Hui-Hua Lee (JIMAR, UH), Kevin R. Piner (SWFSC, NMFS), Michael G. Hinton (IATTC), Yi-Jay Chang (JIMAR, UH,米国), 木元 愛(水研セ国際水研), 金岩 稔(東京農大生物産業), Nan-Jay Su (NTU), William Walsh (JIMAR, UH), Chi-Lu Sun (NTU), Gerard DiNardo (PIFSC, NMFS,米国) |
本研究では,性別・年齢別の体長に基づく統合モデルによって 1971-2011 年の太平洋クロカジキの個体群動態を推定した。モデルの尤度成分には,漁業別漁獲量,体長組成及び CPUE を使用した。推定の結果,過去数年から現在に至るまで本種の資源動態は安定しており,限界まで利用されていた。また,加入量に顕著な傾向はないが,漁獲の大部分が雌と推定され,過去の漁獲が年齢構成の雌雄比に影響していることが示唆された。雌雄別の生活史の仮定を変化させた場合,現在の資源状態の解釈を変える可能性があると考えられた。
庄野 宏(鹿大水) |
3 種類のデータマイニングモデルと 2 種類の統計手法によるミナミマグロの CPUE 標準化を行い,観測値とモデルから得られた対応する予測値の差異を表す平均二乗誤差や平均絶対誤差,3 種類の相関係数に基づき統計的な性能の良さを比較した。その結果,サポートベクター回帰はニューラルネットワークと同等以上の性能を示し,これら 2 つのモデルが他の 3 種類のモデルよりも優れていることが判明した。データマイニングモデルから得られる予測値に基づき,CPUE 年トレンドを抽出するための簡便な要因分析手法を提案した。
Seonghun Kim, Seong-wook Park, Kyounghoon Lee(NFRDI,韓国) |
難分解性の合成繊維やプラスチックで製造されている漁具の逸失・投棄はゴーストフィッシングを引き起こす。この問題を解決するために,生分解性素材を用いた漁具(生分解性アナゴかご)を開発し,その漁獲性能について従来のリサイクルポリエチレン製の漁具(商業用アナゴかご)との比較を行った。結果,生分解性アナゴかごは商業用アナゴかごと比較して伸長弾性率に優れており,またその漁獲性能は商業用のそれと比較してほとんど変わらないことが明らかとなった。よって,生分解性素材は商業用アナゴかごの代替素材として有効であると判断された。
(文責 宮下和士)
片野 修(水研セ増養殖研) |
7.6 m2 の実験池にアユを 1 m2 あたり 1.1-6.1 尾放流した後,友釣りによって漁獲した。アユの死亡率は収容時の個体密度に影響されなかった。アユの成長率は収容密度の増加とともに低下したが,友釣りによる漁獲数及び漁獲量は,初期密度が 2.6-4.7/m2 の池で最大値を示した。また,体重が 30 g あるいは 50 g 以上のアユは,それぞれ個体密度が 2.6/m2 と 2.1-2.6/m2 の池で最も多く釣獲された。従来のアユの放流基準密度は友釣りによる漁獲を考慮すると低すぎる可能性が示された。
坂本大輔(海洋大), 根本 孝,須能紀之,岩崎 順, 丹羽晋太郎(茨城内水支), 荒山和則(茨城県漁政課),鈴木直樹,百順(海洋大), 高木香織(水研セ中央水研),櫻本和美(海洋大) |
DeLury 法とコホート解析を用い,2001 年から 2010 年の茨城県霞ヶ浦と北浦のワカサギの漁期初資源尾数の推定を行った。月別漁獲量を推定した月別の平均体重で除して月別の漁獲尾数に換算した。DeLury 法とコホート解析から推定した漁期初資源尾数と,漁期前資源調査から推定されている Population Level Index (PLI)を比較した。推定結果は DeLury 法とコホート解析で類似し,PLI とも概ね一致した。漁期初資源尾数は霞ヶ浦で約 7 百万から 4 億尾,北浦で 8 百万から 4 千万尾と推定された。
