スクマー・チャンドラ・ノスカー(鳥取大院連合農生物資源),大津浩三(島根大生物資源教研セ),松野 ![]() |
ナマコの体壁は「キャッチ機構」を備えており,すばやく固さを変え,固いままの状態を長時間保つことができる。我々は体壁のグリセリンモデルを使用して,この機構に関与する Ca イオンの影響を調べた。このモデルは 10 mM EDTA 溶液中では柔らかく,逆に 10 mM CaCl2 溶液中では固くなった。固くなる現象はキャッチ機構が働いた結果であると想像された。電子顕微鏡で観察すると,このモデル中の細胞成分は完全に破壊されており,外部から与えた EDTA や CaCl2 は直接にキャッチ機構に影響を与えたものと解釈された。
中村好徳,安藤正史(近大農),瀬岡 学(近大水研),川崎賢一,塚正泰之(近大農) |
完全養殖クロマグロ(体長:42.6~66.4 cm,体重:1.66~7.40 kg, n=15)の背部普通筋を用いて,成長による一般成分とグリコーゲン含量の変化を調べた。体重と体長に正の相関が見られた(r=0.9644, P<0.05)。たんぱく質,脂質と灰分含量は変化しなかったが,グリコーゲン含量は体長約 55 cmから有意(P<0.05)に増加した。筋直径は有意(P<0.05)に増加した。本研究を通して筋細胞内(特に結合組織側)に多量のグリコーゲン顆粒の蓄積が観察された。
李 永,山本勝太郎,平石智徳(北大院水),梨本勝昭(日本データーサービス),吉野博之(道工技セ) |
籠入り口の形状がホッケ籠の漁獲に及ぼす影響を明らかにする目的で,漏斗の誘導角度と長さの異なる試験籠を商業籠の間に配置し漁獲試験を行ない,総計 200 籠で 2,200 尾のホッケを漁獲した。1 籠当たりの平均漁獲尾数は,漏斗の長さを商業籠と同じ 22 cm とした場合,誘導角度 27°の試験籠の方が誘導角度 37°の商業籠より多く,誘導角度 0°の籠では極端に漁獲尾数は少なかった。誘導角度を 37°とした場合,漏斗の長さが 8 cm の試験籠の漁獲量は漏斗の長さ 22 cm の商業籠より多かった。漁獲されたホッケの体長分布には,どの籠の間にも有意な差は見られなかった。
渡邉一功(漁業情報サービスセ・海洋大),田中栄次,山田作太郎,北門利英(海洋大) |
サンマ資源の時空間変動を表すモデルを作成し,サンマの移動における表面水温の影響を調べた。サンマの移動に関して,1)南の海域が適水温になると移動する,2)低水温になると南の海域へ移動する,という 2 種類の要素を組み合わせたモデルを作成した。1995~2001 年の CPUE データを使い,パラメータを最尤法により推定した。AIC を比較した結果,1)の要素を入れたモデルが最良となった。また移動に影響を与える適水温は,道東海域・三陸海域は 20℃ 以下,常磐海域以南は 23℃ 以下であった。
北川貴士(東大海洋研),アイダ・サーティンブル,中田英昭(長大水産),木村伸吾(東大海洋研),山田陽巳(水研セ遠洋水研),新田 朗(日本 NUS) |
アーカイバルタグを装着したクロマグロ若魚の 1~6 月の東シナ海での生息域の経年的な違い(1996~98 年)とそれに及ぼす水温環境の影響を衛星画像,定線観測情報を用いて検討した。分布は基本的には対馬北東から南西沖の黒潮フロント域にあったが,ENSO イベントの影響を受け,水温が低(高)かった 1996(1998)年は,分布中心は南(北)方に偏った。特に 1996 年は黒潮フロント域にも分布が高密度に形成された.これは黒潮系暖水が五島列島とフロント域の間に貫入したため,彼らの北上が妨げられたためと考えられた。
牧野弘奈(京大院農),益田玲爾(京大フィールド研セ),田中 克(京大院農) |
