Fisheries Science 掲載報文要旨

クロマグロ,アワビ及びイセエビ幼生の微粒子飼料について(総説)

竹内俊郎,芳賀 穣(海洋大)

 これまで海産仔稚魚の餌としては,シオミズツボワムシやアルテミア幼生などの生物餌料が用いられてきたが,栄養価の観点から微粒子飼料の開発は重要である。微粒子飼料の研究はマダイやシーバスなどで行われてきたが,魚類以外の研究は少ない。本総説では,最近注目されているクロマグロのみならず,アワビ及びイセエビ幼生を用いた微粒子飼料の開発の現状について述べる。

81(4), 591-600 (2015)
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アラスカの河川上流部におけるギンザケ稚魚資源量推定のためのシングルパス電機ショッカー法の有効性

Kevin Foley(アラスカ大・U.S. Fish and Wildlife Service),
Amanda Rosenberger(アラスカ大・米地質調査所),
Franz Mueter(アラスカ大,USA)

 アラスカのリトルサシテュナ川の上流域においてギンザケ稚魚の採集効率が生息場特性の推定に与える影響の有無について,低努力サンプリング法であるシングルパス電機ショッカー法による閉鎖的標識放流・再捕調査を実施し検証した。その結果,シングルパス電機ショッカー法は,標識放流・再捕調査により推定された個体数のばらつきの 94.8 パーセントを説明した。このことはリトルサシテュナ川の上流域における低努力採集法は,採集効率の影響を考慮しなくてもほぼ正確な個体数の推定ができることを示唆している。
(文責 宮下和士)

81(4), 601-610 (2015)
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1990 年から 2010 年 7-9 月の鯨類目視調査データを用いたオホーツク海中西部におけるイシイルカ(イシイルカ型・リクゼンイルカ型)の個体数推定

金治 佑,宮下富夫,吉田英可(水研セ国際水研),
岡崎 誠(水研セ中央水研),木白俊哉(水研セ国際水研)

 オホーツク海中西部におけるイシイルカの個体数を 2 つの体色型別に,ライントランセクト法を用いて推定した。1990-2010 年の個体数推定値は,イシイルカ型 72,303-111,402 頭,リクゼンイルカ型 101,173-163,873 頭であった。個体数の年変動には,有意なトレンドは見られなかったが,調査海区毎の分布に年変動が見られた。推定を行った対象海域は生息域の一部に限られていることから,分布の年変動は,同海域内の物理・生物環境の変動に関係すると考えられる。

81(4), 611-619 (2015)
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魚群中の個体追跡によるターゲットストレングススペクトル計測

伊藤雅紀,松尾行雄(東北学院大),
今泉智人,赤松友成(水研セ水工研),
王  勇,西森 靖(古野電気)

 広帯域ソナーにより得られるエコーは,魚種識別に役立つ特徴を含んでいる。ただし,魚からのエコーは音波の入射する角度に依存するため,魚群中の個体エコーを分離して角度を推定する必要がある。本研究では,広帯域スプリットビームシステムを用いて,自由遊泳中の魚群から特徴量を抽出することを目的とした。計測されたエコーは,まず位置を推定され追跡が行われた。その結果を用いて,魚の姿勢を推定し,音波が魚体に入射する角度を推定した。アジ,サバ,タイからのエコーを計測し,入射角度毎の TS スペクトルを計測した。

81(4), 621-633 (2015)
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ホタテガイに蓄積した麻痺性貝毒の現場における減衰予測

加賀新之助(岩手水技セ),佐藤 繁(北里大海洋),
加賀克昌,内記公明,渡邊志穂(岩手水技セ),
山田雄一郎,緒方武比古(北里大海洋)

 大船渡湾において Alexandrium tamarense により毒化したホタテガイの毒性減衰期間を予測するために,長期間のフィールドデータを用いて減衰式を得た。この減衰式は,ホタテガイ中腸腺の最高毒性から国の監視強化の基準値である 20 MU/g に毒力が減衰するまでの日数(t20)を予測するものであり,各年の t20 を線形回帰分析により推定し,その後各年の最高毒性と t20 との間で回帰分析により減衰式を決定した。減衰期間の実測値と予測値との差は約 1 ヶ月であった。この減衰式が,大船渡湾におけるホタテガイ麻痺性貝毒の減衰期間を予測するために有効であることが示された。

