向井幸則(マレーシア・サバ大学ボルネオ海洋研) |
ホンモロコ仔魚のアルテミア幼生捕食に果たす遊離感丘の役割を実験室で調べた。明条件下におけるアルテミア摂餌数は平均 12.3 個体/尾であったが,全暗黒下においてもその 85%(平均 10.5 個体/尾)を摂餌した。遊離感丘の機能を一時的に阻害するストレプトマイシン処理魚は,明条件下では未処理魚とほぼ同数摂餌したが,暗黒下では 0.8 個体/尾しか摂餌しなかった。このことから,未処理魚の暗黒下におけるアルテミアに対する摂餌は遊離感丘によるものと考えられた。
田中栄次(海洋大) |
VPA の原理を用いる計算式から死亡係数などを推定する方法を提案した。用いるデータは多回標識放流実験の放流数と再捕時間である。この方法の性能をシミュレーション実験で調べた結果,多くの条件下で期待値は真値の±12% 以内であった。1957 年から 1969 年に神奈川県沖合で行われたキンメダイのデータに適用した結果,自然死亡係数と漁獲係数は年当たり 0.57 と 0.09 と推定された。モデルの応用と改良などについて議論した。
In-Seok Park, Eun-Mi Kim (Korea Maritime Univ.), Seon Rang Woo (Korea Cancer Center Hospital), Sung-Yong Oh (KORDI), Dong Soo Kim (Pukyon National Univ.), Jun Wook Hur (Korea Maritime Univ.) |
アイナメの染色体操作技術の確立を目的として,温度依存的な有糸分裂の間隔時間の指標化を試みた。5℃ から 25℃ の温度帯において,第 1 卵割から第 3 卵割までの持続時間を測定することにより,初期卵割 1 周期に要する時間 τ0 を求めた。高温度域においては,胚発生は早くなり,発生は同調する傾向があった。5℃, 10℃, 15℃, 20℃ 及び 25℃ における τ0 は,それぞれ 341±3.60 分,275.5±4.53 分,187±6.93 分,99.2±8.27 分及び 34.2±8.74 分であった。いずれの温度帯においても,τ0 と発生温度の間には強い負の相関関係が認められた。
(文責 豊原治彦)
西村昌彦(東大海洋研), 島北寛仁(松下エコシステムズ), 神谷英里子(東大海洋研), 田代義和(松下エコシステムズ), 木暮一啓(東大海洋研) |
発光ダイオードを励起光源とする微生物迅速検査装置は,公衆衛生学,食品医薬品製造工程における品質管理の分野で,培養に依存しない簡便な細菌直接計数法として普及しつつある。我々は,天然環境中の海洋細菌の検出と計数に,本装置(Bioplorer: Panasonic Inc.)が利用できるかどうかについて調べた。Bioplorer で得られた海洋細菌全菌数は,蛍光顕微鏡,フローサイトメーターによる計数結果と高い相関を示したと共に,検出感度,測定精度においても高い信頼性を示した。
康 燉赫(韓国海洋研), 飯田浩二,向井 徹(北大院水), 金 鍾萬(韓国海洋研) |
スルメイカ生体の海水に対する密度比 g と音速比 h が音響ターゲットストレングス(TS)に与える影響を調べるため,g と h の測定を行なった。定置網で捕獲した活スルメイカ 14 個体を用いて,排水法により g=1.029 を,伝搬時間法により h=1.041 を得た。これらの値は過去の知見と比べると,g は同等であったが,h は大きかった。KRM モデルを用いてスルメイカの TS を推定したところ,38, 70, 120 kHz において直接測定した活スルメイカ TS との偏差は 3 dB 以内であった。また,過去の g, h の測定結果から推定した TS よりも最大 6.5 dB 大きかった。
井口恵一朗(中央水研),小西 繭(信州大), 武島弘彦(東大海洋研) |
温度感受性があると考えられている計数形質を指標として,両側回遊性アユの海中における初期分散の程度を推定した。全国 64 河川から採集した遡上直後の若齢アユの固定標本に軟 X 線を照射して,脊椎骨数ならびに背鰭担鰭骨数を計測した。その結果,これら形質はともに河川間で有意に変異したが,地理的な勾配は示されなかった。同一の河川に遡上したアユの集団は,孵化水温ならびに海中生活初期の水温を共有することが示唆された。このことにより,海中生活期のアユ仔・稚魚の分散の規模は,限定的であると推定された。