イシダイ Oplegnathus fasciatus の稚魚の学習能力の発達について調べた。約 2~10 cm SL の 28 個体に Y字 型迷路を用いた報酬訓練課題を与え,サイズごとにその成績を比較した。結果,全個体において学習能力を持つことが示され,2 cm 程度の稚魚では成績が低く,成長に伴って成績は上昇し,7.2 cm に極大を持つ二次曲線によく近似された。天然において,イシダイ稚魚は 4~7 cm に成長すると流れ藻を離れて多様で複雑な環境である岩礁域に加入する。その時期に学習能力がよく発達することが示された。
Da Hui Yu (Chinese Academy, Chinese Univ. of Hong Kong), Xiaoping Jia (Chinese Academy) and Ka Hou Chu (Chinese Univ. of Hong Kong) |
中国産,日本産,オーストラリア産真珠貝 3 種の関係を明らかにするために,ITS1,ITS2 領域塩基配列分析および AFLP 分析を行った。その結果,無限対立遺伝子モデルにおける permutation test,無限サイトモデルにおける ITSs データの Fst 値では 3 種間に有意差はなかった。ITSs データによるネットワーク分析では同じ集団の個体が同じクラスターに含まれず,AMOVA 分析では 94% 以上の変異が集団内変異であった。以上の結果から 3 種の種内,種間の遺伝的分化はきわめて低く同種内変異と考えられた。
(文責 木島明博)
高木修作(愛媛水試),村田 寿(宮崎大農),後藤孝信(沼津高専),市來敏章,延東 真,幡手英雄,吉田照豊,境 正(宮崎大農),山下浩史(愛媛水試),宇川正治(丸紅飼料) |
タウリン補足量の異なる低魚粉飼料でマダイ幼魚を 34 週間飼育し,成長,緑肝発症率,魚体中のタウリンおよび胆汁色素の濃度を魚粉飼料区のそれらと比較検討した。魚粉飼料区に比べ,タウリン無補足区では,飼育成績は劣り,赤血球の形態変形に関連した緑肝が高率に発症し,肝膵臓のタウリン含量は有意に低く,ビリバージン濃度が高い傾向にあった。これら状況は低魚粉飼料へのタウリン補足により著しく改善した。マダイの低魚粉飼料給与による緑肝の予防と低成長の改善には,飼料へのタウリン補足が必要なことが明らかとなった。
田辺(細井)祥子(神戸大内海域セ),大嶽 勇,左子芳彦(京大院農) |
赤潮原因藻 Chattonella 属 4 種の 5.8S, 18S, 28S rDNA および ITS (internal transcribed spacers) 領域の塩基配列を決定した。その結果,C. antiqua, C. marina および C. ovata において全ての塩基配列が完全に一致し,これら 3 種間には遺伝的差異がないことが示唆された。18S および 28S rDNA に基づく近縁藻群を含めた系統解析の結果,これら 3 種はラフィド藻綱と単系統を形成する一方,C. verruculosa はラフィド藻綱との近縁性を示さなかった。
井出恵一郎,高橋一生(水研セ東北水研),佐々木浩一,大森迪夫(東北大院農) |
腐肉食性端脚類が種苗ヒラメ稚魚の捕食者となる可能性について,飼育実験を通して検証した。外傷を負ったヒラメ稚魚は,傷の程度に関わらず,腐肉食性端脚類の攻撃を受けた。その攻撃はヒラメ稚魚の傷から溶出するグリシン(端脚類の主要摂餌誘引物質)に依存していた。捕食回避のためには,ヒラメ稚魚に十分な遊泳能力があることが重要であった。また外傷の深さではなく面積の大きさが,ヒラメ稚魚が捕食される危険性を増大させることが明らかとなった。本研究は腐肉食性端脚類が種苗ヒラメ稚魚における減耗要因となる可能性を示唆した。
陳 威克,劉 光明(台湾海洋大) |
