Fisheries Science 掲載報文要旨

日本の資源量指数を用いたニホンウナギの資源評価

田中栄次(海洋大)

 統計資料,学術雑誌,業界紙などの多様な資料から,東アジアにおけるニホンウナギ Anguilla japonica の加入資源とシラスウナギの漁獲量(1903-2010)及び 4 本の標準化 CPUE の系列を推定した。Beverton and Holt 型再生産曲線を用い,内部に年齢構成をもつ資源動態モデルを用いて,未知パラメータの最尤推定を行った。base case の結果では 2010 年の資源量(1+)は 1.9 万トンで環境収容力の 24% と推定された。最近 5 カ年の平均の漁獲率係数は加入資源では 0.022(/年),シラスウナギでは 0.43(/年)と推定された。

80(6), 1129-1144 (2014)
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スルメイカを対象としたイカ釣りと定置網の漁獲と収益性に及ぼす月齢と潮汐,風向の影響

舛田大作(対馬水産セ),甲斐修也(長崎水試),
山本尚俊,松下吉樹(長崎大学),Petri Suuronen(FAO)

 スルメイカを漁獲対象としたイカ釣りと定置網について,月齢や潮汐,風向の漁獲に及ぼす影響について検討するために,長崎県内の 4 島で冬季(1-2 月)にイカ釣りと定置網によって水揚げされるスルメイカの日々の漁獲量を用い,一般化線形モデルによる解析を行った。冬季スルメイカの漁獲量は,イカ釣りと定置網ともに月齢による影響を受けた。定置網の漁獲には,漁場のスルメイカ資源の多寡も影響した。イカ釣りでは,漁獲量が少ない場合には,最近の燃油高の状況下では操業に要する燃料費分の漁獲金額も見込めないと推察された。

80(6), 1145-1157 (2014)
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定置網用クライアントサーバ型リモート魚群探知システム

童 剣鋒,宮本佳則,内田圭一(海洋大),
笹倉豊喜(フュージョン),韓  軍(浙江大)

 定置網漁業において効率的な操業を行うためには,入網した魚の量と入網時刻を正確に知る必要がある。その方法として,モバイル回線を利用したクライアントサーバ型リモート魚群探知システムを開発した。このシステムでは,通信量を減らすために,魚群探知機側で得られた音響データから魚の映像を抽出し,映像再現に必要な情報のみを送信する。そして,この送信データからサーバ側でエコーグラムのような映像を構築して,ユーザー側に示す方法を提案した。海上実験の結果,開発したシステムの有効性が確認できた。

80(6), 1159-1167 (2014)
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北海道大規模放流事業後の東北海域南部におけるマツカワ漁獲特性

和田敏裕,神山享一,島村信也(福島水試),
村上 修(道栽培水試),美坂 正(稚内水試),
佐々木正義,萱場隆昭(釧路水試)

 2006 年以降の北海道大規模放流事業により東北太平洋各県のマツカワ漁獲量は増大している。2007-2011 年にかけて,主産卵場である東北海域南部における漁場位置,全長組成,性比,年齢構成を解明した。漁獲量増大が顕著な当該海域の漁獲時期は 1-4 月に集中した。底曳網漁船の操業日誌分析により,大陸斜面上部(年平均 267-299 m)が主漁場と特定された。漁獲物の全長組成は雄(モード約 40 cm,≥1 歳)および雌(60 cm,≥2 歳)による二峰型を示した。雌の割合は 1.5-7.9% と低かった。本研究は,北海道放流群の産卵回遊に伴う東北海域への波及効果を示した。

80(6), 1169-1179 (2014)
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沿岸曳き縄漁業で漁獲される太平洋クロマグロ Thunnus orientalis 0 歳魚の漁場の時空間的分布と水温との関係

市野川桃子,岡村 寛(水研セ中央水研),
大島和浩,余川浩太郎,竹内幸夫(水研セ国際水研)

