銭谷 弘(水研セ瀬水研),木村 量(水研セ本部) |
仔稚魚扁平石中の微量元素濃度の違いを利用して瀬戸内海と太平洋に分布するカタクチイワシの系群判別を試みた。EPMA を利用し耳石核付近 30 μm 内の 4 元素(K, Na, P, Sr)での判別分析では瀬戸内海生まれと太平洋生まれを判別することはできなかった。ICP-MS を利用し耳石全体の 3 元素(Ba, Mn, Sr)での判別分析では瀬戸内海で採集された群れと太平洋で採集された群れを判別でき,両海域に分布する個体群間には生活環境の累積的相違が存在することが示唆された。判別にもっとも有効な元素は Mn であった。
清水昭男(水研セ中央水研),内田和男(水研セ中央水研上田),宇田川美穂, 井上愛菜(水研セ中央水研),佐藤年彦,桂 和彦(山形内水試) |
山形県鼠ヶ関川において両側回遊型アユを定期的に採集し,生殖形質を調べた。排卵後濾胞等の観察によって,未産卵,1 回産卵,2 回産卵,3 回以上産卵の 4 群の雌魚の存在が示され,産卵期の後半においては,魚体の大きさに関わらず多回産卵個体が大部分を占めた。生息数調査との併用によって,本河川では大部分の雌魚が 2 回目の産卵を行い,3 回目の産卵も普遍的であることも判明した。2, 3, 4 回目の産卵における体重当たりバッチ産卵数は初回の 69, 42, 22% の値となり,平均 GSI 及び肥満度も産卵回数の進行につれて減少した。
Amal Kumar Biswas,瀬岡 学,滝井健二,熊井英水(近大水研) |
マダイの消化率に及ばす飼育期間および密度の影響を調べた。タンパク質,脂質およびエネルギー消化率は,飼育第 2 週では経日的に上昇し,第 3・4 週ではプラトーに達した。一方,飼育密度の違いは消化率に著しい影響を及ばさなかったが,低密度では高密度より僅かに高かった。以上の結果より,消化率測定には供試魚を 3 週間以上飼育環境に順応させる必要のあることが示唆された。
斎藤寿彦,加賀敏樹,関 二郎(水研セさけます),大竹二雄(東大海洋研) |
海水水槽と海中生簀で飼育したサケ幼稚魚の耳石輪紋形成を調べた。供試魚の耳石には,海水移行に伴うチェックが観察された。チェック以降の輪紋形成は,前者で 57 日間,後者で 26 日間にわたり日周性を示した。北海道斜里沿岸域で採集したサケ幼稚魚の耳石にも海水移行チェックが観察され,耳石輪紋は濃厚色から明薄色に明瞭な変化を示した。この変化は,耳石 Sr/Ca 比の急激な変化に一致し,幼稚魚の降海行動に起因することが確認された。以上の結果,海水移行チェックは耳石日周輪分析の基点として利用できる可能性がある。
加納光樹(自然研),佐野光彦(東大院農),河野 博(海洋大) |
2001 年 3~7 月に多摩川の干潟域においてマハゼ稚魚の個体数密度を週 1 回の頻度で調べ,同時に水温,塩分,透明度,餌生物量などの環境変量も計測した。変態中の着底期稚魚は 3 月中旬から 5 月下旬にかけて出現した。変態を完了した底生期稚魚の密度は 5 月上旬にピーク(67 個体/m2)に達したが,その 2 週間後にはピーク時の 10% 以下へと急減したため,加入直後に著しい減耗が起きているものと考えられた。稚魚の密度の変動は,水温や塩分の変動と関連していなかったが,透明度,餌生物の遊在性多毛類の密度と関連性が見出せた。
大平康晴,清水幹博,浦 和寛,都木靖彰(北大院水) |
キンギョ鱗の再生過程を定量的・組織学的に調べた。再生初期の 5 日間には面積の増加が著しかった。その後面積の増加速度は徐々に低下したが,乾重量はほぼ直線的に増加したため,5 日目以降は鱗周辺における成長(面積成長)よりも線維層板の形成による厚み成長の方が盛んになることが示唆された。カルシウムおよびリン含量はほぼ直線的に増加した。組織学検査により,まず骨質層の形成と石灰化が先行しておこり,その後線維層板の形成がおこること,線維層板の石灰化は 14 日目以降にゆっくりと進行することが明らかとなった。
成松庸二(水研セ東北水研八戸),山廼邉昭文(福島水試),高橋正和(茨城水試) |
