Fisheries Science 掲載報文要旨

各種の塩濃度におけるアンモニアと亜硝酸のブラックシーバス Centropristis striata 幼魚に対する急性毒性

Charles R. Weirich, Marty A. Riche
(USDA-ARS Sustainable Marine
Aquaculture Systems Program)

 ブラックシーバス幼魚におけるアンモニアと亜硝酸の LC50 が,水温 22℃,塩濃度 10, 20, 30g/L の条件下で調べられた。アンモニア(非解離型)の急性毒性は塩濃度に影響を受けず,24, 48, 96 時間 LC50 は 0.81-0.85, 0.65-0.77, 0.46-0.54 mg NH3-N/L であった。亜硝酸の 24, 48, 96 時間 LC50 はそれぞれ 288.3-429.0, 258.4-358.8, 190.0-241.9 mg NO2-N/L であり,その急性毒性は塩濃度に反比例して強くなる傾向があった。この結果から,ブラックシーバス幼魚はアンモニアに対して感受性が比較的高く,逆に亜硝酸には耐性が高いことが分った。
(文責 延東 真)

72(5), 915-921 (2006)

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航空機調査と陸上目視観察に基づく冬季の北部日本海北海道沿岸におけるトド Eumetopias jubatus の分布状況

星野広志(北大院水),磯野岳臣(エコニクス),
高山琢馬(北大院水),石名坂豪(日大生物資源),
和田昭彦(稚内水試),桜井泰憲(北大院水)

 冬の日本海北海道沿岸におけるトドの分布状況を解明するため,2001-2003 年に航空目視調査と上陸場での目視観察を行った。航空目視の結果,トドの海上発見率は礼文・利尻両島周辺と岩内―尾花岬間が他海域より高く,上陸場での確認数は道北より道央で多かった。さらに漁業者からの聞き取りから津軽海峡に 2 月~5 月まで滞在したことが示唆されたことから,トドの分布が 1980 年代より南下したと推察された。そして,道央の上陸場では雄の成獣と亜成獣主体の群れが 11 月~5 月まで滞在し,滞在期間も 1980 年代より長かった。

72(5), 922-931 (2006)

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沖縄島におけるクロサギ属の 1 未記載種の年齢と成長

M. K. Kanak,立原一憲(琉球大理)

 2002 年 11 月 ~2005 年 7 月に毎月,沖縄島で計 518 個体のクロサギ属の 1 未記載種を採集した。採集個体の標準体長は,雌(n=218)が 56.2~147.1 mm,雄(n=149)が 62.2~139.4 mm であった。耳石の縁辺成長率から,本種の耳石輪紋は,4~7 月に年 1 本形成される年輪であることが明らかとなった。耳石輪紋から推定した最高齢は,雌が 5 歳,雄が 4 歳となった。本種の雌雄ごとの体長(SL;mm)-体重(BW;g)関係と von Bertalanffy の成長式は,以下のとおりであった。
 体長-体重関係
 雌:BW=(3.26×10-5)SL2.97
 雄:BW=(3.13×10-5)SL2.98
 成長式
 雌:Lt=137.1{1-e-0.80(t+0.80)},
 雄:Lt=127.3{1-e-0.82(t+0.93)

72(5), 932-938 (2006)

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種苗生産水槽内の通気および注水の制御によるマハタ初期生残の改善

阪倉良孝(長大水),塩谷茂明(神戸大),
中田 久(長崎水試),萩原篤志(長大院生産)

 小規模水槽実験によって飼育水槽内の流場は,マハタの種苗生産過程での初期減耗に影響を与えることが指摘されている。そこで,大量種苗生産水槽(直径 8 m,水深 1.87 m,水量 100 m3)で,水槽中央の排水口(直径 1.2 m)を囲むように通気装置を設置して流場を制御し,7 回のマハタ初期飼育を実施した。10 日齢の生残率は 61.5±5.1% で,従来の通気装置を複数設置する飼育事例の生残率(21.2±13.7%, n=6)の約 3 倍の値を示した。飼育水槽内の流れを定量し,流場と,仔魚の生残や行動との関係を考察した。

