外丸裕司,白井葉子,長崎慶三(水研セ瀬水研) |
Heterosigma akashiwo に感染する Phycodnaviridae 科のウイルス HaV は,294 kbp の 2 本鎖 DNA を持つ粒径 0.2 μm の大型正二十面体ウイルスである。これまでに H. akashiwo と HaV は現場で密接な生態学的関係を維持し,毎年の赤潮形成・崩壊を繰り返していることが示唆されている。また感染・被感染をめぐる両者の複雑な相互関係の存在が示され,その詳細な機構が解き明かされつつある。本総説では HaV に関する生態・生理・遺伝学的研究成果を,最新の知見と合わせて概説する。
庄野 宏(水研セ遠洋水研) |
ゼロ・データを多く含む CPUE 標準化に用いられる Delta 型 2 段階モデルにおける,抽出された CPUE 年トレンドの近似的な信頼区間を求める手順を提案した。この方法は Taylor 展開によるデルタ法と正規近似を組み合わせた簡便な手法であり,実用性が高い。ゼロ・キャッチ率が 80% を超える,日本のはえ縄公庁船により漁獲された北太平洋クロトガリザメのデータに対してこの方法を適用し,現実的な 95% 信頼区間の値を得た。対数 CPUE の漸近正規性に基づく左右非対称の区間推定法も提案し,適用例では両者が良く似ていた。
岡村 寛,岩崎俊秀,宮下富夫(水研セ遠洋水研) |
日本沿岸の小型鯨類管理は従来,データや仮定の不確実性を明確に考慮することなく行われてきた。そのような管理は不確実性により失敗する傾向にある。本論文において,我国の小型鯨類に適用可能なシミュレーションを利用した管理方式を提示する。例として,イシイルカ資源に方法を適用し,幾つかの管理方式の不確実性に対する頑健性を調べた結果,現行の管理方式では安全に資源を管理するのは困難だが,PBR のような保守的な管理方式は適切な管理を実行できることが示された。
Efthymia V. Tsitsika, Christos D. Maravelias (Hellenic Centre Mar. Res., Greece), Premachandra Wattage (CEMARE, Univ. of Portsmouth, UK), John Haralabous (Hellenic Centre Mar. Res., Greece) |
包絡分析法を用いて,東地中海のまき網漁業の漁獲収容能力とその利用について評価した。同様な条件で操業する他の漁船と比較して,個々の漁船の効率を推定した結果,対象魚種に対していずれも過剰漁獲能力を示した。サイズの異なる二つのまき網船団の分析結果より,12~24 m 船団に比べて,24~40 m 船団はより効率的であり,地中海のまき網漁業では操業日数などの可変入力を増すことにより約 23% の漁獲増が可能であることを示唆した。一方では,小さいサイズの船団でもすでに記録的な漁獲に達していることが推定された。
(文責 胡 夫祥)
久米 元(Landcare Research), 古満啓介(長大院生産),山口敦子(長大水) |
ウチワザメの年齢と成長および成熟年齢について明らかにした。標本は 2002 年 5 月から 2006 年 9 月に有明海中央部で底曳網および刺網により採集した。脊椎骨椎体を年齢形質として使用し,年齢査定は軟 X 線法により行った。成長は雌雄ともに von Bertalanffy 成長モデルにより,最もよく表すことができた。成長には顕著な雌雄差がみとめられ,雌は雄よりも大きな漸近サイズに達し,より遅い成長を示した。最高年齢は雄で 5 歳,雌で 12 歳であった。50% 成熟年齢は雄で 2.1 歳,雌で 2.9 歳と推定された。
