Fisheries Science 掲載報文要旨

東日本大震災の被害を受けたシロザケ資源-増殖漁業システムに対するシナリオ分析

渡邉久爾(水研セ北水研),佐々木系(水研セ東北水研),
斎藤寿彦(水研セ北水研),小川 元(岩手水技セ)

 岩手県シロザケを対象に,東日本大震災由来の生残率 λl を組み込んだ資源動態モデルを開発して模擬実験を行った。λl は 0.00-1.00 を 0.25 間隔で 5 段階に設定された。自然放任状態にある漁業(漁獲率中央値)では,低水準の放流後生残率 SLow の下,すべての λl で 2014 と 2015 年の放流数中央値は目標数以下だった。一方,低水準の漁獲率では,SLow のシナリオ下,λl が 0.50 以上の場合,放流数中央値は目標数に達した。本研究は,震災後の潜在的問題を検出する方法および問題を抑える知見を提供する。

81(5), 803-814 (2015)
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サクラマス Oncorhynchus masou における体サイズ依存的な精子特性

山本俊昭,丸田初菜,鈴木達也(日獣大),
北西 滋(岐阜大)

 これまでサケ科の精子特性に関する研究は,代替生活史間における比較研究がほとんどであった。しかし,各生活史内においても繁殖を巡る争いがあり,小型オスほど劣位になる傾向がある。本研究では,サクラマスの降海型と残留型オスの精子特性を比較するとともに,残留型雄内の体サイズ依存的な精子特性を調べた。その結果,残留型オスの精子濃度は,降海型オスよりも高い値であった。また,残留型オス内では,小型オスほど精子の遊泳速度が速く,争いで劣位になる若齢な小型オスほど質的に精子へエネルギー投資を行っていると考えられた。

81(5), 815-820 (2015)
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閉鎖水域における 15N 標識藍藻餌料の消長

Yinping Wang,Xiaohong Gu,Qingfei Zeng,
Zhigang Mao,Xiankun Gu,Xuguang Li(中国科学アカデミー,中国)

 湖沼に耐水性の囲い(1 m×1 m×1.5 m)を設置し,凍結乾燥した 15N 標識 Microcystis に微量栄養素を加えた餌料を給餌後,囲いに供試魚を収容し,経時的に囲いの中の水質,底質,底生生物,プランクトンなどを採取し,分析を行った。TN 及び TP で示される栄養塩類濃度はティラピアを収容した囲いがコイの 4 倍高く,ティラピアは 15N の 11.05% を同化し,コイ(3.58%)よりも高い窒素同化,留保能を有していることが示唆された。実験終了時に,ティラピアの囲いでは 15N の 8.48% が,コイの囲いでは 6.07% が底質から検出され,Microcystis に由来する窒素の沈下はわずかであることが示唆された。
(文責 舞田正志)

81(5), 821-830 (2015)
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ミトコンドリア cox1 遺伝子配列による Pseudo-nitzschia 属珪藻の同定と系統解析および核 LSUrDNA による結果との比較

Suh Nih Tan(マラヤ大),
Hong Chang Lim(トゥンク・アブドゥル・ラーマン大),
Sing Tung Teng(マレーシア大サラワク校),
Po Teen Lim,Chui Pin Leaw(マラヤ大,マレーシア)

 熱帯性の Pseudo-nitzschia 属珪藻にも適用可能なミトコンドリア cytochrome coxidase subunit Icox1)遺伝子配列用増幅プライマーを設計し,6 種のマレーシア産 Pseudo-nitzschia 属珪藻について系統解析を試みた。また,その結果を,核 large subunit ribosomal DNA(LSUrDNA)に基づく解析の結果と比較した。どちらの配列による解析も単系統性を支持したが,cox1 の方が分岐度は高かった。cox1 は DNA バーコーディングのマーカーとして有用であると考えられる。
(文責 井上広滋)

81(5), 831-838 (2015)
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マイクロサテライト DNA マーカーを用いた日本沿岸におけるアオリイカ属シロイカ Sepioteuthis sp. 2 の集団構造解析