72(5), 939-947 (2006)

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カサゴ産出仔魚の活力評価

松尾陽子,笠原 康,萩原篤志(長大院生産),
阪倉良孝(長大水),荒川敏久(長崎総合水試)

 カサゴ産出仔魚 13 例について,飢餓耐性(SAI)と産仔後 13 日齢の生残率を調べた。さらに,同一産仔魚群の形態,酵素活性および遊泳行動を測定し,SAI との相関を調べた。SAI が 26 より高い仔魚群は高い生残率を示し,それより低い値の仔魚群はほぼ全滅したことから,既報の通り SAI は仔魚の質を評価する有効な指標と考えられた。0 日齢の仔魚のエステラーゼ活性(r=-0.713, P<0.01),遊泳頻度(r=-0.735, P<0.01)および遊泳速度(r=-0.588, P<0.05)は,それぞれ SAI と負の相関が見られた。このことから,0 日齢の仔魚の酵素活性や行動特性により,本種の仔魚の質をリアルタイムに評価できることが示唆された。

72(5), 948-954 (2006)

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ブリ親魚の産卵に及ぼすタウリン添加飼料の影響

松成宏之(海洋大),
浜田和久,虫明敬一(水研セ五島セ),
竹内俊郎(海洋大)

 魚粉削減飼料にタウリンを 0, 0.5, 1.0% 添加した飼料で,産卵前のブリ親魚に 5 ヶ月間給餌し,タウリンの効果を調べた。卵巣卵径は飼料中のタウリン含量に比例して大きくなった。タウリン 0 % 添加区からは採卵できなかった。0.5% 添加区では 7 尾中 1 尾,1.0% 添加区では 7 尾中 6 尾から採卵することができた。両タウリン添加区では肝臓および血清中のタウリン濃度が有意に高い値を示したが,卵巣卵には差が見られなかった。この結果から魚粉削減飼料へのタウリン添加はブリ親魚の成熟に好影響を及ぼすことが明らかとなった。

72(5), 955-960 (2006)

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ウナギ卵黄蓄積における飼育水温の影響

佐藤成美,川添一郎,鈴木 譲,会田勝美(東大院農)

 未熟なニホンウナギを 10℃ または 20℃ で飼育し,サケ GTH 画分を毎週(2 mg/kg 体重)投与して,人為催熟における飼育水温の影響を検討した。その結果,10℃ では生殖腺の成熟の進行は非常に遅く,20℃ では急速に成熟が促進された。10℃ では20℃ と同様に E2 が産生されたのに血液中のビテロゲニン量は増加せず,水温を上昇させるとビテロゲニン量が増加したことから,ビテロゲニンの合成には飼育水温が大きく関わっていることがわかった。

72(5), 961-966 (2006)

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水槽実験による平面網地の水平波力について

宋 偉華(中国海洋大,浙江海洋学院),
梁 振林(中国海洋大),池 弘福(浙江海洋学院),
黄 六一,趙 芬芳,朱 立新,陳 伯海(中国海洋大)

 波の進行方向に垂直な平面網地に働く水平波力の特性を検討するために,6 種類の網地を用いて水槽実験を行った。実験では,網地を一定の縮結で長方形円柱枠に取り付けて周期 0.8~2.0 s,波高 50~250 mm の規則波における網地に働く流体力を計測し,三次内挿法によりその水平波力を算出した。網地の水平波力は実験波と同じ周期で,非対称的に変化することが確かめられた。逐次重回帰法により得られた幅 l の網地の水平波力は F=0.13pgl(H/2)2(d/a)(H0.64L0.77/0.9a0.44) で表すことができる。HL は波高と波長,da は網糸の直径と網地の目合である。

72(5), 967-976 (2006)

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レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法によるサケ Oncorhynchus keta 耳石中の微量元素分析

新井崇臣(東大海洋研),平田岳史(東工大)

 レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICPMS)を用いてサケ耳石中の微量元素分析を行った.淡水生活期に相当する部位と海洋生活期に相当する部位の Mg, Zn, Sr, Ba 濃度は,いずれの元素においても有意に異なっていた.Mg と Zn 濃度は淡水生活期に相当する部位で高く,Sr と Ba 濃度は海洋生活期に相当する部位で高かった.Sr と各元素の間には,正か負の相関関係が見られた.以上から耳石中のこれらの微量元素は環境水中の濃度を反映しているものと考えられた.

