Fisheries Science 掲載報文要旨

日本の排他的経済水域における漁業活動による資源の総合漁獲量のベースライン推定(1950-2010 年)

ウィルフ・スワーツ(UBC,カナダ),
石村学志(北大サステイナビリティ研セ)

 これまで,日本の排他的経済水域での違法,無報告,無規制漁業,また,遊漁漁業,遺棄などを考慮した漁獲量推定は行われてはいない。本研究では,これまでの漁獲統計にこうした要素を考慮し再構築をすることを目的とした。結果として日本の排他的経済水域では 1950 年より総計で 3.68 億トンの資源が漁獲活動や周辺活動により漁獲され,このうち,公式な水揚げ統計と本推定の漁獲量の差は 0.48 億トンで公式統計の 15% であった。再構築された漁獲統計は日本の漁業がアウトプットコントールを重視する場合に重要となりうる。

80(4), 643-651 (2014)
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Predator-prey モデルによる漁船の空間行動の評価:メキシコユカタンのマハタ漁業を例に

J. A. López-Rocha (UNAM),
R. Solana-Sansores (UABC),
F. Arreguin-Sanchez (CICIMAR-IPN),
J. A. de Anda-Montanez (CIBNOR,メキシコ)

 メキシコユカタンのマハタ漁業を中規模漁船の空間行動把握を目的に predator-prey モデルによって分析した。生息環境の違いを考慮した上で,1973-1977 年の漁獲努力データを下に漁船行動を出漁区域(RFA)のシミュレーションに基づいて評価した。結果,生息環境の状態が「極めてよい」とされた海域到達の全コストおよび収入は,漁船の母港から最も離れているということに強い関係があった。なお RFA シミュレーションでは,成魚漁獲禁止の場合 7-27% の総収入の減少になるが,幼魚漁獲禁止の場合総収入は減少しないため,現実的な資源管理戦略であると示された。
(文責 有路昌彦)

80(4), 653-664 (2014)
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甲長組成解析によって推定されたホッコクアカエビの成長と年齢組成

山口浩志(道中央水試),後藤陽子(稚内水試),
星野 昇(道中央水試),宮下和士(北大フィールド科セ)

 北海道西部日本海海域におけるホッコクアカエビの成長と年齢別漁獲尾数を推定するため,調査船標本にもとづく甲長組成解析を行い,年齢別サイズを調べた。解析結果から,成長の年変動と年齢別サイズの減少傾向が認められた。年齢別漁獲尾数の推定方法を,従来の甲長-年齢変換テーブル(ACT)から,age-length key (ALK)による方法に改良した。また,近年の漁獲物の小型化は,年齢組成の変動だけではなく,年齢別サイズの減少の影響を受けていることを明らかにした。

80(4), 665-678 (2014)
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沖縄島におけるヒトスジタマガシラの年齢,成長,成熟および性転換様式

秋田雄一,立原一憲(琉球大理)

 沖縄島周辺海域産のヒトスジタマガシラ 502 個体(標準体長:82.0-282.4 mm)から,年齢,成長,成熟および繁殖様式を明らかにした。雌雄の極限体長は,それぞれ 206.6, 244.4 mm と推定され,成長に有意差が見られた。生殖腺指数及び組織学的観察から産卵期は 6, 7 月と推定された。間性個体の大部分が雌の成熟体長および年齢以下で出現したことから,本種は多くの個体が成熟前に性転換すると考えられたが,一部の雄は,雌性先熟の性転換をしている可能性も示唆された。

80(4), 679-685 (2014)
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有明海の白川・緑川河口域におけるハマグリの分布と成長に伴う生息地間の移動

橋口真大,山口純平(熊本大自然科学),
逸見泰久(熊本大沿岸域セ)

 有明海の白川・緑川河口域 17 地点におけるハマグリの殻長組成の比較を通して,ハマグリの分布と成長に伴う生息地間の移動を議論した。ハマグリの稚貝は,河口や澪筋付近に多く,成貝は生息地全域に広く分布していた。河川から離れた網田では,すべての地点で成貝は稚貝より多く,多くの地点で幼貝より多かった。以上の結果より,ハマグリは成長するにつれて河口付近から海域に移動すると考えた。このような移動は,資源管理を行う上で考慮すべき重要な問題であり,今後より詳しい研究が必要である。