81(4), 635-642 (2015)
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異なる環境で飼育されたサクラマスの銀化に伴う血中インスリン様成長因子-I量の変化

金子信人(北大院水),飯嶋亜内(道さけます内水試),
下村考弘,中嶋拓郎,志村遥夏(北大院水),
大森 始,卜部浩一(道さけます内水試),
原 彰彦,清水宗敬(北大院水)

 サクラマスの銀化に伴う血中インスリン様成長因子(IGF)-I 量の変化を調べ,親魚の回帰率と比較した。一般に銀化最盛期に血中 IGF-I 量のピークが観察された。冬季の体サイズ(Large/Small)と春季の成長(High/Low)が異なる放流群間で,Large-High と Small-High 群の IGF-I ピークは同程度であったが,Large-High 群の方が高い回帰率を示した。成長履歴は IGF-I と回帰率に影響を及ぼすが,銀化時の血中 IGF-I のみでは回帰率予測は困難であると考えられた。

81(4), 643-652 (2015)
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ソウギョ Ctenopharyngodon idellus 稚魚のカルセインおよびアリザリンレッド S による浸漬標識

Hongjian Lü, Hongjun Chen, Mei Fu, Xiwen Peng(西南大,中国),
Dan Xi(中国海洋大,中国),Zhixin Zhang(海洋大)

 50-200 mg/L の濃度の Calcein (CAL)および 150-300 mg/L の alizarin red S (ARS)をソウギョ Ctenopharyngodon idellus 稚魚の浸漬標識に用いた。低濃度で ARS 処理した鱗を除いて,24 時間の浸漬によって扁平石,鱗および鰭条において標識 100 日後にも蛍光標識が検出された。高濃度の CAL または ARS で処理した扁平石,高濃度の CAL で処理した鱗および鰭条,高濃度の ARS で処理した鰭条で蛍光標識が容易に検出された。実験を通して処理群と対照群との間で生残および成長に有意差はなかった。
(文責 家戸敬太郎)

81(4), 653-662 (2015)
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東シナ海における産卵回遊初期段階のマアナゴの生物学的特徴

河津優紀,亀田崇史(九大院農),
黒木洋明(水研セ増養殖研),
依田真里,大下誠二,酒井 猛,塚本洋一(水研セ西海水研),
望岡典隆(九大院農)

 2009 年,2010 年のそれぞれ夏季と冬季に着底トロールによって東シナ海で採捕されたマアナゴの生物学的特徴を明らかにした。採捕された 107 個体のうち,卵黄形成を確認した雌は 16 個体で,北緯 28-33度,東経 125-128度で囲まれる海域における,夏季,冬季ともに底層水温が 20℃ を超えない調査点で採捕された。一方,減数分裂期以降の精巣をもつ雄は認められなかった。性比(雌:雄)は,夏季では 46:0,冬季では 34:24 であり,夏季における雄の不在は本種の雌雄の産卵回遊時期,経路に季節的な差異が存在する可能性を示唆した。

81(4), 663-671 (2015)
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ブルーギルの成長に伴う視軸の変化と食性の関係

五味勇気,宮崎多恵子(三重大院生資)

 ブルーギル(全長 44-243 mm)の網膜神経節細胞の密度分布図から成長に伴う視軸の変化を推定した。細胞の最高密度部位は 100 mm 以下では網膜の尾側にあったが,100-200 mm では背側と尾側の間に観察され,200 mm 以上は再び尾側に位置した。これらの結果から,稚魚期は前方に向いていた視軸は成長に伴い前方斜め下向きとなり,更に成長すると再び前方に向くと推定された。ブルーギルは日和見的な摂餌生態を示すが,3 つのサイズ群が探索している餌生物はそれぞれ,プランクトン,底生生物,小型魚類であると考えられた。

81(4), 673-678 (2015)
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マダイはビデオ映像上の他個体の観察を通じて餌場および避難場所を学習することができるか?

