白石哲朗(水研セ西海水研), 岡本久美子(大分農林水研セ), 米田道夫(水研セ中央水研), 酒井 猛,大下誠二(水研セ西海水研), 尾上静正(大分農林水研セ), 山口明彦,松山倫也(九大院農) |
本研究では,2000 年 6 月~2001 年 6 月に長崎県五島近海で漁獲されたマサバの耳石を用い,直接キシレン浸漬により観察して年齢と成長を調べた。透明帯の出現割合と縁辺成長率解析の結果,輪紋は年に 1 回形成され,形成期は 12~4 月であった。飼育した既知年齢魚の耳石観察により耳石形成パターンが明らかとなった。GSI は 3~5 月に高く,産卵雌は 3 月中旬から 5 月中旬に見られた。同系群マサバの成長は雌雄間で差は認められず,成長式は FLt=406(1-exp (-0.372(t+1.68)))で表された。
山口宏史(道中央水試),松石 隆(北大院水) |
スケトウダラ日本海北部系群の管理方策を,不確実性を考慮したシミュレーションモデルを用いて検討した。モデルは資源量推定値の誤差,不確実な加入量変動と漁獲死亡係数の変動を考慮して 30 年間の資源動態を 22 の管理方策と現状のまま漁獲した場合について予測した。管理方策の評価は,4 つの観点から行った。その結果,弱い規制では,利用の観点から短期的評価は良いが長期的評価は悪くなるなど,評価に用いる指標や評価する期間によって管理方策の評価は異なり,管理方策の評価のためには多面的な評価を行う必要があると考えられた。
赤松友成(水研セ水工研), 中沢 泉,土山高史,木村奈保子(いであ) |
関門海峡に定点型録音装置を設置しスナメリの発するソナー音を受信することで存在を確認した。75 日間に 37 個体のスナメリが音響的に検出された。ほとんどのスナメリは夜間に出現し,正午から夕方 6 時の間は観察されなかった。一方,航走雑音から計数した通過船舶は昼間に多かった。潮流はスナメリの出現に影響を与えていなかったが,潮流と同じ方向にスナメリが泳ぐ傾向が認められた。スナメリは単独で現れ,比較的長距離の探索に適したソナーを用いていた。関門海峡におけるスナメリは,摂餌ではなく通過していることが示唆された。
高木基裕,坂井久美子(愛媛大農), 谷口順彦(東北大院農) |
日本産ウミタナゴ科魚類 3 種の Multiple paternity の出現様式についてマイクロサテライト DNA 多型を用いて調べた。推定されるオス親の遺伝子型から妊娠したメス親の Multiple paternity が証明された。Multiple paternity はウミタナゴにおいて 10 個体のうち 5 個体,オキタナゴにおいて 9 個体のうち 3 個体確認されたが,アオタナゴにおいてはみられなかった。また,Multiple paternity を示したウミタナゴおよびオキタナゴの父系は 2 または 3 であることがわかった。
Terry D. Beacham (Pacific Biol. Sta., Canada), 佐藤俊平,浦和茂彦(水研セさけますセ), Khai C. Le, Michael Wetklo (Pacific Biol. Sta., Canada) |
日本系サケ 26 個体群におけるマイクロサテライト (MS) 14 遺伝子座の変異を調べ,個体群構造を解析した.各遺伝子座は高い変異性を示し,22~144 個の対立遺伝子が確認された.日本のサケは概ね 7 地域個体群に分かれ,そのうち後期来遊群を主体とする本州太平洋沿岸個体群が最も遺伝的に隔離していた.3 ヵ所の河川個体群では,回帰時期によって遺伝的に異なることが示唆された.日本系サケは北米系サケよりも高い遺伝的多様性を維持していた.観察された変異は沿岸等で漁獲されるサケの地理的起源を推定するのに有効と判断された.
