Fisheries Science 掲載報文要旨

底曳網コッドエンドの角目網ウインドー付近における魚類の逃避・駆集反応行動

金 龍海(Gyeongsang Natl. Univ., Korea),
C. S. Wardle(FRS Mar. Lab., UK),
安 永秀(Gyeongsang, Natl. Univ., Korea)

 北海において,底曳網コッドエンドの角目網ウインドーに対する haddock と whiting の行動を分析した。逃避した魚類は角目網にほぼ直角に接近し,方向をあまり変えずに網目を通過した。駆集された魚類は,角目網に鈍角で接近し,その後大きく反転してコッドエンドに留まった。魚の遊泳速力と角速度は逃避と駆集反応で異なったが,遊泳パラメータはパニック反応のように大きく不規則な変動を示した。角目網ウインドーに対する逃避,駆集反応は,漁具の刺激と接近角度,反転角度,角速度などの魚の反応との相互関係で決まる。
(文責 松下吉樹)

74(1), 1-7 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


東シナ海におけるマアジ Trachurus japonicus 卵稚仔の輸送・生残過程

笠井亮秀(京大院農),小松幸生(中央水研),
佐々千由紀(西水研),
小西芳信(SE Asian Fish. Devel. Cent. Malaysia)

 台湾近海から日本周辺海域へのマアジ卵稚仔の輸送・生残過程を,数値実験により調べた。シミュレーション結果は,観測によって得られた稚仔魚の分布をよく再現した。台湾近海で産卵された卵は,九州北西海域に到達するまで 2 ヶ月以上を要する。仔稚魚の多くは黒潮によって太平洋側に速やかに運ばれるものの,それらは生残率が低くあまり資源に貢献しない。一方ゆっくりと東シナ海を北上する仔稚魚は生残率が高く,東シナ海での仔稚魚の生残の良否が,マアジの資源量を決めている可能性がある。

74(1), 8-18 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


地中海におけるまき網漁業の漁獲戦略―漁業管理の視点から―

Efthymia V. Tsitsika, Christos D. Maravelias
(Hellenic Centre Mar. Res., Greece)

 漁船への乗船観察により,地中海のまき網漁獲に影響を及ぼす漁獲戦略について調査した。漁港から漁場までの距離と市場価格が漁獲量と漁場選択に影響を与えていることが分かった。以上の結果から,特定漁場においては,漁業者は漁獲量と市場価格の最も適切な組み合わせを実現するように漁獲戦略を展開していると結論づけられた。同時に,物理的,経済的制約の下で,漁業者は水揚最大化をめざすよりも,リスクの最小化をめざしていることが分かった。これらを受けて,地中海での漁業管理のためのさらなる情報の必要性について考察した。
(文責 馬場 治)

74(1), 19-27 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


伊勢湾におけるフタホシイシガニ Charybdis bimaculata の個体群動態

成田光好,Monthon Ganmanee,
関口秀夫(三重大生資)

 伊勢湾のフタホシイシガニの個体数,生物量の季節・年変動および個体数の時空間分布,抱卵期,稚ガニの出現期を調べた。個体数と生物量は,夏季の貧酸素水塊によって減少し,秋季から翌年の春季にかけて再び増加した。湾の広範囲に出現した分布の中心は貧酸素水塊によって秋季に消滅し,翌年の春季から夏季にかけて回復した。抱卵雌は春季から秋季にかけて出現し,稚ガニは冬季に多く出現した。甲幅頻度分布から,加入に成功するのは,春季から夏季に着底した個体であると考えられた。

74(1), 28-40 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


アサリ稚貝の貝殻に形成される成長線解析手法の確立:成長線の形成周期

桝 太一(日本テレビ),渡部諭史(水研セ中央水研),
青木 茂(東大院農),片山知史(水研セ中央水研),
福田雅明(水研セ北水研),日野明徳(東大院農)

 本研究では,アサリ成貝で報告のあるレプリカ法を稚貝で行うための手法を確立し,最小で殻長 2 mm 程度までの分析を可能にした。貝殻外層の外帯に形成され内帯まで明瞭に続く成長線は,潮間帯と浅い潮下帯において 1 日 2 本形成されることが確認された。殻長約 12 mm の稚貝の成長解析を行ったところ,0.8 mm までの殻長逆算が可能であり,4 月~7 月の平均成長速度は,120~142 μm/day と推定された。日間成長速度の変動周期には,2 週間の潮汐リズムは確認されなかった。