笘野哲史,サンチェス・ルイス・グスタボ,
上野香菜子(広大院生物圏科),
上田幸男(徳島農水総技セ),大原健一(岐阜県),
海野徹也(広大院生物圏科)

 日本沿岸に広く分布し,優良資源であるアオリイカ Sepioteuthis sp. 2 の 12 集団(n=840)の遺伝変異をマイクロサテライト DNA マーカー 10 座で分析した。各集団の有効アリル数は 9.2-10.1,平均ヘテロ接合体率の観測値は 0.688-0.736 となった。分子分散分析による仮定集団間の異質性の推定,アサイメントテストによる分集団の推定のいずれにおいても,集団の有意な遺伝分化は認められなかった。親イカの移動回遊によって集団間の遺伝的交流が維持されていると考えられた。

81(5), 839-847 (2015)
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黄海におけるツノナシオキアミ Euphausia pacifica の昼間の鉛直分布に対する浮遊物の集中度の影響

Hyungbeen Lee(韓国海洋科学院・韓国水産科学院),
Donhyug Kang(韓国海洋科学院),
Jee Woong Choi(漢陽大学,韓国)

 黄海において春季と夏季の昼間におけるツノナシオキアミ Euphausia pacifica の加重平均分布深度(WMD)と浮遊物の集中度(SSC)との関係について音響法により推定した。E. pacifica の判別は 38 kHz と 200 kHz の 2 周波の差を利用して行った。その結果,E. pacifica の WMD と SSC との間には春夏供に有意な相関があった。すなわち,E. pacifica は海底付近において SSC が低い時に濃密に分布し,SSC が高いときには存在しなかった。このことは SSC が E. pacifica の行動に影響を与える重要な環境要因であることを示唆している。
(文責 宮下和士)

81(5), 849-859 (2015)
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鹿児島県奄美大島周辺域で漁獲されたカツオの成熟状態,産卵期,1 回あたりの産卵数,産卵頻度

芦田拡士(水研セ国際水研),堀江昌弘(鹿児島水技セ)

 2011-2013 年に鹿児島県奄美大島周辺海域において漁獲されたカツオの成熟状態,産卵期,産卵頻度,産卵数を調べた。採集月の表面水温が 24℃ を超える 6 月に雌の産卵が始まり,水温が断続的な減少傾向を示す 9 月に終了した。生物学的最小形は雌で 40.5 cm FL,雄で 37.6 cm FL であった。産卵頻度(産卵間隔)は 0.53(1.88 日),平均バッチ産卵数は 9.37 万粒(40.5-40.7 cm FL),相対バッチ産卵数は 56.8 粒/g と推定された。これらの事から,奄美大島周辺では本種の産卵は表面水温の季節的変化と関係し,夏季に行われることが明らかになった。

81(5), 861-869 (2015)
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行動記録を用いたスズキ Lateolabrax japonicus の代謝量推定

森 友彦,宮田直幸,青山 潤(東大大気海洋研),
新妻靖章(名城大),佐藤克文(東大大気海洋研)

 スズキ Lateolabrax japonicus の自然条件下における必要餌量の範囲を推定するために,酸素消費速度および主要餌生物の熱量を測定した。酸素消費速度から非遊泳時(SMR)および最適遊泳速度で遊泳する時(AMRopt)の代謝率を算出した。先行研究より,エネルギー収支における各要素の割合(総代謝率 R : 0.7,排泄率 E : 0.3)と成長量 0 の時の体重当りの給餌率を引用し,本研究で得られた結果をあわせて,1 日当りのエネルギー獲得量の範囲を 83.3(SMR)-275.6 kJ kg-1 day-1AMRopt)と推定した。採集した餌生物 1 尾当りの平均熱量から,1 日当り 1-2 尾の捕獲で上記のエネルギー量を補填できると考えられる。

81(5), 871-882 (2015)
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飼育下におけるマダラ仔魚の鉛直分布,比重,遊泳力の変化と水温の影響