久保敏彦,坂本 亘,村田 修,熊井英水(近大水研) |
クロマグロは海水温よりも高い体温を保つ。熱損失は体表面と鰓での熱輸送により起こり,身体で産生される熱は代謝熱に由来する。体温維持能力は個体の成長段階で異なり,より大きな身体はより高い体温を保つ。微細なセンサーを持つ温度計と回流水槽を用いて遊泳するクロマグロ体温を測定し,全熱交換係数,水温との差,代謝熱を見積もった。尾叉長 20.0 cm 以上の魚で水温よりも高い体温を保った。全熱交換係数は体重の-0.695 乗に一致した。クロマグロ稚魚は 3.0 FL/s の遊泳速度で好気的代謝から嫌気的代謝に切り替わった。
川俣 茂(水研セ水工研) |
細長い直立構造物によるウニ場での海中造林の可能性を検討するため,アラメ葉片の餌を 2.5 cm 間隔に貼付した直立棒(径 3, 10 mm)を用いて軌道流速(0, 0.2, 0.3, 0.4 m/s)の条件下でキタムラサキウニの這い上がりに関する振動流水槽実験を行った。振動流なしの条件ではウニは直ちに棒に登って下から順に餌を摂食した。最上部の餌までの摂食は流速の増加に伴い有意に減少したが,棒の径には影響されなかった。ウニは一度登り始めると,流速で決定される率で登り続け,磯焼け場のウニの侵入防止には少なくとも 0.1 m/s を超える流速が必要であると予測された。
阿部真比古(水研セ西海水研), 倉島 彰,前川行幸(三重大生物資源) |
日本中部産の培養アマモ実生を用い,5~35℃ の水温下で 6 日間培養しながら光合成を測定し,高温耐性を明らかにした。最大総光合成速度 Pmaxg は培養直後では 29℃ で最大となったが,培養期間中に 25℃ へ移行した。光補償点 Ic は培養期間中,29~30℃ で急激に増加した。29~30℃ では培養期間中に草体が脱色・枯死した。5~28℃ では草体の光合成活性に大きな影響は与えないことから,高温限界は 28℃ であった。アマモの高温限界水温は高温側分布限界と一致し,光合成特性と分布限界との関連性が示唆された。
南條楠土(東大院農),河野裕美(東海大沖縄研セ), 佐野光彦(東大院農) |
西表島浦内川のマングローブ水域の魚類群集において,構成種 67 種の餌利用パターンを調査した。コバンヒメジやオキナワフグなどの 9 種では,成長に伴う食性の変化がみられた。これらの稚魚はカラヌス類,キクロプス類,ヨコエビ類,デトリタスなどを主な餌としていたが,成長するにつれて他の餌項目を利用するようになった。出現各種は底生大型甲殻類食魚,底生小型甲殻類食魚,デトリタス食魚,草食魚,魚食魚,動物プランクトン食魚,多毛類食魚,および昆虫食魚の 8 群に分類された。構成種数では,底生大型甲殻類食魚が最も多かった。
三田村啓理(京大院情報),光永 靖(近大農), 荒井修亮(京大院情報), Thavee Viputhanumas(タイ国水産局) |
2002 から 2004 年までタイ国のメコン川で,メコンオオナマズ 28 尾の移動を超音波テレメトリーで調べた。供試魚は,放流から 97 日モニタリングできた。放流後,供試魚は放流地点付近に数日間滞在した。その後,16 尾は,モニタリングできなかった。これらは受信機の受信範囲外の対岸(ラオス)沿いを移動したと考えられる。12 尾は,放流地点以外の受信機でもモニタリングできた。このうち 6 尾は 30~80 km 上流へ,1 尾は 50 km 下流へ移動した。この 7 尾が昼間に移動したことから,メコンオオナマズは昼行性と考えられる。
阿見弥典子,天野勝文(北里大海洋), 飯郷雅之(宇都宮大農),山野目健(岩手水技セ), 高橋明義,山森邦夫(北里大海洋) |