72(5), 977-984 (2006)

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北太平洋南西部におけるクロマグロの繁殖生態

陳 国書(国立台湾大),Paul Crone(米国海洋研),
陳 建宗(国立台湾大)

 クロマグロは北太平洋の広範囲に生息する重要な浮魚であるが,繁殖生態には不明の点が多い。1999 年 4~6 月の漁期に台湾の延縄漁獲物 119 個体から卵巣標本を採集し,本種の繁殖生態に関するパラメタを求めた。その結果,(1)5 月~6 月初めに肥満度が低下すること,(2)産卵群の性比は 1:1 であること,(3)生殖腺体指数が 5 月~6 月初めに顕著に増加すること,(4)組織学的検査の結果すべての個体が成熟していたこと,(5)産卵は 5 月に始まり 5 月下旬~6 月初めに盛期となること,(6)体長増加とともに 1 回産卵数が増加することが明らかとなった。
(文責 渡邊良朗)

72(5), 985-994 (2006)

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北海道の浅海域に生息するヒメエゾボラのインポセックスの現状

藤永克昭(道都大),
Anthony S. Ilano(San Carlos 大),
野村浩貴(海生研),Richard T. Miranda,
中尾 繁(北大院水)

 2002 年北海道の 7 海域においてヒメエゾボラのインポセックスの状況を,RPSI,インポセックスの出現頻度とステージ頻度分布,および性比に基づいて調査した。RPSI 値は海域によって幾分相違したが,すべての海域において低かった(0.186~5.294)。特に,4 海域においては,1.0 以下と非常に小さかった。未成熟個体のインポセックス出現頻度は,成体個体の頻度よりかなり低かった。インポセックスのステージ頻度分布も海域によって異なり,その傾向は RPSI 値と一致していた。重度のインポセックスを示す個体は,大型の個体に限られた。

72(5), 995-1003 (2006)

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MMP-9 はヒラメ皮膚創傷治癒過程で発現する

村上彩奈,間野伸宏(日大生物資源),
M. Habibur RAHMAN(ラジュシャヒ大),
廣瀬一美(日大生物資源)

 簡易ディファレンシャルディスプレイ法を用いてヒラメ皮膚の創傷治癒過程で特異的に発現する遺伝子を検索し,23 本のバンドを特定した。RT-PCR 法による発現解析を行った結果,創傷部位においてマトリックスメタロプロテアーゼ 9(MMP-9)の強い発現が認められた。そこで film in situ zymography 法を用いてゼラチン分解活性局在解析を行った結果,創傷表面から真皮にかけて強い分解反応が認められた。これらの結果は,MMP-9 が魚類の創傷治癒過程において重要な役割を果たしている可能性を示している。

72(5), 1004-1010 (2006)

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酵母で発現させたホワイトスポットウイルス抗原タンパク質によるザリガニの感染防御に関する研究

雷  杰,許 梓作字(浙江大,中国),
アブヘッド・パンディ(海洋大)

 ホワイトスポットウイルス(WSV)のワクチン研究を,ザリガニを用いて行った。WSV の抗原タンパク質 VP19 および VP28 を,酵母を用いて発現させた。精製組換えタンパク質をザリガニ接種し,さらに,5 日目に組換えタンパク質を接種した。組換えタンパク質接種後 3 日目と21日目に攻撃試験を行ったところ VP28 接種で高い感染防御効果を示した。以上のことより,酵母にて発現させた WSV の組換えタンパク質はワクチンとして十分な効果を示すことがわかった。
(文責 廣野育生)

72(5), 1011-1019 (2006)

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光照射がワムシおよびアルテミアのビタミン A 含量の変動に及ぼす影響