巣山 哲(水研セ東北水研八戸), 栗田 豊(水研セ東北水研), 上野康弘(水研セ東北水研八戸) |
西部北太平洋のサンマの年齢構造と,各年齢群の体長の年変動を明らかにするために,1989~2000 年の 9~11 月に採集されたサンマの耳石透明帯の有無と体長組成を調べた。耳石透明帯による年齢査定の結果,毎年 0 歳魚と 1 歳魚で構成されていた。1 歳魚の割合が 50% である体長は,277.8~304.7 mm の間で年により変化した。体長組成の分解によっても年齢群を分けることができ,1 歳魚の体長モードは 303.9~325.9 mm で変動していた。
高木 映(東大院農),石川智士(JST), Nao Thuok, Hort Sitha(カンボジア水産局), 中谷将典,西田 睦(東大海洋研), 黒倉 寿(東大院農) |
メコン川におけるナギナタナマズ Notopterus notopterus の遺伝的多様性と集団構造を明らかにする目的で,カンボジアのメコン川本流とトンレサップ湖を含むその支流から 332 個体を採集し,ミトコンドリア DNA の調節領域の塩基配列(339 bp)を解析した。メコン川本流(π=0.034)のサンプルの平均塩基多様度はトンレサップ湖(π=0.028)のサンプルに比べ有意に高かった。またメコン川とトンレサップ湖間の平均塩基多様度は 0.029~0.037 であり,FST 値には 0.06 から 0.24 の違いがあった。このことから,メコン川本流とトンレサップ湖では異なった集団が存在する事が示唆された。
田岡洋介(鹿大連農), 前田広人(三重大生物資源), JAE-YOON JO, SU-MI KIM, SOO-IL PARK(釜慶大), 吉川 毅,坂田泰造(鹿大水) |
プロバイオティクスがテラピア Oreochromis niloticus の非特異的免疫系に及ぼす影響を検証するために,プロバイオティクスを用いた飼育試験を実施した。プロバイオティクスの導入は非特異的免疫反応を賦活し Edwardsiella tarda 感染に対する耐性も向上させた。特に生菌経口投与が死菌経口投与及び生菌水中投与より効果的であった。本実験によって,プロバイオティクスが水産養殖における疾病予防での薬剤使用に替わる方法として有望であり,死菌より生菌がより効果的であることが示唆された。
松田浩一,竹内泰介(三重科技セ水) |
イセエビのフィロゾーマ幼生 10 個体を個別で飼育し,脱皮間隔,脱皮による成長量を調査した。ふ化時の平均体長は 1.55 mm で,20 齢で 16.30 mm となり,その後 5 個体がプエルルス幼生へ変態した。5 個体のフィロゾーマ幼生期の期間は 245~326 日(平均 289.0 日),齢数は 22~29(同 26.2),最終齢の体長は 28.45~33.05 mm(同 30.280 mm)であった。脱皮による成長量の変化から,全幼生期を体長 5 mm と 15 mm を境界とする 3 期に区分した。また,群飼育した幼生を用いて,体長と湿重量及び乾燥重量の関係を明らかにした。
朴 哲志(東北大院農),李 ![]() 小林俊将(岩手水技セ),木島明博(東北大院農) |
近交弱勢は水産増養殖において最も回避すべき現象である。しかし多くの交配実験や長期飼育を必要とするため殆ど研究されていない。本研究はエゾアワビの 6 家族(雌 13 個体,雄 11 個体)を用いて兄妹交配と非兄妹交配を同時に作成できる総当たり交配を 3 回行い,兄妹交配 24 区,非兄妹 21 区における受精率,ベリジャー幼生の奇形率を調べた。また兄妹交配 10 区と非兄妹交配 6 区について着底後 1 年間の生残率と成長を調べた。その結果,兄妹交配区において奇形率が高く生残率が低くなる傾向を示し,近交弱勢現象が認められた。
Wenresti G. Gallardo,萩原篤志(長大院生産), 原 研治(長大水),征矢野清(長大海セ) |
シオミズツボワムシ Brachionus plicatilis の体内から,分子量 28 kDa のタンパク質で,サケ成長ホルモン抗体と免疫交叉性を有する物質が見出された。この成長ホルモン様物質をゲル濾過及びイオン交換クロマトグラフィーによって精製した。これを飼育水に添加して,ワムシの個体別飼育を実施したところ,内的自然増加率と純繁殖率がいずれも増大する傾向がみられた。
大西修平(東海大海洋),赤嶺達郎(水研セ中央水研) |
