Fisheries Science 掲載報文要旨

南東大西洋におけるアルゼンチンマツイカ Illex argentinus 漁業の CPUE の標準化

Chih-Shin Chen (Natl. Taiwan Ocean Univ.),
Tai-Sheng Chiu (Natl. Taiwan Univ.)

 寿命が短く,環境が漁獲に強く影響を及ぼすイカ漁業の解析にあたっては,CPUE の標準化は不可欠である。本研究では,南東大西洋で操業する台湾のアルゼンチンマツイカ釣船の CPUE 標準化に用いる相対漁獲性能(RFP)を計算するために,ほぼ等しい状況で漁獲する 1 対の漁船の単位漁獲を 1993~2003 年のログブックから解析した。解析の結果,推定された RFP によって漁獲努力 98.7% が標準化され CPUE の適切な標準化に使用できると考えられた。
(文責 松石 隆)

75(2), 265-272 (2009)
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サンマ漁業における船上魚体分離機の資源経済学的評価

小山田誠一(横浜国大環境情報),
上野康弘(水研セ東北水研),
牧野光琢(水研セ中央水研),
小谷浩示(国際大国際関係),
松田裕之(横浜国大環境情報)

 船上魚体分離機は 90 年代半ば頃から,選択的に大型魚を確保し,単価を高く維持することを目的として導入された。しかし,漁業者の期待に反して価格低下により経営悪化を招いたとされ,2006 年から撤廃された。本研究は個体群,価格,在庫の変動をモデル化し,分離機が経済および資源に与える影響を評価した。分離機の影響は 0 歳魚の漁具能率を操作することで表現した。シミュレーションの結果,分離機は漁獲量の通常変動幅である 20~30 万トンにおいて,期待水揚金額を低下させ,赤字リスクを上昇させることが明らかになった。

75(2), 273-283 (2009)
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ジブラルタル海峡のスペインダイ Pagellus bogaraveo 深海延縄漁業の選択性

Ivone Alejandra Czerwinski (Cadiz Univ. Spain),
Karim Erzini (CCMAR, Portugal),
Juan Carlos Gutierrez-Estrada (Univ. of Huelva),
Jose Antonio Hernando (Cadiz Univ.)

 ジブラルタル海峡の深海延縄漁業において,4 つの大きさの釣り針の選択性を調べた。スペインダイ Pagellus bogaraveo が個体数で漁獲の 88% を占め,平均漁獲サイズは一例を除き,釣り針の大きさにより有意に異なった。4 年の間に実施した 2 回の漁獲試験結果を比較したところ,体長組成が全体的に小さくなったことがわかった。当てはめられた選択性モデルは常用した 2 つの大きさの釣り針でさえ試験毎に異なった。この漁業では釣り針のサイズ選択性と資源のサイズ組成の相互作用が存在することが示唆された。
(文責 松下吉樹)

75(2), 285-294 (2009)
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沖縄島におけるドロクイ属 2 種の年齢と成長

上原匡人(沖縄県漁港漁場課),
今井秀行,立原一憲(琉球大理)

 沖縄島近海で得たドロクイ属 2 種 1,169 個体について,耳石薄片標本をもとに年齢と成長を調べた.耳石透明帯の出現率の経月変化から,耳石輪紋は両種ともに年 1 回形成されると考えられ,von Bertalanffy の成長式における極限体長はリュウキュウドロクイが,成長係数はドロクイが大きかった.観察された最高齢はリュウキュウドロクイが 11 歳,ドロクイが 6 歳であった.両種の成長は,リュウキュウドロクイがドロクイに比べて,長い時間をかけて大型になる特性を示した.

75(2), 295-301 (2009)
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北海道東部における動物プランクトン量とサケ Oncorhynchus keta 幼稚魚の初期海洋生活史の関係

斎藤寿彦(水研セさけますセ,広大院生物圏科),
清水幾太郎,関 二郎(水研セさけますセ),
長澤和也(広大院生物圏科)

 1999~2002 年の根室海峡で,サケ幼稚魚の分布量,降海時期,成長率およびコンディションと,動物プランクトン量との関係を調べた。幼稚魚の降海時期とサイズ,および成長率は,6 月下旬に採集した個体の耳石輪紋解析から推定された。2001 年に降海した幼稚魚は,分布量,成長率およびコンディションとも高い値を示し,特に小型で降海した個体の成長が良好だった。これらの結果は 2001 年に動物プランクトンが多量に発生したことに一致することから,サケ幼稚魚の生活史特性の変動には餌生物量が密接に関係すると考えられた。