芳賀 穣,樽井史典(海洋大),
太田健吾(水研セ伯方島),
島 康洋(水研セ能登島),竹内俊郎(海洋大)

 2000 lx または暗黒下でワムシとアルテミア幼生を 1 L 当たり 10 mg の VA パルミテート(VAp)で強化し,強化後 0, 3, 6, 9, 12, 18 および 24 h のレチノイドの含量を調べた。暗黒下で強化したワムシのレチノイドは,光照射を行ったものよりも常に高く,暗黒下ではレチノールとレチノイン酸は増加し続けたが,光照射下では強化後 12 h に減少した。一方,アルテミアでは,レチノイドの変動パターンは酷似した。光照射は生物餌料中の VA の変動に影響することが明らかとなった。

72(5), 1020-1026 (2006)

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Prototheca zopfii の炭化水素分解能に及ぼす,発泡ポリウレタンへの細胞固定化と耐熱性株使用の相乗効果

上野良平,和田 俊,浦野直人(海洋大)

Prototheca zopfii の炭化水素分解能に及ぼす,発泡ポリウレタン(PUF)への細胞固定化と耐熱性株使用の相乗効果を調べた。 固定化 P. zopfii として耐熱性 RND16 株と非耐熱性 ATCC30253 株が示す,混合炭化水素中の n-アルカンと多環芳香族炭化水素(PAHs)の分解能を比較した。本種の PUF 固定化は,炭化水素分解開始までの期間短縮に有効であり,その効果は RND16 の室温培養で最も高かった。 他方,固定化に伴って PAHs 分解量が減少し,その減少量はアルカン分解速度・量で ATCC 株に勝る RND16 株でより顕著に認められた。P. zopfii の PUF 固定化は,アルカン分解に有益な影響を,PAHs 分解に負の影響を及ぼした。

72(5), 1027-1033 (2006)

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ホンモロコの水温に対する性比のパターン

藤岡康弘(滋賀水試)
 ホンモロコの温度依存的性決定(TSD)の発現には親の組み合わせが大きな影響を及ぼしていた。また,琵琶湖の天然親魚には全雌の子供を産む雄が存在し,このような雄は TSD により雌が雄に性転換したものと考えられた。性分化期の水温と性比の関係には 5 つのパターンが認められた。4-6 月に毎月 1 回自然産卵された卵からの個体について性比に対する水温の影響を調べたところ,6 月の個体は低水温でも雄に偏った性比を示し,本種の性決定メカニズムが生活史戦略と密接に関係している可能性が示唆された。
72(5), 1034-1041 (2006)

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閉鎖循環式養殖システムでのトラフグの成長

菊池弘太郎,岩田仲弘,古田岳志(電中研),
川端豊喜,柳川敏治(中国電力)

 総水量 10 m3 の閉鎖循環式養殖システムを用い,トラフグ稚魚を 224 日間飼育した。市販の配合飼料を 2 回/日,6 日/週で飽食給餌した。2 回の飼育実験で,それぞれ平均体重 343 g および 303 g に成長し,生残率は何れも 90% 以上であった。飼料効率は 87% と 72% となった。また,硝酸濃度の上昇は摂餌不良をもたらした。今回用いたシステムでは硝化機能に問題があり,改善によってより高い生産性が期待される。

72(5), 1042-1047 (2006)

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成熟サクラマスにおける尿量と腎臓重量の変遷

山家秀信(北大院水),山崎文雄(元北大院水)

 池産サクラマスの成熟期における腎機能の変化を調べることを目的として,尿量比,腎臓体指数,近位細尿管第二部構成上皮細胞の高さを調べた。体重当たりと生殖腺除去体重当たりを単位とする 2 種の尿量比が用いられた。前者の単位は未成熟魚による値を比較できるかもしれないが,成熟魚の比較や未成熟から成熟への変遷を査定する時は後者の単位を使うのが適していた。両方の尿量比,腎臓体指数,細尿管第二部上皮細胞の高さにおいて,成熟魚の値は未成熟魚より有意に高かった。これらの結果は成熟魚における腎臓の機能的変遷を示唆する。

