体の繁殖力を比較したところ,低水温区では対照区より劣っていたが,高水温区は顕著な差を示さなかった。
(文責 岡田 茂)

83(5), 725-734 (2017)
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利根川水系上流域におけるヨーロッパウナギの局所的分布

荒井考磨(東大院新領域・大気海洋研),
板倉 光(東大院新領域・大気海洋研・神大院理),
米田彬史(東大院農・大気海洋研),
吉永龍起(北里大海洋生命),
白鳥史晃(北里大海洋生命),
海部健三(中大法),
木村伸吾(東大院新領域・大気海洋研)

 利根川水系における外来ウナギの分布状況について,同水系内で採集されたウナギ試料を用いて,分子生物学的手法による種査定を行った。その結果,下流から中流域で採集された全個体(n=132)が在来のニホンウナギと判別されたのに対して,河口から約300km離れた上流域で採集された全個体(n=9)が外来のヨーロッパウナギと判別され,外来ウナギが局所的に大きな割合を占めていることが確認された。採集されたヨーロッパウナギは全て高齢(18.6±2.6歳)であり,1990年代に利根川水系に放流によって導入された個体と推察された。

83(5), 735-742 (2017)
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ドジョウMisgurnus anguillicaudatusの遺伝的に異なるグループを識別するための核DNAマーカーの開発

藤本貴史,山田 綾(北大院水),
神門幸大,中谷航平(麻布大獣医),
大久保-村田倫子(麻布大獣医),
斎藤大樹(北大院水),
二宮和人,稲葉倫子,黒田真道,荒井克俊(北大院水),
村上 賢(麻布大獣医)

 制限酵素DraIもしくはBglIIを用いてドジョウ由来のDNAを消化することによって,それぞれから反復配列(ManDra, ManBgl)を得た。各反復配列のプライマーによってPCR増幅した結果,ManDraではドジョウのA系統とB系統で特異的な電気泳動パターンを示し,ManBglでは系統毎に異なる断片サイズが生じるとともに,カラドジョウも判別可能であった。RAG1遺伝子のPCR-RFLP解析では,A系統とB-2系統は制限酵素PvuIIで切断されなかったのに対して,B-1系統では切断型を示した。

83(5), 743-756 (2017)
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シロザケ幼稚魚胃内容物中からPCR検出された分類学的に所属不明なCOI配列に由来する生物の同定

大類穗子,生田哲朗(JAMSTEC),
小川 元,山根広大(岩手水技セ),
志賀直信(函館短大)
北里 洋,藤倉克則,瀧下清貴(JAMSTEC)

 先行研究でのシロザケ幼稚魚胃内容物のCOI配列によるDNA解析から,門レベルで所属不明な生物由来の配列が検出された。胃内容物のin situ hybridizationや,そこから検出された生物の18S rRNA遺伝子解析及び幼稚魚と同海域のプランクトンを解析した本研究から,不明生物はOikopleura longicaudaだと判明した。遺伝子データベースにOikopleura属由来として登録済みのCOI配列は,実際は全く異なる分類群由来のため,先行研究では正確に分子同定できなかったことが示唆された。

83(5), 757-765 (2017)
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CalceinとAlizarin Complexoneはコイ科Spinibarbus sinensisの稚魚の二重蛍光標識に使えるか?

Hongjian Lü(西南大,中国),
Andrew Chapelsky(水産海洋省,カナダ),
Zhixin Zhang(海洋大),
Ruijiao Li,Wanxiu Rao,Mei Fu(西南大)

 Calcein (CAL, 50-250mg/L)とAlizarin Complexone (ALC, 100-300 mg/L)を用いてコイ科Spinibarbus sinensis稚魚の二重蛍光標識を試みた。24時間の浸漬により,90日後も鱗以外の硬組織(耳石,上神経棘,鰭棘,鰭条)で二重蛍光標識を検出できた。CAL処理の30日後にALC処理すると,CALの緑色蛍光がALCの赤色蛍光の内側に観察された。各硬組織とも高濃度処理区で標識に成功した。対照区と処理区の間で稚魚の生残と成長に有意差はなかった。
(文責 黒木真理)