75(2), 303-316 (2009)
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アカイカ稚仔の食性と融合触腕および顎板発達の関係

内川和久(水研セ水工研),
酒井光夫,若林敏江,一井太郎(水研セ遠洋水研)

 ハワイ諸島北方海域において採集した外套長(ML)1.1~13.2 mm のアカイカ稚仔を用い,顎板および融合触腕の発達と食性の関係を調べた。餌生物はカイアシ類や端脚類であり,消化管から餌生物が認められた最小の稚仔は 4.2 mmML であった。顎板の吻部が前方に突出し始めるのは 3~4 mmML であったことから,稚仔は吻部が突出すると肉食が可能になると考えられた。融合触腕は 9.3~13.2 mmML で分離した。分離直後の触腕は発達が悪く,捕食の際は触腕を用いず,腕を用いるものと推察された。

75(2), 317-323 (2009)
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サンマ 0 歳魚の耳石長―体長関係の季節変化

巣山 哲(水研セ東北水研),
大島和浩(水研セ遠洋水研),
中神正康,上野康弘(水研セ東北水研)

 2002 年から 2004 年の 6 月から 12 月に採集されたサンマ 0 歳魚から,耳石径の体長に対する回帰直線を求めた。一般化線形モデルにより,各月の回帰直線を年ごとおよび月ごとに比較した。回帰直線の傾きには月による差が見られなかったが,切片は季節が遅くなるにしたがって増大した。体長に対する耳石径は,月の経過とともに大きくなることが示された。9 月以降は体成長が低下するものの耳石の成長は続くため,相対的な耳石径が大きくなると考えられた。

75(2), 325-333 (2009)
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ヒラメ白血球および血清 Ig に対するモノクローナル抗体の作成

松山知正,中易千早,坂井貴光,
大迫典久(水研セ養殖研)

 ヒラメ白血球および血清免疫グロブリン(Ig)に対するモノクローナル抗体を作成し,ヒラメ白血球に対する反応性を解析した。モノクローナル抗体 JFW1 は顆粒球及び単球の細胞表面抗原,JFW10 は栓球の細胞表面抗原,JFW20 と JFW21 は Ig を特異的に認識した。JFW1, JFW10, JFW20 および JFW21 は,それぞれ末梢血白血球の 2.5~7.4, 23.7~50.1, 25.2~26.1 および 5.2~8.3% と反応した。

75(2), 335-341 (2009)
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沖縄島におけるドロクイとリュウキュウドロクイ(ニシン科)種間雑種の遺伝学的,形態学的分析による証明

今井秀行,柏木芙美(琉球大理),
鄭 金華,陳 紫媖(台湾水試東港),
立原一憲,吉野哲夫(琉球大理)

 形態学的に酷似した同所的に生息するドロクイとリュウキュウドロクイについて,遺伝学的,形態学的分析によって詳細に調査した。種判別に用いる遺伝子マーカーは核 DNA (SOD*ITS-1 および CaM)と母系分析用のミトコンドリア 16S(複合 PCR)を用いた。その結果,遺伝学的分析によって沖縄島南部の標本において雑種が高率に出現した。形態学的分析では両種の計数形質は連続するが,モードが異なっていた。しかし,雑種個体のモードは両種のほぼ中央を示し,形態学的同定を困難にしていることが示唆された。

75(2), 343-350 (2009)
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オオクチバスのインシュリン様成長因子(IGF-1)遺伝子プロモータ領域の多様性と成長について

Xiao Hui LI, Jun Jie BAI, Xing YE, Yin Chang HU,
Sheng Jie LI, Ling Yun YU(中国水産科学院)

 オオクチバス IGF-1 プロモーター領域には,種々の転写因子結合領域が存在していたが,TATA や CCAAT, GAGA 配列は含まれていなかった。5′隣接領域における塩基の欠失及び置換によりハプロタイプ(A, B)がみられた。AA 型は,AB 型及び BB 型より魚体重及び体幅に有意な差がみられた。肝臓における IGF-1 遺伝子の発現は AA 型が最も高いものであった。オオクチバス IGF-1 遺伝子の多型は,成長の違いに重要な因子であることが示唆された。
(文責 廣野育生)

