Fisheries Science 掲載報文要旨

トランスジェニックドジョウにおける導入遺伝子の遺伝パターンについて

金 東秀(釜慶大),
金 鳳石,李 相俊(韓国水産科学院),
朴 仁錫(韓国海洋大),南 潤權(釜慶大)

 レポーター遺伝子である CAT 遺伝子を導入遺伝したトランスジェニックドジョウにおいて第 5 世代まで導入したレポーター遺伝子の遺伝パターンを解析した。異なるトランスジェニック系統では,導入遺伝子の遺伝パターンが異なることがサザーンブロットハイブリダイゼーション解析により明らかとなった。さらに,導入した CAT 遺伝子の発現には 3 つのパターンが見られ,それらは(1) 定常的な発現,(2) 世代を重ねることにより突然発現しなくなる,(3) 世代を重ねることによる発現量の減少であった。
(文責 廣野育生)

70(2), 201-210 (2004)
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モクズガニとチュウゴクモクズガニの染色体に関する研究

李 大雄,内藤七美,山崎文雄(北大院水)

 近年,モクズガニとチュウゴクモクズガニが別種か否かについての論争が様々な観点から活発に行われている。両種が別種であることを支持する一つの根拠として染色体数が用いられている。今までの報告では,モクズガニの染色体数(Niiyama, 1937)は,チュウゴクモクズガニ(Du, 1986)より 2 本多く 2n=148 である。しかし Niiyama のモクズガニの染色体数の研究方法は古典的な組織切片法であり,信頼性が欠けている。本論文では,空気乾燥法を用いてモクズガニの染色体数を検証した結果,モクズガニの染色体数はチュウゴクモクズガニと同様に 2n=146 であることが判明された。

70(2), 211-214 (2004)
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実験室で飼育したアサリ稚貝の濾水と成長

中村泰男(国立環境研)

 珪藻を餌として殼長約 10 mm のアサリの稚貝を飼育し,濾水速度(CR )と成長速度を解析した。軟体部乾燥重量あたりの CR は,12 から 21℃ の間で 2.5 倍上昇し,21 から 30℃ の範囲ではしだいに減少した。成長速度は 9 および 20℃ のいずれにおいても,日々の餌供給量とともにほぼ直線的に増加した。成長速度と餌供給量の関係から,20℃ における同化効率(0.62)と呼吸による体重の減少(1.4% d-1)を推定することができた。

70(2), 215-222 (2004)
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新たに開発した浮魚類仔稚魚定量採集用フレームトロールについて

大関芳沖(水研セ中央水研),胡 夫祥(海洋大),久保田洋(水研セ中央水研),
杉崎宏哉(水研セ東北水研),木村 量(水研セ中央水研)

 浮魚類仔稚魚の定量採集を目的として,網口面積 5 m2 のフレームトロールを作製し,その性能を外洋域で調べた。曳網水深はワープ長により制御でき,水中重量の減少により曳網水深の安定性が増大した。本トロール網を用い,1998 年 5 月 29 日~6 月 24 日に黒潮親潮移行域において仔稚魚採集を行った。海況と船速の変動にもかかわらず,44 回の斜め曳きで安定した操業結果を得ることができた。カタクチイワシとハダカイワシ仔稚魚が標本の大部分を占めており,本トロール網が浮魚類仔稚魚の定量採集に適当であることが示された。

70(2), 223-232 (2004)
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近接する異なる二つの生息地(ホンダワラ帯とピリヒバ帯)におけるムラサキウニの密度・成長・生殖

八谷光介,中原紘之(京大院地球環境)

 ムラサキウニは暖温帯日本の岩礁地帯で優占する植食動物である。この地域の岩礁地帯において,海藻群落とムラサキウニの関係を解明するために,ホンダワラ帯とそれに近接するピリヒバ帯に生息するムラサキウニの密度・成長・生殖を比較した。ムラサキウニの密度はピリヒバ帯のほうが高く,ホンダワラ帯のムラサキウニは,より大型に成長し生殖腺指数が周年にわたり高かった。生殖サイクルは両地点においてほぼ同一であった。これらの結果は,ホンダワラ類がムラサキウニの成長と生殖を支えていることを示している。