72(5), 1048-1053 (2006)

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ニシマアジ・ミトコンドリア DNA の全塩基配列決定および流通する 2 種類の Trachurus 属の PCR-RFLP 法による判別

高嶋康晴(消費技術セ,水研セ中央水研),
森田貴己,山下倫明(水研セ中央水研)

 ニシマアジ Trachurus trachurus の mtDNA の全塩基配列を決定し,マアジ T. japonicus の mtDNA との塩基配列の違いを明らかした。マアジとニシマアジの mtDNA 全塩基配列の比較から,NADH dehydrogenase subunit 5 (ND5) 遺伝子の部分配列 360 bp を PCR で増幅した後,制限酵素 EcoRI および HinfI で消化して電気泳動により切断型を検出する PCR-RFLP 法を開発した。本法によってマアジおよびニシマアジを容易に判別することができた。

72(5), 1054-1065 (2006)

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絶滅危惧種メコンオオナマズにおけるマイクロサテライト DNA マーカーの開発と遺伝的多様性評価

大橋賢久,中嶋正道(東北大院農),
Naruepon Sukumasavin
(Department of Fisheries, Thailand),
Uthairat Na-Nakorn (Kasetsart University),
谷口順彦(東北大院農)

 絶滅危惧種メコンオオナマズの遺伝的多様性評価を行うためマイクロサテライト DNA マーカーの開発を行い,7 マーカーが開発された。このうち 6 マーカーで安定した多型が観察され,いずれもメンデルの法則に従っていた。平均ヘテロ接合体率は採苗用親魚集団で 0.38 であった。この値は同じ絶滅危惧種であるリュウキュウアユより高いが,同じメコン川の淡水魚である P. bocourti より低い値だった。今後,メコンオオナマズの遺伝的多様性を維持する場合,minimal kinship 法などを用い,交配に用いる親魚の選択を工夫する必要がある。

72(5), 1066-1071 (2006)

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ニジマスにおける遺伝子組換え大豆油粕の利用性

P. Chinark,佐藤秀一,日野徳弥,V. Kiron,
廣野育生,青木 宙(海洋大)

 遺伝子組換え大豆油粕(GM SBM)あるいは非遺伝子組換え大豆油粕(Non-GM SBM)をそれぞれ 15 および 30% 配合し,魚粉でタンパク含量を調整した飼料を 12 週間ニジマスに給餌した。その結果,飼育成績およびタンパク質の利用には,大豆油粕の種類および配合量による影響はなかった。一方,GM SBM 配合区の筋肉に低頻度であるが,遺伝子組換プロモーター断片が検出された。しかし,Non-GM SBM 配合飼料へ変えることにより 5 日で消失した。これらのことより,GM SBM の利用性は,Non-GM SBM と同様,高いものと推察された。

72(5), 1072-1078 (2006)

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絶食が完全養殖クロマグロ普通筋の冷蔵変化に及ぼす影響

中村好徳,安藤正史,瀬岡 学,川崎賢一(近大農),
澤田好史,宮下 盛,岡田貴彦,熊井英水(近大水研),
塚正泰之(近大農)

 同一生簀の完全養殖(FC)クロマグロ(各 3 尾)の背部(D-)と腹部普通筋(VOM)を用いて,絶食(6 日間)による冷蔵中(4℃)の肉質変化を調べた。体重および肥満度は,絶食前(16.3 kg, 26.7)から絶食後(14.2 kg, 20.3)に減少し,緑肝が観察された。絶食により D, VOM 中の乾物,蛋白,脂質およびグリコーゲン含量は減少した。D, VOM の破断強度と pH は絶食により冷蔵期間を通して高かった。一方,DOM の L*, a*, b*値とメト化率は,絶食により冷蔵期間を通して低かった。

72(5), 1079-1085 (2006)

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ウシエビのシングル WAP ドメイン構造を有するタンパク質の遺伝子構造解析ならびにプロモーター解析

陳 志毅(中央研究院),陳  健(南台科学大),
林 生華(中央研究院),潘 作字玉(中央研究院),
郭 欽明(中央研究院)