Md. Shaheed Reza,古川聡史(東大院農), 望月俊孝(河久),松村 久(下関唐戸魚市場), 渡部終五(東大院農) |
トラフグおよびカラスの遺伝的比較のために,トラフグ,カラスおよびハイブリッド様の外観をもつ試料につき,DNA 塩基配列の解析を行った。解析した制御領域以外の mtDNA で,トラフグの 15% の個体が既報のカラスの配列をもち,カラスの 60% の個体は既報のトラフグの配列と同じであった。ハイブリッド様試料のうち 2 個体は,いくつかの塩基箇所ではカラスの配列を,その他の箇所ではトラフグの配列を示した。残りのハイブリッド様試料はトラフグの配列を示した。一方,核 DNA で解析した領域では,2 魚種間でほとんど差がなかった。
細谷 将,金子豊二(東大院農), 鈴木 譲(東大院農水実),日野明徳(東大院農) |
トラフグの行動における個体差を評価し,さらにその個体差がストレス応答と関係するかを調べた。供試魚には,天然由来の親魚から採卵し,稚魚まで育成した同胞個体 330 尾を用いた。全個体について,行動の活発さを,別水槽に移し替えた直後 6 分間の行動をもとに評価し,行動が活発な群と活発ではない群(それぞれ 42 尾)を選別した。次に,これらの 2 群を急性ストレス実験に附し,コルチゾール応答を群間で比較した。その結果,活発でない群ほどストレスからの回復が早い傾向が見られ,活発な群よりも養殖に適していると考えられた。
白石哲朗,Suvarna D. Ketkar,北野 載, 入路光雄,山口明彦,松山倫也(九大院農) |
卵黄形成が終了したマサバ雌親魚に hCG を異なった時刻(1400 および 0200 h)に投与した結果,投与時刻に関係なく 33 時間後に排卵が起こった。また,GnRHa を投与した場合も投与時刻に関係なく 36 時間後に排卵が起こった。以上の結果より,マサバの成熟・排卵時刻は GtH の放出時刻に依存すること,hCG による成熟・排卵のタイムコースは,マサバ GtH によるものとほぼ同じであることが示唆された。
韓 志強,高 天翔(中国海洋大), 柳本 卓(水研セ遠洋水研),桜井泰憲(北大院水) |
水産重要種であるシログチ Pennahia argentata の集団構造を明らかにするため,日本と中国の 12 地点から採集した 132 個体を用い,mtDNA の調節領域とシトクローム b 遺伝子の塩基配列分析を行った。得られたハプロタイプから,中国と日本沿岸の大きく 2 つの集団に分けられた。塩基置換率,ミスマッチ分析及び中立性の分析から,これらの二つの集団は更新世の氷河期に分化し,一斉放散したものと考えられた。それぞれの集団で異なる回遊経路をすることなどの生態的な特徴が,集団ごとの遺伝的な特徴を維持しているものと推測された。
海部健三(海洋大),赤松友成(水研セ水工研), 瀬川 進(海洋大) |
頭足類の音感知においては,魚類の内耳と類似の構造を持つ頭足類の平衡胞が粒子運動を感知すると予測されていたが,実験に基づく直接的な証拠はなかった。本研究ではイイダコ Octopus ocellatus を対象に,平衡石除去手術と対照手術を行い,音刺激に対する反応を,呼吸運動を指標として比較した。その結果,頭足類の平衡胞が音刺激を感知することが明らかにされた。
三田村啓理(京大院情報),光永 靖(近大農), 荒井修亮,山岸祐希子(京大院情報), Metha Khachaphichat (タイ国パヤオ内水面水産研究開発センター), Thavee Viputhanumas(タイ国水産局) |