75(2), 351-358 (2009)
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ミトコンドリア DNA ハプロタイプ判別用マイクロアレイを用いたベーリング海および北太平洋のシロザケ系群の解析

守屋彰悟(日清紡中研),
佐藤俊平(水研セさけますセ),
Moongeun Yoon(北大院水),
東屋知範(水研セ北水研),
浦和茂彦(水研セさけますセ),
浦野明央(北大院理),阿部周一(北大院水)

 ミトコンドリア DNA ハプロタイプ判別用マイクロアレイを用い,2003 年 6 月から 7 月にかけてベーリング海と北太平洋で採捕した年齢査定済のシロザケ(Oncorhynchus keta)1000 個体以上について系群識別を行った。観察されたハプロタイプの分布と系群構成は,2002 年と 2003 年 9 月に同じ調査海域で観察されたものとほぼ同じであった。2 年間の結果から,調査海域におけるシロザケ系群の分布は夏季と秋季でノンランダムであり,起源が同じ系群は年齢に関係なく同じ海域を回遊することが示唆された。

75(2), 359-367 (2009)
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アマモ未発芽種子の子葉部表皮細胞壁の微細構造,組織化学・化学的特徴

杉浦裕幸(三重大院生資,赤塚植物園),
川崎陽子(赤塚植物園),
鈴木智子(岡山大院自然),
前川行幸(三重大生物資源)

 アマモ(Zostera marina L.)未発芽種子の子葉部表皮構造を形態学・組織化学的に観察し,細胞壁外縁を覆う 5~10 μm の厚いクチクラ層の存在を明らかにした。クチクラ層の化学組成を ATRFT-IR および GCMS により分析し,クチン成分としてヒドロキシ脂肪酸(C18)を検出した。また,ワックス成分として検出した脂肪酸(C16, 18)・シトステロールは,クチクラ層内ワックスとして存在することが示唆された。

75(2), 369-377 (2009)
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マコガレイの年齢査定における耳石表面観察法と横断切片観察法の比較

李 政勲(国環研,長大院生産),
児玉圭太(国環研),
久米 元(Landcare Res., N. Z.),
大山政明(国環研),片山知史(水研セ中央水研),
高尾雄二(長大環境),堀口敏宏(国環研)

 東京湾産マコガレイの耳石を表面観察法および横断切片法により観察し,どちらの手法が年齢査定と成長解析に適するかを調査した。表面観察法では高齢部分(雄 5 歳以上,雌 4 歳以上)の輪紋を過少に計数するおそれがあり,正確な年齢と寿命を推定するためには横断切片法が適すると推察された。横断切片法により観察された最高齢の個体は雌の 10 歳(表面観察法 8 歳)であった。一方,表面観察法で誤推定された一部の高齢魚を一群(雄≧5 歳,雌≧4 歳)とすると,成長の推定に際しては表面観察法も有効であると考えられた。

75(2), 379-385 (2009)
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フィリピン・ルソン島で採集されたウナギ属魚類の新種 Anguilla luzonensis

渡邊 俊,青山 潤,塚本勝巳(東大海洋研)

 フィリピン・ルソン島北部のカガヤン川上流で採集したウナギ属魚類 29 個体を基に新種 Anguilla luzonensis を記載した。本種はフィリピンに同所的に分布する A. celebesensis と同様,体に斑紋を有し,幅広い主上顎骨の歯帯をもつが,以下の 7 つの形態形質において A. celebesensis と統計学的有意差が認められた:背鰭前長,肛門前長,体幹長,背鰭始部肛門間距離,下顎長,脊椎骨数,腹椎骨数。これらの形態的相違は,これまでの分類,遺伝,生態の情報と共に本新種の存在を強く裏付ける。

75(2), 387-392 (2009)
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cox1 遺伝子と ITS2 領域を用いた日本・韓国・中国産ワカメ Undaria pinnatifida の遺伝的多様性の研究

遠藤博寿,朴 恩貞(北大水),佐藤陽一(理研食品),
水田浩之,嵯峨直恆(北大水)

 ワカメ Undaria pinnatifida の産地判別を目的として,4 種類の市販品(日本産と中国産各 1 種および韓国産 2 種),3 種類の野生株(日本産 2 株,中国産 1 株)および 2 種類の養殖株(日本産と中国産各 1 種)の計 9 種類のサンプルを用いて cox1 および ITS2 領域の配列解析を行った。その結果 ITS2 領域で,PCR-RFLP に用いることができる多型が検出された。制限酵素 MboIIを用いて PCR-RFLP を行った結果,日本産と中国産の製品を区別できる多型が確認された。