2002 年 2 月からの 1 年間に,台湾北部海域で採集した 491 個体のシロボシテンジクの全長範囲は 35.3-85.0 cm で,うち 65% が雌であった。初回成熟体長は雌が 64.9 cm,雄が 65.6 cm と推定された。雌の排卵時期は 3~5 月,雄の交尾時期は 12~1 月と考えられた。交尾時期と排卵時期のずれは,雌が体内に精子を保存していることを示唆する。1 個体の産卵数は 8.0±3.8 であった。2003 年に産出された 48 卵のうち 13 卵が産卵後 107±9.3 日で孵化し,積算水温は 2372~2853℃ であった。
(文責 渡邊良朗)
益田玲爾(京大フィールド研セ) |
自然産卵により得たマアジ受精卵をふ化させて飼育し,対捕食者行動の発達過程を観察した.マアジはふ化後 30 日齢で体長 10.3 mm,48 日齢で体長 26.6 mm となった.昼間のパッチ形成は 5-16 日齢で,また夜間のパッチ形成は 9-48 日齢で観察された.巡航および瞬発遊泳速度は,仔稚魚期を通じてそれぞれ 1.5-1.9 体長/秒と 16-24 体長/秒であった.本種のミズクラゲからの逃避能力はマサバと同等であり,マダイよりは優れていた.本種の優れた瞬発遊泳能力は,クラゲ類の捕食圧に対して有利であると考えられた。
夕部泰弘(京大院農),井関智明(水研セ日水研),日比野 学(愛知県水産基金栽培),水野晃秀(宇和島水産高),中山耕至,田中 克(京大院農) |
宇和島湾奥部でヒラスズキ仔稚魚の出現,日齢と食性を調べた。アマモ場周辺では 1 月より仔魚後期の個体が採集され 4 月には稚魚が採集された。河口干潟域では主に 4 月より稚魚が採集された。体長,日齢,孵化日の経月変化から,アマモ場周辺では孵化日の遅い個体が早い個体よりも長期間滞在し,河口干潟域では他の成育場を移出した個体が滞在したと推察された。稚魚はアマモ場周辺ではカイアシ類を,河口干潟域では端脚類や等脚類を摂餌し,成長は後者の方が速かった。ヒラスズキ仔稚魚は環境の違いに応じて多様な生態を示すと推察された。
阪地英男(水研セ中央水研),本多 仁(水研セ遠洋水研),梨田一也(水研セ中央水研) |
1996 年 4 月から 1997 年 3 月までの間に,土佐湾の水深 100~400 m の海域でアオメエソを採集し,成長とそれに伴う移動を明らかにした。アオメエソは,8~2 月に標準体長 40~50 mm で水深 150~200 m に着底した。その後,成長と共に深所に移動し,着底から 3 年後の冬までに最大で 160 mm となって水深 300~350 m に移動した後,採集されなくなった。調査期間中に成熟した個体が採集されなかったことから,土佐湾ではアオメエソは産卵せず,浮遊性の仔魚が他の海域から輸送されると考えられた。
Ruth Sanchez Pisingan, Lilik Harnadi,竹村明洋(琉球大熱研セ) |
沖縄河川汽水域に棲息するスミゾメスズメダイの半月周性産卵の特徴を明らかにした。本種の生殖腺体指数(GSI)は上弦と下弦の月付近で高い値を示した。卵巣を組織学的に観察した結果,新月や満月の時には卵黄形成初期にあった卵母細胞が,上弦と下弦の月付近では卵黄形成後期に達していた。また,排卵後濾胞は上弦と下弦の月の後に観察された。以上の結果から,スミゾメスズメダイは産卵期に月齢にあわせた月二回の産卵を繰り返していることが判明した。潮汐条件を与えない水槽内で飼育したスミゾメスズメダイの産卵には半月周性が認められなかったため,周期的に繰り返される潮汐が本種の産卵の同期性発現に重要であることが示唆された。
福田直子,藤浦道子,木村メイコ,埜澤尚範,関 伸夫(北大院水) |