Charles A. Gray(WildFish Research・UNSW・SIMS), Lachlan M. Barnes (Cardno), Faith A. Ochwada-Doyle(UNSW・SIMS), Dylan E. van der Meulen(UNSW・ベートマンズ湾水産センター,豪州), Ben W. Kendall(スウェーデン), William D. Robbins (Wildlife Marine,豪州) |
豪州東部で底曳網で漁獲されたフリンダースギスの成長,体長,年齢組成,死亡率の変動を調べた。2 水域の 3 水深帯で標本を採集し,扁平石耳石の横断面で年齢査定を行った。雌は最高 6 歳,雄は 5 歳であった。ベルタランフィー式の極限体長は雌の方が大きく,k 値は雄の方が大きかった。高緯度で極限体長と 3-5 歳時の平均体長が大きかった。浅いほど小型・若齢だったことから,成長に伴って深い水深に移動すると推定され,これは種内競争の緩和と稚魚の保護に役立つ。1-3 歳魚が多く,全減少係数は 2.24-2.40 の範囲を示し,漁獲死亡係数の 1.54-1.70 は自然死亡の 2 倍以上であった。漁獲率は約 0.70 と高かった。
(文責 髙津哲也)
柳 海均(北大院水), 山本 潤(北大フィールド科セ), 斎藤友則(北大水),桜井泰憲(北大院水) |
本研究では温暖化や異常気象により表層が昇温した場合を想定し,表層に分布するスルメイカ幼生が高水温に遭遇した場合の死亡率と挙動の変化を調べた。遊泳可能な発達段階における幼生の生残期間は 24℃ 以上で短くなった。一方で,円柱水槽内の下層を生残適水温,上層を 24.4, 26.0℃ とし底付近から幼生を遊泳させると幼生は表層まで遊泳し滞留した。さらに上層を 29.7-29.8℃ とした場合,幼生の多くは下層と温度躍層付近かその上層に滞留した。本研究により表層の昇温は幼生の生残にとって不利になることが示された。
松永貴芳,家田梨櫻,細谷 将,黒柳美和(東大水実), 鈴木重則(水研セ増養殖研), 末武弘章(福井県大海洋生資), 田角聡志,鈴木 譲(東大水実), 宮台俊明(福井県大海洋生資),菊池 潔(東大水実) |
トラフグの性は Amhr2 遺伝子上の SNP により決定されている可能性が非常に高い。この SNP を利用して,遺伝的な性を迅速に判別する方法を開発した。コントロールした環境で飼育した 396 個体を本法により解析したところ,SNP の遺伝子型は性の表現型と完全に一致した。従って,本法は高効率な性判別に適していると考えられる。次に,飼育条件が不明な 293 個体を解析に付したところ,約 25% の精巣保持個体が雌の遺伝子型を示した。この結果は,飼育条件などの環境要因が本種の性決定に影響する可能性を示している。
藤岡康弘(琵琶湖博物館),上野世司(滋賀水試) |
ホンモロコの性決定における両親の役割を検討するため,19 尾の雌から雌性発生 2 倍体を作出し,20℃ の一定水温で飼育して性比を調査した。その結果,雌の割合は 50 から 100% まで連続的に変化し,全雌は 6 組に留まった。7 尾の雌親と通常雄を交配すると,子供はほぼ雌雄 1 対 1 となった。2 代目の雌性発生 2 倍体を作出した 4 組においても子供に雄が出現した。雄出現率の高い家系において兄妹交配すると,次代の雄割合が極端に増加した。以上の結果は,基本的に XY 型の性決定様式ながら Y 染色体にさまざまな変異が存在することを示唆している。
神村裕之,光永 靖(近大農) |
ビワマスに超音波発信機を装着して放流し,琵琶湖内の時空間分布を能動追跡と受動記録の 2 つのバイオテレメトリー手法により調査した。ビワマスは北湖を広く利用し,表層から底層まで分布した。1 年以上にわたって追跡された個体は日周鉛直移動と季節水平移動を示した。成層期の日中,鉛直分布は二峰性を示し,水温躍層付近でアユを,底層でヨコエビを捕食していたと考えられた。夜間は限られた層にとどまった。混合期にはより広い水平分布を示した。3 個体が産卵期に沖合と沿岸域を行き来し,より浅い遊泳水深と高い経験水温を示した。
