Fisheries Science 掲載報文要旨

タンザニア,ザンジバル島の熱帯性湾内の魚類群集組成

B. R. Lugendo(ダルエスサラム大学),
I. Nagelkerken(ナイメーヘン大学),
N. Jiddawl(ザンジバル海洋研),
Y. D. Mgaya(ダルエスサラム大学),
G. van der Velde(ライデン自然史博物館)

 タンザニア,ザンジバル島のチュワカ湾内において,マングローブ,砂泥域,藻場の 3 生息条件で 2001 年 11 月から 2002 年 10 月にかけ回し網を用いた標本採取調査を行い,55 科 150 種の魚類を採取同定した。生物多様性として砂泥域で低く,藻場で高くなり,またマングローブでは平均個体数が 1000 m2 当たり 238.7 個体と最も高く,逆に生物現存量としては低くなった。隣接する環境条件で集団組成の類似性は高く,距離とともに種組成の重複度は低くなる。チュワカ湾の生物量の 60% が漁業対象種であり,幼稚魚の生息域としての重要性が高いことを確認した。
(文責 有元貴文)

73(6), 1213-1223 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


中国揚子江下流域における遡河性エツ類 Coilia ectenes(カタクチイワシ科)の生殖腺発達

Yuxuan Li, Songguang Xie, Zhongjie Li,
Wangbao Gong, Wenping He
(Chinese Academy of Sciences)

 揚子江河口域と下・中流域の産卵場で 2006 年 4~8 月に遡河性のエツ類 Coilia ectenes を採集して生殖腺を調べた。4 月に未成熟雌が河口域と下流域で採集されたが,中流域では採集されなかった。5 月になると河口域,下流域,中流域の雌のそれぞれ 45, 9, 5% が成熟しており,6 月では成熟雌の割合が 86, 83, 7% となった。8 月に河口域には成熟雌がいなかったが,中流域の雌はすべて成熟していた。河口域の雌は中流域や下流域の雌より小型であった。体長と孕卵数の関係を考慮すると,より大型の中流や下流域の雌を保護することが重要である。
(文責 渡邊良朗)

73(6), 1224-1230 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


地中海トロール漁業における柔軟なグリッドセパレータの選択性

Nixon Bahamon, Francesc Sarda
(CMIMA-CSIC, Spain),
Petri Suuronen
(Finnish Game & Fish. Res. Inst., Finland)

 地中海のトロール漁業において,バー間隔 20 mm の柔軟なグリッドセパレータ(漏斗網の有無の 2 条件)を試験し,40 mm 目合の菱目網および角目網コッドエンドの選択性と比較した。主要 4 種の 50% 選択体長は菱目網よりグリッドセパレータで大きくなったが,角目網とは大差がなかった。グリッドセパレータの導入により poor cod の加入量当たり漁獲量(Y/R)と加入あたり資源量(B/R)は大きくなり,European hake のそれらは変化しない。漏斗網を装備しない場合にはこれらの値は角目網に比べて小さくなった。
(文責 松下吉樹)

73(6), 1231-1240 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ウナギ卵・仔魚の生残と初期発生に及ぼす水温の影響

岡村明浩,山田祥朗,堀江則行,宇藤朋子,
三河直美,田中 悟(いらご研),
塚本勝巳(いらご研,東大海洋研)

 ウナギの受精卵・仔魚を異なる水温で飼育し,孵化,生残,発達・成長,奇形出現における水温の影響を調べた。孵化・生残率は 19℃ で有意に低く(62・42%),22~28℃ で高かった(76~86・61~81%)。31℃ では孵化しなかった。孵化,仔魚の成長,油球の消費,口器の機能化は温度が高いほど早く,28℃ では孵化後 5 日で摂餌可能となった。主要な奇形(開いたままの下顎,囲心腔の浮腫)は,19・22℃ で有意に出現率が高く(98・78%),25・28℃ では低かった(43・23%)。以上より,ウナギ卵・仔魚の発生に好適な水温はおおよそ 25~28℃ の範囲であると結論した。

73(6), 1241-1248 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


非線形回帰分析による角型生簀網の抵抗と容積係数の評価

De-Lu Ding (Natl. Penghu Univ.),
Wen-Hong Liu (Natl. Kaohsiung Mar. Univ),
Ching-Hsiewn Ou (Natl. Taiwan Ocean Univ.)