75(2), 393-400 (2009)
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韓国 Gamak 湾における海洋環境と藻類ブルームの特徴

李 文沃,権 英娥,金 鐘圭
(Chonnam Natl. Univ., Korea)

 韓国 Gamak 湾の海洋環境と赤潮発生の関係を主成分分析により明らかにした。主な赤潮原因種は,Prorocentrum sp., Cochlodinium polykrikoides, Chaetoceros sp., Skeletonema costatum, Heterosigma akashiwo であった。現場データから,C. polykrikoides は高温を好み,広塩性であることが示されたが,S. costatum は,広温性・広塩性であることが示された。また,Prorocentrum sp. と Chaetoceros sp. は狭温性・狭塩性,H. akashiwo は 5 種の内で最低水温条件下・最高塩分条件下で観察され,狭温性・狭塩性であると判断された。
(文責 板倉 茂)

75(2), 401-411 (2009)
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高知県浦ノ内湾における底泥中の重金属の分布とその状況

ジェイサンカール・デ,深見公雄(高知大院黒潮),
岩崎貢三(高知大農),岡村 慶(高知大海洋コア)

 魚類養殖が盛んな高知県浦ノ内湾における底泥中の重金属の分布を調べたところ,Zn は 178±4.8 mg/kg dry wt., Cu は 125±1.2 mg/kg dry wt., Pb は 50.7±0.77 mg/kg dry wt. と,いずれも養殖の行われていない湾口近くの測点と比較して養殖場近くで高い値を示した.しかしながら Co, Cr, Fe では測点間で有意な差は見られなかった.塩酸で容易に遊離してくる“易分解性画分”は Zn で約 56%,Cu で約 40% と高い値を示したことから,生物への影響が懸念された.以上の結果から,長年にわたる魚類養殖により,内湾底泥環境に重金属の蓄積が起こっていることが明らかとなった.

75(2), 413-423 (2009)
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溶液よりヒ素を除外する吸着剤としてのエビ外殻の効果

Ming-Chao Lin (Nanhua Univ., Taiwan),
Chung-Min Liao (Natl.Taiwan Univ),
Ying-Cheng Chen (Nanhua Univ.)

 水溶液中から吸着によりヒ素を取り除くエビ外殻の効果を検証した。一次反応のコンパートメントモデルで Penaeus monodon および Litopenaeus vanname 外殻のヒ素の吸収動態を検討したところ,いずれにおいても溶液中のヒ素の初期濃度が高くなるに伴って吸収速度が増加した。エビ外殻のヒ素吸収能は天然吸着剤ならびに化学合成吸着剤のそれよりも劣るが,価格が低くエビの副産物に付加価値を与えることができる。
(文責 大島敏明)

75(2), 425-434 (2009)
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ベトナムにおける高濃度のテトロドトキシンを含むカブトガニ Carcinoscorpius rotundicauda の高頻度の出現

Ha Viet Dao(ベトナム国立海洋研),
高田義宜,佐藤 繁(北里大海洋),
福代康夫(東大アジアセ),児玉正昭(北里大海洋)

 カブトガニ Carcinoscorpius rotundicauda による食中毒事件がしばしば報告されている,ベトナムのブンタウ県で採捕された同種のカブトガニから,HPLC と LC-MS/MS でテトロドトキシンを検出した。分析した 12 個体のうち 10 個体の肝膵臓と卵に,摂食に適さない高濃度のテトロドトキシン(81.2±50.3 MU/g)が検出された。麻痺性貝毒も同時に検出されたが,ごく微量であった。これらの結果は,ブンタウ県で採捕されるカブトガニでは高濃度のテトロドトキシンをもつ個体の出現頻度が高いこと,および同県で発生したカブトガニ中毒の原因毒はテトロドトキシンであることを示すものである。

75(2), 435-438 (2009)
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魚類より単離した Bacillus 属により生産される Poly-β-Hydroxybutyrate (PHB) の測定

Pinar Kaynar
(Refik Saydam Hygiene Central Inst., Turkey),
Yavuz Beyatli (Gazi Univ., Turkey)