ホタテガイ貝柱パラミオシンを加熱すると 30℃ よりゲル形成が起り,pH 6.5 と 7.2 では貯蔵弾性率(G′)と損失弾性率が 2 段階で増大し,80℃ でアクトミオシンゲルに較べて非常に高い値を示した。pH 8.0 では 60℃ に大きなピークがあり,加熱ゲルは透明で,尿素-NaCl に難溶性であった。これらの相違はパラミオシンの unfolding 過程ではなく,S-S 架橋形成を含むゲル形成過程で起ることが推測された。キモトリプシン消化したパラミオシンのゲル形成は高温域での G′増大が消失した。
伊藤光史(福井県大生物資源),小林晋輔(香住高校),大泉 徹,赤羽義章(福井県大生物資源) |
マサバなれずしの製造過程では,食塩の浸透に加えて pH の大きな低下と重石の圧力により,魚肉は強く脱水した。一般成分では,水分の他にタンパク質,脂質も魚肉から流出し,それらの総流出量が米飯から魚肉への糖質の流入量を上回った為,魚体重量は大きく減少した。エキス成分では,魚肉のイノシン酸は消失したが,タンパク質の分解により多量の遊離アミノ酸とペプチドが生成した。また米飯の発酵により乳酸などの有機酸が極めて多量に生成し,さらに魚肉へ浸透したため,魚肉はなれずし特有の強い酸味を伴う旨味を呈するようになった。
遠藤真由美,長谷川靖(室蘭工大応化) |
外套膜上皮細胞は貝殻の骨格となるマトリックスタンパク質を分泌することが知られている。マトリックスタンパク質を発現する外套膜上皮細胞の培養系の確立を目指し,ホタテガイ外套膜組織より,上皮細胞を含む組織を単離し,組織片を用いて培養を行った。組織より遊走,接着した細胞に対し,マトリックスタンパク質に対する抗体を用いて免疫染色を行った。接着した細胞の多くが抗体との反応性を示したことから,遊走,接着した細胞の多くが外套膜上皮細胞であることが明らかになった。
杉浦義正(カネハツ食品,三重大院生資),竹内祥朗(カネハツ食品),柿沼 誠(三重大院生資),天野秀臣(三重大院生資) |
褐藻 21 種,緑藻 5 種及び紅藻 15 種の海藻 41 種と海草 1 種からの 80% メタノール抽出物の抗アレルギー効果を,抗原抗体反応により刺激した RBL-2H3 細胞からのヒスタミン放出量を指標に調べた。強い放出抑制効果がカジメ(91.9±10.5%),サガラメ(74.3±33.8%),オオバモク(70.0±14.1%)に,中程度の抑制効果がイロロ(63.2±5.9%),イシゲ(63.3±28.6%)及びウミトラノオ(40.7±14.1%)に,弱い抑制効果がトゲモク(20.0±7.1%)にそれぞれ認められた。そのうち細胞死を誘導していなかったのはウミトラノオとサガラメの 2 種であった。
HYUN AH JUNG,玄 沫京,金 亨洛,崔 在侏(釜慶大,韓国) |
韓国で食用にされている海藻のうち 10 種類のエタノール抽出物について,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性とパーオキシナイトライト消去活性を調べたところ,5 種類で活性がみられた。ツルアラメからは 6 種類のフロロタンニンとフコステロールを単離し,その中の eckol と phlorofucofuroeckol A, dieckol に顕著な両方の活性を見出した。
(文責 村本光二)
宮内浩二,松宮政弘,望月 篤(日大生物資源) |
ウチムラサキ中腸腺から,アフィニティーおよび逆相 HPLC カラムクロマトグラフィーによりリゾチームを精製した。本酵素の分子量は SDS-PAGE により 12 kDa と見積もられ,最適 pH は 5.2,最適温度は 50℃ で,pH 4.8-6.8 で安定であった。また,N 末端アミノ酸配列は他の無脊椎動物由来リゾチームと高い相同性を示した。本酵素は Micrococcus lysodeikticus および p-ニトロフェニルペンタ-N-アセチル-β-キトペンタオシドを基質とした場合,ニワトリ卵白リゾチームよりそれぞれ 143 倍ならびに 12 倍高い比活性を示した。