オレキシン(ORX)は哺乳類において食欲制御に関与する。カレイ目マツカワでは,メラニン凝集ホルモン(MCH)と黒色素胞刺激ホルモン(MSH)が食欲を制御すると考えられる。そこで,マツカワにおける ORX ニューロンの脳内分布と MCH・MSH との組織学的相互作用を調べた。ORX 免疫陽性細胞体は視床下部に,繊維は終脳,視床下部,中脳および延髄の広範囲に検出された。ORX 繊維は MCH および MSH 細胞体と密接して,さらに,MCH および MSH 線維も ORX 細胞体に密接して存在した。以上より,マツカワ脳内において ORX, MCH および MSH に相互作用が存在することが示唆された。
Marty Riche (HBOI, USA) |
クロハタの最大増重率と飼料効率を得るための飼料脂質レベルを明らかにする目的で,タンパク質源にメンハーデン魚粉(FM)と動物タンパク質濃縮物(APC)を用い,飼料脂質レベルを 4 段階(7, 10, 13 と 16%)とした 2×4 元配置実験を行った。飼料は同窒素量(46% 粗タンパク質,CP)とし,クロハタに 10 週間給餌した。その結果,FM 区は APC 区より増重率が高かったが,高脂質レベルでのタンパク質節約効果は見られなかった。正味タンパク利用率の二次多項式回帰分析結果により,最適な脂質レベルはタンパク質源により異なり,10~12% であった。
(文責 竹内俊郎)
Laddawan Krongpong,二見邦彦,片桐孝之, 延東 真,舞田正志(海洋大) |
輸入ウナギで残留が問題となったニトロフラン剤代謝物,AOZ の残留分析に ELISA 法の導入を検討した結果,検出限界は 1.0 ppb であり,LC-MS 法と高い相関性が得られ,残留検査への応用が可能であると判断した。ウナギ組織の AOZ の残留試験の結果,23℃ における AOZ の半減期は筋肉で約 25 日,肝臓で約 21 日であり,薬浴濃度の影響は受けなかったが,低水温により延長した。
矢島 綾,黒倉 寿(東大院農) |
ベトナムにおける家畜屎尿を施肥利用した淡水魚養殖について,養殖池内での作業・汚染魚の取り扱いを労働衛生リスク要因として健康リスク評価を行った。家畜屎尿が養殖池水および養殖魚体表の糞便系汚染源として特定された。養殖池内での作業・汚染魚の取り扱いに伴う腸管感染症リスクは,US EPA 許容リスクを 100~1000 倍超過した。このリスク値は免疫の影響を反映せず,現地の実際の罹患率は予見しないが,衛生改善が進んだ将来の労働衛生リスクを示すため,養殖従事者の健康保護のためのリスク低減策の必要性が認識された。
成田光好(三重大生資),川元貴由(近大農), 磯和 潔(三重栽漁セ), 林 政博,青木秀夫(三重科技セ), 太田博巳(近大農),古丸 明(三重大生資) |
アコヤガイ Pinctada fucata martensii 精子の運動率と受精率の低下要因を明らかにするため,SEM を用いて凍結前後の精子の形態を観察した。
凍結前精子の運動率は 69.9±4.2% であったが,凍結精子では,24.0±1.8% に低下した。凍結精子の 56.6±3.9% に鞭毛の欠損が見られたが,凍結前では 8.7±2.0% であった。また,凍結精子の 76.6±5.2% に先体の異常が見られたが,凍結前では 0.9±0.3% であった。正常な形態で受精が可能と推定される凍結精子は 15.4±3.5% であった。以上の結果から,凍結精子の運動率と受精率の低下は,凍結による鞭毛と先体の損傷にあると考えられた。
岩下恭朗(東海大), 山本剛史,古板博文,杉田 毅(水研セ養殖研), 鈴木伸洋(東海大) |
大豆油粕主体の無魚粉飼料を摂取したニジマスにおける組織変性の原因を探索するため,各種大豆抗栄養因子を添加した半精製飼料を給与したニジマスについて検討した。大豆サポニンを摂取した魚の直腸では粘膜上皮細胞の微絨毛や取り込み小胞が消失し,大型空胞変性が生じていた。また,サポニンなどとともに大豆レクチンを添加した飼料区では粘膜固有層やその基底部の増生も認められた。これらのことから,大豆油粕飼料を摂取したニジマスの腸管変性には,大豆サポニンとともに大豆レクチンも関与している可能性があるものと推察された。