 デルタ型の一般化線形混合モデルを用い,日本の曳き縄漁業による太平洋クロマグロ 0 歳魚の漁場の時空間分布の傾向を抽出した。対馬暖流側と太平洋側の漁場では,漁期に明瞭な分布の違いが見られた。対馬暖流側の漁場では,漁獲量の平均的な時空間パターンと漁場の水温との間に関連が見られた。さらに,秋から冬にかけての対馬暖流側の漁獲分布の傾向と過去の標識研究から示された季節回遊経路は一致し,これらの季節,海域において漁獲の分布が本種の季節回遊を反映している可能性が示された。

80(6), 1181-1191 (2014)
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北太平洋におけるクロマグロ Thunnus orientalis およびキハダ T. albacares の遺伝的集団構造

野村尚平,小林 徹(近大院農),
阿川泰夫(近大水研),
Daniel Margulies,Vernon Scholey(IATTC),
澤田好史(近大水研),柳下直己(近大院農)

 日本産およびメキシコ産のクロマグロ 71 個体,日本産およびパナマ産のキハダで 45 個体について,マイクロサテライト遺伝子座およびミトコンドリア(mt) DNA 調節領域の解析を行った結果,両種ともに地理的集団間の FST 値は低かった。また,mtDNA の解析により得られた近隣結合樹およびハプロタイプネットワークにおいて地理的集団の分化は示唆されず,両種において東-西太平洋の集団間で遺伝的分化が生じているとはみなされなかった。また,北太平洋においてクロマグロでは 628,000-731,000 年前に,キハダでは 450,000-525,000 年前に集団サイズが急速に拡大したと推定された。

80(6), 1193-1204 (2014)
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クロマグロ飼育仔魚における魚食性の開始に影響する成長率の差異

田中庸介(水研セ西海水研),南 浩史(水研セ国際水研),
石樋由香(水研セ増養殖研),
久門一紀,樋口健太郎,江場岳史,西 明文,二階堂英城,
塩澤 聡(水研セ西海水研)

 クロマグロ種苗生産では,餌料として給餌するふ化仔魚(餌料仔魚)の給餌開始後より顕著な成長のばらつきが生じる。著者らは,餌料仔魚の給餌時の成長の小さなばらつきが,その後の大きな成長のばらつきの原因にあるとの仮説をたて,種苗生産水槽から大中小の異なる体サイズ群のクロマグロ仔魚を採集し,その窒素安定同位体比と耳石輪紋半径により仮説を検証した。その結果,餌料仔魚給餌時のわずかな成長差が個体ごとの摂餌状況の違いを引き起こしたため,成長のばらつきが生じることが示唆された。

80(6), 1205-1214 (2014)
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沖縄島の砂浜海岸と汽水域の仔魚相,特にハゼ亜目仔魚の環境利用

前田 健(OIST),立原一憲(琉球大理)

 沖縄島大浦湾の砂浜海岸と汽水域で,夜間に小型曳網を用いて,48 科 114 属 131 種以上,12,067 個体の魚類を採集した。ハゼ亜目は個体数の 86% を占める優占分類群であり,53 種以上を含んでいた。そのほとんどは両側回遊性および汽水性の種の着底直前の仔魚であり,体長の範囲が狭かった。このことから,多くの仔魚は曳網地点より沖で浮遊期を過ごし,河川加入直前に接岸して採集されたと考えられた。しかし,ヨシノボリ属とナガノゴリでは,発育段階の早い仔魚も採集され,やや岸よりで成長することが示唆された。

80(6), 1215-1229 (2014)
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耳石微量元素組成を用いた沖縄県西表島産コモチサヨリにおける汽水域と海域との移動履歴の推定

金井貴弘(東大院農),
南條楠土,山根広大,天野洋典(東大大気海洋研),
河野裕美(東海大沖セ),渡邊良朗(東大大気海洋研),
佐野光彦(東大院農)