李  哲(北大院水),山本 潤(北大フィールド科セ),
桜井泰憲(北大院水)

 マダラ仔魚の底層から表層への移行のメカニズムを明らかにするため,異なる水温(3, 5, 7 および 9℃)で飼育した仔魚の鉛直分布,比重および遊泳力を,ふ化から 3 日後まで調べた。仔魚は,ふ化からの 3 日間,間欠的に上層へ遊泳し,飼育水温に関係なく表層に分布した。仔魚の比重は,ふ化直後から徐々に減少し,3 日後にはすべての水温で中性浮力となった。一方,遊泳力は,ふ化直後には飼育水温間で異なったが,3 日後には差が認められなかった。本種の仔魚は,浮力の増大と遊泳力の向上により,底層から表層へ移行すると考えられた。

81(5), 883-889 (2015)
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水温と塩分がキハダ Thunnus albacares の孵化および仔魚の生残に及ぼす影響

金 良洙(近大水研),
Darys Isabel Delgado,Ing. Amado Cano(ARAP),
澤田好史(近大水研)

 水温と塩分のキハダ受精卵の孵化率(HR),正常仔魚率(NLR),無給餌生残指数(SAI)への影響を調べた。産卵時塩分 32 psu では水温 23 から 35℃ における HR,NLR,SAI は 23℃ と 26℃ で有意に高く,産卵時水温 29℃ では塩分 23 から 38 psu における HR と NLR は 35 psu と 38 psu で,SAI は 26 psu で有意に高かった。また,水温(23, 26, 29℃)と塩分(32, 35, 38 psu)の相互関係を調べた結果,23℃ で 38 psu がキハダ受精卵の孵化や生残に最適と考えられた。

81(5), 891-897 (2015)
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中国の養殖オオウナギにおける Edwardsiella tarda 感染の発生

Z-Quan Mo,Ling Zhou,Xiang Zhang,Lian Gan,
Li Liu,Xue-Ming Dan(華南農業大,中国)

 2012 年,中国南部で淡水養殖されていたオオウナギに大量死が発生した。病魚には体表の潰瘍形成と肝臓および腎臓の肥大が見られた。病魚から純培養的に細菌が分離され,生化学的性状や 16S rRNA および繊毛の遺伝子配列から本菌は Edwardsiella tarda に同定された。本菌は硫化水素非産生で,オオウナギの半数致死濃度は 1.3×106 CFU であった。病理組織学的には,多くの臓器での出血,脾臓と腎臓でのメラノマクロファージの増加,また脳における細胞質の空胞化と融解壊死が認められた。オオウナギにおける E. tarda 感染症の初報告である。
(文責 佐野元彦)

81(5), 899-905 (2015)
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ブリ属 3 種 Seriola quinqueradiata, S. lalandi および S. dumerili を対象としたサイトカイン遺伝子用定量 PCR プライマーの開発

Walissara Jirapongpairoj,小林圭吾(海洋大),
福田 穣(大分水研),
高野倫一,坂井貴光,松山知正(水研セ増養殖研),
中易千早(水研セ本部),
野崎玲子,廣野育生,近藤秀裕(海洋大)

 ブリ属 3 種を対象に,5 種類のサイトカイン遺伝子(IFNγ, IL-1β, IL-8, IL-10 および TNFα)について部分配列を比較しところ,いずれの遺伝子も魚種間で 90 パーセント以上の塩基同一率を示した。そこで,これら 3 魚種で共通に使用可能な定量 PCR 用プライマーを設計した。それぞれの魚種に Vibrio anguillarum 不活化菌体および poly(I:C)を投与し,各遺伝子の mRNA 蓄積量の変化を解析したところ,これらのプライマーはそれぞれの遺伝子を検出・定量可能であった。

81(5), 907-914 (2015)
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飼料中の魚粉・大豆油粕比率が稚ナマコ Apostichopus japonicus の成長,消化率および消化酵素活性に及ぼす影響

Mingling Liao,Tongjun Ren,Lijuan He,Yuzhe Han,
Zhiqiang Jiang(大連海洋大,中国)

