Fisheries Science 掲載報文要旨

捕獲方法の違いとアユのストレス応答:電気ショッカーと投網の比較

安房田智司,鶴田哲也,矢田 崇,
井口恵一朗(水研セ中央水研)

 人口水路での捕獲方法の違いによるアユのストレス応答を調べた。直流電気ショッカー(DC)群の血中コルチゾル濃度は,捕獲時,24, 48 時間後の全てで対照実験群と違いが認められなかったが,投網群は,全ての時間で高い値を示した。捕獲時と 24 時間後の交流電気ショッカー(AC)群のコルチゾル濃度は,対照実験群と同様に低い値を示したが,48 時間後には有意に上昇した。捕獲時間は DC と AC が短く,投網を用いた場合の 1/15 であった。以上より,投網や AC と比較して,DC が安全で効率的なアユの捕獲方法と考えられる。

79(2), 157-162 (2013)
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台湾北海域におけるトロール対象種の水揚げ動向および漁獲と環境要因の影響

Chin-Shin Chen, Bei-Wen Lee(台湾海洋大学)

 東シナ海の台湾北沖海域は,台湾の沿近海漁業にとって重要な漁場のひとつである。本研究では,トロール対象の 13 魚種に対する単位漁獲努力当たりの水揚げ量(LPUE)の時系列データ(1976 年から 2007 年まで)を動的因子分析(DFA)により解析した。漁獲努力量(漁船数)と環境要因(エルニーニョ,台湾北の表面水温と河川流量)の影響を調べた。最適な DFA モデルは,3 つの共通項および表面水温以外の 3 つの説明変数を含むモデルであった。この結果は,多魚種を対象とする多種漁業の資源管理の新たな戦略構築に役立つと考えられる。
(文責 東海 正)

79(2), 163-176 (2013)
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大西洋サバ科魚類 4 種のカリオタイプ:Classic マーカーと dual-color FISH マーカーによる染色体マッピング

Rodrigo Xavier Soares (Federal do Rio Grande do Norte 大,ブラジル),
Luiz Antonio Carlos Bertollo (Federal de São Carlos, São Carlos 大,ブラジル),
Gideão Wagner Werneck Félix da Costa, Wagner
Franco Molina(Federal do Rio Grande do Norte 大)

 遺伝的研究は極度に開発された種の管理や保全のために有効であるが,サバ科魚類の細胞遺伝学的研究は不足している。そこで本研究では,中部大西洋海域におけるサバ科魚類 4 種について,Classic マーカーと dual-color FISH マーカーを用いた染色体マッピングを行った。その結果,Acanthocybium solandriScomberomorus brasiliensis は染色体数 2n=48 (2st+46a; FN=50)であり,一方で Thunnus albacaresT. obesus は上記 2 種と比較して染色体数は同じであるがカリオタイプ特性(2 m+2 st+44 a; FN=52)が異なることが明らかとなった。
(文責:宮下和士)

79(2), 177-183 (2013)
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Semi-multiplex PCR 法によるインドネシアの熱帯性ウナギ属同定

Melta Rini Fahmi, Dedy Duryadi Solihin, Kadarwan Soewardi(ボゴール農科大学,インドネシア),
Laurent Pouyaud(IRD,フランス),
Zhaojun Shao, Patrick Berrebi(ISEM,フランス)

 インドネシアに生息する熱帯性ウナギの one-step semi-multiplex PCR による同定を試みた。7 組の特異的プライマーを作成して全プライマー組を同時に PCR 反応に加えたが,調べたテンプレート DNA からは 1 組のみが増幅された。この semi-multiplex PCR 法によって Anguilla bicolor bicolor は 230 bp,A. nebulosa nebulosa は 372 bp,A. borneensis は 450 bp,A. marmorata は 620, A. b. pacifica は 670 bp, A. celebesensis は 720 bp および A. interioris は 795 bp の DNA 断片が増幅され,アガロースゲル電気泳動によって分離できた。
(文責 家戸敬太郎)

79(2), 185-191 (2013)
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東京湾産ホシザメの資源量変化にともなう再生産特性の表現型変化

朴 正彩(山口大院連合獣医,国環研),
大山政明,李 政勲,児玉圭太(国環研),
太田康彦(鳥大獣医),白石寛明,堀口敏宏(国環研)