 トルコ共和国首都アンカラで一般に流通する魚類より,生分解性ポリマー Poly-β-Hydroxybutyrate (PHB) 生産能を有する 30 種の Bacillus 属,(Bacillus pasteurii, Bacillus badius, Bacillus circulans, Bacillus licheniformis, Bacillus megaterium, Bacillus thuringiensis, Bacillus brevis, Bacillus cereus 等)を単離した。これら Bacillus 属の PHB 産生量は Bacillus pasteurii および Bacillus lentus で高く,乾燥細胞重量に対してそれぞれ 20.6%, 23.4% であった。また,これらの Bacillus 属で産生される PHB の量は,これら細胞を培養する炭素源や窒素源により異なることが明らかとなった。
(文責 村田昌一)

75(2), 439-443 (2009)
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アカガレイの筋肉トリアシルグリセロールにおけるテトラコサヘキサエン酸結合位置分布の再調査

富田雄喜(北大水),安藤靖浩(北大院水)

 北海道産アカガレイの筋肉トリアシルグリセロールにおける脂肪酸の結合位置分布について,既報に見られた分析手順の問題点を改め再調査した。同種の特徴とされるテトラコサヘキサエン酸は,試料とした 3 個体すべてでトリアシルグリセロールの sn-2 位に最も多く含まれ,次いで sn-3 位,sn-1 位の順であった。従来の結論と異なり,海産魚のドコサヘキサエン酸に見られる位置分布の経験則はアカガレイのテトラコサヘキサエン酸でも成立すると推察される。アカガレイは食用であることから,同脂肪酸はトリアシルグリセロールの sn-2 位に濃縮された状態で摂取されることになる。

75(2), 445-451 (2009)
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マダイの新規 IB 型 PLA2 アイソフォームの cDNA クローニングと遺伝子発現

藤川愉吉,植松一眞,飯島憲章(広大院生物圏科)

 マダイ腸管から sPLA2 (IN PLA2) cDNA をクローニングした。IN PLA2 は,その 1 次構造の特徴から IB 型に分類され,マダイの IB 型 sPLA2 アイソフォームと 49~75% の相同性を示したことから,新規 IB 型 sPLA2 アイソフォームであることが明らかとなった。本酵素の遺伝子は腸管の粘液分泌細胞に発現しており,LPS 刺激によりその発現が誘導されることから,本酵素は餌料リン脂質の消化酵素として作用するだけでなく,細菌に対する非特異的な生体防御に関与する可能性も示唆された。

75(2), 453-461 (2009)
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日本産ウナギの体表粘液に存在する二つの新奇システインプロテアーゼ阻害剤(Eel-CPI-2 と Eel-CPI-3)の精製と特性解析

岡本永史郎,笠原 仁(新潟工大院),
千葉 晃(日歯大新潟生命歯生物),
谷口正之(新潟大院),斎藤英一(新潟工大院)

 我々は日本産ウナギ皮膚粘液抽出液に Eel-CPI-1 とは異なる複数のシステインプロテアーゼ阻害剤を発見した.その中から二種阻害剤(Eel-CPI-2 及び Eel-CPI-3 と命名)を単離した.分子量はそれぞれ 16089.080 ならびに 16089.37 であり,アミノ末端は共にブロックされていた.構成アミノはお互いに酷似し,ガレクチン AJL1 とも類似していた.Eel-CPI-2 ならびに Eel-CPI-3 のパパインに対する解離定数を計測したところ,それぞれ 179 nM, 105 nM であった.

75(2), 463-471 (2009)
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熱帯産二枚貝のドウモイ酸

高田義宜,佐藤 繁(北里大海洋),
Ha Viet Dao(ベトナム国立海洋研),
Ulysses M. Montojo(フィリピン国立水研),
T. Lirdwitayaprasit, S. Kamolsiripichaiporn(チュラ大),
小瀧裕一(北里大海洋),福代康夫(東大アジセ),
児玉正昭(北里大海洋)

 熱帯,亜熱帯域よりランダムに集めた Spondylus 属二枚貝にドウモイ酸の存在を認めた。毒量は顕著な地域差を示しフィリピンからの試料には安全基準値(20 μg/g)の 4 倍を越える毒量を持つ個体も含まれていた。これらの試料にはドウモイ酸の他に数種のドウモイ酸の異性体も検出された。一方,フィリピンにおいて同一採集時期に採取した他の二枚貝には殆どドウモイ酸は検出されなかった。これらの事実は Spondylus 属二枚貝がドウモイ酸を蓄積しやすいこと,およびその原因生物が熱帯域にも広く分布することを示唆する。