Bertalanffy 成長式において,軟組織と硬組織の成長特性を区別し,二枚貝を例としてモデルを再構築した。殻の形成に関わる物質の消費速度が,体表面積の拡張速度に比例することを前提に,硬組織の成長動態を表現した。導出された方程式は 4 個のパラメータを持つ。解は変曲点の位置が固定されない S 字型曲線を描く陰関数となった。データ解析には最小二乗法の適用が困難であり,Lagrange 未定乗数法と Newton 法による数値的最適化法を導入した。既存のデータに対して曲線をあてはめた結果,モデルの有効性が確認された。
宮本康司,幸島司郎(東工大院生命) |
ムラサキウニの摂食行動パターンと活動リズムを解明するため,飼育下で行動と管足の長さおよび棘の動きを記録した。咀嚼・移動・休息の独立した 3 行動が観察された。連続した短時間移動と咀嚼が飢餓群で飽食群より有意に多く観察され,摂食行動パターンであることが示唆された。咀嚼は暗期に多く夜行性の活動リズムを持つことが示唆された。咀嚼中には,管足を中程度の長さに伸ばし棘の一部を動かす傾向があった。野生下で本種の管足および棘を観察し活動リズムを推定した結果,飼育下と同様な夜行性の活動リズムを持つことが示唆された。
児玉圭太,久米 元,白石寛明, 森田昌敏,堀口敏宏(国立環境研) |
東京湾産シャコの資源量低下に伴う最小漁獲サイズの低下を評価するため,肥満度,体長と加工後肉長の関係,および出荷製品の銘柄別体長を調査した。肥満度は春に低く,冬に高かった。加工時の身縮みの指標である体長と肉長の差は,夏と冬に大きく,春と秋に小さかった。以上より,肥満度が高くても加工後の肉の歩留まりは悪いことが示された。現状の最小漁獲サイズは,年平均値では資源量高水準期と比べ低下していなかったが,肉の歩留まりの良い季節には有意に低下していた。歩留まりの季節変化に伴う漁獲管理の必要性が示唆された。
牧 輝弥,長谷川浩,北見洋幸, 布本恭子(金大院自然), 宗影志浩(高知大農),上田一正(金大院自然) |
水産養殖漁場において,魚病治療のため散布された残留抗生物質は,細菌に抗生物質耐性を獲得させる危険性を持つ。残留抗生物質に対する生物分解を解明するため,海底堆積物に加えた抗生物質 5 種類を経時的に定量した。その結果,抗生物質種ごとに減少程度が異なるものの,抗生物質は生物活性によって分解された。また,堆積物から分離した抗生物質耐性細菌株で,抗生物質に対する分解能力が認められた。分離株を分子系統分類学的に解析したところ,細菌株は沿岸海域に普遍的に生息する細菌種から構成されることが示唆された。
李 永,山本勝太郎,平石智徳(北大院水), 梨本勝昭(日本データーサービス), 吉野博之(道工技セ) |
籠入り口の形状がホッケ籠の漁獲効率に与える影響を明らかにする目的で,漏斗の誘導角度と長さの異なる籠の入り口模型に対するホッケの行動実験を行った。その結果,ホッケの入り口通過率は,誘導角度が大きくなるにしたがって一旦増加しその後減少した。誘導角度が 34°のとき通過率は 43%,誘導角度が 53°のとき通過率は 8 % となり,この両者には有意の差が見られた(P=0.006)。また,入り口の長さの違いによる通過率にも有意の差が見られた(P=0.01)。本実験の結果から,籠入り口の形状を改善すればホッケ籠の漁獲効率を上げられることが示唆された。
夏 軍紅,江 世貴(中国水産科研院南海水研) |
中国において乱獲による急速な資源の減少が認められているキダイについて青島(OD),ソンシャン(ZS),シンツェン(SZ),ベイハイ(BH)海域から採集した野生個体の AFLP 分析を行った。その結果,5 プライマーセットで検出した 265 座のうち 166 座で多型を示した。多型率と多型座数は ZS(29.4%,78 座)から BH(24.2%,64 座)であった。Nei の遺伝的分化指数は ZS の 0.2237 から BH の 0.1905 であった。Fst 分析から 4 海域は遺伝的差異が認められ,中国周辺のキダイには少なくとも 4 地域集団が存在することが示された。
(文責 木島明博)
山口園子(九大院生資環), 玄浩一郎,奥澤公一(養殖研), 松山倫也(九大院農),香川浩彦(宮崎大農) |