80(4), 687-693 (2014)
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鹿児島産マクサとオバクサ(テングサ目)の光合成に対する温度と光の影響

藤本みどり(鹿大水),Gregory N. Nishihara(長大海セ),
寺田竜太(鹿大水)

 鹿児島産マクサとオバクサ(テングサ目)の光合成における光と温度の影響に関して,酸素電極とパルス変調クロロフィル蛍光測定法を用いて様々な光量や水温条件(8-36℃)で測定した。総光合成速度はそれぞれ 24.3℃(95% ベイズ信頼区間 BCI:20.7-28.0℃)と 25.5℃(BCI:23.4-28.3℃)で最も高くなった。一方,最大有効量子収率(ΦPSII)は,マクサが 20.1℃(BCI:18.9-21.5℃),オバクサが 21.3℃(BCI:20.2-22.5℃)で最大となり,総光合成速度のモデルと比べて低い傾向を示した。これらの温度特性は生育地の海水温の繁茂期の水温によく適応しているが,高温側の許容温度の境界に近いことが推察された。

80(4), 695-703 (2014)
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北部九州の河口域におけるハマグリの定着と移動

逸見泰久(熊本大沿岸域セ),小林 哲(佐賀大農),
山口純平,橋口真大(熊本大自然科学)

 福岡県糸島市加布里湾の小河川感潮域の 6 地点で,2006-2008 年にハマグリの分布と殻長組成を調査した。加布里湾では,ハマグリの厳格な資源管理が行われていることもあって,大型のハマグリが多く,2008 年の平均資源量は 1.5 kg m-2 を超えていた。殻長 5 mm 未満の稚貝は河川下流部に多かったが,そこには殻長 40 mm を超える成貝はほとんどいなかった。一方,海域の低潮帯では,大部分のハマグリが殻長 30 mm を超えていた。このことは,ハマグリが成長とともに河川から海域に移動することを示している。

80(4), 705-714 (2014)
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クロホシマンジュウダイ Scatophagus argus の成長ホルモンのクローニングと性依存的発現

Si-Ping Deng, Bo Wu, Chun-Hua Zhu,
Guang-Li Li(広東海洋大学,中国)

 クロホシマンジュウダイ Scatophagus argus の成長には性差があり,オスよりもメスの方が成長が早い。この現象に対する成長ホルモンの関わりを検証する目的で,クロホシマンジュウダイの成長ホルモン cDNA のクローニングを行った後,定量的 PCR によって下垂体での発現を解析した。その結果,調べた 6 ヶ月齢,18 ヶ月齢,30 ヶ月齢のいずれにおいても,オスよりもメスで高い発現が認められた。このような下垂体における成長ホルモンの発現の性差が,成長の性差をもたらしている可能性が考えられる。
(文責 大久保範聡)

80(4), 715-723 (2014)
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噴火湾における貧酸素環境でのアカガレイ Hippoglossoides dubius の成長の向上

稲垣祐太,髙津哲也,木村賢史,鹿野陽太,高橋豊美,
亀井佳彦,小林直人,前田辰昭(北大院水)

 噴火湾においてアカガレイの成長とメガロベントス密度の経年変化を調べ,アカガレイの成長と貧酸素水の関係を明らかにした。近年の貧酸素環境下における小型アカガレイ(全長 200 mm 未満)の成長の向上は,小型 Ophiura spp. の高密度により,餌利用度が高められたためと考えられた。小型 Ophiura spp. の増加は,Ophiura spp. が加入に成功し,近年の貧酸素環境下でも生残したためと考えられた。大型アカガレイ(全長 200 mm 以上)はタウエガジ科魚類とスケトウダラ稚魚を捕食しており,その成長はこれらの魚類の豊度が増加することで高められた。