75(2), 473-480 (2009)
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魚肉発酵食品の化学成分組成および味に及ぼす米麹の種類の比較

Anupam Giri,大迫一史,大島敏明(海洋大)

 魚肉発酵食品の栄養的および嗜好的特性に及ぼす麹の種類の影響を明らかにするために,SP-01, NY, M1 および米味噌用の 4 種類の麹菌により製了した魚肉発酵食品の品質を評価した。同時に,原料魚種の相違の影響も検討した。魚肉発酵食品のタンパク質含量(22.7~24.1%)は大豆味噌(8.2~12.8%)に比べて,大きく上回った。アミノ酸含量,オリゴペプチド,有機酸およびミネラル類の含量からみて,魚肉発酵食品は栄養面で優れていることが明らかとなった。一方,糖類の含量は大豆味噌で比較的高かった。

75(2), 481-489 (2009)
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ガゴメ Kjellmaniella crassifolia 多糖抽出液の粘性におよぼす加工因子の影響

片山 茂,西尾年弘,伊勢谷善助,
岸村栄毅,佐伯宏樹(北大院水)

 ガゴメ Kjellmaniella crassifolia から高粘性多糖液を 20℃ の水で抽出した。糖濃度は 0.16% で,フコイダン,ラミナラン,アルギン酸の構成比は 8.2:0.8:1.0 であった。抽出温度が高いほど溶出糖量は増加したが粘性は低下した。酸性およびアルカリ性下で抽出すると粘性は急激に低下した。高粘性多糖液を加熱すると,粘性は温度の上昇に伴い低下した。この粘性は KCl, NaCl, CaCl2, MgCl2 の除去(透析による)と再添加によって可逆的に変化した。

75(2), 491-497 (2009)
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ビタミン C および E の同時経口投与によるブリ血合筋保存中の退色抑制

新井博文(長大水),谷  渉(長大院生産),
岡本 昭(長崎県水試),福永健治(関大化学生命工),
濱田友貴,橘 勝康(長大水)

 養殖ブリにビタミン C (V. C)及び E (V. E)を各 1 % 含む餌料を 6 日または 11 日間投与し,刺身として 23℃ または 4℃ で保存した場合の血合筋の退色に対する抑制効果について検討した。ビタミン投与群の血合筋中 V. C 及び V. E 含量は対照群に比べて増加傾向を示した。保存中の血合筋赤色度の低下は対照群よりもビタミン投与群が遅かった。血合筋ミオグロビンの酸化は対照群よりもビタミン投与群が遅い傾向にあった。以上より,V. C 及び V. E 同時経口投与は養殖ブリ血合筋の保存中の退色抑制に有効であることが示唆された。

75(2), 499-505 (2009)
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ベトナム,ニャフー湾における Spondylus versicolor とプランクトンのドウモイ酸量の季節変動

Ha Viet Dao(ベトナム国立海洋研),
高田義宜(北里大海洋),大村卓朗(東大アジアセ),
佐藤 繁(北里大海洋),福代康夫(東大アジアセ),
児玉正昭(北里大海洋)

 ベトナムのニャフー湾において 2004 年 12 月より 2005 年 10 月の期間,Spondylus versicolor のドウモイ酸蓄積量の推移をプランクトンネット試料のドウモイ酸量とともに調べた。S. versicolor のドウモイ酸量は顕著な季節変動を示し,プランクトン試料にドウモイ酸が認められた時期に急激に増加し,最高値 146.8 μg/g を示した。この結果は同湾にドウモイ酸を持つプランクトンが季節的に発生すること,およびこれを捕食した S. versicolor が高度に毒化することを示す。

75(2), 507-512 (2009)
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ROV により知床半島沖で偶然観察された腐肉食者の観察(短報)

山本 潤(北大フィールド科セ),
野別貴博(知床財団),
岩森利弘(北大フィールド科セ),
桜井泰憲(北大院水)

 Natural food fall の報告例は極めて少ないが,生態系を構成する種の相互作用を理解する上で重要な情報を含んでいる。本研究では,2008 年 1 月 21-23 日に知床半島根室半島側で実施した水中ロボット(ROV)による調査おいて,海底に沈降した二つのスケトウダラ死骸を発見した。これらの死骸には,クモヒトデ類,ウニ類が付着し,スケトウダラはエネルギーを栄養段階の低次から高次へと運ぶばかりではなく,栄養段階の低い生物にもエネルギーを供給していることが明らかになった。