 コモチサヨリは主に熱帯・亜熱帯地方の汽水域に分布するが,移動パターンについてはほとんどわかっていない。そこで,西表島浦内川河口域に生息する本種が汽水域と海域との間を移動するかどうかを,耳石の Li/Ca 比と Sr/Ca 比を調べることで明らかにした。飼育実験において,飼育水の各塩分に対する耳石 Li/Ca 比と Sr/Ca 比を求め,採集した野外個体のものと比較した。その結果,ほとんどの個体は海域へ移動しないで,汽水域で生活史を完結させることが判明した。ただし,一部の個体では偶発的に海に流され,その後河口域に戻ってくることが認められた。

80(6), 1231-1239 (2014)
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マアジ Trachurus japonicus の遊泳時心拍数に及ぼす水温の影響

Mochammad Riyanto,有元貴文(海洋大)

 回流水槽を用いて水温条件別にマアジ(16.5-21.2 cm 尾叉長 FL, n=24)の遊泳時の心拍数を測定した。心拍数は,静水中,そして 1.5-6.0 FL/s の速度範囲で 10 分毎に段階的に増速,および回復過程を連続して観測した。静水中での心拍数の平均値は 10℃ で毎分 36.5 回,15℃ で 56.1 回,22℃ で 75.2 回であった。心拍数は低速遊泳では静水中と同じレベルで,2.3-2.5 FL/s の速度から増加し始め,22℃ では 6.0 FL/s で毎分 150-200 回に達した。その後の回復時間については,高速遊泳で高い心拍数を示した場合に顕著に長くなった。

80(6), 1241-1248 (2014)
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キンギョにおけるデルマトポンチンの同定,cDNA クローニング,および発現解析

小松典彦,小川展弘,飯村九林,浦 和寛,
都木靖彰(北大院水)

 魚類における高次コラーゲン配向構造の形成機構解明を目指し,角膜様のコラーゲン配向を持つキンギョ鱗の線維層板を材料として質量分析をおこない,分子量約 19 kDa の酸性タンパク質をデルマトポンチンと同定した。cDNA クローニング,RT-PCR,in situ hybridization により,キンギョデルマトポンチンが 196 アミノ酸からなること,鱗を含む様々な組織に発現すること,主として鱗の線維層板形成細胞に発現することを確認した。これらのことから,デルマトポンチンはマウス角膜と同様にキンギョ鱗の線維層板のコラーゲン配向構造の形成に関与する可能性が示された。

80(6), 1249-1256 (2014)
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ムラサキイガイ卵母細胞の凍結保存技術の開発

Hanru Wang(大連海洋大,中国・アデレード大,豪州),
Xiaoxu Li(SARDI,豪州),
Meiqing Wang(大連海洋大),
Steven Clarke,Mark Gluis(SARDI)

 ムラサキイガイ Mytilus galloprovincialis の配偶子を凍結保存する技術が確立されれば,同種の安定的な種苗供給や効率的な選抜育種が可能となると考えられる。そこで本研究では,同種の卵母細胞を凍結保存するための至適条件を検証することとした。その結果,エチレングリコール(1.5 M)とトレハロース(0.2 M)の混合液を耐凍剤として用いると卵母細胞の生存率が高くなること,ガラス化法は効果がないことなどが明らかとなった。
(文責 大久保 範聡)

80(6), 1257-1267 (2014)
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2 種類の異なるスクリーニング方法によるアメリカナマズ Ictalurus punctatus 腸からの有望なプロバイオティクスの選択

Zhang Luo(華中農業大),
XiaoHui Bai(天津水産研究所),
ChangFu Chen(華中農業大,中国)