 養殖生簀網の抵抗と容積に及ぼす諸要因を検討するために,模型生簀網を用いた水槽実験により,流速,生簀網の深さと幅の比,網地の d/l および生簀網に付加した錘の重さが生簀網の抵抗と容積係数に与える影響を調べた。実験データを用いて重回帰分析によって求めた結果,抵抗に最も影響を与える要因は流速であり,続いて網の深さと幅の比,網地の d/l および錘の重さが抵抗に影響を与えることがわかった。生簀網の容積係数に与える影響要因の順位は流速,錘の重さ,網の深さと幅の比および網地の d/l であった。また,田内の模型比較則を適用して実物生簀網の抵抗と容積の試算も試みた。
(文責 胡 夫祥)

73(6), 1249-1256 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


マダラ仔稚魚の体成長と耳石微細構造

成松庸二,服部 努,上田祐司(水研セ東北水研八戸),
松坂 洋,塩垣 優(青森水研セ増養殖研)

 飼育したマダラ仔稚魚について,扁平石と礫石の微細構造を体成長と関連づけて調べた。日齢と体成長の関係は Laird-Gompertz モデルに適合した。両種の耳石輪紋はふ化輪の外側に日周期的に形成されており,扁平石にはチェックや二次核も認められた。礫石では仔稚魚期を通して輪紋間隔の測定が可能だったが,扁平石では二次核出現以前と以降で測定に適した研磨面が変化していた。全長の逆算結果を元に,チェックや二次核の出現と形態や生活史の変化との関係について考察した。

73(6), 1257-1264 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


チリ共和国チロエ島沿岸におけるチリウニの再生産

城野草平(INTEM Consulting),吾妻行雄(東北大院農)

 1986 年~1989 年にチリ共和国チロエ島東部沿岸で,チリウニの生殖巣の季節的成熟と量的発達過程および 4 腕期幼生出現数をそれぞれ 9 地点および 3 地点で調べた。ほとんどの地点で成熟個体が減少して生殖巣指数(生殖巣重量×100/体重)が最低値へ下降し,4 腕期幼生が出現する 11 月~1 月の水温上昇期が産卵期であった。4 腕期幼生の出現数は南部に比べて北部の地点で少なかった。産卵後の 1 月~2 月に再び成熟し,また,長期間にわたって高い比率で成熟が認められる地点もあり,豊富な食物条件と狭い水温年較差が関与していると考えられた。

73(6), 1265-1273 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


河川放流されたサクラマス当歳魚の生息密度の変化

三坂尚行,水野伸也,小山達也,笠原 昇(道孵化場)

 3ヶ年にわたり,河川の同一定点に放流したサクラマス稚魚の生息密度,成長及び肝臓トリグリセリド(TG)含量の変化を調べた。放流時の魚体が大きく尾数も多かった年には調査開始時における生息密度は顕著に高かったが,その後低下し続けた。また同年における肝臓 TG 含量は他年と比べて極めて低く推移した。さらに 3 ヶ年の調査で得た生息密度と肝臓 TG 含量との間には有意な負の相関関係が認められた。稚魚の生息密度の推移には放流時の魚体サイズと尾数,ならびに放流後の栄養状態が大きく影響する可能性が考えられた。

73(6), 1274-1280 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


アマモ場の存在がマダイ稚魚の被食死亡率を低下させる

小路 淳(広大水実),
崎山一孝(水研セ瀬戸内水研百島),
堀 正和,吉田吾郎,浜口昌巳(水研セ瀬戸内水研)