80(4), 725-734 (2014)
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北日本太平洋沖におけるマツカワ人工放流魚の性成熟および産卵回遊

萱場隆昭(釧路水試),和田敏裕,神山享一(福島水試),
村上 修(道栽水試),吉田秀嗣(原子力環境セ),
澤口小有美(水研セ西海水研),市川 卓(水研セ北水研),
藤浪祐一郎(水研セ東北水研),福田慎作(青森栽培協会)

 マツカワは北日本における重要な栽培漁業対象種であるが,その繁殖生態は未解明である。そこで主生息域である北海道-東北太平洋海域を対象に漁獲データ分析と標本成熟度調査(2008-2012年)を実施し,性成熟,産卵に伴う移動分布と産卵場を調べた。その結果,マツカワ雌は 5-12 月まで主に北海道太平洋沿岸域に分布し性成熟が進行するが,卵黄形成が完了すると東北南部へ回遊し,2 月上旬~4 月下旬にかけて茨城県沖(水深約 300 m)で産卵することがわかった。また産卵後は 4-6 月にかけて再び北海道沿岸へ回帰することが示唆された。

80(4), 735-748 (2014)
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膠州湾および渤海湾に 2012 年に放流されたコウライエビ Fenneropenaeus chinensis の SSR マーカーによる親子鑑定を用いた再捕率の評価

Weiji Wang(中国水産科学研究院),
Kai Zhang(中国水産科学研究院・中国海洋大学),
Kun Luo(中国水産科学研究院),
Guangxia Xiao, Wenping Song(渤海水産研究所,中国),
Jie Kong, Xianshi Jin(中国水産科学研究院)

 膠州湾および渤海湾に放流したコウライエビ Fenneropenaeus chinensis の再捕率を SSR (simple sequence repeats)マーカーを用いた親子鑑定によって算出した。3×105 の post-larvae (inner marker)が約 9×107 個体の同サイズのものとともに膠州湾に春に放流され,秋に再捕された 2,507 個体から 8 個体のエビ(inner marker)が単離された。同様に,2.04×105 個体の post-larvae を同サイズの約 1.6×108 個体とともに渤海湾に放流し,秋に再捕された 3,232 個体から 4 個体が単離された。秋の漁期のコウライエビ資源の統計から膠州湾および渤海湾の再捕率を計算したところ,それぞれ 2.69% および 2.59% であり,従来の方法(それぞれ 2.81% および 2.67%)と比べてわずかに低かった。
(文責 家戸敬太郎)

80(4), 749-755 (2014)
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シオミズツボワムシ Brachionus plicatilis sp. complex の培養不調時における培養水中の細菌群集の変化

坂見知子(水研セ東北水研),
小磯雅彦(水研セ西海水研),
菅谷琢磨(水研セ瀬水研)

 ワムシの大量培養時に起こる増殖不調の原因の 1 つに環境中の細菌の関与が疑われている。そこでワムシ培養水中の細菌群集組成の変化を 16S rRNA 遺伝子を用いた変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法により調べた。培養が好調なときは Nautella sp., Marinomonas sp. 等が主要な細菌として検出された。一方,培養不調を起こした水槽では培養開始時から多様な細菌が検出され,またワムシの培養状態が回復すると菌叢が変化し Ruegeria sp. 等が主要なバンドとして検出され,培養状態と細菌群集の関連が示唆された。

80(4), 757-765 (2014)
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ニジマスに導入した外来遺伝子の Cre 組換え酵素による編集

久米佐知,片山直人,市田健介,ハットリ・伊原祥子,
長澤一衛,吉崎悟朗(海洋大)

 ニジマスにおける Cre/loxP 系を介した遺伝子編集系の可能性を検証した。DsRed 遺伝子が loxP 配列に挟まれ,下流に EGFP 遺伝子を接続した遺伝子をニジマスに導入した。この遺伝子導入ニジマス受精卵に Cre cRNA を顕微注入した結果,解析した 20 胚のうち 19 胚では,緑色と赤色の蛍光が同時に,残る 1 胚では緑色蛍光のみが観察された。DNA 解析により,これらの個体では Cre が正確に loxP 部位を切断・結合していることが明らかとなった。以上,冷水魚でも本系による遺伝子編集の可能性が示された。