 アメリカナマズ Ictalurus punctatus の腸から 342 細菌株を分離しプロバイオティクスとして有望な株を選択した。6 株は病原体拮抗能を,15 株はアミラーゼおよびプロテアーゼの高産生力を,3 株はそれら両方を示した。その 3 株の中の BHI344 株は,広範囲の病原体拮抗能,アミラーゼおよびプロテアーゼの高い分泌力,模擬胃腸条件での高生残,用いた大部分の抗生物質への感受性およびアメリカナマズへの非病原性を示した。従って,BHI344 を最も有望なプロバイオティクス候補として選択し,表現型および 16S rRNA 遺伝子から Bacillus subtilus と同定した。
(文責 家戸敬太郎)

80(6), 1269-1275 (2014)
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韓国で病ヒラメから分離された Streptococcus iniae の遺伝子型と病原性

Myoung Sug Kim, Ji Woong Jin, Hyun Ja Han,
Hye Sung Choi (NFRDI),
Suhee Hong (江陵原州大),
Ji Young Cho (順天郷大,韓国)

 韓国で 2000-2005 年に病ヒラメから分離された Streptococcus iniae 29 株の性状を調べた。API 20 strep を用いた生化学性状では 29 株は同一であったが,BoxA プライマーを用いた rep-PCR および p14 プライマーを用いた RAPD では,2 つの遺伝子型に分けられた。莢膜多糖体 D 遺伝子配列の遺伝距離でも,rep-PCR と同じ 2 つのグループに分けられた。rep-PCR で遺伝子型 1 に分類される分離株はヒラメに対して強毒であったが,遺伝子型 2 の分離株は病原性が低かった。このように,S. iniae の病原性と遺伝子型の相関が明らかになった。(文責 佐野元彦)

80(6), 1277-1284 (2014)
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瀬戸内海中央部の砂浜海岸におけるヒラメ稚魚の餌料環境と成長の関係

山本昌幸(香川水試),富永 修(福井県立大海洋生資)

 本研究では,天然ヒラメ稚魚の成長率を指標として,アミ類の少ない瀬戸内海燧灘の成育場の特性を明らかにすることを目的とした。稚魚はアミ類やエビジャコ,魚類を食べていた。5-6 月における平均成長率(MGR)は 0.81-1.84 mm day-1 で,アミ類の豊富な成育場と同程度であった。7 月以降,餌密度の減少と高水温によって,MGR は低下した。このことから,ヒラメ人工種苗の最適放流時期は 5-6 月であることが示唆された。

80(6), 1285-1292 (2014)
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クロマグロの鰾および尾鰭のアスペクト比の個体発生が仔魚の鉛直分布に与える影響

伊奈佳晃(近大院農),坂本 亘,宮下 盛(近大水研),
福田漠生(水研セ国際水研),鳥澤眞介,高木 力(近大農)

 本研究では,クロマグロ種苗生産上の問題となっている,仔魚の沈降死の原因を調べるため,孵化後 2 日目から 9 日目の夜間に仔魚の形態的特性と水柱内における鉛直分布の関係を実験的に調べた。孵化後 4 日齢以後,仔魚は水柱上層(水面から 1 m 深まで)と水底に偏在化した。また,水底に着底した個体の鰾は全て未開腔であった。水柱上層を遊泳した仔魚の全長と尾鰭のアスペクト比は,水底に着底した個体のそれよりも大きかった。実験の結果は,クロマグロの沈降死には鰾の開腔と尾鰭の遊泳機能が重要な役割を果たしていることを示唆している。

80(6), 1293-1299 (2014)
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ホタテガイ貝殻から単離した糖タンパク質による脂肪前駆細胞の分化抑制

高橋浩司,長谷川靖(室蘭工大院)

 以前,我々はホタテガイ貝殻中の有機成分が脂肪前駆細胞(3T3-L1)の分化を抑制することを明らかにした。本研究では,貝殻に含まれる脂肪前駆細胞分化抑制因子が,レンズマメレクチン,コンカナバリン A レクチンに結合する糖タンパク質であり,その糖タンパク質糖鎖が活性に寄与していることを示した。さらに,レンズマメレクチンに結合した分子量 16-kDa の成分を単離し,脂肪前駆細胞分化阻害活性,およびその部分構造を明らかにした。