2003 から 2004 年までタイ国メプン湖で,メコンオオナマズ 8 尾の水平鉛直移動を超音波テレメトリーで調べた。8 日から 9 ヶ月以上モニタリングできた。放流後 40 日間は水平移動範囲は大きく,その後は小さくなった。オオナマズは湖の深いエリアを好むことが示唆された。オオナマズは日周移動を示した。昼間は夜間より活発な水平移動を示した。昼間は鉛直移動を繰り返すのに対して,夜間は遊泳深度を変化させなかった。オオナマズの鉛直移動は物理環境と関係あることが予想された。
Aayathan P. Dineshbabu(インド中央海洋漁業研), Joseph K. Manissery(インド農科大水産学院) |
南インドのマンガロール海岸沖に生息するクダヒゲエビ(十脚目)の繁殖生物学に関する研究を行った。メス卵巣の色とサイズおよび卵径の変化に基づき卵巣の成熟状況は 5 段階に分けることができ,雌雄の 50% 成熟サイズはそれぞれ全長 54.5 mm と 66.5 mm と推定された。成熟の卵子の粒径は 0.24~0.35 mm であった。本種は連続産卵の習性があるが,年に 1~2 月と 11 月の 2 つのピークを持っていることが分かった。全長 80 mm と 110 mm の雌成熟卵巣中の抱卵数は 38,500~133,700 個と推定された。x2 検定により雌雄比は毎年ほぼ同率(P>0.01)であった。
(文責 竹内俊郎)
Nadia C. Olivares-Bañuelos (Cent. Inv. Cie. Est. Sup. Ensenada), Luis M. Enríquez-Paredes (Univ. Autónoma Baja California), Lydia B. Ladah (CICESE), The late Jorge de la Rosa-Vélez (Univ. Autónoma Baja California) |
カリフォルニア半島メキシコ沿岸の 6 地点から得られたアメリカムラサキウニ Strongylocentrotus purpuratus について mtDNA RFLPs による個体群構造の解析を行った。その結果,本種のカリフォルニア半島沿岸域における共有ハプロタイプの均一分布は北から南へ流れるカリフォルニア海流の 1 方向性によるものと考えられ,Punta Baja の特異的なハプロタイプ分布は湧昇域を含む特徴的な海洋構造の影響と考えられた。
(文責 瀬川 進)
渡邊壮一,新居田繭,丸山赳司,金子豊二(東大院農) |
魚類の浸透圧調節機構への関与が考えられる Na+/H+ 交換輸送体(NHE)の一つ,NHE3 を広塩性魚モザンビークティラピアの鰓より同定した。淡水飼育魚の鰓における NHE3 発現量は海水飼育魚の約 2 倍であり,NHE3 は淡水環境下でより重要であると考えられた。また鰓における NHE3 の局在を調べたところ,淡水飼育魚では Na+/K+-ATPase 免疫反応が強い塩類細胞の頂端膜上に,海水飼育魚では海水型塩類細胞の頂端膜上に見られ,NHE3 の低浸透圧適応および体液の抗酸性化機構への関与が示唆された。
崔 成劑,朴 恩貞,遠藤博寿,北出幸広, 嵯峨直恆(北大院水) |
スサビノリの葉緑体およびミトコンドリアの遺伝様式を調べるため,我々は,TU-2 株,KGJ 株およびこれらの株をそれぞれ母株・父株となるように交雑をして得られた 44 個の交雑胞子体コロニーを用いて CAPS 解析を行った。carA 遺伝子(葉緑体)および rps 遺伝子と rns 遺伝子の間のスペーサー(ミトコンドリア)をマーカーとして解析を行ったところ,86.4% は母型のバンドパターン,11.4% は両親型 2.2% は父型のパターンを示した。これらの結果は両オルガネラが母性遺伝することを強く示唆している。
天野春菜,北村真紀子,藤田敏明, 平松尚志,東藤 孝(北大院水), 巣山 哲(東北水研),原 彰彦(北大院水) |