80(4), 767-773 (2014)
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共食いによる減耗を考慮したタラバガニ稚ガニの最適飼育密度の推定

竹下文雄(長大院水環),田村亮一(道栽水試)

 共食いを行うタラバガニ稚ガニの最適な初期飼育密度を推定するため,4 つの密度条件(水槽底面積 0.25 m2 あたり 100, 200, 400 個体)で着底からおよそ 200 日間飼育し,サイズと生存個体数を追跡した。サイズと生存率に対する初期密度と経過日数の影響についてモデル選択を行った結果,初期密度と経過日数,および交互作用を含むモデルが選ばれた。推定されたパラメーターを用いて生存個体数が最大となる初期密度を算出すると,目標サイズをそれぞれ 5, 10, 15 mm と仮定した場合,本飼育環境においては 416, 197, 149 個体の初期密度が適切であることが推察された。

80(4), 775-783 (2014)
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底砂の導入時期と存在期間がヒラメの無眼側着色型黒化の開始と拡大に及ぼす影響

礒島俊実(京大院農),
牧野 直,深山義文(千葉水総研セ),
田川正朋(京大院農)

 ヒラメ着色型黒化を抑制する砂敷を用いて黒化の開始時期や中断期間を人為的に変化させ,黒化開始や拡大に与える影響を検討した。黒化開始後に底砂を導入した水槽では一見黒化面積が減少したが,黒色素胞は消失していなかった。底砂無しの水槽では孵化後 151 日で黒化進行が自発的に停止した。一方,底砂を入れ飼育した水槽と黒化開始後に底砂を導入した水槽では黒化は停止していたが,151 日以降に底砂を除去すると黒化が開始・再開した。この結果は,黒化の開始や拡大は日齢などの時間的制限を受けない事を示唆する。

80(4), 785-794 (2014)
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qPCR による DNA 消化率の簡易測定

杉浦省三(滋県大環境)

 飼餌料中の DNA 消化率を測定する手法を開発検討した。ニジマスに試験飼料を給餌し,糞から DNA を抽出した。餌生物由来の未消化 DNA 断片を 2 組のプライマー(短鎖,長鎖)を用いた qPCR 法で定量し,餌生物種ごとの DNA 消化率を求めた。算出した DNA 消化率(%)は,魚で -1.1 から 2.1,エビで 10.8-12.6,貝では 1.9-2.1 となった。以上の結果から,DNA 消化率の簡易測定の可能性が示唆された。

80(4), 795-801 (2014)
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ケツギョ Siniperca chuatsi 由来熱ショックタンパク質 70 アイソフォーム遺伝子 2 種の同定および発現解析

Pengfei Wang, Shuang Zeng, Peng Xu,
Lei Zhou, Lei Zeng, Xue Lu, Haifang Wang,
Guifeng Li(中山大学,中国)

 ケツギョ Siniperca chuatsi の熱ショックタンパク質 70 (HSP70), ScHSP70a および ScHSP70b の遺伝子を同定した。両アイソフォームの演繹アミノ酸配列には,639 残基中 1 残基のみの違いが見られ,他生物由来 HSP70 と高い相同性を示した。両遺伝子とも胚発生の各段階で発現しているが,その発現パターンには差が認められた。また両遺伝子は恒常的に低レベルで発現しているが,高温や低酸素等のストレス,あるいは細菌感染により発現が誘導されたことから,生体防御機構に関与していることが示唆された。
(文責 岡田 茂)

80(4), 803-817 (2014)
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浸漬水塩分がマガキむき身成分に与える影響

細井公富,杉原成弥,加藤康太,水田尚志,
横山芳博(福井県大海洋生資)