東北海域のヤナギムシガレイの雌について,卵巣の組織観察に基づき生殖周期,初回成熟年齢と体長,年齢別の抱卵数と相対抱卵数を調べた。卵黄の蓄積は 9 月ごろから活発になり,12 月から産卵を始める個体が見られた。産卵の盛期は 1 月で産卵期は 5 月まで続いていた。成熟率は体長 16 cm で 50% で,満 2 歳で 30%,満 3 歳以上でほぼ 100% であった。抱卵数は加齢とともに増加したが相対抱卵数は高齢魚でむしろ少なくなる傾向が認められたため,個体群の産卵数を求めるためには,その年齢組成を明らかにする必要があることが示された。
池 承哲,高岡 治(近大水研),鄭 寛植,李 鍵雨(韓国全南大),石丸克也, 瀬岡 学,滝井健二(近大水研) |
マダイ稚魚に対するカミコウジ,サンザシ,カワラヨモギ,センキュウ(Co)およびそれら混合物(HM)の飼料添加効果を検討した。増重率,生残率,肥満度,飼料効率,Hb 濃度などはハーブ添加区で高い傾向にあった。また,血漿 HDL コレステロールおよびリゾチーム活性は Co と HM 区が,補体価は HM 区がそれぞれ高く,血漿 GOT・GPT 活性と Vibrio anguilarum 攻撃試験での斃死率はハーブ添加区で低かった。以上の結果から,薬用ハーブはマダイ稚魚に対しても成長促進・免疫賦活に効果のあることが示された。
池 承哲(近大水研),鄭 寛植,任 光淳,李 鍵雨(韓国全南大), 柳 進馨(韓国天下第一飼料),滝井健二(近大水研) |
薬用ハーブ(HM)を 0.1,0.3,0.5 および 1.0% 添加したモイストペット飼料でヒラメ稚魚を 8 週間飼育した。増重率と飼料効率は 0.5%HM 区が優れていた。また,0.3,0.5 および 1.0%HM 区では,魚体 EPA・DHA 含量や血漿 HDL-コレステロール含量が高く,魚体の飽和脂肪酸含量と血漿 GOT 活性は低下し,さらに,空中露出および麻酔回復試験で低い斃死率と早い覚醒時間が得られた。以上の結果から,薬用ハーブの添加はヒラメに対して,成長,脂質の利用,ストレス耐性の向上に有効であることが示された。
酒井瑞穂,奥村誠一,大沼可名美,仙北屋浩亮,山森邦夫(北里大水) |
3 種の海綿を用いて,多くの動物門および鞭毛虫類に属する種が有する(TTAGGG)n テロメア配列型の海綿動物門における存在の有無を間期核を用いた蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法により検討した。その結果,これら 3 種のテロメア配列型は(TTAGGG)n であることが示唆された。これらの結果は,鞭毛虫類から海綿動物へと進化したとするこれまでの説を支持すると共に,このテロメア型の起源が左右相称動物と海綿との共通祖先,あるいは原生動物にまで遡れる可能性を強く示唆した。
廣瀬太郎(水研セ日水研),南 卓志(東北大院農) |
新潟県沖の日本海でアカガレイの産卵場および成魚の成熟状態を調べた。雌雄ともに大型個体から産卵に加わるが,雄は雌よりも早く成熟し,長く産卵場に留まるため,産卵場においては常に雄の数が雌を大きく上回った。アカガレイは特定の海底地形を持つ海域において,表層混合層直下で産卵していた。本州沖日本海のアカガレイ成魚は日本海固有水中に分布するが,耐えうる上限の水温中で産卵すると考えられた。
濱津友紀,八吹圭三(水研セ北水研) |
1990~1999 年に北西太平洋のスケトウダラの成熟体長を調べた。雌雄とも魚の密度は増加し,3~5 歳魚の体長は減少した。雄の 50% 成熟体長は減少したが,雌では明確な傾向が見られなかった。雌雄とも,有意な負相関が密度指数(3~5 歳魚を結合)と 3~5 歳魚体長の間に見られた。また,有意な正相関が雄の 3~5 歳魚体長と 50% 成熟体長の間に見られた。1998 年の値を取り除くと,雌の 5 歳魚体長と 50% 成熟体長の間の正相関は有意であった。以上より,スケトウダラの成熟体長変動への密度効果の存在が示唆された。
北川貴士,木村伸吾(東大海洋研),中田英昭(長大水産),山田陽巳(水研セ遠洋水研) |
1995-97 年に東シナ海でアーカイバルタグを装着したクロマグロを放流した。3~6 月の鉛直移動頻度の月変化とそれを繰り返す理由を検討するため,9 個体の深度,水温,腹腔内温データを解析した。移動頻度は 3~5 月に増加し 6 月に低下したが,摂餌頻度は 6 月に増加したことから,表層で餌の少ない時期に鉛直移動を行うことが示された。体の熱時定数は 31.9~57.9 分であり,短時間の移動を繰り返しても腹腔内温は維持されることが分かった。熱収支モデルより移動の周期性が腹腔内温を調節する効果があることも示唆された。