サンマ卵巣からハイドロキシルアパタイトおよびゲル濾過カラムを用いて,ビテロジェニン(Vg)関連卵黄蛋白質であるリポビテリン(Lv)を精製した。精製 Lv はゲル濾過において 420 kDa, SDS-PAGE では 99 kDa の重鎖および 34 kDa の軽鎖として観察された。作製した精製 Lv に対する抗体は,Western blotting では雄血清とは反応せず,雌血清とのみ特異的に反応した。雌血清で観察された 194 kDa のメインバンドは,本種の Vg であると考えられた。
吾妻行雄,遠藤 光,谷口和也(東北大院農) |
キタムラサキウニの 8 腕期幼生の生残と変態におよぼす 2,4-ジブロモフェノール(DBP)と 2,4,6-トリブロモフェノール(TBP)の阻害効果を調べた。ジブロモメタンの飽和溶液の 1/2 希釈液に 1 時間被爆された幼生は 1 時間後にほぼ 100% が変態した。しかし,TBP の 1 ppm 溶液では,変態率は 73% へ,10 ppm と 20 ppm では 2 時間後に 40% 未満へと減少した。DBP の 1 ppm と 10 ppm では 2 時間後に,それぞれ 43% および 5 % へと顕著に減少した。TBP の 50 ppm と DBP の 20 ppm および 50 ppm では,1 時間後にすべてが死亡した。
中島 淳,鬼倉徳雄,及川 信(九大院農) |
Sung-Yong Oh, Choong Hwan Noh, Rae-Seon Kang, Chong-Kwan Kim(韓国海洋研), Sung Hwoan Cho(韓国海洋大), Jae-Yoon Jo(釜慶大) |
平均体重 1.43 g のクロソイ Sebastes schlegeli 稚魚をそれぞれ 0, 5, 10 および 14 日間(対照,F5, F10, F14)無給餌した後,35 日間の再給餌を行い,成長の補償効果および魚体組成への影響を調べた。飼育終了時に F5 区のみ対照区と同等の体重を示し,完全な補償成長が得られた。F10 区と F14 区は体重だけでなく,魚体の脂質/LBM 率も対照区と F5 区に比較して低かった。なお,飼料効率は各区の間に差がなかった。以上の結果,再給餌後におけるクロソイ稚魚の補償成長の程度は無給餌期間に左右されることがわかった。
(文責 竹内俊郎)
王 淳英,韓 慶男(韓国仁荷大), 吉松隆夫(水研セ養殖研) |
メフグおよびトラフグ仔魚を用い,α-LNA と DHA を強化したアルテミア幼生を給餌して必須脂肪酸としての効果を比較した。両者とも DHA 区でより高い生残,増重が得られたが,メフグの場合は増重で区間差は認められなかった。またメフグでは体脂肪酸組成中に α-LNA 区でもトラフグの 2 倍近い DHA が認められ,α-LNA から DHA へのより高い合成能が示唆された。また麻酔からの回復でも両区で差は認められず,メフグ仔魚では両脂肪酸の間で必須脂肪酸としての効果にトラフグの場合ほどの差はないと考えられた。
森山俊介(北里大水産),田代勝男(丸辰カマスイ), 古川末広(マリーン開発),川内浩司(北里大水産) |
本研究ではアワビ稚貝の成長促進におけるサケ成長ホルモン(sGH)の効果を液浴法により検討した。30 mg/L の sGH 溶液にアワビ稚貝を 1 時間液浴すると,液浴開始から 2 日までアワビの体液中に sGH 免疫活性が認められた。しかし,対照群ではこの免疫活性は検出されなかった。sGH 溶液にアワビ稚貝を 1 週間あるいは 2 週間毎に液浴して 120 週間飼育すると sGH 液浴群の殻長および体重は,対照群よりも有意に増加した。これからの結果は,アワビの体液中に取り込まれた sGH が成長を促進したものと考えられる。
Abhed Pandey,佐藤秀一(海洋大) |