 魚粉(FM)および大豆油粕(SBM)の比率が異なる飼料がナマコの成長,消化率および消化酵素活性に及ぼす影響を調べた。FM と SBM の混合率が異なる 6 種類の試験飼料を平均体重 1 g のナマコに 80 日間給与した。増重率および増肉係数は SBM の混合率が高くなるに伴い上昇し,60/40(SBM/FM)で最も優れていた。消化率および消化酵素活性は,40/60 で最も高くなった。成長から判断すると,SBM と FM の適正な混合率は 60/40 であると考えられた。
(文責 古板博文)

81(5), 915-922 (2015)
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ウニ殻由来の生物ろ過材の有効性

秋野雅樹,麻生真悟,木村 稔(道総研釧路水試)

 本論文では,加工残滓であるウニ殻を生物ろ過材として有効利用するための研究について報告する。我々はキタムラサキウニの加工残滓をアルカリ処理し,骨素材(殻,棘,および歯)を調製し,水槽実験によってこれら素材のろ過材としての性能を評価した。ウニ骨素材を使用した水槽での硝化作用を調査した結果,特に殻および棘の素材は,アンモニア酸化に関して高い能力を有することが示された。また,これらの骨素材は水槽の pH を 7-8 の一定の範囲に保持した。よってウニ殻の構造および構成成分はろ過材としての利用に適していると結論付ける。

81(5), 923-927 (2015)
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舞鶴湾海底堆積物からのメロン香産生酵母の単離

壽谷尭俊(京大院農),
上野正博(京大フィールド研究セ),
中川 聡,澤山茂樹(京大院農)

 舞鶴湾(京都府)の海底堆積物表層サンプルを採取し,菌類様コロニーを 16 株(MS1~MS16)単離した。単離株の内 MS1 株と MS2 株の PD 寒天プレートから,メロン香が認められた。MS1 株と MS2 株の培養液気相部をガスクロマトグラフィーによって分析した結果,メロン香の 4 つの主成分である 3.6-ノナジエン-1-オール等を産生していることが推定された。更に 26S rRNA 遺伝子 D1/D2 領域及び ITS 領域の塩基配列を解析した結果,MS1 株と MS2 株は Geotrichum candidum に近縁であった。両株は特に,G. candidum のチーズ製造スターター酵母株と ITS 領域塩基配列の相同性が高いことが分かった。

81(5), 929-936 (2015)
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発酵食品より分離されたマラカイトグリーン除去酵母の分離と諸性状

Nant Kay Thwe Moe(海洋大・ミャンマー水産局),
Pongtep Wilaipun(カセサート大,タイ),
米塚健太(長岡技科大),
石田若菜,矢野弘奈,寺原 猛,今田千秋,
神尾道也,小林武志(海洋大)

 タイとミャンマーの養殖場などの試料より,合成抗菌剤マラカイトグリーン(以下,MG)の分解微生物の探索を行った。分離された候補株のほとんどは細菌であったが,発酵食品由来の 1 株は 26S rRNA 遺伝子の D1/D2 領域の解析から酵母 Debaryomyces nepalensis と同定された。本株培養中の MG の挙動を LC/MS/MS により検討したところ,MG は完全に消失し,初期 MG の約 40% がロイコマラカイトグリーンに変化した。1H-NMR 解析もその結果を支持し,さらに予想される他の芳香族系の分解物はほとんど存在しないことを示した。

81(5), 937-945 (2015)
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4 箇所の漁獲地域で得られたチョウセンエツのガスクロマトグラフ質量分析-臭気強度分析法を用いた臭気特性の解明

Lin-min Zhao,Wei Wu,Ning-ping Tao,Yu-qi Li,
Na Wu,Xiao Qin(上海海洋大,中国)