 東京湾産ホシザメの再生産特性を資源量水準の異なる 1990 年代と 2000 年代の間で比較した。両期の間で交尾(5~7 月),排卵(5~6 月),分娩(5~6 月)の時期に変化は認められなかった。一方,雌雄ともに初回成熟体長が 2000 年代に低下した。さらに,2000 年代の産仔数は 1990 年代に比べ 43~73% 低下していた。妊娠期間中において,1990 年には観察されなかった未発達卵が 2000 年代には低い出現頻度ながらも子宮内に認められ,2000 年代における産仔数減少に寄与している可能性が示唆された。

79(2), 193-201 (2013)
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ホシザメ Mustelus manazo 精巣の排精管構造と精子の排出

朴 正彩(山大連獣・国環研),
李 政勲,児玉圭太,漆谷博志(国環研),
太田康彦(鳥大獣医),堀口敏宏(国環研)

 東京湾産ホシザメの資源量変動要因解明の一環で,ホシザメ雄の精子形成と排精管の組織観察を行った。精子形成は spermatocyst の中で進行し,精子は各 spermatocyst に付着・開口する排精管枝状末端から排出された。排精管は末端部,枝状部,幹部及び集合管に分類され,spermatocyst の発達とともに成長した。精子の束はこの開口部から枝状管・幹部へ排出されて集合管に至り,副精巣に通じる。精子を排出できなかった spermatocyst は,その場でリンパ球と白血球の食作用により分解・消失する。精巣の外部形態や精子形成に特段の異常はみられず,雄の生殖特性の異常が本種の近年の資源量変動の主因ではないと示唆された。

79(2), 203-211 (2013)
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ギンブナにおけるマイトジェンおよびアロ抗原刺激に伴う Interferon gamma 遺伝子の発現動態解析

荒木亨介(鹿大水),瀧澤文雄(日大生物資源),
山崎雅俊(鹿大院連農),
江角真梨子,森友忠昭(日大生物資源),
乙竹 充(水研セ増養殖研),山本 淳(鹿大水),
中西照幸(日大生物資源)

 Interferon gamma (IFNγ)は細胞性免疫において中心的な役割を果たすサイトカインの一つである。LPS および PHA と 4 時間共培養したギンブナ腎臓白血球において,IFNγ 遺伝子(ifng1, ifng2, ifngrel)の発現はマイトジェンの濃度依存的に増強した。また,アロ抗原刺激に伴う IFNγ 遺伝子の発現を調べたところ,複数回刺激時において ifng1 のみが初回刺激時と比較してより早期に発現が誘導された。このことからギンブナにおいては IFNγ1 が抗原特異的細胞性免疫において主要な役割を果たす IFNγ アイソフォームであることが示された。

79(2), 213-220 (2013)
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魚類から藻類への栄養カスケード:流水実験プールにおける環境の異質性及び撹乱の操作

片野 修(水研セ増養殖研)

 実験プールにおいて捕食者としてウグイを用い,プール内のカワラ底部の溝を埋める操作(環境の異質性の減少)及び実験開始後 16 日後にカワラ表面の生物を金タワシでこすり取る操作(環境の撹乱)を行い,26 日後における水生昆虫類と藻類への影響を調査した。ウグイはカワラ表面の水生昆虫類とくにカゲロウ類を減少させ,栄養カスケードによって藻類を増加させた。環境の異質性操作はトビケラ類だけを減少させたが,撹乱は水生昆虫類を減少させなかった。藻類への栄養カスケードも環境操作によって弱められなかった。

79(2), 221-230 (2013)
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ヒラメ無眼側着色型黒化における体表組織の特徴および進行過程の検討

礒島俊実,辻 寛人(京大院農),
益田玲爾,田川正朋(京大フィールド研セ)

 着色型黒化の生理・発生学的な特徴を理解するため,黒化の進行過程を詳細に観察した。観察期間の後半には激しい黒化個体の割合に増加が見られなくなり,着色型黒化は無眼側全面に至るまでに停止すると考えられた。また黒化部には,正常な有眼側と同様の各種色素胞および櫛鱗が存在していた。特に黒色素胞は深部と浅部の 2 層に増殖が見られたが,これらは密度,深さ,形態でも正常な有眼側に極めて類似していた。以上より着色型黒化とは,単なる黒色素胞の増殖ではなく,無眼側に有眼側と同様の体表組織が形成される現象であると考えられた。

79(2), 231-242 (2013)
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ミトコンドリア DNA 塩基配列に基づく Tetraodon 属魚類の分子系統関係

五十嵐洋治(東大院農),土井啓行(下関水族館),
山野上祐介(東大水実),木下滋晴(東大院農),
石橋敏章(下関水族館),潮 秀樹,浅川修一(東大院農),
西田 睦(東大大海研),渡部終五(東大院農)