高橋宏司,益田玲爾,山下 洋(京大フィールド研セ)

 マダイを用いて映像による観察学習の可否を検討した。実験 1 では,体長 45 mm の稚魚に餌場の,実験 2 では体長 114 mm の稚魚に避難場所の条件付け訓練を施した。各実験では,生体観察区(隣接水槽の個体の行動を観察),映像観察区(映像上の学習個体を観察),および対照区(観察なし)を設けて,学習過程を比較した。実験 1 では処理区間の学習過程に差がみられなかったのに対し,実験 2 では両観察区とも対照区より早く学習した。これより,映像は観察学習のモデルとして有効であり,放流種苗の対捕食者訓練に役立てられる可能性が示された。

81(4), 679-685 (2015)
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噴火湾におけるヒレグロ Glyptocephalus stelleri の摂餌強度・栄養状態に及ぼす貧酸素水の影響

稲垣祐太,髙津哲也,上野山隆生,米田典子,横山信一,
亀井佳彦,小林直人,高橋豊美(北大院水)

 噴火湾においてヒレグロの摂餌強度・栄養状態と貧酸素水の経年的な関係を明らかにした。2010-2012 年には貧酸素水が深刻化しており,環境中のヨコエビ亜目(クビナガスガメ Amperisca brevicornis, Melita sp.)は調査期間を通して低密度であった。しかし,ヒレグロは 2011, 2012 年にヨコエビ亜目を多く捕食し,2006-2009 年の低栄養状態から回復していた。これは,貧酸素水によりヨコエビ亜目が海底表面に露出し,捕食されやすくなり,ヒレグロの餌利用度が向上したためと考えられた。しかし,2011, 2012 年のヒレグロの栄養状態は回復しているものの,餌生物が豊富であった 1980 年代ほど良好ではなかった。

81(4), 687-698 (2015)
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エビ Exopalaemon carinicauda Relish 遺伝子のクローニングと発現解析

Qianqian Ge(中国海洋大・中国水産科学研究院),
Junping Liang(河南師範大),
Jitao Li, Jian Li, Yafei Duan, Fazhen Zhao, Hai Ren(中国水産科学研究院,中国)

 Rel/NF-κ-B 転写因子は,生物において自然免疫反応の誘導や制御に重要な役割を持つ。エビ Exopalaemon carinicauda の Relish ホモログ EcRelish を単離したところ,cDNA の全長は 2,141 bp で 660 残基のポリペプチドをコードしていた。この cDNA は他の甲殻類のホモログと高い相同性を示し,Rel 相同領域および核移行シグナルをもっていた。Vibrio anguillarum や WSSV による感染が長引くと累積生存率は増加するが,その際血球での EcRelish mRNA の発現が増加したことから,EcRelish は病原菌に対する免疫防御やアンモニア態窒素ストレスに関係すると思われる。
(文責 神保 充)

81(4), 699-711 (2015)
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星口動物 Sipunculus nudus Linnaeus 幼体の最適な食餌性タンパク質エネルギー比

Qin Zhang(広西海洋研究所),
Qingchao Wang(中国海洋大),Hairui Yu(濰坊大),
Kangsen Mai(中国海洋大),
Tong Tong, Lanfang Dong, Mingzhu Xu(広西海洋研究所,中国)

 Sipunculus nudus 幼体の最適餌料性タンパク質エネルギー(P/E)比を調べた。タンパク質(38, 43, 48%)と脂質(6, 9, 12%)レベルを組合せ,P/E 比 19.5-26.4 mg タンパク質 kJ-1 の餌料を調製して S. nudus 幼体に 56 日間与えたところ,43% タンパク質と 9% 脂質を含む P/E 比 23.1 mg タンパク質 kJ-1 で,最も高い成長率と生体内プロテアーゼ及びリパーゼ活性が認められた。餌料の P/E 比は S. nudus の水分と灰分含量に影響を及ぼさなかったが,タンパク質と脂質含量は餌料中の各成分含量の増加に伴って向上した。
(文責 柿沼 誠)

81(4), 713-722 (2015)
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カムルチー Ophiocephalus argus 稚魚用飼料の肉骨粉による魚粉の代替

Hairui Yu(濰坊医学院・広西海洋研究所),
Qin Zhang(広西海洋研究所),Hui Cao(濰坊医学院),
Tong Tong, Guoqiang Huang(広西海洋研究所),
Weizhong Li(濰坊医学院,中国)

 6 種類のほぼ同じ窒素量および総エネルギー含量の飼料の魚粉(FM)タンパク質を肉骨粉(MBM)タンパク質で 0 から 100% の 6 段階に代替した飼料を調製し,魚体重 12.11±0.08 g のカムルチー Ophiocephalus argus 稚魚に 10 週間与えた。対照区と 20% 代替区との間に specific growth rate およびタンパク質効率に有意差はなかったが,それ以上代替した区よりは有意に高く,カムルチーの飼料 FM タンパク質の 20% を MBM で代替できることが示された。
(文責 家戸敬太郎)