74(1), 41-47 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


飼育実験に基づくクロマグロ仔魚の摂餌および生残に及ぼす乱流の影響

加藤慶樹(東大海洋研),武部孝行(水研セ宮津セ),
升間主計(水研セ奄美セ),
北川貴士,木村伸吾(東大海洋研)

 乱流がクロマグロ仔魚の初期生態に与える影響を明らかにすることを目的に飼育実験を行った。高生残率を示すピークが一定の乱流強度において確認され,ワムシ摂餌数にも同じ強度の乱流環境においてピークが認められた。また,そのピークを越える強い乱流が発生する環境下においては,仔魚は摂餌が不可能となることも確認された。これらのことにより,初期生残に重要な初期摂餌の成否には,乱流条件の違いが非常に重要な役割を果たすことが示唆された。

74(1), 48-53 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


クロマグロ稚魚における酵素処理魚粉の利用性

池 承哲,高岡 治,Amal K. Biswas,
瀬岡 学,尾崎桂太(近大水研),
神原 淳(三重大生資),宇川正治(日清丸紅),
示野貞夫,細川秀毅(高知大農),滝井健二(近大水研)

 短期の飼育試験において(7 日間),酵素処理チリ魚粉(EC)ではイカナゴ(SL)に匹敵する飼育成績が得られたが,生残率は低く,体重に対する比消化器官重値と魚体脂質含量も,EC とチリ魚粉ともに高かった。長期の飼育試験でも(14 日間),EC では生残率を含めた飼育成績が SL に近似したが,血漿や全魚体の脂質含量は高く,逆に,全魚体の脂肪酸組成では EPA・DHA は低かった。このように,クロマグロ稚魚に対する EC の高い有効性を確認したが,脂質の利用性に問題を残すことも示唆された。

74(1), 54-61 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


インド洋西部のミズウオにおける共食いの変異性

Evgeny V. Romanov,
Frédéric Ménard (IRD, CRH, France),
Veniamin V. Zamorov (ONU, Ukraine),
Michel Potter (IRD, France)

 インド洋西部の 4 海域で漁獲されたミズウオにおける共食いを調査した。その頻度は 0~45.5% であり,逃避できない餌生物(甲殻類のイシガニ類やシャコ類)の量や摂餌成功率との間に負の相関がみられた。従来,ミズウオの摂餌は餌生物の利用しやすさやミズウオの攻撃速度に制約された非選択的なものであると記述されてきた。しかし,今回の研究結果は,ミズウオが日和見的摂餌行動を取り,甲殻類のような餌生物が豊富な海域では共食いをしないが,逆に少ない海域では高い頻度で共食いを行うことを示している。
(文責 長澤和也)

74(1), 62-68 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


東北沖陸棚斜面域に分布するマメハダカ(ハダカイワシ科)の食性

内川和久(水研セ水工研),山村織生(水研セ北水研),
服部 努(水研セ東北水研八戸)

 東北沖・陸棚斜面域におけるマメハダカの食性を調べた。主要餌生物はカイアシ類,端脚類,オキアミ類およびエビ類などの浮遊性甲殻類であった。4 月および 10 月のいずれもオキアミ類が最も重要な餌生物であった。また,10 月ではカイアシ類や端脚類などの餌生物も重要であったが,4 月ではツノナシオキアミ Euphausia pacifica 単一種に対する依存度が高く,これを反映し,餌生物多様性は 4 月に低い値を示した。このことから,マメハダカはツノナシオキアミの利用可能性に応じて食性を変化させると考えられた。

74(1), 69-76 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


魚類養殖場に堆積した有機汚泥のイトゴカイ培養コロニー散布による生物浄化

木下今日子,玉置紗矢香,吉岡美穂(熊本県大),
スィートンウタイ・サラウット(恵天),
國弘忠生(熊本県大),濱 大吾(恵天),
大和田紘一,堤 裕昭(熊本県大)

 堆積物食者のイトゴカイ Capitella sp. I を用いて,養殖場の海底に堆積した有機汚泥を浄化する技術を開発し,実用試験を行った。2003 年 5 月~2006 年 10 月に熊本県天草市の養殖場とその周囲の底質を採集して底生動物と TOC を調べた。さらに養殖場で採集したイトゴカイを高密度に培養し,生け簀直下の海底に散布した。イトゴカイを散布した海底ではイトゴカイが 103 万個体/m2 まで増殖し,底泥の TOC は表層 1 cm 以下で有意に減少した。この結果はイトゴカイの摂食活動にともなう底泥中の有機物の分解と好気化の促進を反映しており,本技術の有効性を確認できた。