Ya-Juan Li, Yang-Chun Gao, He Zhou, Bo Liu, Min Gao, Yu-Sheng Wang(大連海洋大学), Xiao-Wen Sun(中国科学院,中国) |
ドイツゴイ Cyprinus carpio の倍数性を調べた。標本は中国 Hulan から採集しフィトヘムアグルチニンとコルヒチン処理した。腎臓の核型は,銀染色,CMA3/DA/DAPI 染色と 5.8S+28S rDNA プローブを使った FISH 法で調べた。銀染色された核領域は 80% の中間期と 69% の分裂期に検出された。1 つの CMA3 シグナルは,それぞれの中部動原体染色体(SMC8)同族体の短腕の端で検知され,FISH 法では,各 SMC8 同族体)の短腕の端で交雑した。以上の染色法による分析結果は,染色体数と SMC8 領域の位置が一致していることを支持した。そして,このことは,分子細胞遺伝学レベルで,ドイツゴイが染色体倍化後に 2 セットの染色体をもって進化した四倍体であることを示唆している。
(文責 原 素之)
Hyun-Ki Hong, Ludovic Donaghy, Kwang-Sik Choi(国立済州大学,韓国) |
イワガキ血球の形態と免疫関連機能を光学顕微鏡とフローサイトメトリーで解析した。血球は顆粒血球,無顆粒血球,芽様細胞に分類され,顆粒血球は大型で細胞質に多数の顆粒を持ち主に食作用や活性酸素による殺菌を行う。無顆粒血球は中型で数が多く,ある程度は免疫関連機能を示す。芽様細胞は小型で細胞質が乏しく,食作用が無く活性酸素産生も低いことから細胞性免疫に直接は関与しないと推定される。この様にイワガキの細胞性免疫には主に顆粒血球が関与しており,これに基づき環境ストレスや病原体がイワガキに及ぼす影響の解析が可能になると考えられる。
(文責 淡路雅彦)
Xianhu Zheng, Youyi Kuang, Weihua Lü, Dingchen Cao, Xiaowen Sun(中国水産科学院,中国) |
金魚から得られた EST から,5505 個の単純反復配列が同定された。その周辺領域を増幅するのためのプライマー 500 セットを用いて EST-SSR を検証したところ,408 セットで増幅がみられ,151 セットで多型がみられた。これらのうち,148 座位で両親に関する有益な情報が得られた。これらについて成長に関わる特徴との関連を調べたところ,12 座位は体重と,13 座位は体長と有意に相関した。したがって,これらの EST-SSR は連鎖地図の作成やマーカー育種に有用かもしれない。
(文責 神保 充)
藤岡康弘,根本守仁,亀甲武志,磯田能年(滋賀水試) |
水田の大きく変化する水温環境下で育ったニゴロブナの性比を明らかにする目的で,5 月中旬に孵化直後のニゴロブナを稲作水田 5 筆に放流し約 1 ヶ月間飼育して性比を調査した。水温は毎日周期的に大きく変化し,飼育期間中の最高水温はどの水田も 36℃ 以上を示したが,平均水温は 25℃ を下回った。ニゴロブナの性比は 1 組を除いて雌雄比は 1:1 で雄への偏りは認められなかった。1 組では雌の割合が 61.3% と若干雌に偏った性比を示した。以上の結果は,この時期の水田の一時的な高水温は,ニゴロブナの性比を雄に偏らせることはないものと考えられた。
Yu Gao, Dapeng Li, Xiaozhen Peng, Rong Tang(華中農業大学,中国) |
低電圧直流電流あるいはトリカインメタンスルホナートにより麻酔したヨーロッパフナ Carassius carassius につき,血漿の生化学的性状と熱ショックタンパク質等の遺伝子発現レベルを比較した。低電圧直流電流はトリカインメタンスルホナートに比べ,より速やかに魚を麻酔し,結果として血漿コルチゾール濃度を有為に高めた。また,直流電流による麻酔は,熱ショックタンパク質 70 および 90 に加え,ミトコンドリアにおける呼吸鎖関連酵素や,抗酸化に関連する酵素遺伝子の発現を高めた。