岩下恭朗,鈴木伸洋(東海大), 山本剛史(水研セ養殖研), 柴田潤一郎,磯川桂一郎,Ang Hean Soon, 池端佑仁(沼津高専), 古板博文,杉田 毅(水研セ養殖研), 後藤孝信(沼津高専) |
大豆油粕(SBM)主体飼料を摂取したニジマスにみられる組織変性に対するタウロコール酸(C-tau)および大豆レシチンの添加効果を検討した。無添加飼料では成長が飼料区間中最も劣り,肝臓および直腸に組織変性がみられたが,C-tau およびレシチンを添加するとこれらは改善し,C-tau 添加区の成長は魚粉飼料と同等であった。以上のことから,SBM 飼料給与時のニジマス組織変性に対し,C-tau および大豆レシチンは牛胆汁末添加時と同様の変性改善効果があるが,レシチンによる成長改善効果は限定的であると推察した。
山本剛史,照屋和久(水研セ養殖研), 原 隆(日水大分海洋研究セ), 外薗博人(鹿児島水技セ), 鈴木伸洋,岩下恭朗(東海大), 橋本 博(水研セ志布志), 松成宏之,古板博文,虫明敬一(水研セ養殖研) |
カンパチ種苗の生産に供した飼餌料や生産した種苗などの分析結果から,飼餌料に不足する可能性のある栄養素を推定した。生物餌料の給与では種苗の 22:6n-3 が,ワムシや配合飼料の給与では種苗のタウリンが少なかったが,それぞれ配合飼料およびアルテミアの給与により増加したことから,飼餌料中のそれら成分の含量を反映すると考えられた。一方,種苗の腸管上皮にはリン脂質欠乏を示唆する変性はみられなかった。この結果,カンパチ種苗では,特に必須脂肪酸やタウリンの要求量を明らかにする必要性が示唆された。
吉川 毅,中原美由紀,田畑綾乃,国米真吾(鹿大水), 古澤 剛(鹿連大農),坂田泰造(鹿大水) |
Saprospira 属分離株 SS98-5, SS03-4 より,滑走運動時に特異的に発現する細胞質繊維状構造物構成タンパク質 SCFP をコードする遺伝子とその周辺領域の ORF 構造を解析した。その結果,SCFP はファージ尾鞘タンパク質ファミリーに分類され,SCFP 遺伝子がバクテリオファージ由来であることが示唆された。また,SCFP 遺伝子周辺領域の ORF 構造が他の原核生物にも保存されていた。SCFP 遺伝子は,滑走運動の有無に関わらず転写されていた。
Ekambaram Padmini, Munuswamy Usha Rani, Bose Vijaya Geetha(マドラス大学,インド) |
HSP90α 分子シャペロンは細胞の統合性維持や,ストレス応答から細胞を守る際に必須である。そこで,HSP90α 発現に対する環境汚染および季節の影響について調査した。ボラ肝細胞の HSP90α 発現量および酸化ストレスを計測したところ,非汚染区に比べ汚染区では有意に上昇していた。また,HSP90α 発現量は季節的変動を示し最大発現量は夏季に観察された。このように,環境汚染による HSP90α 過剰発現は酸化ストレスに対して特異な効果を示し,季節変化も HSP90α 発現に大きな影響を与えることが示唆された。
(文責 廣野育生)
熊谷祐也,井上 晶,田中啓之,尾島孝男(北大院水) |
ホタテガイ中腸腺滲出液から,SDS-PAGE で分子量約 38,000 と見積もられる β-1,3-グルカナーゼ PyLam38 を精製した。本酵素はラミナリンおよびラミナリオリゴ糖を加水分解し,主にグルコースおよびラミナリビオースを生成した。一方,本酵素は糖転移活性を有しており,ラミナリテトラオースを第 1 基質とした場合,ラミナリトリオースの還元末端に様々な単糖,アルコール,キシロオリゴ糖を導入できた。この活性を利用すれば,ラミナリオリゴ糖と様々な化合物から成る新規のヘテロオリゴ糖を作出できると考えられた。
牛坂理美,杉江恒二,山田真澄(北大院環境), 笠原真理子(北大院水), 久万健志(北大院環境,北大院水) |