 メソコズム実験により,マダイ稚魚がアマモに寄りつくことと,魚食性魚類により捕食される危険がアマモの存在により低下することを確かめた。底面の 1/4 の面積にアマモを設置した 0.5 t 水槽における行動観察により,マダイのアマモへの寄りつき行動が確認された。マダイ稚魚(平均体長 29.9 mm)と魚食性捕食者タイリクスズキ(261.6 mm)を用いた 1.0 t 水槽での捕食実験では,アマモを設置した水槽におけるマダイの被食率がコントロール区に比べて有意に低かった。本結果により,アマモ場に備わった魚類幼稚仔成育場としての多面的な機能のうち,被食シェルターとしての機能を評価することが可能である。

73(6), 1281-1285 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


細菌死菌体添加培養における海洋性ラビリンチュラ分離株の溶菌活性と増殖

Wahid Md. Iftekharul(鹿大院連農),
吉川 毅,坂田泰造(鹿大水)

 鹿児島湾およびフィリピンのバタン湾沿岸から,珪藻二重寒天平板を用いて 13 株のラビリンチュラ類を分離した。そのうち代表株 3 株は 18S rDNA 分析の結果からラビリンチュラ系統分類群に属することが示された。分離株は液体培地および寒天培地中のグラム陰性菌の死菌体を溶解して増殖したが,グラム陽性菌の死菌体は溶解しなかった。溶菌活性の至適温度は 25 から 31℃ であった。フィリピン分離株を死菌体懸濁液入りの L 字型試験管で培養した場合,細胞内にカロテノイド色素を蓄積し,その後多数の遊走子を形成した。

73(6), 1286-1294 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


漂流ブイにより推定した黒潮流域の浮魚類仔魚輸送と生残

伊藤幸彦,木村伸吾(東大海洋研)

 1990 年から 2003 年に観測された漂流ブイデータを用いて,黒潮流域における浮魚類仔魚の輸送と生残について研究を行った。黒潮域からの漂流ブイの多くは黒潮続流域に広がったが,一部は再循環流により黒潮の沖合域へ南下した。仔魚の最適水温を仮定した生残モデルから,最適水温 16℃ のマイワシ仔魚にとって表層水温は全域で高すぎたのに対し,最適水温 22℃ のカタクチイワシ仔魚にとっては日本南東海域で産卵水温と輸送条件が好適であったことが示唆された。季節的な水温変化と水塊混合の効果が環境水温決定に重要であることが示唆された。

73(6), 1295-1308 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


マダイの成長とリン利用性に及ぼす各種有機酸の影響

Md. A. Hossain,A. Pandey,佐藤秀一(海洋水)

 マダイ稚魚の成長とリン(P)利用性に及ぼす各種有機酸の影響を検討する目的で,クエン酸(CA),リンゴ酸,乳酸,液体メチオニンおよび液体微量元素(LTE)をそれぞれ添加した飼料およびリン酸塩を添加した飼料を作製し,マダイ稚魚に 75 日間給餌した。その結果,P の吸収率は各種有機酸を添加することにより向上した。CA あるいは LTE 添加区では,飼育成績がリン酸塩添加区と同等の値を示した。さらに,P の保有率は CA および LTE 添加区で有意に高くなった。これらのことより,CA あるいは LTE を添加することにより,マダイの P 利用性が向上し,P の負荷量を軽減されることが示唆された。

73(6), 1309-1317 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ホタテガイの性成熟にともなう生殖原細胞の増殖パターンの定量的解析

尾定 誠,中村悟司,木島明博(東北大院農)