 Tetraodon 属魚類の 16S rRNA およびシトクロム b 全長塩基配列を決定し,既報のフグ科魚類のミトコンドリア DNA 全長塩基配列と合わせて supermatrix 解析を行った。その結果,Tetraodon 属魚類は生息域に付合して,アジア淡水域,アジア汽水域およびアフリカ淡水域の 3 系統に分類された。さらに,アジア淡水域種 T. cochinchinensis の塩分耐性は汽水域種 T. nigroviridis より明らかに低く,アジア淡水産 Tetraodon 属魚類の種分化は浸透圧調節に関連した分子進化が原因であることが示唆された。

79(2), 243-250 (2013)
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マアジの多回産卵誘導と産卵特性

入路光雄,藤澤和輝,今永由惟,北野 載,
山口明彦,松山倫也(九大院農)

 一本釣りにより漁獲したマアジを用い,飼育下で産卵を誘導した。実験は 5 月末から 6 月中旬に計 4 回行った。それぞれ卵黄形成卵をもつ雌親魚 4 尾および排精中の雄数尾に GnRHa 投与した後,3 トン水槽に収容した。産卵は GnRHa 投与後 1 日または 2 日目より開始し,4 回中 3 回は連続 3 日で停止した。他の 1 回は 21 時から 24 時を中心に連続 18 日間産卵し,水温が 23℃ に達すると停止した。産卵数は,産卵初日に 41,690~149,450 個と最も多かった。本実験は,マアジの繁殖特性の理解に飼育実験が有効であることを示した。

79(2), 251-258 (2013)
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クロソイ稚魚用飼料原料としてのイカ内臓処理ミールの有効性

佐藤敦一(道栽水試),信太茂春(道釧路水試),
若杉郷臣(道工試),佐藤秀一,竹内俊郎(海洋大)

 イカ内臓からカドミウム(Cd)を除去したイカ内臓処理ミール(dCSVM)の飼料原料としての有効性を調べるため,魚粉を 60~80% まで dCSVM で置換した飼料をクロソイ稚魚に 12 週間給餌し,飼育成績とともに魚体中の重金属含量を評価した。その結果,dCSVM 置換区の筋肉には Cd が蓄積しなかった。また,dCSVM の栄養価は,そのタンパク質の消化吸収率に左右されると考えられ,消化吸収率の良い dCSVM を用いた場合,飼料効率が若干低下するものの,魚粉の 60% までの置換であれば,成長は対照区に匹敵した。

79(2), 259-267 (2013)
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種苗生産中のカンパチ種苗のミネラル含量の変化:ワムシの高いミネラル含量は直接的には種苗のミネラル含量に影響しない

山本剛史,松成宏之,岩崎隆志,橋本 博(水研セ増養殖研),
甲斐 勲(宮崎水振協),
外薗博人(かごしま豊かな海づくり協),
浜田和久(水研セ増養殖研),照屋和久(水研セ西海水研),
原  隆(日水大分海洋研究セ),古板博文(水研セ増養殖研),
虫明敬一(水研セ西海水研)

 無換水飼育中の水槽内のワムシの影響を考慮しつつ,カンパチ種苗の生産中のミネラル含量の変化を調べた。栄養強化ワムシに比べ,水槽内ワムシでは Ca, Fe, Zn などの濃度が高かった。一方,水槽内ワムシのミネラル含量が直接種苗に反映されることはなく,種苗の Ca 濃度は 40 日令頃まで増加し,P, Mn, Mg および Fe の濃度は 30 あるいは 20 日令頃までそれぞれ増加した後減少する傾向が見られたが,Zn の濃度は飼育期間を通じて減少する傾向が見られた。カンパチの種苗は吸収したミネラルの蓄積量を調整することが示唆された。

79(2), 269-275 (2013)
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マハタ Epinephelus septemfasciatus の筋肉発生および筋肉異常について

宇治 督(水研セ増養殖研),鈴木 徹(東北大院農),
岩崎隆志(水研セ増養殖研),照屋和久(水研セ西海水研),
平澤敬一,白樫 真,尾上静正(大分水研セ),
山下洋一(大分県公社),奥澤公一(水研セ増養殖研)

 我々はホールマウント免疫染色法を用いてマハタの筋肉,特に頭部筋肉の発達について孵化後 0 日から孵化後 28 日まで記載した。その結果,孵化後 5 日までに仔魚型筋肉の発達が終わり,その後 12-16 日齢にかけて鰓弓を支配する筋肉の構成が仔魚型から成体型へと変化していくことがわかった。また開口前から 12 日齢までに体幹部の筋肉や顎の筋肉に異常を持つ個体が存在することがわかった。この結果は筋肉の形成異常が初期減耗および脊椎骨異常を引きおこす原因のひとつである可能性を示唆している。