 エビのシングル WAP ドメイン構造を有するタンパク質(SWD)の機能は明らかにされていない。そこで,まず,ウシエビ SWD の遺伝子構造を明らかにした。SWD 遺伝子は 3 つのエキソンから成っていた。SWD 遺伝子プロモーター領域に GFP を連結し,Hela 細胞ならびにゼブラフィッシュ胚に導入した。ウシエビ SWD 遺伝子プロモーターは Hela 細胞ならびにゼブラフィッシュで機能した。プロモーター解析の結果より,SWD 遺伝子プロモーターは性ホルモン関連遺伝子や発生関連遺伝子の発現制御に関連していると考えられた。
(文責 廣野育生)

72(5), 1086-1095 (2006)

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メイラード反応による水溶性キトサンの調製とその性質

鐘 穎健(中華技術学院),蔡 政芳(亜州大),
李 錦楓(中華技術学院)

 メイラード反応を用いてキトサンに還元糖を結合させ,溶解性を向上させようとした。メイラード反応は酸性,高温(pH 6.0, 50-70℃)で行った。得られた修飾キトサンの溶解性は未修飾のものに比べて高かった。特に,グルコサミンを結合させた方がグルコースを結合させた場合より高い溶解性を示した。そして,前者は pH 10 においても溶解性を維持したままであった。得られた修飾物の粘性は測定に使用する条件(pH,イオン強度,および温度)に大きく依存した。また,粘性の温度依存性から得られた活性化エネルギーは修飾の程度が大きくなるに従い,小さくなった。
(文責 今野久仁彦)

72(5), 1096-1103 (2006)

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魚類の筋肉と皮膚におけるピリジノリン量および筋肉コラーゲンの溶解性とピリジノリン量との相関性

安藤正史,中岸葉子,吉田恵子,中尾将志,中川孝之,
牧之段保夫,塚正泰之,川崎賢一(近大農)

 魚類コラーゲンに含まれる架橋成分であるピリジノリンを定量したところ,マダイ,ブリ,トラフグの筋肉においてはそれぞれ 3.4, 8.8, 50.3 mmol/moL collagen であった。また,皮膚においてはトラフグのみにピリジノリンの存在が認められた(3.75 mmol/moL collagen)。酸可溶性(ASC),ペプシン可溶性(PSC),不溶性(ISC)に分画した筋肉コラーゲンのピリジノリン量は ASC<PSC<ISC の順に大きくなり,溶解性に対するピリジノリンの関与が示唆された。

72(5), 1104-1108 (2006)

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日本産,台湾産および中国産ニホンウナギ Anguilla japonica の筋肉中の微量元素の組成パターンの相違

山下由美子,大村裕治,岡崎恵美子(水研セ中央水研)

 日本産(宮崎,香川,静岡),台湾産および中国産のニホンウナギ Anguilla japonica の筋肉に含まれる微量元素を測定し,元素組成の違いおよび漁獲地の決定に重要な元素を調べた。筋肉中の 6 種類の元素,セレン,水銀,ヒ素,銅,亜鉛およびマンガン含量は漁獲地によって異なり,因子分析の結果,因子 1 はセレンおよび水銀含量,因子 2 は亜鉛およびヒ素含量が寄与していた。これら 2 因子によって漁獲地ごとに特徴的な元素組成のパターンを表すことができた。

72(5), 1109-1113 (2006)

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合成グラミスチンおよび類縁ペプチドの生物活性

杉山奈美,荒木美香,長島裕二,塩見一雄(海洋大)

 ヌノサラシ科魚類の体表粘液から単離・構造決定されているペプチド毒グラミスチンのうち,Gs 1, Gs 2, Pp 1, Pp 2b および Pp 3 のそれぞれについて C 末端フリーとアミドの 2 種類を合成した。天然品の溶血活性および抗菌活性と比較し,Gs 1 は C 末端フリー,そのほかは C 末端アミドであると判断した。Pp 1 についてはさらに 6 種類の類縁ペプチドを合成し,溶血活性には両親媒性の α-へリックス構造が,抗菌活性には+チャージが重要であることを明らかにした。