 本研究ではホタテガイ Patinopecten yessoensis の配偶子形成をブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込みを指標にした生殖原細胞の有糸分裂活性によって定量的に解析した。卵原細胞と精原細胞は 12 月の成長期までは緩やかに増殖したが,1 月以降の成熟期からは卵巣では卵原細胞の増殖停止と卵母細胞への分化と成長,精巣では著しい精原細胞の増殖と減数分裂が認められた。このパターンの変化から生殖原細胞増殖はフェーズⅠとⅡに大別され,それぞれ異なる内分泌支配を受けている可能性が推察された。

73(6), 1318-1324 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


卵割阻止の高温処理に伴う多極分裂の出現機構について

張 雪蓮,浅見崇比呂(信州大理),
小野里坦(松本微生物研)

 本研究の目的は高温処理による卵割阻止の低成功率の原因を究明することである。虹鱒の受精卵を第一卵割の前中期頃高温処理した場合,半分以上の卵では再生した紡錘体が三或は四極で,第一卵割に多極分裂を起した。これは倍数化の失敗や異数体の出現に導くと考えられる。第二細胞周期に 4 細胞胚と約 60% の 3 細胞胚の各細胞に単極紡錘体が形成され,第二卵割は起らなかった。他の 3 細胞胚では 2 割球に単極,1 割球に二極紡錘体が形成された。一方,水圧処理群は再生した紡錘体が殆ど二極であった。以上の現象を中心子の観点から考察した。

73(6), 1325-1331 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


チョウザメ卵の水かび病に対するオゾン,過酸化水素と感染卵除去の予防効果

Mohammad R Ghomi
(イスラミックアザド大トネカボン校),
Abbas Esmaili(タルビアトモダレス大),
Gholamhosein Vossoughi(テヘラン大),
Amin Keyvan(イスラミックアザド大テヘラン校),
Rajab M Nazari(マザンダラン大)

 オゾンと過酸化水素のイラン産チョウザメ卵の水かび病に対する効果を卵の孵化率を基準として,感染卵を除去または放置した条件で調べた。過酸化水素区では,感染卵を除去しながらの条件で 1,000 ppm が 78% という高い孵化率をあたえた。オゾン区では,感染卵を除去しながらの条件で 0.15 ppm も 76.4% という高い孵化率をもたらした。ただ,排水問題も考え合わせると,過酸化水素処理よりもオゾン処理のほうが水かび病対策として好ましい。
(文責 延東 真)

73(6), 1332-1337 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


AFLP 分析によるオキシジミの遺伝的変異性と分化

趙 玉明,李 作字,孔 令峰,包 振民,
王 如才(中国海洋大)

 中国沿岸のオキシジミ Cyclina sinensis 4 集団から採集した 160 個体において 354 の AFLP マーカー座を分析した。多型マーカー座の割合と平均ヘテロ接合体率の期待値はそれぞれ 88.4%~98.9% と 0.304~0.365 の範囲であった。AMOVA 解析により集団間の変異性は有意に高かったことが認められ,各マーカー座における固定指数(B の平均値は 0.205 という高い値をを示した。Nei の遺伝的距離を用いて UPGMA 法によりデンドログラムを作成した結果,北方の 2 集団と南方の 2 集団が明らかに二つのグループに分けられ,北方と南方の地域間に遺伝子流動が極めて低いことを示唆した。

73(6), 1338-1343 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


マサバ発酵食品なれずしの高血圧抑制作用

伊藤光史,長橋理沙,斉藤美歩,
赤羽義章(福井県大生物資源)

 マサバなれずしと生マサバから水抽出エキスを調製し,高血圧自然発症ラットに経口投与した。なれずしエキスの単回投与では収縮期血圧は 2~4 時間後に有意に低下して,8 時間後には回復したが,生マサバエキスでは有意な変化は見られなかった。なれずしエキスの 10 日間の連続投与では,血圧は 4 日目から低下して,投与を中止すると回復したが,10 週間の連続投与では投与を中止しても血圧の低下が維持された。なれずしエキスの血圧低下作用は,多量のペプチドを含みかつアンジオテンシンⅠ変換酵素阻害活性の強い画分で強かった。