79(2), 277-284 (2013)
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本邦産有毒渦鞭毛藻 Ostreopsis sp. 1 および Ostreopsis sp. 6 の増殖に及ぼす水温,塩分およびそれら相互作用の影響

谷本祐子(愛媛大院連農),
山口晴生,吉松孝倫(高知大農),
佐藤晋也(英国王立植物園),足立真佐雄(高知大農)

 底生性有毒渦鞭毛藻 Ostreopsis sp. 1 および Ostreopsis sp. 6 の分布・発生機構の解明を目指し,これら培養株の増殖に及ぼす水温・塩分の影響を明らかにした。前者は 15℃ にて増殖可能であり,22~25℃・塩分 35 の下でよく増殖した。一方,後者は 15℃ では増殖できず,24~30℃・塩分 30~35 の下でよく増殖した。これらの結果は,比較的低水温を好む Ostreopsis sp. 1 が北日本を含めた本邦全域に分布し,高水温を好む Ostreopsis sp. 6 が南日本に分布することを裏付けている。

79(2), 285-291 (2013)
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様々な実験条件下における日本産スルメイカ肝臓からの 2 価の無機質の溶出

J. Santoso(ボゴール農科大),石塚有香(海洋大),
吉江由美子(東洋大)

 千葉県産イカの廃棄物の Cd 低減化と有効利用を目的としたデータを得るため,スルメイカ肝臓からの 2 価の無機質の溶出を調べた。pH 2 および 12 において Cd の溶出が大きいが,有用なタンパク質や微量元素(Zn, Fe, Cu)も 20~80% 溶出した。Cd の溶出は Zn および Cu と強い相関を示し,溶出無機質は主に低分子量画分(MW<10,000)に認められた。生理食塩水もしくはリン酸緩衝溶液(pH 7.4)処理によってほぼ全量の Cd が除去でき,タンパク質や微量元素が高い割合で残存し,有用な肝臓粉末を得る前処理であることが確認された。

79(2), 293-301 (2013)
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ナマコ Stichopus japonicus の消化管の acetylcholinesterase の精製と特性評価

Hai-Tao Wu, Dong-Mei Li, Bei-Wei Zhu, Ying Du(大連工大),
Xiao-Qian Chai(清徐市質量監督検査所,中国),
村田芳行(岡山大)

 ナマコ Stichopus japonicus の消化管の acetylcholinesterase を,陰イオン交換クロマトグラフィとゲル濾過クロマトグラフィを用いて精製した。SDS-PAGE の結果より,その分子量は 68 kDa であった。acetylthiocholine iodide を基質とした場合,至適 pH と至適温度はそれぞれ 7.5 と 35℃ であった。Km 値は,acetylthiocholine iodide を基質とした場合 0.62 mM, butyrylthiocholine iodide を基質とした場合 2.53 mM であった。その酵素活性は,1 mM eserine または 1 mM BW284C51 によって 95% 以上阻害され,1 mM iso-OMPA によって 19.1%阻害された。しかし,生成された acetylcholinesterase は,基質阻害がなかった。

79(2), 303-311 (2013)
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アメリカオオアカイカ Dosidicus gigas 由来セラミドアミノエチルホスホン酸はアオコ毒マイクロシスチン LR の毒性を緩和する

小松正治,市山直樹,栗本隆史(鹿大水),
内匠正太(国環研),塩崎一弘,杉山靖正(鹿大水),
古川龍彦(鹿大院医歯研),安藤清一(名寄市大),
糸乗 前(滋大教),齋藤洋昭(水研セ中央水研)

 アメリカオオアカイカの廃棄部位である皮から単離されたセラミドアミノエチルホスホン酸(CAEP)は,培養細胞レベルでは安全性に問題はなく,セリン/スレオニンホスファターゼ阻害剤である藍藻由来マイクロシスチン LR の細胞毒性に対して抑制的に機能することが明らかになった。また,対照として牛脳由来スフィンゴミエリンおよび豚脳由来セレブロシドを用いた比較実験を行った結果,セレブロシドには本機能は検出されなかった。一方,スフィンゴミエリンには CAEP の約 50% の機能活性が検出され,構造活性相関が示唆された。

79(2), 313-320 (2013)
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ヤマトシジミに含まれるビタミン B12 化合物の特性