(文責 岡田 茂)
Chun-zhong Wang(福建省莆田水産科学研究所), Guo-rong Lin(莆田学院), Tao Yan(中国科学院南海海洋研究所), Zhi-peng Zheng, Bin Chen (Putian Tian Ran Xing Agriculture Development Co. Ltd.), Fu-lin Sun(中国科学院南海海洋研究所,中国) |
養殖アカオエビの腸管内,養殖環境(底質および飼育水)および外海水の細菌叢とプランクトン叢について,それぞれ 16S および 18S rRNA 遺伝子配列の PCR によるクローンライブラリー法で検討した。その結果,エビ腸管内の細菌叢は,飼育池の底質と最も類似していた。病エビの腸管内細菌叢は,健常エビに比べて多様性が低下しており,その約半数の遺伝子塩基配列は,病原細菌である Photobacterium damselae と Vibrio harveyi と類似していた。プランクトン叢では,養殖飼育水と外海水の間で顕著な違いが見られた。
(文責 佐野元彦)
Bimol C. Roy(近大院農・Univ. Alberta,カナダ), 阿川泰夫(近大水研), Heather L. Bruce (Univ. Alberta), 安藤正史(近大農),岡田貴彦,澤田好史(近大水研), 伊藤智広,塚正泰之(近大農) |
初期の筋肉の発達と筋繊維種は到達サイズと肉質に影響する。クロマグロ仔・稚魚のふ化後 3, 15, 29, 41 日齢(dph)は全体を,70, 128, 218 dph は背部頭側と背部尾側の筋肉を採取し,形態計測と筋切片の超微細構造観察を行った。15 dph に赤色筋繊維が背側と腹側の両方の水平隔壁部に現れた。表層赤色筋繊維の単層と水平隔壁部以外に,筋節に赤色筋繊維が存在した。筋繊維の成長は肥大と数の増加の両方が関わっていた。筋繊維の直径は頭側が尾側より大きかった(41, 70, 128 dph)。
山本眞司,福島敦彦,石丸克也,白樫 正(近大水研) |
生け簀を遮光することで,ネオベネデニアの寄生と駆虫作業を軽減できるか調べた。マサバ稚魚を通常の生け簀と遮光シートで覆った生け簀で 3 ヶ月間飼育した結果,通常の生け簀では 3 回の淡水浴もしくは 6 回の投薬が必要だったのに対し,遮光生け簀では一度も駆虫を必要としなかった。また,遮光生け簀では駆虫処理をしなかったにも拘わらず,寄生数は通常の生け簀の半分以下であり,遮光による寄生抑制効果が確認された。生け簀の遮光は比較的簡単に実施できるため,養殖場での新しいハダムシ対策法となる可能性がある。
礒島俊実,田川正朋(京大院農) |
ヒラメ体表における着色型黒化の拡大機構を理解するため,鱗の移植実験を行った。無眼側鱗を有眼側へ移植すると有眼側様の黒色鱗へと変化した。一方,有眼側鱗を無眼側へ移植しても変化はなかったが,生着した有眼側鱗を無眼側から除去するとそこには有眼側様の黒色鱗が再生した。着色型黒化部位でも有眼側と同じ結果が得られた。また有眼側鱗片を無眼側鱗下に埋め込むと直上の鱗は有眼側様の黒色鱗に変化した。以上より有眼側と黒化部位の鱗や鱗下組織には有眼側様の黒色鱗の誘導因子の存在が考えられ,黒化拡大への関与が示唆された。
細谷 将,水野直樹,菊池 潔(東大院農水実), 黒倉 壽(東大院農) |
混合飼育下におけるトラフグ仔魚の生残率に対するオス親の遺伝的影響を評価した。野生トラフグのオス 4 尾とメス 4 尾を交配して得た解析家系を用いて,同一母由来の半同胞家系を孵化後から混合飼育し,35 日間後の生残率に対するオス親の影響を調べた。その結果,水槽内で標準化した相対生残率と標準体長に,オス親の遺伝的影響が検出された。また生残と成長には正の相関が認められたことから,成長速度の差が生残率の差に影響していることも考えられた。