沿岸性珪藻 Thalassiosira weissflogii 培養においてマンガン及び鉄の両金属添加だけが最大比生長速度と最大細胞数を示した。鉄欠乏でマンガン十分な培養では,数日間の培養後に鉄添加することにより,T. weissflogii の生長能力を回復させることができた。これは,マンガン十分な培養においては,マンガンスーパーオキシド不均化酵素形成により長期にわたりスーパーオキシドラジカルのような有害誘導体を無毒化するため,長期培養後に鉄添加することにより生長能力を回復することができたためと考えられた。
Ayhan Duran (Aksaray Univ., Turkey), Unit Erdemli (Inonu Univ.), Mustafa Karakaya, Mustafa Tahsin Yilmaz (Selcuk Univ.) |
ニジマス Oncorhynchus mykiss W. およびコイ Cyprinus carpio L. を頭部打撃あるいは窒息によって致死させた。致死直後,12, 24, 32, 48 および 60 時間後に試験魚からフィレーを採取して種々の物理化学的性状を評価し,微生物学的検査を行った。その結果,いずれの魚種においても,頭部打撃による致死法は,死後硬直の開始を遅らせて加工に適した時間を延長するとともに,テクスチャーや TVB-N および MDA レベルからも窒息死より優れているものと考えられた。
(文責 潮 秀樹)
木宮 隆(高知大黒潮圏,水研セ中央水研), 大谷和弘,佐藤節子(高知大黒潮圏), 阿部祐子,荻田淑彦,川北浩久, 浜田英之(高知深層水研), 小西裕子(高知大総研セ), 久保田賢,富永 明(高知大黒潮圏) |
海藻抽出物のラット RBL-2H3 細胞およびマウス好酸球の脱顆粒に対する抑制作用を検討した。カジメおよびタオヤギソウの水抽出物,ハバノリ,カヤモノリ,ワカメ,オニアマノリ,ミルおよびヤブレグサのメタノール抽出物が RBL-2H3 細胞の脱顆粒を抑制した。メタノール抽出物の抑制活性の多くは酢酸エチルおよびヘキサン層に移行した。ハバノリの酢酸エチル層は RBL-2H3 細胞,ヘキサン層は好酸球の脱顆粒を抑制したことから,ハバノリが好塩基球および好酸球の脱顆粒を選択的に抑制する物質を含むことが示唆された。
陶 岑(京大院農,上海海洋大), 菅原達也,前田沙矢香(京大院農), 王 錫昌(上海海洋大),平田 孝(京大院農) |
マイコスポリン様アミノ酸の一種ポルフィラ-334 をスサビノリから調製し,抗酸化活性を調べた。ポルフィラ-334 は,水溶性アルキルラジカル発生剤 AAPH,および一重項酸素によるリノール酸の酸化に対して穏やかな抗酸化活性を示した。一方,0.02 μM α-トコフェロールは,50 μM ポルフィラ-334 が示す抗酸化活性を相乗的に顕著に増大させた。以上の結果から,ポルフィラ-334 は海苔の酸化安定性に寄与していると考えられた。
M. Liang, S. Wang, J. Wang, Q. Chang(黄海水研), K. Mai(中国海洋大) |
海水および汽水で養殖されたバナメイエビの筋肉成分を分析したところ,海水区では汽水区に比べ粗タンパク質が多く,水分が低かったが,粗脂肪や灰分には差がなかった。遊離アミノ酸は両者ともグリシン,アルギニンなどに富み,タンパク質構成アミノ酸についてはグルタミン酸,グリシンなどが多かった。ヌクレオチドは AMP と IMP が主成分で,有機酸の主成分は酢酸とリンゴ酸であった。官能評価の結果,海水区の方が旨味,甘味,総合的な香気が強く,泥臭さが弱かった。後味については両者に差が認められなかった。
(文責 落合芳博)
及川 寛(水研セ中央水研), 松山幸彦(水研セ瀬水研), 里見正隆,矢野 豊(水研セ中央水研) |