石原幸雄(鳥取県水試,鳥大院連合農学),
植田和美(四国大学短大),美藤友博(鳥大院連合農学),
竹中重雄(阪府大院),
薮田行哲,渡辺文雄(鳥大院連合農学)

 鳥取県東郷湖で収穫されたヤマトシジミのビタミン B12 含量の周年変化を測定した結果,8 月と 9 月を除いては,ほぼ年間を通して可食部 100 g あたり 17.3~22.5 μg の高いビタミン B12 含量を示した。このヤマトシジミに含まれるビタミン B12 化合物を精製し,LC/ESI-MS/MS クロマトグラムで同定した結果,“真”のビタミン B12 が大半を占めていたが,少量のシュードビタミン B12 や未同定の 3 種のコリノイド化合物も含有されていた。

79(2), 321-326 (2013)
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日本産および輸入シロサバフグ Lagocephalus spadiceus の加熱肉および煮汁の食味およびエキス成分の比較

山口洋子,中谷操子,金子 元(東大院農),
米田千恵(千葉大教育),望月俊孝(河久),
深見克哉(九大有体物管理セ),潮 秀樹(東大院農),
渡部終五(東大院農,北里大海洋)

 日本産および中国産輸入シロサバフグから加熱肉および煮汁を調製し,食味とエキス成分を比較した。加熱肉の先味,弾力および塩味は,日本産(国産魚)の方が強く,鼻孔からの魚の臭いは輸入魚の方が強かった。煮汁の先味,後味,口腔内の魚の臭い,甘味,塩味および旨味は国産魚の方が強く,鼻孔からの魚の臭いおよび苦味は輸入魚の方が強かった。総合的な好ましさは,加熱肉,煮汁ともに国産魚の方が好ましかった。加熱肉と煮汁のトリメチルアミン量は輸入魚の方が高く,これが輸入魚の鼻孔からの魚の臭いに影響した可能性が示唆された。

79(2), 327-334 (2013)
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groEL 遺伝子を利用した duplex PCR 法による Vibrio cholelaeVibrio vulnificus の検出法に関する研究

Muhammad Tofazzal Hossain, Yu-Ri Kim, Eun-Young Kim,
Jong-Min Lee, In-Soo Kong(釜慶大,韓国)

 V. choleraeV. vulnificus は世界中で公衆衛生上の深刻な問題となっており,この 2 種についての種特異的な検出法の開発は急務である。本研究では,groEL 遺伝子を対象とした duplex PCR 法(Duplex polymerase chain reaction)により,上記の 2 種を同時に検出及び識別する手法の開発を行った。本研究で設計した 2 対のプライマーセットは,対象の 2 種を特異的かつ高感度に検出することができ,その他の近縁種とも明確に識別する事が可能であった。また,本手法は貝,カレイ,海水に接種された菌に対しても,正確に目的の菌種を検出する事ができた。本研究で開発した duplex PCR 法による V. choleraeV. vulnificus の検出法は,正確であると共に簡便で経済的であり,今後の疫学及び環境学研究への活用が期待される。
(文責 木村 凡)

79(2), 335-340 (2013)
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凍結中クルマエビ筋原線維中でのミオシンおよびアクチン変性

Thitima Jantakoson(北大院水,Songkhla Rajabhat 大),
Wichulada Thavaroj(北大院水,Rajamangala 工大)
今野久仁彦(北大院水)

 クルマエビ筋原線維(Mf)とミオシン(0.1 M NaCl, pH 7.5)は -20℃ の凍結中に同じ速度で Ca2+-ATPase 活性が低下した。この凍結 Mf には遊離ミオシンが認められ,この原因は先行するアクチン変性で説明できた。アクチンは凍結 1 日でほとんど変性し,ミオシン変性より速かった。このようなアクチン変性は Mf の加熱では認められなかった。

79(2), 341-347 (2013)
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血管内注射による魚肉の酸化安定性の向上

塚正泰之(近大農),加藤圭祐,
ロイ・ビモル・チャンドラ(近大院農),
石橋泰典,小林 徹,伊藤智広,安藤正史(近大農)

 赤身魚の冷蔵中の肉色を保持するため,生きたマアジを冷海水中で麻酔し,尾柄部の血管に注射針を挿入して脱血後,L-アスコルビン酸ナトリウムを含む生理食塩水を注入し,冷海水に戻した。5 分後に即殺して,フィレを 4℃ で保存した結果,マアジ血合筋の色調,メト化率,TBARS 値のいずれもが対照区よりも変化が遅くなることを確認した。

79(2), 349-355 (2013)
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