74(1), 77-87 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


マイクロサテライト分析による中国産シワガキとマガキの遺伝的分化

于  紅,李  琪,于 瑞海(中国海洋大水産学院)

 7 マイクロサテライト座を標識として中国産シワガキとマガキの各 5 集団について分析した。その結果,すべての座および集団において多型が認められた。また,それらの集団間ではすべての組み合わせで有意な Fst 値が得られた。さらに Nei の遺伝的距離を用いて近隣結合法により作成したデンドログラムにおいては,10 集団が明らかにシワガキとマガキの二つのグループに分けることが確認できた。この結果は主座標分析および帰属集団検定でも支持され,マイクロサテライトマーカーがシワガキとマガキの集団識別に有用であることが示唆された。

74(1), 88-97 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


アカザエビにはゾエア幼生期がない

岡本一利(静岡水技研)

 実験室でふ化したアカザエビ幼生を約 15℃ で飼育し,初期発育と摂餌について観察した。本種では形態的にいわゆるプレゾエアの状態でふ化すると判定され,摂餌することなく 1 時間以内に 50% の個体が,また 22 時間以内に全個体がメガロパに脱皮した。アルテミア,エビ細片,配合飼料を給餌した飼育において,メガロパは約 17 日後に稚エビに変態し,ふ化時からの生残率は 90~100% であった。プレゾエア,メガロパ,稚エビ 1 齢の平均頭胸甲長は各々 3.2,3.6,4.4 mm であった。本種はこれまで知られる中,アカザエビ科で唯一ゾエア期幼生をもたない。

74(1), 98-103 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


マダイ飼料へのアマノリスフェロプラストの添加効果

Alok Kalla(三重大生資),吉松隆夫(水研セ養殖研),
荒木利芳(三重大生資),張 東鳴(九州大),
山本剛史(水研セ養殖研),
酒本秀一(オリエンタル酵母)

 板ノリを酵素処理によってスフェロプラスト化し,マダイ飼料への添加効果を検討した。実験室内で 3 種類の酵素(β-1,4 マンナナーゼ,β-1,3 キシラナーゼ,アガラーゼ)を用いて調製,凍結乾燥したアマノリスフェロプラストを北洋魚粉からなる試験飼料に外割りで 5 % 分添加し,5 ヶ月齢のマダイに 6 週間給餌してその添加効果を成長,飼料成分の利用効率,魚体成分分析値,血液性状等の比較から総合的に検討した。その結果,無添加飼料に比べスフェロプラスト添加飼料区でより高い増重,生残,飼料成分の利用効率が認められた。

74(1), 104-108 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ベトナム南部におけるオニテナガエビ Macrobrachium rosenbergii の微量元素濃度及び分布

Nguyen Phuc Cam Tu(愛媛大農),
Nguyen Ngoc Ha,池本徳孝(愛媛大沿環研セ),
Bui Cach Tuyen(Nong Lam 大),
田辺信介(愛媛大沿環研セ),竹内一郎(愛媛大農)

 2003 年から 2005 年にかけてベトナム南部から採集したオニテナガエビの腹部の筋肉,外骨格及び中腸線中の22種の微量元素濃度を分析した。Cu, Se, Mo(必須元素)及び As, Ag, Cd, Hg(毒性元素)は中腸線中の濃度が最も高かった。筋肉中の Cs や Pb,外骨格中の Sr 濃度は SKEZ(南部経済重要地域:ホーチミン市及びその近郊)が高かったが,筋肉中の Cr, Se, Sb,外骨格中の Mo, Sb, Tl 及び中腸線中の Se, Hg, Mo, Cd, Sb, Tl, Bi 濃度はメコンデルタ域が SKEZ よりも高く,産業形態や都市化の相違を反映しているものと考えられた。

74(1), 109-119 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


二枚貝の呼吸および植物プランクトン摂取速度に及ぼす粘土の影響

徐 耿奭,李 昌奎,朴 泳泰,
李  潤(韓国水産科学院)

 韓国では 1995 年以来赤潮被害軽減を目的とした粘土散布が行われている。本研究は海産二枚貝 2 種を用いて,粘土処理が二枚貝の粘土の取込,呼吸,濾水率に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。二枚貝の鰓および外套腔に蓄積された粘土は時間とともに増加し,2 時間後にはほぼ充満した。二枚貝を粘土添加海水から取り出すと,30 分後には粘土の排出が始まり 6 時間後には完全に排出された。濾水率は 30 分後には急速に減少したが,2 時間後には対照区と同様の値まで回復した。