広島県呉湾で採取したイシガニの麻痺性貝毒成分蓄積を調べた。2005 年は 41 試料のうち 17 試料で規制値(4 MU/g)を越えるレベルの毒力が肝膵臓部に認められ,最大値は 37.4 MU/g であった。このことからイシガニも毒化に注意が必要な種と考えられた。毒化したムラサキイガイを餌料として与えたイシガニは,主として肝膵臓部に PSP 成分を蓄積し,蓄積率は 12.9~24.6% であった。また,餌料イガイには認められなかった dcGTX2 および dcGTX3 がイシガニに蓄積しており,体内での毒成分の変換が示唆された。
大泉 徹,永田栄子,舊谷亜由美, 赤羽義章(福井県大生物資源), 白井 純(扶桑化学) |
浸漬によるグルコン酸 Na,酢酸 Na およびリンゴ酸 Na の魚肉中への浸透とその魚肉水分量に及ぼす影響を NaCl やソルビトール(S)のそれらと比較検討した。陰イオン種のカルボン酸の浸透性は Cl よりも低く,S のそれと類似していた。Na は浸漬液中の Na イオン濃度に依存して浸透したが,陰イオン種との浸透量の比はカルボン酸塩の種類によって異なった。また,カルボン酸塩の脱水作用は分子量に依存して増大したことから,浸漬液中における電離と分子量がカルボン酸塩の浸透特性と脱水作用に影響を及ぼすことが示唆された。
山崎 健,織田銑一(名大院生命農学), 白木原美紀(東邦大理) |
2002 年 6 月に熊本県大矢野島に漂着したミナミハンドウイルカ 1 頭(体長 258 cm,♂)の胃内容物分析を行い,餌生物を同定した。胃内容物中の魚類の同定は,外部形態,耳石および利用可能な全骨格部位を用いて,比較標本を参照して行った。頭足類の同定には下顎板を用いた。分析の結果,メナダ属 4 個体,カワハギ科 3 個体,ヒラ 2 個体,ボラ科 1 個体,アナゴ科 1 個体,ヤリイカ属 1 個体を捕食していたことが明らかとなった。このうち,カワハギ科とアナゴ科については,耳石は採集されず,他の骨格部位により同定が可能となった。
藤田敏明(北大院水),深田陽久(高知大農), 清水宗敬(北大院水),平松尚志(北大院水), 原 彰彦(北大院水) |
サクラマス雄の成熟に伴うコリオジェニン H, L およびビテロジェニン血中量の変化を測定した。1 年魚および 2 年魚雄において,コリオジェニンは 1 個体を除くすべての雄血清中に検出された。血中コリオジェニン量は 1 年魚の 8 月以降に増加し,ほとんどの個体で 10 μg/mL 以下で推移した。一方,ビテロジェニンは 1 年魚には全く検出されず,2 年魚でも一過性のエストロジェンのピークと同時に 3 個体でのみ検出された(6.52±3.49 ng/mL)。このことから,雄におけるコリオジェニンの正常値は 10 μg/mL 以下であることが示唆された。
長谷川靖,池田洋子(室蘭工大,応化) |
我々は,ホタテガイ外套膜組織より,非筋タイプのミオシンIIロッド領域の cDNA をクローニングし,その構造的特徴を明らかにした。このミオシン尾部には,非筋タイプミオシンに特徴的なノンヘリカルテイル領域が存在し,さらに他のミオシンIIには見られないおよそ 140 アミノ酸の欠損が見出された。ホタテガイ外套膜非筋ミオシンIIは,ミオシンのフィラメント形成機構を明らかにするために有用であると考えられる。
佐々木秀明,津田政春,岩田惠理 (いわき明星大,科学技術) |
ブルーギル Lepomis macrochirus の α2-マクログロブリン(α2-M)遺伝子の部分配列を決定した。部分配列は 1647 bp から成り,548 残基のアミノ酸配列が演繹された。推定されたアミノ酸配列は他の魚種の α2-M 配列と約 45% の相同性を示した。RT-PCR 法により α2-M の mRNA を検出した結果,肝臓において季節や雌雄を問わず α2-M の転写が観察された。また,繁殖期の個体の脳において α2-M 遺伝子の特異的な転写が観察された。