林久美子,今野久仁彦(北大院水) |
サブフラグメント-1(S-1)と筋原繊維(Mf)の熱変性に対する糖類,アミノ酸塩,有機酸塩,硫酸塩のミオシン抑制作用を比較した。糖類は Mf を S-1 と同様に変性抑制したが,イオン化合物の Mf に対する変性抑制作用は S-1 に比べると小さかった。特に,硫酸アンモニウムは 0.1 M KCl での加熱ではMfの変性を促進し,2 M KCl 中の加熱では逆に抑制した。以上のことより,Mf に対するイオン化合物の作用はミオシンそのものに対する変性抑制作用とアクチンによる安定化を消失させ,変性促進する作用の和として現れると結論した。
Stavros Chatzifotis, Angela G.Esteban, Pascal Divanach(Hellenic Center for Marine Research. Greece) |
アルファルファ濃縮タンパク質(ACP)の魚粉代替可能性を検討するため,ACP をそれぞれ 7, 14, 21% 配合した等窒素含量,等エネルギーの飼料を平均体重 13.7±2.1 g の Diplodus puntazzo に給餌し,56 日間の飼育試験を行った。なお,魚粉飼料を対照とした。魚は ACP を配合した飼料を正常に摂食したが,魚粉飼料区の魚に比較し成長率および飼料転換効率が劣った。アルファルファ配合率の増加に従い成長には支障がなかったが,内臓重量比の減少傾向が見られた。対照区に比較し成長が劣った原因はアルファルファに大量に含まれている繊維によるものと推測された。
(文責 竹内俊郎)
Soonhag Kim(ソウル大医) |
脂肪酸結合タンパク質(FABP)は,脂肪酸代謝にかかわる細胞質タンパク質である。塩基性肝臓型(Lb-)FABP は,ほ乳類以外の脊椎動物の肝臓でのみ発現している点で,ほ乳類の肝臓型(L-)FABP と異なる。cDNA 塩基配列の解析から,ニジマスの Lb-FABP は 126 アミノ酸残基からなり,ゼブラフィッシュやナマズの Lb-FABP に高い相同性を示すこと,そして分子系統樹ではほ乳類 L-FABP とは異なるクラスターに位置することが明らかになった。また,Lb-FABP の発現は肝臓でのみみられた。
(文責 村本光二)
高木 映(東大院農),石川智士(JST),Thuok Nao, Hort Sitha(カンボジア水産局),中谷将典,西田 睦(東大海洋研),黒倉 寿(東大院農) |
既報の 2 プライマーおよび新規に作成した 2 プライマーを用いて東南アジアに広く分布するナギナタナマズ Notopterus notoputerus のミトコンドリア DNA 調節領域の塩基配列を決定した。当該領域には 40 bp からなる繰り返し配列が存在し,個体ごとの調節領域の長さには変異が認められた。また,46 個体のシークエンスを比較したところ,繰り返し配列を除いた調節領域前半部(339 bp)には 3.3% の平均塩基置換率が確認され,この部位を用いた集団解析の可能性が示唆された。
中場操子,小川耕一,清木雅雄(林兼産業),國本正彦(水研セ中央水研) |
未利用水産資源を利用した機能性素材の製造を目的として,弾性繊維の架橋構造に関与するアミノ酸であるデスモシン,イソデスモシンを指標に魚類組織中よりエラスチンの探索を行った。その結果,動脈球が弾性繊維豊富であり,これを酵素分解して得たペプチドはデスモシン類を含み,魚類エラスチンのアミノ酸組成と一致した。一方,魚皮より得たペプチドはこれらの特徴は見られなかった。動脈球由来ペプチドは海洋性エラスチンとして,従来のウシ項靱帯由来エラスチンに代わる素材となる可能性が示唆された。