83(5), 767-776 (2017)
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エゾアワビHaliotis discus hannaiにおける核リボソームDNAの完全長解析

Zhansheng Guo,Yi Ding,Xiaohan Zhang,Xuguang Hou(山東大,中国)

 エゾアワビについて,核リボソームRNAをコードするDNAの完全長配列(約10.7kb)を決定した。その内部ではスモールサブユニットリボソームRNA遺伝子(nrSSU),内部転写スペーサー(ITS),ラージサブユニットリボソームRNA遺伝子(nrLSU)および遺伝子間スペーサー(IGS)が,この順で整列していた。nrSSUとnrLSUには個体間変異は無かったが,ITS2では二つのタイプが認められた。ITSに基づいてアワビ類の系統樹を作成したところ,太平洋北部と,ヨーロッパ・オーストラリアに生息する種を中心とした二つのグループに分けられた。IGS内には複数のリピート配列が存在し,個体間変異が大きかった。
(文責 關野正志)

83(5), 777-784 (2017)
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シベリアチョウザメAcipenser baeriiの遊泳能力におよぼす鰭切除の影響

Phong L. Nguyen(ジョージア大),
Zachary J. Jackson(米国魚類野生生物局),
Douglas L. Peterson(ジョージア大,米国)

 チョウザメ類の鰭切除は年齢査定に際して一般に行われる。本研究では鰭切除がシベリアチョウザメの遊泳能力におよぼす影響を調べた。人工ふ化飼育した本種(尾叉長65-84cm)の胸鰭縁辺2-4cmを切除した個体,胸鰭全体を切除した個体,および偽手術の個体について比較した。遊泳トンネルで10分ごとに流速を上昇させて得た持続可能遊泳速度は,一部切除,全部切除および対照区でそれぞれ毎秒113±3.4,109±2.5,111±2.8cmであり,実験区間で有意差はなかった。したがって鰭切除は本種の遊泳能力に影響しないと考えられる。
(文責 益田玲爾)

83(5), 785-793 (2017)
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天然河川は人工河川に比べて汽水域の魚類生産を高める:太田川河口域における河川間比較を例に

岩本有司(広島総研水海技セ),
小路 淳(広大院生物圏科)

 広島県太田川河口域加入後のスズキ仔稚魚の成長係数(G),減耗係数(M)および生産指数(G/M)を,人工河川である太田川放水路(DC)と隣接する天然河川である天満川(NR)の間で比較した。GはDCとNRの間に差がみられなかったが,MはNRに比べてDCで有意に高い値となった。G/Mには有意差がみられなかったものの,DCに比べてNRで高い値となった。スズキ仔稚魚の減耗要因として,放水路における塩分などの物理環境の変動が大きいことが影響しており,飢餓や被食などの影響は小さいと推察された。

83(5), 795-801 (2017)
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エゾバフンウニStrongylocentrotus intermedius腸における主要卵黄タンパク質の発現および局在解析

岡下侑樹,Heng Wang,津江志緒莉,西宮 攻,
浦 和寛,都木靖彰(北大院水)

 本研究では,エゾバフンウニの腸における主要卵黄タンパク質(MYP)の発現部位および局在を明らかにすることを目的とし,in situハイブリダイゼーションおよび免疫組織学的解析を行った。MYPmRNAの発現部位は粘膜固有層であるのに対し,MYPタンパク質は内腔上皮,粘膜固有層および粘膜下層に局在することが明らかになった。特に粘膜下層で最も強い免疫陽性反応が認められた。これらのことから,粘膜固有層で合成されたMYPは粘膜下層に輸送され蓄積された後,ウニ体腔内へと分泌されるものと考えられる。

83(5), 803-810 (2017)
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褐藻ワカメの色彩に対する栄養添加,光量減少,湯通しの影響

遠藤 光(東北大院農・鹿大水),
鈴木貴史(東北大院農),
佐藤陽一(理研食品(株)・理化学研),
吾妻行雄(東北大院農)