 揚子江,東シナ海,巣湖および黄河で漁獲されたチョウセンエツを蒸煮した際に生じる臭気を MMSE 法で抽出し,ガスクロマトグラフ質量分析-臭気強度分析法(GC-MS-O)により調べた。63 種の揮発成分が得られたが,主要な臭気成分は,トリメチルアミン,1-ペンテン-3 オール,N,N-ジエチル-ホルムアミド,エチルベンゼン,(Z)-4-ヘプタナール,ゼンズアルデヒド,1-オクテン-3オール,ノナナールおよびデカナールであった。また,漁獲地域により,これらの臭気成分の組成は異なった。
(文責 大迫一史)

81(5), 947-957 (2015)
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ヤシガニの身入りと遊離アミノ酸,核酸関連化合物,および脂肪酸組成の季節変化

佐藤 琢(水研セ瀬水研百島),大上真市(水研セ本部),
金庭正樹(水研セ中央水研)

 水産物の品質の季節変化に関する知見は生産物の単価向上に利用可能であり,生産者や加工業者の経済的利益に貢献しうる。本研究では,沖縄県鳩間島で採集されたヤシガニの身入り,遊離アミノ酸組成,核酸関連化合物組成,総脂肪酸量および脂肪酸組成の季節変化を調べた。その結果,特に可食部重量や総脂肪酸量において大きな季節変化が認められ,それらはともに繁殖期後の 9 月から 11 月に高い値を示した。本研究の結果,ヤシガニの食材としての旬は 9 月から 11 月であり,その時期が最も効率的な資源利用時期であると考えられた。

81(5), 959-970 (2015)
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固定化全 Natrinema gari BCC 24369 株細胞による魚醤油ヒスタミンの固定床分解

Siriporn Chaikaew(PSU,タイ),
Preenapha Tepkasikul(BIOTEC,タイ),
Glenn M. Young(UC, USA),
大迫一史(海洋大),
Soottawat Benjakul(PSU),
Wonnop Visessanguan(BIOTEC)

 輸入時および健康上の問題となる魚醤油中のヒスタミンについて,これに対しての固定化全 Natrinema gari BCC 24369 株細胞による固定床分解の応用について検討した。静止状態において,ヒスタミン分解の至適条件は,菌株 10%(w/v),リボフラビン 10 mg/100 mL, pH 6.5 であった。醤油の流動状態においては 0.5 mL/min の流速が最適であり,51±3% ものヒスタミンが除去可能であった。本処理を行った魚醤油を 6 ヵ月保存したところ,品質に対する悪影響は見られなかった。

81(5), 971-981 (2015)
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ナノ-SiO2-LDPE フィルムパッケージが冷蔵保存中のバナメイエビの生化学的,官能的,および微生物学的品質特性に及ぼす影響

Zisheng Luo,Yanqun Xu,
Qingyang Ye(浙江大学,中国)

 新素材であるナノ-SiO2-LDPE(NSLDPE)フィルムによる包装が,冷蔵保存中のバナメイエビの品質に及ぼす影響について検討した。NSLDPE による包装は,低密度ポリエチレン(LDPE)による包装に比較して,エビの官能特性および保水性に高い効果を示した。また,NSLDPE 包装は,エビ肉のポリフェノールオキシダーゼ活性と黒化を抑制するとともに,TBA 値,VBN 値および K 値の上昇,細菌の増殖も抑制した。以上のことから,NSLDPE 包装は新たなエビ保存法として有用なことが示唆された。
(文責 大迫一史)

81(5), 983-993 (2015)
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福島第一原発事による三陸産ワカメの風評被害―オークション実験による顕示選好

宮田 勉,若松宏樹(水研セ中央水研)

 風評被害緩和を目的とした三陸産ワカメのオークション実験では,放射能に関する文章説明等による情報操作を行い,その情報が与えられた被験者と与えられなかった被験者の間において,入札価格差はなかった。しかし,情報を与えた被験者のある一定程度は,三陸産ワカメの不買意識が変化した。すなわち,この結果は,風評被害に対する宣伝を行えば,価格上昇は望めないが,不買行動は抑制できると推定された。この価格上昇が望めない要因として,消費者の経験的な購入価格が支払意志額に影響していると推察された。

81(5), 995-1002 (2015)
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