太田博巳,川元貴由(近大院農),磯和 潔(三重県栽培漁業セ),青木秀夫, 林 政博(三重水技振セ),成田光好,古丸 明(三重大院生資) |
人工授精に用いるアコヤガイ雄の選別方法を検討するため,精巣精子の運動条件を調べた。種々の溶液で希釈 30 秒後の精子運動率をみると,海水中では運動せず,アンモニア水を添加した海水中では濃度依存的に運動率が上昇し,2.0 mM でピークに達した。アンモニアを加えずに pH を調整した人工海水では pH 10 でのみ運動したが,その運動率は pH がそれよりも低いアンモニア海水よりも低い値を示した。以上の結果から,人工授精用の雄を選別するには,2.0 mM アンモニア海水で希釈 30 秒後の精子運動率を調べる方法が適していた。
中屋光裕(水研セ北水研厚岸),高津哲也(北大院水),中神正康(水研セ東北水研), 城 幹昌(網走水試),高橋豊美(北大院水) |
エビジャコとマコガレイの体サイズ組成の季節変化から,エビジャコによるマコガレイ仔稚魚の被食強度の高い期間について調べた。マコガレイ仔稚魚について,体長増加と海底水温の間に有意な正の相関が認められた。一方,エビジャコの全長増加と海底水温の間には有意な正の相関は認められなかった。海底水温の変動は,エビジャコによる被食期間を左右するため,累積死亡に与える影響は大きいと考えられる。
山本剛史(水研セ養殖研),鈴木伸洋(東海大),古板博文,杉田 毅(水研セ養殖研), 田中奈津美,後藤孝信(沼津高専) |
大豆油粕主体の無魚粉飼料の品質改善のため,胆汁塩の添加効果をニジマスで検討した。魚粉主体飼料に比べ,無魚粉飼料を給与した魚では成長,飼料効率,脂質の消化吸収率,胆のう重量および胆汁塩量が劣り,また,後部腸管上皮細胞や肝細胞に組織変性がみられたが,胆汁塩の添加によりこれらは改善された。これらの結果から,胆汁塩の添加により,大豆油粕主体飼料の給与により生じるニジマスの組織細胞変性が正常化し,消化吸収能が改善されることにより,魚粉主体飼料と遜色のない成長や飼料効率が得られることが示唆された。
黄 娟娟(高雄海科大),山川 卓,青木一郎(東大院農) |
台湾における Pinctada 属貝類の成長特性を明らかにするため,2001 年 3 月から 2002 年 4 月の毎月,台湾南西部でアコヤガイとクロチョウガイ,モスソアコヤガイの稚貝~成貝を採集し,殻高,殻長,殻幅,蝶番線長,湿量を測定した。月別殻高組成データの解析によって成長曲線を求めた。台湾のアコヤガイは日本の同種とは異なる季節成長パターンを示し,クロチョウガイの成長速度はフレンチポリネシア,ソロモン諸島,紅海のそれより低かった。形質間の相対成長式の種間,地域間での比較を行い,殻幅に大きな違いを認めた。
髙津哲也,鈴木祐輔,清水晶子,伊村一雄, 平岡優子,志賀直信(北大院水) |
イシガレイ浮遊仔魚の摂餌戦略を解明するために,1989~1999 年 2~4 月に陸奥湾で食物組成と餌サイズを調べた。餌サイズ範囲は仔魚の成長と共に拡大した。脊索屈曲前仔魚は主にかいあし類ノープリウスを,屈曲中仔魚と屈曲後仔魚は主に尾虫類を捕食し,低い空消化管率(1.7% と 1.4%)は恐らく遊泳速度の遅い尾虫類を効率よく摂餌することによってもたらされるものと考えられた。仔魚は尾虫類 Oikopleura sp. の「包巣」を噛み砕くのではなく,躯幹を伴う「包巣原基」を丸呑みして捕食するものと判断された。
大原健一(琵琶湖博物館),高木基裕(愛媛大農) |
5 つの飼育機関で繁殖させたヒナモロコの遺伝的多様性を,マイクロサテライト DNA を用いて評価した。平均アリル数は 2.33~4.67,平均ヘテロ接合体率は 0.283~0.602 であった。Relatedness は集団を組み合わせることで低下したことから,機関間で親魚を交換することで近親交配回避の可能性が示唆された。親魚数から Ne の大きさを推定すると 8.54 であり,多様性を維持するためには不十分であった。ヒナモロコの遺伝的多様性を保全するためには,機関間で親魚交換することが有効であると考えられた。