 ワカメの品質を決定する上で湯通し後の色は重要である。本研究ではワカメの葉片を培養し,色彩値(明度,赤色度,黄色度)に対する栄養塩濃度,光量,湯通しの影響を調べた。湯通し後の色彩値は,栄養無添加区と1.25-5%PESI栄養添加区では同等であったが,25%PESI区では低くなった。また,光量180μmol m-2s-1よりも10μmol m-2s-1で低くなった。このように,湯通し後の色は培養条件下では25%PESI培地および10μmol m-2s-1でもっとも濃くなることが分かった。

83(5), 811-817 (2017)
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ヒラメ稚魚の成長と免疫能に及ぼすスサビノリ抽出物の影響

Youn-Hee Choi(釜慶大),Kang-Woong Kim(NIFS),
Dong-Soo Kim,Taek-Jeong Nam(釜慶大,韓国)

 スサビノリ粉末,高圧高温抽出物(HPHE),酸加水分解抽出物を飼料へ添加し,ヒラメ稚魚(123.7g)を6週間飼育した。その結果,HPHEを添加した飼料で飼育したヒラメの成長が最も高かった。また,抽出物を添加した区はタンパク質効率が高くなり,さらに,IGF-Iが無添加区に比較し有意に高い値を示した。IL-2は粉末およびHPHE添加区で,IL-12はHPHE添加区で,IL-6はすべての添加区で高くなった。これらのことより,スサビノリ抽出物の添加がヒラメの成長と免疫能に効果をもたらし,特に高圧高温抽出物の添加に効果があると推察された。
(文責 佐藤秀一)

83(5), 819-826 (2017)
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タイ国の養魚池より分離されたマラカイトグリーン除去細菌の諸性状

小林武志,田谷仁美(海洋大),
Pongtep Wilaipun(カセサート大,タイ),
Werawan Chinaksorn(水産局,タイ),
米塚健太(長岡技科大),原田知子(新日本検定協会),
石田若菜,矢野弘奈,寺原 猛,今田千秋,神尾道也(海洋大)

 タイ国の養殖池より,合成抗菌剤マラカイトグリーン(以下,MG)除去細菌を分離した。分離株はPseudomonas putida groupに属し,培養液をLC-MS/MSにより分析したところ,初期MGの約9%がロイコマラカイトグリーンに変化し,初期MGの約5%が残存することが示された。GC-MS,1H-NMRおよびLC-MS/MSにより4-(dimethylamino)benzophenoneがMG分解物の1つとして同定された。本研究は,同国養魚池におけるMG除去細菌に関する初めての詳細な報告である。

83(5), 827-835 (2017)
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広島県中央部における外来種チュウゴクスジエビの出現状況

斉藤英俊(広大院生物圏)

 広島県中央部の複数河川において釣餌として輸入される外来種チュウゴクスジエビが確認されており,その侵入経路を推測するために東広島市内の釣餌店における販売状況およびため池における生息状況を調査した。スジエビ類は商品名「シラサエビ」として販売されており,1-5月および11-12月にチュウゴクスジエビ,5-12月にスジエビが含まれていた。また,同市内のため池においてもチュウゴクスジエビの侵入が判明した。本種の体長は二山型の頻度分布がみられることから,ため池内で世代交代がおこなわれていることが示唆された。

83(5), 837-843 (2017)
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Low field核磁気共鳴緩和を用いた魚肉の凍結解凍サイクルの評価

Nasser A. Al-Habsi,Sara Al-Hadhrami,Habiba Al-Kasb,
Mohammad S. Rahman(Sultan Qaboos大,オマーン)

 魚肉中における水分子の動態をlow field核磁気共鳴緩和にて評価した。マイワシ,マグロおよびマサバ肉について,最大12回までの凍結解凍サイクルにおける水分子中のプロトンの緩和を測定したところ,タンパク質由来,強固な結合水由来および弱い結合水由来のプロトンが存在することが明らかとなった。いずれの魚種でも,凍結解凍を繰り返すごとにタンパク質由来のプロトンの緩和時間が増大し,約6回の繰り返しで一定の値に達した。強固な結合水由来のプロトンについては,凍結解凍の繰り返しによる変化が小さく,水分子の運動性に凍結解凍の影響は小さいものと考えられた。このように,low field核磁気共鳴によって凍結解凍履歴を評価することができるものと考えられた。
(文責 潮 秀樹)

83(5), 845-851 (2017)
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