70(2), 233-240 (2004)
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マダイおよびチダイ稚魚のなわばり行動

工藤孝也(広島水試),山岡耕作(高知大農)

 マダイとチダイ稚魚のなわばり行動を調べたところ,主に 4 つの排他行動(一方的攻撃,相互攻撃,威嚇,相互誇示)と逃避行動から構成されていた。両種は相互を区別して認識しなわばり行動を変化させ,同種に対して最も排他的であった。それに対し,近縁種への排他性はそれに比べ低く,近縁種以外の他魚種の場合はさらに低かった。なわばりでの行動を種間で比較した場合,チダイの方がマダイに比べ高い頻度で浮上行動を示した。これらのことから,両種間の排他性が低下した要因は,行動の差異に由来する食物利用の差異によるものと推測された。

70(2), 241-246 (2004)
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高温処理によるニホンウナギの人為三倍体作出

野村和晴(水研セ養殖研),中島淳一朗(北大院水),
太田博己(近大農),香川浩彦(宮崎大農),
田中秀樹,鵜沼辰哉(水研セ養殖研),
山内晧平,荒井克俊(北大院水)

 ニホンウナギにおける第二極体放出阻止による人為三倍体誘起を目的に,ホルモン投与により人為催熟した雌雄親魚より得られた受精卵を用いて,一定水温に加温した濾過海水に一定時間浸漬することによって高温処理を施し,胚の孵化率,相対 DNA 量,染色体数を調べ,生残性と三倍体化率より,処理開始時間(受精後 1~10 分)・処理温度(30~40℃)・処理時間(1 あるいは 3 分間)の各パラメータにおける最適条件を探った。その結果,本研究においては,受精後 10 分に 37℃ で 3 分間の温度処理が人為三倍体誘起の最適条件であった。

70(2), 247-255 (2004)
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日本北部の仙台湾におけるメバルの産仔の時空間的パターン

Guido Plaza(水研セ中央水研),
片山知史,大森迪夫(東北大院農)

 2000 年 10 月~2001 年 3 月の間,仙台湾沿岸の 4 港で採集された 941 標本の雌を用いて,メバルの再生産活動を解析した。成熟魚は,年齢 2~9 歳,全長 15~29 cm,体重 80~496 g であった。生殖腺熟度指数は 10 月に増大し始め,12 月の始めにピークを示し,その後は低下した。卵巣の 4 つの発達段階(熟卵,受精卵,発眼卵,産仔後)の出現割合の季節変動から,産仔期は 12 月の下旬から 3 月の上旬の間であり,北の調査点ほど遅かった。また,産仔期の初期には大型の高齢魚が,終期には小型の若齢魚が産仔した。

70(2), 256-263 (2004)
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ヒラメの主要組織適合抗原複合体 MHC class I ,IIα およびIIβ の構造および発現について

Prapansak Srisapoome,大平 剛,
廣野育生,青木 宙(海洋大)

 ヒラメより主要組織適合抗原複合体(古典的および非古典的 MHC class I ,MHC classIIα およびIIβ )の cDNA をクローン化した。これらのアミノ酸配列から予想されるドメイン構造は既知の脊椎動物のものと同様であった。古典的 MHC class I遺伝子の発現は,解析した全ての器官において見られた。一方,非古典的 MHC class I遺伝子の発現は主にリンパ様器官,肝臓および腸において見られた。MHC classIIα およびIIβ 遺伝子の発現は,今回解析したすべての器官で見られた。

70(2), 264-276 (2004)
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エゾバフンウニ斑点病原因菌 Tenacibaculum sp. の VBNC 状態からの蘇生

増田悠輝,田島研一,絵面良男(北大院水)

 エゾバフンウニ斑点病原因菌 Tenacibaculum sp. の蘇生条件を検討した。75%ASW 中で VBNC 状態となった細胞を 5℃ から 25℃ に温度シフトアップしても蘇生しないが,この系に 0.0017% の塩化第二鉄溶液を添加した同様の温度シフトアップで蘇生した。また,ウニ成分添加 75%ASW 中で VBNC 状態となった細胞も温度のシフトアップで蘇生し,0.0017% の塩化第二鉄溶液の添加により VBNC 移行後,より長い日数を経過した細胞からも蘇生が見られたことから,蘇生には鉄が関与していることが示唆された。