80(6), 1301-1310 (2014)
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シラヒゲウニ Tripneustes gratilla の生殖腺と体壁から調製した極性,非極性,水溶性画分の抗酸化能と生物活性の評価

Yu-Chun Chen,Deng-Fwu Hwang(国立台湾海洋大,台湾)

 シラヒゲウニ Tripneustes gratilla の可食部(生殖腺)と廃棄部(体壁)から調製した水溶性,非極性,極性抽出物の生物活性を調べた。生殖腺と体壁の各抽出物は,種々の抗酸化活性を示した。ヒト皮膚線維芽細胞(CCD966SK)試験の結果,生殖腺と体壁の水溶性と極性抽出物には細胞賦活作用が認められ,生殖腺の水溶性抽出物についてはコラーゲン産生促進作用もみられた。一方,生殖腺と体壁の非極性抽出物は,腫瘍細胞に対する増殖抑制効果を示した。これらの結果は,シラヒゲウニ抽出物の生物活性は,抽出方法や抽出に用いる部位により異なることを示している。
(文責 柿沼 誠)

80(6), 1311-1321 (2014)
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ウナギI型コラーゲンプロ α1,プロ α2 及びプロ α3 鎖の同定と一次構造

西塔正孝(女子栄養大),樋口智之(くらしき作陽大),
内田直行(日大生資)

 ウナギI型コラーゲンプロ α 鎖の cDNA クローニングとコラーゲン α 鎖のトリプシン消化物を分析した。その結果,得られた 3 種の cDNAs はプロ α1,プロ α2 及びプロ α3 と同定され,プロ α3 はプロ α1 と高い相同性 81% を示した。さらに,プロ α3 は C プロペプチドにおける Cys 残基(7 個)の分布がプロ α1 と一致し,プロ α1 における C プロぺプチドの Cys1268 がプロ α3 では Ser1264 に置換していた。このような置換はトラウトとゼブラフィッシュのプロ α3 にも共通する特徴で,未同定の魚類I型コラーゲンプロ α 鎖をプロ α3 鎖と同定する有力な知見となろう。

80(6), 1323-1335 (2014)
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日本の水産物流通市場における構造変化と不完全競争

中島 亨(東大院農),松井隆宏(三重大院生資),
阪井裕太郎(カルガリー大経),八木信行(東大院農)

 本稿では 1976 年から 2009 年を対象に,日本の水産物流通市場における不完全競争の存在とその時期について分析した。時系列の定常性を考慮した構造モデルの推計結果から,消費地卸売市場におけるマアジやスルメイカ,マイワシの売り手が 1992 年以前に市場支配力を持っていたこと,小売企業はマアジおよびマイワシの販売において全対象期間で市場支配力を持ち,サンマおよびマダイの販売においては 1992 年以前に市場支配力を持っていたことが明らかとなった。また,期間を通じて川下より川上の市場で多くの時期に不完全競争の存在が検出された。

80(6), 1337-1345 (2014)
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ウガンダにおける水産物市場の価格統合

James O. Bukenya(南京信息工程大,中国・Alabama A&M Univ.,米国),
Maurice Ssebisubi (Aquaculture Management Consultants,ウガンダ)

 本稿はウガンダにおける,養殖生産物とアフリカ天然ナマズ市場チャネルとの間における価格統合関係に焦点を当てている。分析は 2006 年 1 月から 2013 年 8 月までの月次価格データを用いており,閾値自己回帰モデルで長期的関係と価格の非対称性の存在を検定するとともに,とある市場から他の市場に対して価格ショックが伝達されるときの経過時間の決定を行った。分析の結果,天然と養殖両市場における価格は分析期間を超えて長期的に連動しており,養殖ナマズは国内で天然漁獲されたナマズの市場と部分的に同じ価格形成を行うことが示唆された。
(文責 有路昌彦)

80(6), 1347-1358 (2014)
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