74(1), 120-127 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


高知県浦ノ内湾における有害渦鞭毛藻 Heterocapsa circularisquama の栄養細胞による越冬の発見

白石智孝(京大院農),広石伸互(福井県大生物資源),
田井野清也,石川 徹,林 芳弘(高知水試),
坂本節子,山口峰生(水研セ瀬水研),
今井一郎(京大院農)

 Heterocapsa circularisquama は二枚貝を大量斃死させる赤潮渦鞭毛藻で,その発生過程を考える上で越冬機構の解明が不可欠である。本研究では,モノクローナル抗体を用いた間接蛍光抗体法により,高知県浦ノ内湾における個体群動態を 2004 年 2 月から 2005 年 11 月にわたって調べ,越冬機構の解明を試みた。早春に分離した培養株は本種と確認され,調査期間中ほぼ毎回遊泳細胞が検出された。初めて冬から夏に遊泳細胞が継続的に確認され,浦ノ内湾では本種は遊泳細胞の状態で越冬できることが示された。

74(1), 128-136 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


有害渦鞭毛藻 Heterocapsa circularisquama と珪藻 Skeletonema costatum の増殖に及ぼす発光ダイオードの光波長の影響

呉 碩津(韓国釜慶大海洋科学共同研),
金 大一(韓国海洋警察),佐島隆生(九大院工),
島崎洋平(九大院農),松山幸彦(水研セ瀬水研),
大嶋雄治,本城凡夫(九大院農),
梁 漢燮(韓国釜慶大海洋科学共同研)

 発光ダイオード照射装置を用い,有害渦鞭毛藻 H. circularisquama と珪藻 S. costatum の増殖に及ぼす光波長を調べた。その結果,波長 590 nm の光は 30-75 μmol quanta/m2/s の光量において有益な S. costatum を増殖させ,有害な H. circularisquama の増殖を抑制することが判明した。以上の結果から,590 nm にピーク波長を持つ光を一定以下の強度で照射することにより,有用な植物プランクトンのみを選択的に増殖させうることが示唆された。

74(1), 137-145 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


カツオ卵巣より抽出した粗酵素のホスホリパーゼ A1 活性

平塚聖一(静岡水技研),喜多川知子(マルハチ村松),
山岸耕太(東海大海洋),和田 俊(海洋大)

 カツオ卵巣のリン脂質組成,脂肪酸組成及びホスホリパーゼ A1 (PLA1)活性を他の海産魚 6 種類のそれらと比較した。卵巣リン脂質中の LPC 組成比,DHA 組成比及び PLA1 活性はいずれもカツオが 7 魚種中で最も高かった。カツオ卵巣粗酵素の PLA1 活性は pH 6~7,20~30℃ で最も高く,Ca2+ 濃度の依存性は低かった。魚類由来のリン脂質を基質としてカツオ卵巣粗酵素を 6 時間反応させた結果,リン脂質中の LPC 組成比は 20% から 72.6% に,DHA 組成比は 34.8% から 54.8% に各々上昇した。鰹節工場などで排出されているカツオの卵巣は,PLA1 の供給源として有効利用が可能と考えられた。

74(1), 146-152 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ゼブラフィッシュ IGF 結合タンパク質-3 遺伝子のプロモーター領域の同定

Ming-Jun Chou (Natl. Pingtung Univ. Sci. Tech.),
Jyh-Yih Chen (Inst. Cell. Organ. Biol., Academia Sinica),
Jian-Chyi Chen (Southern Taiwan Univ. Tech.),
Hong-Yi Gong, Li-Tzu Li (Inst. Cell. Organ. Biol., Academia Sinica),
Tzou-Chi Huang (Natl. Pingtung Univ. Sci. Tech.),
Jen-Leih Wu, Ching-Ming Kuo (Inst. Cell. Organ. Biol., Academia Sinica)

 ゼブラフィシュの発生に伴う IGF 結合タンパク質-3(IGFBP-3)遺伝子の発現を,IGFBP-3 プロモーターで駆動される GFP をもつ遺伝子導入ゼブラフィッシュを用いて研究した。それによれば,IGFBP-3 の発現は 32 細胞期に最初に観察され,発生段階特異的に活性化されることが分かった。また,IGFBP-3 は胚の成長や IGF-非依存的な細胞の成長,また,核移行に関連していることも示唆された。様々な IGFBP-3 セグメントを HeLa 細胞に導入した結果,核移行シグナル(NLS)配列の一つとして PSKGRKR が同定された。
(文責 尾島孝男)