未熟期および精子形成初期の雄マダイに対し,エストラジオール-17β(E2),テストステロン(T)および 11-ケトテストステロン(11-KT)を投与した結果,E2 はいずれの発達段階においても直接精巣に作用し,11-KT 合成を抑制することにより,精子形成を阻害する可能性が示唆された。一方 T は精子形成初期においてのみ,脳下垂体での GTH の合成や分泌を抑制することにより 11-KT 合成を抑制し,精子形成を阻害する可能性が示唆された。また,11-KT は,いずれの発達段階でも精巣の発達に影響を及ぼさないことが明らかとなった。
堀 美菜(東大院農),石川智士(科学技術振興機構), Ponley Heng, Somony Thay, Vuthy Ly, Thuok Nao(カンボジア水産局), 黒倉 寿(東大院農) |
カンボジア王国コンポントム州の 2 村において小規模漁業の世帯調査を行った。漁業世帯は利用する漁場の違いによって 3 グループに分けられ,約 70% の世帯は村から約 30 km 離れているトンレサップ湖やその周辺の水域を漁場としており,漁獲物の約 80% を販売していた。本研究より,これまで自家消費的な活動とされていたカンボジアの小規模漁業には,農村部において重要な現金収入源としての役割があることが明らかとなった。
大下誠二,依田真里(水研セ西海水研), 板坂信明,森永法政(鹿児島県水技セ), 一丸俊雄(長崎総合水試) |
九州西岸域で漁獲されるマルアジ Decapterus maruadsi の年齢,成長および成熟特性を明らかにした。年齢は耳石を熱し,樹脂に包埋した後に核付近で短軸方向に切断し読みとった。その結果から,次の von Bertalanfy の成長式を求めた。
FLt=342[1-exp {-0.55(t+0.58)}], (1<t<7)
ただし,FLt は t 歳における尾叉長(mm)。主産卵期は 6 月であり,GSI(生殖腺重量×100÷体重)4 以上の個体の多くが核移動期以上の卵母細胞を有していた。
玖村武史,安井 肇,水田浩之(北大院水) |
ワカメとチガイソの遊走子形成と栄養要求性の関係について調べた。ワカメ胞子葉の N, P 含量が,各々 1.4 kgN/m3, 0.74 kgP/m3 以上の時に遊走子嚢が形成され,この値が遊走子形成の閾値であることが示された。チガイソの遊走子形成における N と P の閾値は 6.25 kgN/m3, 1.70 kgP/m3 と推定され,ワカメに比べ高いコストで遊走子を形成していた。また,両種で葉状部に遊走子を形成した個体が観察され,その形成部位は閾値以上の N, P 含量を示した。この葉状部での遊走子形成は,胞子葉からの栄養塩の流出等により支えられていると考えられ た。
Fatema Hoque Shikha, Mohammed Ismail Hossain, 森岡克司,久保田賢,伊藤慶明(高知大農) |
スケトウダラ冷凍すり身を用い,pH 低下がゲル化特性に及ぼす影響を調べた。ゲル強度は pH の移動に関わらず 30℃ で最も強く,50~60℃ で最も弱かった。30℃ 及び 80℃ でのゲル強度は pH の低下と共に弱くなり,中和してもゲル強度は回復しなかった。50~60℃ でのゲル強度は非常に弱く,pH 低下の影響が見られなかった。80℃ で EDTA 存在下でゲル化してもゲル強度の回復に影響しなかった。これらのことは低 pH 下で魚肉タンパク質の不可逆的な変化が起こっているためであり,SH 基の酸化力によるものではないと推察した。
中谷恭子(海洋大), 木幡知子,土居崎信滋(日水中研), 潮 秀樹,大島敏明(海洋大) |
呈味物質を添加したマグロ油,イワシ油および大豆油トリアシルグリセロール(TAG)水中油(o/w)エマルションの油脂粒径の大小が味覚に及ぼす影響を検討した。嗅覚不全マウスによる二瓶選択試験は,甘味および苦味を個別に加えた小粒径エマルションの飲食量は大粒径エマルションを上回った。ヒトによる官能検査では,苦味を加えたマグロ油 TAG およびイワシ油 TAG の小粒径エマルションの先味を弱く感じた。すなわち,油脂粒径は呈味成分を添加した o/w エマルションに対する選択性に影響することが明らかとなった。
近藤秀裕,渡部終五(東大院農) |
キンギョ培養細胞に及ぼすコイ血清成分の増殖促進効果を調べた。市販の L-15 培地にコイ血清を添加した場合,20℃ および 35℃ で培養したキンギョ細胞で著しい増殖促進活性が観察されたが,その活性は分子量 10,000 以下の低分子画分の除去により失われた。さらに,コイ血清のより高分子の画分につき,リポタンパク質画分およびアルブミン様 71 kDa 成分を主成分とする画分に分画し細胞増殖への影響を調べたところ,両画分とも上記の低分子画分の共存下でのみ増殖活性を示した。