75(2), 513-515 (2009)
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東北地方太平洋岸沖におけるイトヒキダラの加入(短報)

服部 努,成松庸二(水研セ東北水研八戸),
野別貴博(知床財団),
伊藤正木(水研セ東北水研八戸)

 1995~2007 年の秋期に東北地方太平洋岸沖(東北海域)で着底トロール調査を行い,イトヒキダラの体長組成の経年変化を調べた。当海域において,成魚は毎年観察されたが,体長 10 cm 以下の稚魚が多数出現したのは 4 年間のみで,良好な加入は数年しか起こらず,他の年には大きな加入は認められなかった。また,加入は東北海域南部で多く,北部で少なかった。これらの小型魚は東北海域内で成長し,成魚の体サイズに達した。既往の知見ではイトヒキダラの生育場はオホーツク海とされているが,生育場は東北海域南部にも存在する可能性が示唆された。

75(2), 517-519 (2009)
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イシダイとイシガキダイの種間交雑およびそれらの交雑魚の妊性(短報)

嶋田幸典,野首恒太,山本眞司,
村田 修,熊井英水(近大水研)

 自然界で天然交雑魚の出現報告があるイシダイおよびイシガキダイにおいて,自然産卵および人工受精を試み,両種の交雑要因を検討した結果,イシダイ,イシガキダイおよび F1 交雑魚では自然産卵に成功したが,イシダイ×イシガキダイでは認められなかった。一方,イシダイとイシガキダイの人工受精では正逆ともに受精卵を得ることに成功した。これらのことから,両種の F1 交雑魚は妊性を示し,また,両種には生殖前障壁が存在するものの,生殖後障壁は存在しないことが示唆された。

75(2), 521-523 (2009)
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ケルプバス Paralabrax clathratus の遺伝性分子マーカーの開発(短報)

August B. Vogel(南カリフォルニア大),
Kimberly A. Selkoe
(カリフォルニア大学サンタバーバラ校),
David Anderson(南カリフォルニア大),
Suzanne Edmands(南カリフォルニア大)

 本研究により開発したプライマーを用い,ケルプバスのミトコンドリアゲノムコントロール領域を PCR により増幅し,制限酵素消化により多型を検出する RFLP は,従来の方法より安価な制限酵素で解析が可能であった。また,既報のマイクロサテライトマーカーと本研究で開発したミトコンドリアゲノムの多型を検出する手法を合わせて行うことは,本種の多型解析に適していることが示唆された。
(文責 廣野育生)

75(2), 525-527 (2009)
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ヒラメの熱ショック応答に対する植物発酵産物の投与効果(短報)

芦田貴行(万田発酵),
高垣正博,松浦良紀,沖増英治(福山大生命工)

 本研究では,植物性の原材料を発酵して製造した植物発酵産物(fermented vegetable product: FVP)がヒラメの熱ショック応答に与える影響について検討した。FVP を投与したヒラメでは,熱ショック後の鰓 hsp70 量が対照と比較して有意に(p<0.01, 0.05)上昇し,血清中のコルチゾール濃度とグルコース濃度は,対照と比較して,低下する傾向を示した。これらの結果から,FVP には,水温上昇後の鰓 hsp70 量を上昇させ,ストレスを軽減させる効果がある事が示唆された。

75(2), 529-531 (2009)
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魚類脂質代謝解析に用いられる特異脂肪酸 2-ブロモ-パルミチン酸の GC-MS 解析(短報)

徳田雅治,奥 宏海(水研セ養殖研)

 2-ブロモ-パルミチン酸は魚類の脂質代謝解析に使用可能な特異な脂肪酸であることから,この脂肪酸の検出に関する分子特性を明らかにするために GC-MS 解析をおこなった。その結果,本脂肪酸は従来法によって脂肪酸メチルエステルへと誘導されること,2 位炭素のブロモ化は GC カラムの保持時間を大幅に変化させること,さらに他の標準的な脂肪酸メチルエステルと分離のうえ検出可能であることを明らかにし,その EI マススペクトルを得た。この結果は本脂肪酸を用いた脂質代謝解析の向上に応用できるものと考えられる。

75(2), 533-535 (2009)
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