ZhiGang Mao, XiaoHong Gu, QingFei Zeng(中国科学院南京地理与湖泊研究所), Guoquan Pan (CAAC,中国) |
太湖(中国)の食物網の季節的・空間的変動を安定同位体分析によって調べた。環境の異なる湖内の 2 つの地域で採取した基礎生産,無脊椎動物,魚について,安定同位体比組成に違いがみられた。全体的にみると,大型の植物が支配的な地域にくらべて,植物プランクトンが支配的な地域では,有機物および消費者の炭素 13 の割合が低く,窒素 15 の割合が高いが,季節的な変動も大きく,炭素 13,窒素 15 が,夏に向かって増加し,冬に向かって低下した。この現象は,環境変動(日照,栄養塩の供給)と生物の特性(利用可能な食物間源の変化と捕食行動の可塑性)によって説明されるものと考えられた。これらの結果は,大型植物が支配的な地域では,大型植物がある程度の基礎生産を支えているが,富栄養化した環境では,どちらの地域も植物プランクトンが基礎生産を支えていることを示している。
(文責 黒倉 壽)
高田健太郎,岡田 茂,松永茂樹(東大院農) |
八丈島産カイメン Petrosia sp. から細胞毒性物質として過去に報告した,鎖状アセチレン化合物 corticatic acid A の化学構造に疑義が生じたため,当該化合物をカイメンから新たに単離し,機器分析による検証を行った。その結果,二重結合の位置が訂正され,カイメン Petrosia sp. 由来の一連のアセチレン化合物の化学構造間の比較から導かれた推定生合成経路と合致するようになった。また,corticatic acid A と共に単離された,corticatic acid F, G および corticatynol A の化学構造を決定した。
谷岡由梨(東京農大短大栄養),竹中重雄(阪府大院), 古庄 律(東京農大短大栄養), 薮田行哲(鳥大院連合農学), 中野長久(大阪女子短大生活科学), 渡辺 文雄(鳥大院連合農学) |
食用貝類におけるコリノイド量を測定したところ,内臓も可食部とする二枚貝は 100 g あたり 30.5-53.3 μg の高いコリノイド含量を示した。一方,筋肉部分を可食部とするホタテやとこぶしは 0.1-1.1 μg と微量であった。各食用貝類のコリノイドを精製し LC/ESI-MS/MS で同定したところ,二枚貝は全て真の B12 であったが,巻き貝には B12 とともにヒトにおいて生理的に不活性なシュード B12 がわずかに検出された。以上のことより,内臓も含めて可食部とする二枚貝は B12 の良い供給源であると考えられる。
Xiu-Ping Dong, Lu-Lu Ma(大連工大), Jie Zheng(大連海洋水産研究所), Ji-Tao Wang, Qiong Wu, Shuang Song, Da-Yong Zhou(大連工大,中国) |
ホタテガイ貝柱からアクトミオシンを抽出し,アクトミオシンとそれから調製したゲルの性状に及ぼす pH の影響について調べた。加熱温度の上昇に伴いアクトミオシンの濁度および疎水性が増加し,それに伴い α-ヘリックス含量が減少した。この傾向は pH の低下に伴い顕著に見られた。また,中性付近でホタテガイアクトミオシンゲルは良好な性状を示した。以上の結果から,ホタテガイアクトミオシンの物理化学的特性とゲル形成能には pH 依存性があると結論付けられた。
(文責 大迫一史)
梁 佳,宮﨑里帆,趙 鮮鮮,平坂勝也, 谷山茂人,橘 勝康(長大院水環) |
養殖コイの各筋タイプ(白筋,W;ピンク筋,P;赤筋,R)の氷蔵での破断強度を調べ,走査型電子顕微鏡にて結合組織の微細構造変化を観察した。即殺直後の破断強度は R>P>W の順で高く,その氷蔵中の低下は R≧P>W の順で速かった。各筋タイプの筋線維の直径は W>P>R の順に太く,氷蔵中の結合組織の崩壊は W>>P≧R の順に速かった。以上の結果から,普通筋部における P の介在の多寡は保存中における普通筋軟化速度の遅速に影響すると考察された。