佐藤 実,陶 志華,塩崎一弘, 中野俊樹,山口敏康(東北大院農), 横山雄彦,菅野信弘,長久英三(北里大水) |
本法は,魚類およびその加工品の化学的危険因子ヒスタミンを簡易・迅速に測定する方法である。具体的な工程は,80% エタノールによる試料エキスの調製,ペーパーディスクへの吸収,泳動用ろ紙への設置,電気泳動(10 分),乾燥と Pauly 試薬による発色である。この方法で,ヒスタミンは共存物質であるヒスチジン,カルノシンやその他の Pauly 試薬陽性物質と確実に分離することより,妨害物質を除去する煩雑な前処理が不要で,高感度(最低検出量 30 ng,魚肉中 15 ppm)に多数の試料を短時間に同時に分析可能である。
廖 萱蓉,陳 彦樺,鄭 森雄(台湾海洋大) |
コイ消化管の高濃度 Zn は,43 kDa Zn 結合性膜タンパク質に起因すると先に報告したが,本研究ではさらに Zn 含有量が細胞外高分子の量に関係していることを明らかにした。消化管を免疫染色することにより,Zn 結合タンパク質は固有層や粘膜層の結合組織に局在していることが分かった。このことからコイ消化管においては,Zn は結合組織の繊維芽細胞の外部表面に結合すると考えられる。
(文責 村本光二)
金 龍國,趙 智英(釜慶大),成 基百(南海水研), 朴 重淵(韓国国立水産科学院), 孔 仁秀,洪 龍基(釜慶大) |
Manchurian trout (Brachymystax lenok) およびその生息域に存在する他のサケ科魚類の判別法について 18s rRNA 遺伝子の RFLP ならびに RAPD 解析を用いて検討した。RFLP 解析では,Manchurian trout では 274 および 393 bp の,ニジマスでは 103 bp および 563 bp の制限酵素消化断片が得られたが,アマゴでは DNA 増幅断片の消化は起こらなかった。RAPDs 解析では,プライマー OPC-02 による RAPDs 解析の結果が種の判別に適していた。
(文責 廣野育生)
卞 珠瑩,高野倫一,廣野育生,青木 宙(海洋大) |
ヒラメ病魚より分離された VHSV KRRV9822 株(ジェノグループⅠ)のゲノムにコードされている全遺伝子領域を含む 10,338 塩基の配列を決定した。ゲノム上には,核タンパク質(N),脂質タンパク質(P),マトリックスタンパク質(M),糖タンパク質(G),非構造ウイルスタンパク質(NV)および RNA ポリメラーゼ(L)が存在した。異なるジェノグループ間におけるそれぞれの遺伝子の同一性は,N, P, M, G と L 遺伝子では約 85% であったのに対し,NV 遺伝子では 77% と低い値であった。
粟野慎一(北大院水),宮本浩士(池田食研), 細川雅史(北大院水),万倉三正(池田食研), 高橋是太郎(北大院水) |
DHA 高含有遊離脂肪酸及び大豆由来リゾレシチンからのホスホリパーゼ A2 を介した高付加価値リン脂質の合成収率を向上させる方法について検討した。両基質をグリセロールに溶解し,塩化カルシウム及びホスホリパーゼ A2 を含むホルムアミド溶液を添加して,最も収率が高い条件を求めた結果,反応液を減圧下で混合しながら可及的に乾燥した窒素ガスをバブリングし,エステル合成反応の進行にともなって生ずる水分のみならず,同反応の進行にともなって不要になるホルムアミドを経時的に留去することが重要な決め手になることが判明した。
Sun-Mee Park, Se-Eun Kang, Jae-Suk Choi, Ji-Young Cho, Seung-Je Yoon, Dong-Hyun Ahn, Yong-Ki Hong(釜慶大) |
サンゴ藻の生育分析のための塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)を用いる試験法を検討した。生細胞による赤色のトリフェニルホルマザン(TPF)生成のための pH,時間,TTC 濃度,温度を最適化するとともに,生成の阻害に働く酸素や光の影響を取り除いた。こうして設定した TTC 法は,TPF の選択的抽出が可能であり,サンゴ藻の着色物に影響を受けない簡便な分光学的定量分析法である。
(文責 村本光二)