73(6), 1344-1352 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ホタテガイ外套膜のコラーゲンの性状:含有量,組織分布および熱挙動について

水田尚志,中西裕子,白石将史,横山芳博,
吉中作字二(福井県大生物資源)

 ホタテガイ外套膜におけるコラーゲン含有量は年を通じて湿重量あたり 0.98~1.72% の範囲で変動した。コラーゲン繊維は主に外套縁膜内部の結合組織において密に分布していた。外套膜より調製したアルカリ抽出残渣中に存在するコラーゲンは 30~35℃ の温度域で変性したが,20~90℃ の温度範囲における 30 分間の加熱では常に 20% 以下しか可溶化せず,著しく熱水溶解性に乏しいことが明らかになった。

73(6), 1353-1361 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


共生サンゴにおける宿主および共生藻 cDNA の GC 含量

紀井晋一,田中次郎(海洋大),渡辺俊樹(東大海洋研)

 造礁サンゴ類には,褐虫藻が内部共生している。こうした共生サンゴの遺伝子発現を調べる際には,サンゴおよび共生藻由来の mRNA を判別する必要が生じる。本研究では,造礁サンゴの一種ウスエダミドリイシのプラヌラ幼生(共生藻を未獲得のもの),および宿主外で培養した褐虫藻 PL-TS-1 株の cDNA 中の GC 含量を調べ,平均値では後者の方が有意に高いことを見出した。特に,cDNA 中のタンパク質コード配列に注目すると,大部分の褐虫藻配列においてサンゴ幼生におけるよりも高い GC 含量が見られた。

73(6), 1362-1372 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


浸漬による魚肉中の遊離アミノ酸の溶出と内部移動

舊谷亜由美,大泉 徹,赤羽義章(福井県大生物資源)

 魚肉を種々の濃度の NaCl またはソルビトール溶液に浸漬し,魚肉からの遊離アミノ酸(FAA)の溶出を浸漬液の濃度および浸漬時間との関連で検討した。魚肉中の FAA は浸漬液の濃度(浸透圧)にはかかわりなく,浸漬初期に大きく減少したが,24 時間以降はほとんど変化しなかった。浸漬中に魚肉内部の FAA はきわめて緩やかに表層部へ移動した。これらのことから,FAA は魚肉と浸漬液の濃度差による単純拡散によって溶出するが,魚肉内部における FAA の緩やかな移動もその溶出に影響を及ぼしていることが示唆された。

73(6), 1373-1382 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ヒスチジン含量の高い酵素分解エキスの製造と煮干への強化

平岡芳信,佐々木嘉忠,高井敏明(愛媛工技セ),
川久保明宏(ヤマキ),三好正次郎(龍宮堂),
中島 滋(文教大)

 瀬戸内海で漁獲された魚介肉中の遊離および総ヒスチジン含量を定量した。これらの含量はカツオ,キハダマグロ,ハマチ,サバで高く,トカゲエソ,マダイ,タチウオなどの白身魚とスルメイカを除く無脊椎動物肉では低かった。カタクチイワシの煮干は素干に比べて遊離ヒスチジンが少なかった。カツオ節の抽出残渣は未利用資源であり,このタンパク質はヒスチジン含量が高いので,これを酵素分解して,遊離ヒスチジン含量の高いエキスを製造した。これを煮干に添加して,抗肥満効果を期待してヒスチジンを強化した煮干を製造した。

73(6), 1383-1387 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


ホタテガイ貝殻抽出成分が皮膚繊維芽細胞のコラーゲン合成に与える効果

部田 茜,宮本明実,長谷川靖(室蘭工大応用化学)

 皮膚繊維芽細胞のコラーゲン合成へのホタテガイ貝殻抽出成分の効果について in vitro, in vivo で研究を行った。貝殻抽出成分は,皮膚繊維芽細胞におけるコラーゲンの発現量を mRNA レベル,タンパク質レベルにおいて増加させた。さらに,ラット背部皮膚に貝殻抽出成分を塗布することによって,コラーゲンの発現量が増加することを明らかにした。