70(2), 277-284 (2004)
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近接する異なる二つの生息地(ホンダワラ帯とピリヒバ帯)におけるムラサキウニの食性と消化管内容物・生殖腺の安定同位体比

八谷光介,中原紘之(京大院地球環境)

 海藻群落とムラサキウニの関係を解明するため,ホンダワラ帯とピリヒバ帯から採集したムラサキウニの食性を調べ,消化管内容物および生殖腺の安定同位体比を比較した。ホンダワラ類は,両生息地においてウニ消化管内容物の主要な構成物であったが,ピリヒバ帯ではホンダワラ類の占める割合は低く,その残りをほぼ石灰藻が占めた。安定同位体比分析では,生息地間で消化管内容物に差が認められたが,生殖腺には差が認められなかった。ホンダワラ帯ではウニの食物が保障されるが,ピリヒバ帯では流れ藻として補足されていることが示された。

70(2), 285-292 (2004)
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魚類ミオグロビンの熱安定性および変性速度

陳 輝煌,陳 莉臻,林 世斌(宜蘭農工専科学校)

 12 種の魚類からミオグロビン(Mb)を単離し,熱安定性および変性速度を調べた。筋肉中の Mb 濃度は回遊魚で 1.86-2.80 mg/g であった。一方,ティラピアは 0.94 mg/g と最も低かった。熱測定における遷移温度(Tm)はシイラおよびマアジ Mb でそれぞれ 46.4 および 51.8℃ に,サメ類 Mb の主要吸熱ピークは 71.8℃ に観察された。測定した全ての Mb の変性は 1 次反応解析で 2 段階の進行過程を示した。そこで各段階に分けて変性速度恒数を比較したところ,初期の早い段階の速度恒数はホシザメ Mb で最も小さく,逆にティラピア Mb で最も大きかった。
(文責 渡部終五)

70(2), 293-298 (2004)
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ブレビバチルス属細菌におけるプロテアーゼインヒビターの存在

小林武志,中川直児,今田千秋,
濱田(佐藤)奈保子,渡辺悦生(海洋大)

 メタロプロテアーゼの一種サーモリシンに対する阻害活性を示す細菌を東京湾の海底堆積物から分離し Brevibacillus laterosporus の近縁種と同定した。Brevibacillus 属基準株 9 株のインヒビター産生も検討したところ,平板培地で 5 株,液体培地で 4 株に活性が見られたので,本活性は Brevibacillus 属細菌に広く分布することが判明した。その中で B. reuzseri IFO 15719T は最も強い活性を有していたので,このインヒビターの単離と精製を試みた。本株のインヒビターは各種クロマトグラフィーにより培養液から 920 倍の純度に精製され,SDS-PAGE における挙動から 60 kDa の単量体のタンパク質であると示唆された。

70(2), 299-305 (2004)
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無脊椎動物天然アクトミオシンのゲル形成能に対するパラミオシンの影響

江原 司(上智大理工),中川敬一(マルハ),
田宮 徹(上智大理工),野口 敏(マルハ),
土屋隆英(上智大理工)

 パラミオシンを含む無脊椎動物肉天然アクトミオシンの加熱ゲル化過程を動的粘弾性法で調べた。アクトミオシンの加熱ゲル化過程では比較的高い温度範囲で貯蔵弾性率の増加が観察された。パラミオシンは無脊椎動物肉加熱ゲルに高い弾性を付与する性質を持っていた。少量のパラミオシンはゲルの粘着性を大きくし,特有の物性を与えていた。無脊椎動物肉ゲルの特有の性質はパラミオシンの性質によるところが大きい。この研究で得られた結果は無脊椎動物肉から新しい物理化学的性質を持ったゲル製品を作るための重要な結果である。

70(2), 306-313 (2004)
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エラブウミヘビ Laticauda Semifasciata 油がマウスの学習能に与える影響

白井展也,鈴木平光(食総研),清水禮子(富士製薬)