74(1), 153-166 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ノリ Porphyra yezoensis のグリセロールガラクトシドおよびポルフィラ-334 含有量と品質パラメータとの関係

石原賢司,小山田千秋,佐藤洋子,団野寛子,
木宮 隆,金庭正樹(水研セ中央水研),
國武浩美,村岡俊彦(熊本水研セ)

 ビフィズス菌増殖促進能を有するグリセロールガラクトシド(GG)と,A 領域紫外線吸収能を有するポルフィラ-334(P-334)の含有量とノリの品質との関係を調べるため,様々な品質のノリについて,GG 及び P-334 含量と,品質に関連する成分(総タンパク質,葉緑素,β-カロテンとフィコビリン)を測定した。その結果,GG は品質の低いノリに,P-334 は高品質のノリに多く含まれることが明らかになった。低品質ノリは GG の供給源として,ノリ加工の際に発生するくずノリは P-334 の供給源として有望と示唆された。

74(1), 167-173 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


鹿児島湾海水から分離した Pseudoalteromonas sp. A1-J11 株が産生する抗ビブリオ物質の分離と阻害活性

Del Castillo Carmelo Segovia,
Wahid Md. Iftekharul(鹿大院連農),
吉川 毅,坂田泰造(鹿大水)

 鹿児島湾の海水中より分離した海洋細菌 Pseudoalteromonas A1-J11 株が抗ビブリオ物質を産生することを見出した。抗ビブリオ物質を A1-J11 株の培養上清液からクロロホルムで抽出し,逆相カラムクロマトおよび HPLC を用いて分離精製した。精製された 3 成分はともに 215, 235, 315, 327 nm に吸収極大を持つ UV 吸収スペクトルを示した。主成分である AVS-03d は 100℃ 以下および pH 4 以上の条件下で安定であった。AVS-03d はビブリオ属細菌,特に V. harveyi 菌株に対して特異的な増殖阻害活性を示した。

74(1), 174-180 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


Brown Norway ラットに対する褐藻サガラメの抗アレルギー効果

杉浦義正(カネハツ食品,三重大院生資),
松田亘史,岡本 隆(カネハツ食品),
柿沼 誠,天野秀臣(三重大院生資)

 サガラメ乾燥微粉末を重量比でそれぞれ 1, 5, 10% 含む飼料をアレルギーモデルである Brown Norway (BN) ラットに投与したところ,血中 IgE 及びヒスタミンレベルが低下した。更に,サガラメを 1 % および 5 % 含む飼料を投与したラットのサイトカイン産生を調べたところ,Th1 型のインターフェロン-γ の産生促進,Th2 型のインターロイキン-4, -10 の産生抑制が確認された。従って,サガラメは BN ラットの Th1/Th2 バランスを変化させ,抗アレルギー効果を示すことが示唆された。

74(1), 180-186 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ホタテ加工残滓中 Cd の弱酸洗浄による除去と有機肥料としての利用

任 恵峰,岡本雄一,賈 慧娟(海洋大),
福田量二(大成農材),小林 淳(テルナイト),
後藤純雄(麻布大),遠藤英明,林 哲仁(海洋大)

 ホタテ加工残滓(ウロ)を 2 % 酢酸で 4 回洗浄した。洗浄済みウロと洗浄液上澄液中の Cd は,いずれも有機肥料の残留基準を満たした。ウロはもともと窒素成分をそれほど多く含まないが,園芸作物栽培に有用なアミノ酸を含んでおり,洗浄過程での損失は少なかった。洗浄液の濃縮凝集沈殿物は Cd 濃度がかなり高いが,キレート系吸着剤で混和養生後の Cd 溶出試験結果では,特別管理産業廃棄物の判定基準を満足した。また最終埋設物の体積は当初ウロの数分の一になり,それ以上の処理なしに埋設処分が可能となった。

74(1), 187-192 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


外部蛍光プローブで測定した重合能の喪失からみたコイ骨格筋アクチンの熱安定性

大井淳史,矢野文晶,岡垣 壮(三重大院生資)