73(6), 1388-1394 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


変態期および成熟期におけるカタクチイワシ耳石中の Sr:Ca 比の増加(短報)

銭谷 弘,河野悌昌(水研セ瀬水研),
塚本洋一(水研セ西海水研),望岡典隆(九大院農)

 カタクチイワシ耳石(扁平石)中の Ca, Sr の濃度分布を EPMA を用いて調べた。耳石中の Ca 濃度には偏りはなかった。Sr には周辺よりも高濃度な部位が 2 カ所あり,第 1 の部位は耳石核から縁辺方向に向かって 300~400 μm,第 2 の部位は 800~1200 μm の位置に環状に存在した。耳石サイズと体長の関係から推定される Sr 高濃度部位に相当する体長は変態期と成熟開始期に相当した。変態期と成熟期特有の Sr:Ca 比の増加に外的要因による Sr:Ca 比の変動が隠されてしまう可能性が示唆された。

73(6), 1395-1397 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


日本産イワナ 4 亜種でみられた ME-1 遺伝子座における対立遺伝子頻度の差異(短報)

河合幸一郎(広大生物圏科),
今吉雄二(鹿児島県水産振興課),
今林博道(広大生物圏科)

 日本産イワナ 4 地域個体群について ME-1*遺伝子座の対立遺伝子頻度を調べた結果,アメマスとニッコウイワナでは*aが優占し,ヤマトイワナとゴギでは*a, *b それぞれ約 0.6 と 0.4 であった。遺伝子分化係数では,ニッコウイワナでは変異の大部分が河川内に存在したのに対し,ゴギでは 1/3 が河川間にあり,ヤマトイワナでは大部分が河川間に存在した。これらはアメマスとニッコウイワナ,ヤマトイワナとゴギ間では遺伝的分化は小さく,ヤマトイワナやゴギではニッコウイワナより強い生殖隔離が起こっていることを示唆する。

73(6), 1398-1400 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


鏡映像に対するアオリイカの反応(短報)

池田 譲(琉球大理),松本 元

 飼育下のアオリイカ成体に鏡を提示し鏡映像に対する行動を観察した。アオリイカは鏡に対して強い関心を示し,鏡に自身の身体を向けて定位した後に接近し,鏡面を腕で触るという行動を示した。鏡面に触る行動は鏡提示時間を通じて繰り返し観察され,水槽内における鏡の提示位置を変えても同様に観察された。一方,鏡と同サイズの板を提示してもこれに触る行動は見られず,アオリイカは何も提示されない時と同じく自由遊泳した。また,9 回の鏡提示実験を通じ,アオリイカの鏡への接触時間,鏡近傍への定位時間に増減傾向は見られなかった。

73(6), 1401-1403 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法


3 種貝類由来リゾチームの特性(短報)

宮内浩二,津布久暢保,松宮政弘,
望月 篤(日大生物資源)

 ヒザラガイ,イシダタミおよびバテイラよりリゾチームを精製した。それらの性質は前報のヤマトシジミと同様,分子量約 12 kDa,酸性側に至適 pH および安定な pH 範囲が認められ,i 型リゾチームの性質と一致した。M. lysodeikticus および p-ニトロフェニルペンタ-N-アセチル-β-キトペンタオシド(PNP-(GlcNAc)5)に対し,ニワトリ卵白リゾチームよりそれぞれ約 7~127 倍,約 7~85 倍高い比活性が認められた。ヒザラガイリゾチームの PNP-(GlcNAc)5 に対する Km は 8.33 μM, kcat は 4.54 min-1 であった。

73(6), 1404-1406 (2007)
戻る水産学会HP論文を読む前の号次の号バックナンバーの目次一覧Fisheries Scienceオンライン検索方法