72(5), 1114-1120 (2006)

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遊泳脚の過剰再生を用いたガザミの標識(短報)

岡本一利(静岡水試)

 ガザミの簡易標識技術を開発するために,遊泳脚切除による標識方法を検討した。全甲幅 40 mm のガザミの右遊泳脚指節を解剖バサミで切除し,その回復状況を観察した。横断的に切除することにより,2 回目の脱皮時にすべての個体で過剰再生による変形遊泳脚を得た。漁獲物サイズに成長した 6 回目の脱皮後においても同様の変形がすべての個体に確認され,標識装着率は 100% であった。切除により誘発された過剰再生は標識として有効であり,目視で判別できるガザミの簡易標識が可能となった。

72(5), 1121-1123 (2006)

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無傷のアメリカナマズに対する浸漬法による Edwardsiella tarda の感染実験(短報)

Alyssa A. Wiedenmayer, Joyce J. Evans,
Phillip H. Klesius
(アラバマ.チ ェスター水生動物健康研)

 アメリカナマズを 20 匹ずつのグループにし,病原性のある E. tarda をそれぞれ 9.3×105, 1.9×107, 6.2×107, 3.0×108 CFU/mL の濃度で 30 分間浸漬した。対照区では tryptic soy broth 中で 30 分間浸漬した。浸漬後 96 時間観察した。6.2×107 および 3.0×108 CFU/mL の感染区でのみ魚の死亡が見られた。累積死亡率はそれぞれ 78%,70% であった。9.3×105, 1.9×107 CFU/mL の濃度では死亡魚は見られなかった。これら死亡魚の臓器から E. tarda が検出された。対照区から E. tarda は検出されなかった。LD50 は 3.4×107 CFU/mL であった。皮膚に傷のないアメリカナマズも浸漬法により E. tarda に感染することが明らかとなった。
(文責 青木 宙)

72(5), 1124-1126 (2006)

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スケトウダラ冷凍すり身加熱ゲルの網状構造に及ぼす pH 低下の影響(短報)

Fatema Hoque Shikha, Mohammed Ismail Hossain,
森岡克司(高知大農),久保田賢(高知大院黒潮圏),
伊藤慶明(高知大農)

 スケトウダラ冷凍すり身を用い,pH 低下がゲルの網目構造に及ぼす影響を低真空走査型電子顕微鏡で調べた。30℃ での予備加熱ゲルは pH 低下によってゲル強度は低下するが,中性に戻すとほぼ回復し,可逆的と思われたが,更に 80℃ で二段加熱するとゲル強度が低下し,不可逆的であった。また 80℃ での直接加熱ゲルも不可逆的であった。ゲル強度の弱くなったゲルは粗い網目構造であった。従って,すり身の pH 低下に伴うゲル形成能の低下は筋原繊維タンパク質(Mf)の網目形成能の低下によるものであり,Mf の不可逆的な変性によるものと推察した。

72(5), 1127-1129 (2006)

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ナマコ消化管におけるプロテアーゼ活性の分布とその季節変化(短報)

付 雪艶,薛 長湖(中国海洋大食品科学),
苗 本春(中国海洋大薬学),
李 兆杰,高  作字(中国海洋大食品科学),
平田 孝(京大院農)

 ナマコ消化管ホモジネート上清のプロテアーゼ活性について,カゼインを基質として調べた。少なくとも 4 種類のプロテアーゼの存在が示唆され,各至適 pH は 2.0, 5.0, 8.0, 13.5 であった。このうち,至適 pH 13.5 のアルカリプロテアーゼは極めて珍しく,その活性は消化管後部で高く,EDTA および PMSF によって阻害された。酸性プロテアーゼ活性は 7 月に高く,アルカリプロテアーゼ活性は 2 月と 9 月に高かった。以上から,至適 pH 13.5 のプロテアーゼを利用するためには,9 月に漁獲することが適切である。

72(5), 1130-1132 (2006)

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