ニジマス用低魚粉飼料における成長とリン(P)利用に及ぼす各種有機酸の影響を検討する目的で,クエン酸(CA),リンゴ酸,乳酸,液体メチオニン,液体微量元素(LTE)および P をそれぞれ添加した低魚粉飼料を作製し,ニジマス稚魚に 12 週間給餌した。その結果,飼育成績は CA あるいは LTE 添加区で P 添加区と同等の値を示し,さらに,P の保有率が改善された。これらのことより,CA のような有機酸を添加することにより,P を添加しなくてもよいことが示唆された。
金 信權,松成宏之,野村和晴, 田中秀樹,横山雅仁(水研セ養殖研), 村田裕子,石原賢司(水研セ中央水研), 竹内俊郎(海洋大) |
飼料のタウリン(T)含量と脂質(L)含量がヒラメ稚魚の成長と胆汁酸成分に及ぼす影響を明らかにするため,脱タウリン魚粉をタンパク質原料として,T0, 0.5, 1.5% 添加に対して L0 あるいは 5 % を添加した 6 種類の飼料を用いて,平均体重 0.04 g のヒラメ稚魚を 6 週間飼育した。その結果,L5-T1.5 区で優れた飼育成績が得られた。また,飼料への T 添加量の増加に伴って胆汁酸濃度は増加したが,L0 区では T0.5 区と T1.5 区の間に差はなかった。これらの結果から,飼料中 T と L 含量により,胆汁酸成分に影響を及ぼすことが分かった。
Gi Beum Kim (Mar. Ind. Inst. Gyeongsang Nat. Univ.), Mi Ran Kang, Jae Won Kim (Gangwon Prov. Coll.) |
日本海韓国沖合域で採集したスルメイカ Todarodes pacificus の Cd, Zn および Cu の器官別の蓄積をイカのサイズ,雌雄別に測定した。器官別の重金属濃度は肝臓が最も高く,外套膜が最も低かった。肝臓および鰓の Cu 濃度はヘモシアニンに含まれる Cu のため他の器官より高かった。肝臓の Cd 濃度は Cu や Zn の濃度に比べて低かったが,肝臓の重金属濃度の外套膜比は Cd が最も高く,スルメイカは韓国沿岸の重金属汚染の指標生物として有効であると考えられた。
(文責 瀬川 進)
坂見知子(水研セ養殖研), 藤岡義三,下田 徹(国際農研セ) |
タイ国の集約的及び粗放的エビ養殖池と近隣のマングローブ林内水路で,水中細菌群集組成を 16S rRNA 遺伝子断片の変成剤濃度勾配電気泳動法により比較した。集約的養殖池の細菌群集組成は,粗放的養殖池及びマングローブ林内水路と異なった。集約的養殖池の中でも,エビ単独の閉鎖式飼育とマングローブ-エビ複合飼育で細菌群集組成に違いが見られた。さらにマングローブ植樹池でエビ飼育を行うと細菌群集組成が集約的養殖池に近くなったことから,給餌を伴う集約的なエビ養殖が水中の細菌群集組成を変化させることが示唆された。
Aranzazu Hernandezz-Andres, Miriam Perez-Mateos, Pilar Montero, Maria del Carmen Gomez-Guillen (CSIC, Spain) |
本研究は加工工程における高圧処理が魚肉中のプロテアーゼ活性へ与える影響を多脂防魚イワシと少脂肪魚タラを対象として比較検討した。7℃下,20 分の 300 MPa 処理により魚肉中のプロテアーゼ酵素活性はイワシで 30.8%,タラで 9.5% 低下した。しかし,これら魚肉より抽出したプロテアーゼに対する高圧処理ではイワシで 16.8%,タラで 19.4% であった。これらの結果より,加工工程における高圧処理が魚肉中のプロテアーゼ活性に与える影響は魚肉の筋肉タンパク質構造により異なる可能性が明らかとなった。
(文責 村田昌一)
江成宏之,高橋義宣,河原崎正貴, 多田元比古(ニチロ中研), 竜田邦明(早大院先進理工) |