 コイ骨格筋アクチンの熱安定性を調べるために,ピレンヨードアセトアミドによる化学修飾を行った。45 から 55℃ の熱処理では,コイ骨格筋アクチンの重合能の喪失は,ニワトリのアクチンの場合よりも明らかに速かった。その喪失速度は試料溶液中の ATP や Ca2+ の濃度に依存し,特に Ca2+ 濃度の増加により熱安定性は著しく高まった。また熱変性反応の活性化エネルギーにおいては,コイとニワトリのアクチンの間に差はなく,コイ骨格筋アクチンの不安定性は,ATP や Ca2+ との親和性の弱さに起因することが明らかになった。

74(1), 193-199 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


韓国産海藻 Ecklonia stolonifera から抽出したステロール類とフロロタンニン類のアセチルコリン及びブチリルコリンエステラーゼ活性阻害作用

Na Young Yoon, Hae Young Chung, Hyeung Rak Kim,
Jae Sue Choi (Pusan Natl. Univ.)

 韓国産海藻 Ecklonia stolonifera から,コリンエステラーゼインヒビター成分の単離を試み,エタノール抽出物から fucosterol, 24-hydroperoxy 24-vinylcholesterol, phloroglucinol, eckstolonol, eckol, phlorofucofuroeckol-A, dieckol, triphlorethol-A, 2-phloroeckol 及び 7-phloroeckol を単離した。これら成分は脳機能障害疾患の治療薬として応用可能と考える。
(文責 村田昌一)

74(1), 200-207 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


自然産卵海産魚卵への顕微注入のための技法開発(短報)

大谷 哲,大原 学(近大農),
宮下 盛(近大水研),小林 徹(近大農)

 魚類への遺伝子注入や核移植などの胚操作技法を行うには卵膜が障碍となる。多くの実験魚では卵膜の除去,もしくは卵膜の軟化技法が確立しているが自然産卵海産魚卵に対する効果的な技法はない。本研究では自然産卵された卵を回収後,Mg2+/Ca2+ を含まない海産リンゲル液に 0.2% 尿素を加えた培養液中で培養することで卵膜硬化抑制を試みた。その結果,8 細胞期に至っても顕微注入は可能であったが,培養液から海水に戻す時期が遅くなるほど生残率は低下した。顕微注入に有効な時期は 2 細胞期までであった。

74(1), 208-210 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


津軽海峡における鯨類目視調査(短報)

須藤竜介,浦西茉耶,川南拓丸,井原美香,飯塚 慧,
上田茉莉,M. M. Hossain,松石 隆(北大院水)

 津軽海峡の鯨類に関する知見は極めて乏しい。本研究では津軽海峡の鯨類の鯨種,それらの出現頻度を明らかにするため,2003 年 4 月から 2004 年 11 月まで函館・青森間を運行するフェリーからの目視調査を実施した。58 日 6,102 km の目視調査により,合計 415 群 3,010 個体の鯨類の発見があった。発見はカマイルカが優占し,マイルカ,イシイルカ,ハンドウイルカ,ネズミイルカ,コビレゴンドウ等が発見された。カマイルカの来遊のピークは 5~6 月の年一回であった。

74(1), 211-213 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


コラーゲンで惹起されるコイ栓球凝集においてサイクリック AMP はおそらく抑制性の調節因子である(短報)

松下映夫,井上晋一,田中竜介,近藤昌和,
高橋幸則(水大校),
宮本美津子,車谷 元(東レ医薬研),
中木敏夫(帝京大医)

 コラーゲンにより惹起されるコイ栓球の凝集は,ラット血小板の凝集とほぼ同様に,プロスタグランジン I2 (PGI2) の安定な誘導体である Iloprost および Beraprost,さらに,ホスホジエステラーゼ阻害薬である 3-isobutyl-1-methylxanthine (IBMX) の前処理により有意に抑制された。これら 3 種の薬物は,いずれも血小板細胞内の cAMP レベルを上昇させる物質であり,これらの結果から,ラットなど哺乳類血小板の凝集の場合と同様に,コイの栓球凝集においても cAMP が抑制性の調節因子として働くことが示唆された。

74(1), 214-216 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ホタテガイ貝殻抽出液は過酸化スクアレンで誘起した皮膚皺形成,紅斑形成を抑制する(短報)

劉 云春,部田 茜,長谷川靖(室蘭工大応用化学)

 著者らは以前,皮膚角化細胞への紫外線傷害に対してホタテガイ貝殻抽出液が保護効果を有することを in vitro, in vivo 評価系を用いて明らかにした。本研究では,ホタテガイ貝殻抽出液が過酸化スクアレンによって誘起されるラット皮膚の皺と紅斑の形成を抑制するとともに,角層の肥厚も抑制することを明らかにした。

74(1), 217-219 (2008)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法