井口 潤,一色摩耶,高嶋康晴(消費技セ), 山下由美子,山下倫明(水研セ中央水研) |
日本産,ロシア産,中国産及び韓国産のシジミ類の殻に含まれる 14 元素(Li, Mg, V, Mn, Co, As, Rb, Mo, Ba, Ce, Pb, U, Sr 及び Ca)の濃度を ICP-MS 及び ICP-OES で測定した。産地により数元素の濃度が異なっており,日本産の平均マンガン濃度はロシア産に比べ,2 倍程度高かった。一方,日本産の平均ヒ素濃度はロシア産に比べ半分程度であった。日本産とロシア産シジミ類について,判別モデルを構築したところ,日本産を正しく分類できた確率は 89.8%,ロシア産を正しく分類できた確率は 92.2% であった。
Hong-Xu Wang, Lei Qin, Yan Wang, Da-Yong Zhou, Shuang Song, Xu-Song Wang, Bei-Wei Zhu(大連工業大学,中国) |
エゾアワビ Haliotis discus 腹足筋を異なる条件で加熱し,脂肪酸および揮発性化合物組成に及ぼす影響を,GC-MS および固相マイクロ抽出-GC-MS により検討した。脂肪酸含量は 80℃,2 時間の加熱により顕著に減少した。一方,52 種類の揮発性化合物が,加熱された試料において検出された。主成分分析の結果,揮発性化合物含量に関し,加熱温度と加熱時間の間に相関が認められた。揮発性化合物含量は,80℃,0.5-2 時間の加熱により増加した。特に加熱中の脂肪酸の自動酸化により,ヘキサナール等の含量は少なくとも 4 倍増加した。
(文責 岡田 茂)
丸井淳一朗(国際農研セ), Sayvisene Boulom (National Univ. Laos), Wanchai Panthavee (Kasetsart Univ., タイ), 門馬真里(国際農研セ),楠本憲一(食総研), 中原和彦(国際農研セ),齋藤昌義(国際農研セ) |
ラオスの淡水魚を塩,餅米,ニンニクと共に数日間発酵させて作る食品「パーソム」の製造では,発酵開始 1-4 日後まで D-/L-乳酸含量の増加と pH の低下が観察された。PCR-DGGE 法を用いた解析により 6 種類の乳酸菌と,それ以外の 8 種類の常在細菌が検出された。その中の 2 種のラクトコッカス属菌と 1 種のワイセラ属菌は 4 日間の発酵期間を通して検出され,パーソム発酵において初期から働く重要なものと考えられた。ラオスの多様な水産発酵食品の品質向上に寄与する今後の発酵微生物研究においても本手法の活用が期待できる。
Anh Ngoc Tong Thi(ゲント大・カントー大), Liesbeth Jacxsens(ゲント大), Bert Noseda(ゲント大), Simbarashe Samapundo(ゲント大), Binh Ly Nguyen(カントー大,ベトナム), Marc Heyndrickx(農林水産研究所・ゲント大), Frank Devlieghere(ゲント大,ベルギー) |
ベトナム,カンボジア,タイなどでの重要な食用魚であるナマズ目パンガシウス科のチャー Pangasius hypophthalmus の EU,米国,日本への輸出が増えている。本研究ではチャーの微生物学的品質を評価した。本魚の生産から出荷までの様々な過程において検査を行ったところ,大腸菌,黄色ブドウ球菌,およびコレラ菌が包装作業従事者の手から検出された。また,最終出荷魚でもリステリアやコレラ菌の汚染が認められたが,これらは作業過程での非衛生的な取り扱いが要因と推察された。これら結果は,ベトナムからの海外輸出されているチャーの微生物学的品質向上へ向けて重要な基礎データとなる。
(文責 木村 凡)