81(4), 723-729 (2015)
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オトヒメエビ科 Stenopus cyanoscelis の幼生飼育方法の検討:餌料種類と密度の影響

Haruo Tsuji, Chaoshu Zeng, Nicholas Romano, Paul C. Southgate(ジェームスクック大,豪州),
Haihui Ye(厦門大,中国)

 Stenopus cyanoscelis のふ化幼生にワムシ(5, 25, 50 個体/mL)とアルテミア(2, 5, 10 個体/mL)を給餌し,40 日間飼育した。ワムシ 5 個体区では,初期減耗が大きく,14 日齢で全滅した。ワムシ 25 個体以上,特に 50 個体区の生残率は,アルテミア区よりも高い値を示したが,25 日齢頃から低下した。アルテミア区では,初期減耗が大きかったが,生残率は 17 日齢頃から安定し,最終的に 5 個体以上の区で高い値を示した。また,アルテミア区の脱皮率が高かった。以上のことから,ワムシ(20-25 日齢まで)とアルテミア(17 日齢から)の適正給餌時期が明らかとなった。
(文責 浜崎活幸)

81(4), 731-736 (2015)
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福島原発事故後の福島県内の湖における湖水,底泥,プランクトン,魚の放射性セシウム汚染度比較

松田圭史,高木香織(水研セ増養殖研),
冨谷 敦,榎本昌弘(福島内水試),
坪井潤一(水研セ増養殖研),
帰山秀樹,安倍大介,藤本 賢,
小埜恒夫(水研セ中央水研),
内田和男(水研セ本部),森田貴己(水研セ中央水研),
山本祥一郎(水研セ増養殖研)

 2012-2013 年の間に福島第一原発からの直線距離が約 39, 85, 157 km であるはやま湖,秋元湖,田子倉湖において,湖水,底泥,プランクトン,魚の放射性セシウム濃度の違いを調べた。調査期間の各試料の平均放射性セシウム濃度は線量の高い順にはやま湖,秋元湖,田子倉湖となった。調査期間の平均放射性セシウム濃度は魚食性の魚種で高くなり,栄養段階の違いを反映していると考えられた。各試料の放射性セシウム濃度と各湖畔の表層土壌の放射性セシウム汚染度には正の相関関係がみられた。

81(4), 737-747 (2015)
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天然および疑似的 Dinophysis の大量発生中のカキとイガイのオカダ酸の蓄積の差異

Luiz Laureno Mafra Jr, Tatiany Ribas(パラナ連邦大),
Thiago Pereira Alves(パラナ連邦大,サンタカタリーナ州立研),
Luis Antonio Oliveira Proença(サンタカタリーナ州立研),
Mathias Alberto Schramm(サンタカタリーナ州立研,ブラジル),
内田 肇(海洋大,水研セ中央水研),鈴木敏之(水研セ中央水研)

 2008 年の 3 月上旬,ブラジル南部の Baia 島の二枚貝養殖海域において,Dinophysis acuminata コンプレックスの大量発生が見られた。出荷サイズのイガイ Perna perna の中腸腺のオカダ酸(OA)含量はカキ Crassostrea gigas の中腸腺と比較して 11 倍高い値であった。さらに,50% のイガイの中腸腺抽出物(n=47)はマウス毒性試験において急性毒性を示したのに対して,カキでは全検体(n=17)が陰性であった。二枚貝種間の毒力の違いは,D. acuminata の給餌実験においても同様の傾向が観察された。これらの結果から,イガイの OA の減毒は,カキ類(C. gigas 0.010/h, C. brasiliana)よりも速やかであることが明らかになった。

81(4), 749-762 (2015)
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種々の酵母間における海藻からのエタノール生産量比較

高木俊幸(海洋大),内田基晴(水研セ瀬水研),
松嶋良次(水研セ中央水研),
小玉裕幸,武田忠明(道中央水試),
石田真巳,浦野直人(海洋大)