山本剛史(水研セ養殖研),島 隆夫(海生研),古板博文,杉田 毅(水研セ養殖研),鈴木伸洋(東海大) |
ニジマスとコイを種々の条件下で採糞し,見かけの消化吸収率(AD)を測定した。昼間および夜間の給餌は両魚種の三大栄養素の AD に大きな影響を及ぼさなかった。給餌頻度の増加および水温低下によりニジマスではデンプン質,コイでは高脂質飼料の三大栄養素及びリンの AD が顕著に低下した。コイ飼料への牛脂あるいは生デンプンの配合により脂質あるいはデンプン質の AD が低下したが,リンの AD は低下しなかった。以上の結果から,水温と給餌頻度がニジマスではデンプン質の消化率に,コイでは高脂質飼料における三大栄養素の消化率とリンの吸収率に顕著な影響を与えると考えられた。
Stepanus A. Samson,横田賢史,Carlos A. Strüssmann,渡邊精一(海洋大) |
館山湾において 2004 年 6 月から 2005 年 5 月までに採集した甲幅 7.1~63.1 mm のショウジンガニの胃内容物について餌生物の出現率と占有率を求めた。紅藻類,緑藻類,端脚類の順に高い出現率,占有率を示し,その他の藻類や軟体動物,多毛類,他の甲殻類,ウニ類も観察された。食性には有意な季節性が観察され,春に種数が増加し,特に動物種が多かった。紅藻類の摂餌量は冬に多く,夏に少なかった。総摂餌量も夏に少なかった。本種は植物性の餌生物を主体として機会的に動物種を摂食する。
林 久美子,東 由美子(北大院水),小関聡美(北大院水,東海大海洋),今野久仁彦(北大院水) |
サブフラグメント-1 および筋原繊維(Mf)の凍結変性に対する糖類(非イオン化)および,アミノ酸塩,有機酸塩,硫酸塩(イオン化化合物)の影響を調べた。糖類,アミノ酸,有機酸は S-1 および Mf の変性を濃度依存的に抑制した。一方,硫酸塩は S-1 の凍結変性を不規則に抑制し,定量的な解析はできなかった。また,Mf の凍結変性では変性促進的に作用した。2 M KCl で凍結した S-1 と Mf の凍結変性速度は同じであったので,凍結変性の場合でも高濃度の塩によりアクチンの安定化が失われることを確認した。しかし,0.1 M で凍結した場合の両者の差は非常に小さく,アクチンによるミオシンの安定化程度が小さいことが示された。
岡垣壮,楊 琳,大井淳史(三重大院生資) |
3 種の海産魚(カンパチ,スズキ,マアジ)の普通筋および血合筋のミオシンの活性をモーティリティーアッセイで測定した。血合筋の滑り速度に対する普通筋のそれの比率は 1.26~1.95 で,血合筋ミオシン ATPase 活性の Vmax に対する普通筋のそれの比率と極めて良い一致をした。普通筋ミオシンの運動活性はほ乳類速筋のそれと同程度であるのに対し,血合筋ミオシンはいずれもほ乳類遅筋ミオシンの倍程度の活性を示した。これは魚類が遊泳中に常に血合筋を使っており,生理的に重要であることを反映している可能性が高い。
陶 妍(東大院農),小林牧人(国際基督教大),福島英登,渡部終五(東大院農) |
温度馴化したソウギョから速筋ミオシンを調製し動的粘弾性の温度分散分析を行った。その結果,春季および夏季ソウギョから調製したミオシンの最初の貯蔵弾性率(G′)の変化は 38~44°C に,秋季および冬季ソウギョから調製したミオシンのそれは 28~33°C にみられた。損失弾性率(G″)および tan d(G″/G′)の変化でも 4 つのミオシン標品間で差がみられた。結果的に加熱ゲル形成は春季および夏季ミオシンで 2 段階,秋季および冬季ミオシンで 3 段階の反応過程を示した。
Anirban Chakraborty(鹿大連合農),荒西太士(宮崎大農),岩槻幸雄(宮崎大農) |
タチウオ科魚類は,主にタチウオとテンジクタチであるが,国内市場では切身として流通し,形態による両種の判別は困難である。本研究では,切身状態でも迅速に同定を可能にする PCR-RFLP 解析技術を開発した。ミトコンドリア DNA の 16S rRNA 遺伝子領域を PCR 増幅した後,VspI エンドヌクレアーゼを用いて PCR 産物を消化し,2 種の異なる制限酵素分解パターンを得た。64 商品の切身に本技術を適用した結果,原材料種は,タチウオが 47%,テンジクタチが 53%であることが判明した。本研究は,タチウオ科魚類の加工商品に含まれる 2 種を判別できる技術である。