 浸漬水塩分が,マガキむき身の水分・塩分・遊離アミノ酸量に与える影響を調べた。約 1-3% の人工海水へのむき身浸漬実験では,低塩分浸漬による組織水分の増加と塩分減少が認められた。また,市販品のマガキむき身の浸漬水塩分は 0.17-1.54% であり,浸漬水塩分はむき身塩分と正の相関を,むき身水分と負の相関を示した。さらに,浸漬塩分と全遊離アミノ酸量及びタウリン含量との間にも正の相関関係が認められた。以上の結果は,浸漬水塩分がマガキむき身の品質に影響を与えることを明確に示している。

80(4), 819-825 (2014)
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揮発成分分析による高級ノリの識別

宮崎泰幸,小澤秀夫,番家宏志,田中久勝,
臼井将勝,花岡研一(水大校)

 官能検査等で最高級品とされた佐賀県産ノリおよび他府県産を含むその他の等級のノリの揮発成分を,電子嗅覚装置および SPME を用いた GC/MS で分析し,最高級品を識別する方法を検討した。電子嗅覚装置では秋芽の最高級品だけは他と識別できたが,冷凍網の最高級品や過年度の最高級品は識別することができなかった。GC/MS で検出された成分のピーク面積を主成分分析することにより,6-methyl-5-hepten-2-one, octanal および trimethylamine の総量が多く,揮発成分の総量が少ないことで,最高級品は識別できた。

80(4), 827-838 (2014)
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等電点利用法によるツノナシオキアミ肉回収時における自己消化酵素

Le-Chang Sun,Yong-Lin Chen,Chan Zhong,
岡﨑惠美子(海洋大院),
Min-Jie Cao,Wu Yin Weng(集美大,中国),
大迫一史(海洋大院)

 等電点利用法によるツノナシオキアミ肉回収時における自己消化酵素の特性について研究した。ツノナシオキアミをアルカリ域に移動することにより顕著なミオシン重鎖の分解が見られた。ミオシンザイモグラフィーにより,これに関与する主要な酵素は 3 つあり,このうち,17 kDa の分子量をもつ酵素は pH が 5 から 12 の幅広い領域で活性を有したため,これがオキアミ肉回収中のミオシン重鎖分解の主要因と考えられた。さらに,基質特異性および阻害特性の実験の結果から,セリンタイププロテアーゼであると考えられた。

80(4), 839-847 (2014)
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魚醤油から分離された Tetragenococcus halophilus 由来のチロシン脱炭酸酵素遺伝子をコードするプラスミドの構造解析

里見正隆(水研セ中央水研),小善圭一(富山水研),
舊谷亜由美,福井洋平,木村メイコ,
安池元重(水研セ中央水研),
舩津保浩(酪農学園大),矢野 豊(水研セ北水研)

 魚醤油から分離されたチラミン生成菌 Tetragenococcus halophilus(2 株)のチラミン生成機構を解明するため,チロシン脱炭酸酵素遺伝子(tdcA)をコードしているプラスミドの塩基配列を決定し構造を解析した。分離株由来のプラスミドは環状で約 27 kbp と 29 kbp であった。これらのプラスミドは,既知のヒスタミン生成遺伝子をコードしている T. halophilus 由来のプラスミドと同じ構造で,これらのアミン生成遺伝子をコードするプラスミドの起源は同一である可能性が強く示唆された。

80(4), 849-858 (2014)
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商業的に重要な青のり類を対象とした迅速かつ高精度な PCR 検査法の開発

河嶋優美,赤﨑哲也,松本啓嗣(財務省関税中分),
嶌田 智(御茶の水大院自然・応用科学)

 商業的に重要で,日本への輸入が制限されている青のり 5 種(ウスバアオノリ,スジアオノリ,ヒラアオノリ,ボウアオノリ及びヒトエグサ)を検出する PCR 検査法を開発した。これは,偽陰性に対処するため,内部コントロールバンドを常に生じるように設計されたデュプレックス PCR で,45 分以内にその反応を完了する。129 の試料を用いた予備試験により有効性を確認しており,緑藻製品から上記 5 種の青のり類の迅速なスクリーニング用ツールとして,簡便性及び費用対効果も含め,検査当局の検査体制の改善への貢献が期待される。

80(4), 859-867 (2014)
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