 本研究は,三種の海藻を用いて種々の酵母のエタノール発酵量を比較した。酵母間でエタノール生産量を比較したところ,海洋由来 C-19 株が海藻の発酵に最も適しており,1 g あたり緑藻 Ulva spp. から 0.15 g,紅藻 Gracilaria spp. から 0.08 g,褐藻 Costaria costata から 0.05 g のエタノールを生産した。適切な酵母,発酵方法及び前処理の選択により,海洋酵母 C-19 株は撹拌発酵法でアルギン酸抽出後の褐藻 C. costata から 1 g あたり 0.09 g のエタノール生産に成功した。最後に,ジャーファメンターを用いてスケールアップした糖化及び発酵を行うことで,本システムのラージスケール発酵への適性を評価した。

81(4), 763-770 (2015)
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海洋由来 Saccharomyces cerevisiae を用いるワカメ加工廃棄物とシュレッダー廃棄紙の混合バイオマスからのバイオエタノール生産

小原信夫,岡井公彦,石田真巳,浦野直人(海洋大)

 本研究では,海洋酵母による高濃度バイオエタノール生産を試みた。原料としてワカメ加工廃棄物(A)とシュレッダー廃棄紙(B)の 2 種類のセルロース系バイオマスを使用し,(A), (B)の糖化濃縮液を(A):(B)=3:7 での混合した基質を作成した。基質 3 L を使用して,海洋由来酵母 Saccharomyces cerevisiae C19 株を用いて,30℃, 5 日間の発酵を行ったところ,87.7 g/L のバイオエタノールを生産した。さらに,発酵液を蒸留して,788 g/L のエタノールを 331 mL 得ることができた。

81(4), 771-776 (2015)
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ホンダワラ Sargassum fulvellum 由来多糖によるマクロファージの活性化およびマウス脾臓細胞における Th1 分極誘導

Nak-Yun Sung, Hye-Min Kim(公州大),
Eui-Baek Byun, Jae-Nam Park(韓国原子力研究院),
Chulhwan Park(光云大),
Myung-Woo Byun(又松大),
Eui-Hong Byun(公州大,韓国)

 ホンダワラ Sargassum fulvellum から抽出された多糖類につき,RAW264.7 マクロファージにおける免疫調節活性能を調べたところ,細胞毒性は示さず,IL-10 以外のサイトカイン類,および一酸化窒素を増加させた。また,細胞表面の副刺激分子 CD80/CD86 も増加させた。さらに上記多糖によるマクロファージの活性化は,MAPKs および(NF)-κB シグナル系を調節した。一方,上記多糖類はマウス脾臓細胞において細胞分化を誘導し,Th1 サイトカイン類を増加させる反面,Th2 サイトカイン類は増加させなかった。
(文責 岡田 茂)

81(4), 777-785 (2015)
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焼成後のマガキ・ハマグリ・ウニ殻の構造変化と食品由来微生物に対する抗菌性

Yu-Chun Chen, Chun-Lan Lin, Chih-Ting Li,
Deng-Fwu Hwang(台湾海洋大,台湾)

 焼成後のマガキ・ハマグリ・ウニ殻粉末の抗菌活性を検討した。1050℃ 2 時間の焼成処理により,いずれの殻粉末も主成分が酸化カルシウムに変換されていることがフーリエ変換赤外分光分析および X 線回折分析により確認された。Ba, Sr, Mg, Mn 等の微量金属は豊富に含まれていた一方,有害元素は検出されなかった。いずれの焼成粉末も,1% の添加量で 5 種の食品由来微生物に対して抗菌活性を示すことがディスク拡散法により確認された。
(文責 井上広滋)

81(4), 787-794 (2015)
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ミャンマーのなれずしから分離された Bacillus mojavensis F412 株による抗菌物質の生産

Nant Kay Thwe Moe(海洋大・ミャンマー水産局),
Su Myo Thwe(ミャンマー水産局),
鈴木康介,中井亮介,寺原 猛,今田千秋,
小林武志(海洋大)

 発酵食品由来の安全な抗菌物質研究の一環として,これまで研究のなされていないミャンマーの水産発酵食品の抗菌物質生産菌について検討した。エビのなれずし(pazunchin-akaungchin)から分離した生産菌は Bacillus mojavensis と同定され,その抗菌物質は食中毒菌リステリア菌や他のグラム陽性菌に対し活性を示した。抗菌物質はオートクレーブ処理(121℃, 15 分)の処理後にも活性が残存し,その分子量は Tricine-SDS-PAGE での挙動から,3.5 から 8.5 kDa と推定され,グリコペプチドである可能性も示された。また,抗菌物質はリステリア菌に対し溶菌性を示した。

81(4), 795-802 (2015)
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