黄 培安,野口玉雄,黄 登福(台湾海洋大学) |
8 種の有毒小型卷貝類と 2 種の無毒小型卷貝類にっき,麻ひ性貝毒(PSP)の誘引效果を調べた。ほとんどの有毒卷貝の PSP に対する最小致死量 150 MU PSP/20 g 体重以上で,無毒種は 15 MU PSP/20 g 体重未滿であった。誘引效果(Comparative attracting variation)は貝の毒力と正の相関関係で Y=3.716X+0.363,r=0.8427 の直線関係で示された。一方,無毒種ではいずれの関係も負の反応を示した。毒力が高ければ高いほど有毒卷貝類は,PSP に対してより誘引され,PSP は有害小型卷貝類の誘引物質であることが認められた。
Eric Gilman (Blue Ocean Institute),Nigel Brothers (Marine Ecology and Technology Consultant), Donald R. Kobayashi (Pacific Islands Fisheries Science Center) |
ハワイを基地とした浮延縄漁船において舷側で投縄するサイドセッティング,水中投縄機と着色餌の利用によるそれぞれの投縄時における海鳥の捕獲率(1000 針当たりの捕獲数/観測数)を調べた。その結果,青く染めた餌の利用,シュート長 9.0 m と 6.5 m の水中投縄機の使用,サイドセッティングの順で海鳥の捕獲率が小さくなった。サイドセッティングでは,まぐろ漁具とメカジキ漁具で海鳥の捕獲率がそれぞれ 0.002 と 0.01 となり,海鳥の混獲を減らす方法としてサイドセッティングが最も効果的であることを示した。
柏木正章,岸原達也,渡邊倫規(三重大生資), 稲葉忠司,加藤貴也,生島誠士(三重大工学), C. Khomvilai,吉岡 基(三重大生資) |
次亜塩素酸ナトリウムはサケ科魚卵の水カビ病防除に有効であるが,一方で卵を軟化させるという問題がある。ニジマス卵の発生中の硬度と 2 つの処理法による硬度の変化を測定した。卵発生中の硬度は受精直前で最小,受精後 4~6 日の嚢胚初期で最大,その後は柔らかくなった。残留塩素濃度 30 mg/L で 3 日毎に 60 分間処理した卵は 4~6 日以降にかなり軟化した(p<0.01)。しかし物理的衝撃などに対する軟化の不利益はあまりないと思われた。他方,10 mg/L で毎日 15 分間処理した卵はほとんど軟化しなかった。これは軟化の軽減に有効であった。
大塚 攻(広大院生物圏),原田和弘,宮原一隆,長浜達章(但馬水技セ), 小川和夫(東大院農),太田太郎(鳥取栽漁セ) |
2004 年 3 月から 2005 年 3 月,日本海西部兵庫県沖に設置された定置網にて採取されたヒラメ Paralichthys olivaceus 748 個体を調査した結果,5 個体の眼球にメダマイカリムシ Phrixocephalus umbellatus の寄生が見られた(寄生率 0.67%)。平均寄生個体数は 1.75 であった。寄生率は北米産同属種の異体類への寄生状況に比較して低かった。本種の宿主特異性は低く,様々な底生性魚類に寄生するものと考えられる。本種の主な出現期,産卵期は春~秋であると推定された。
Xiaoli HU, Zhenmin BAO, Jingjie HU, Lingling ZHANG, Jie PAN, Bing YAO, Wenbo GUO(中国海洋大) |
アズマニシキガイ・ミオシンVIの頭部領域をコードする cDNA をクローン化した。この cDNA は 2,943 bp から成り,その 2,808 bp の翻訳領域から 936 残基のアミノ酸配列が演繹された。この配列は他種のミオシンVIの配列と 56~60% の相同性を示し,ミオシンVIに特徴的な 22 残基の挿入配列および 53 残基のリンカー配列を有していた。RT-PCR によれば,このミオシンは筋肉および非筋肉組織の両方で発現しているが,消化腺および腎臓での発現レベルがやや高いことが明らかになった。
(文責 尾島孝男)