食経験が豊富なサケ肉を植物由来のプロテアーゼ(パパイン)により分解して得られるサーモンペプチドに,強い ACE 阻害活性を確認した。高血圧自然発症ラットに対する降圧効果が見られ,軽症高血圧者を対象とした臨床試験において有意な降圧作用が認められた。活性成分として新規のトリペプチドを含む 20 種のペプチドを同定し,最も活性に寄与する成分は Ile-Trp であることを見出した。また,サーモンペプチドは,他の降圧ペプチドと比べて消化酵素に対する耐性を示し,効果的な降圧作用を示す機能性食品として期待される。
Mohammed Anwar Hossain,池田大介(東大院農), 野村 明(高知工技セ), 福島英登,渡部終五(東大院農) |
高品質のねり製品原料として知られるマエソおよびワニエソ普通筋からミオシン重鎖(MYH)をコードする cDNA を単離し,一次構造を決定した。両 MYH とも 1936 アミノ酸から構成され,アミノ酸同一率は既報のシログチ MYH に対して 92~93% と,スケトウダラ MYH に対する 90% より高く,一般に考えられているゲル形成能の類似性と一致した。一方,16S rRNA 配列を用いた系統解析では,マエソおよびワニエソはシログチよりスケトウダラに近縁で,MYH のアミノ酸同一率とは異なった傾向を示した。
亀甲武志(滋賀水試), 原田泰志,竹内大介(三重大生資), 甲斐嘉晃(京大フィールド研) |
琵琶湖水系とその周辺水域において,河川型のイワナ 7 個体群の卵サイズを同時期に調査した。同一個体群内では,体サイズが大きい個体ほど卵サイズが大きかった。個体群間でも,体サイズを補正した卵サイズで変異が見られ,卵サイズと調査時の当歳魚の体長の間に負の相関が認められた。以上の結果から,地理的に近いイワナ個体群間においても,その河川環境は大きく異なり,その環境条件に応じて卵サイズも異なると考えられた。
安江尚孝,内海遼一(和歌山農水総技セ), 御所豊穂(和歌山県水産局) |
紀伊半島西岸海域において,春季のシラス漁期前にボンゴネットを用いてカタクチイワシ仔魚の分布豊度を調査した。また,カタクチイワシシラスの漁獲量との関係を調べ,漁獲量予測の可能性について検討した。その結果,補給源の仔魚の全長はすでに漁場へ加入した仔魚と比較して一般的に小さかった。しかしながら,補給源の仔魚採集量はシラス漁獲量と高い正の相関があり,すでに漁場へ加入した仔魚採集量や補給源の卵密度よりも精度良くシラス漁獲量を予測することが明らかとなった。
鈴木研太,水澤寛太,Chris Noble, 田畑満生(帝京科大理工) |
自発摂餌と手撒き給餌においてニジマスを小個体群で飼育し,成長,FCR,鰭の損傷を比較した。給餌条件間において報酬量と FCR に差はみられなかったが,日間成長率は自発摂餌で飼育した魚のほうが高かった。実験終了時における背鰭の損傷は手撒き給餌で飼育した魚に多かった。尾鰭の損傷に違いはなかった。背鰭の損傷は自発摂餌によって減少したが,手撒き給餌では減少しなかった。この結果から,自発摂餌で飼育することによって,成長率を高め,背鰭の損傷を減少させることができると期待される。
小林香苗,劉云春,長谷川靖(室蘭工大,応用化学) |
以前我々は,ホタテガイ貝殻粉末を食餌させたラットにおいて,白色脂肪組織重量の有意な減少が認められること,そしてその白色脂肪組織において UCP 1 の発現量の上昇が生じることを明らかにした。本研究では,貝殻中に含まれる有機成分が UCP 1 の発現量の増加を引き起こすことを示すため,培養脂肪細胞(C3H10T1/2)を用い検討を行った。貝殻より抽出した有機成分を添加することにより,脂肪細胞中の UCP 1 mRNA の発現レベルの上昇が認められた。