 エラブウミヘビ Laticauda Semifasciata 油がマウスの学習能に与える影響をラードおよび魚油と比較した。6 ヶ月齢のマウスを 5 % ラード食群(対照群),5 % ウミヘビ油食群,5 % 混合魚油(DHA の割合がウミヘビ油と等量になるよう調製した油)食群の 3 群に分け,飼育開始の 4 ヶ月後に迷路学習実験を行った。三回目の迷路実験において,ウミヘビ油食および混合魚油食群ともに,袋小路に迷い込む回数はラード食群に比べて有意に低かった。これらの結果から,ウミヘビ油は魚油と同様の学習能改善効果があることがわかった。

70(2), 314-318 (2004)
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干しナマコのテクスチャーに及ぼす戻し条件の影響

福永淑子(上野学園短大),
松本美鈴(青山学院女子短大),
村上知子(北海道教育大),
畑江敬子(お茶女大生活科学)

 干しナマコは水に浸漬した後,加熱と放置を数回繰り返して水戻しを行う。蒸留水で干しナマコを戻す過程で重量は増加し,本茹 2 回で元の 7.6 倍になり軟らかく,水分は 94.5% で,生ナマコと同じであった。戻し過程に茹で汁への成分の溶出は灰分が最も速く,次にグルコサミノグリカン,コラーゲンであった。戻し汁として,蒸留水,米洗液,番茶浸出液,および炭酸カリウム水溶液を用いると,炭酸カリウムは干しナマコの吸水・膨潤が速やかで,米洗液は最も軟らかく,番茶浸出液は最も硬いことが物性測定と官能検査で明らかになった。

70(2), 319-325 (2004)
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ウナギ筋細胞と肝細胞の共存培養下でのリポタンパク質代謝

Nazneen Alam(鹿連大),
中村 薫,林 征一(鹿大水)

 筋細胞の脂質合成能および肝細胞との共存培養下でのリポタンパク質代謝を検討した。筋細胞の 14C-酢酸からの脂質合成能は,肝細胞の約 1/100 であった。肝細胞との共存培養においてリポタンパク質リパーゼ(LPL)の非存在下で,筋細胞中の主脂質が 14C-triacylglycerol に変わったことから,筋細胞は肝細胞が分泌したリポタンパク質を取り込むことが推察された。一方,LPL 存在下では筋細胞中の 14C-脂肪酸の割合が 1.1% から 32.6% となり,14C-脂質総量も 1.6 倍となった。これらの結果から共存培養下では,LPL 非依存型と依存型のリポタンパク質代謝系が存在することが明らかとなった。

70(2), 326-335 (2004)
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寄生性カイアシ類 Acanthochondria priacanthi を生物指標としたハタハタの系群判別(短報)

柳本 卓(北水研),小西健志(鯨類研)

 ハタハタの資源構造を検討するため,日本の北部海域の主産卵場で採集したハタハタの鰓に寄生するカイアシ類 Acanthochondria priacanthi を指標として寄生率と相対寄生数を調べた。その結果,北海道襟裳岬以東と西の海域で寄生率に大きな差異があり,親潮(寒流)および対馬海流(暖流)と寄生虫の分布とに密接な関係があることが示唆された。また,襟裳岬以東の産卵場間での寄生状況の差異は,それぞれの産卵場を利用する群を系群とする可能性を示した。

70(2), 336-338 (2004)
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ウナギ人工孵化仔魚の耳石微細構造(短報)

篠田 章(東大海洋研),
田中秀樹,香川浩彦,太田博巳(水研セ養殖研),
塚本勝巳(東大海洋研)

 30 日齢のウナギ人工孵化飼育魚の耳石微細構造を SEM を用いて観察した。その結果 26-28 本の輪紋が認められ,前葉形仔魚期および葉形仔魚期の早期において,本種の耳石輪紋は日周輪であることが証明された。また,全ての耳石に直径約 23 μ m のチェックが給餌開始日とほぼ時期を同じくして形成されることから,これは摂餌開始輪であると考えられた。さらに摂餌開始後の耳石成長は天然の仔魚と比較して著しく低い値を示した。飼育下のウナギ仔魚では体内栄養から体外栄養への切り替えが順調に行われていない可能性が考えられる。

70(2), 339-341 (2004)
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紅藻無節サンゴモ由来のアワビ幼生変態促進物質(短報)

末永聖武,堀 秀成,石田均司,糠谷東雄(静岡県大薬),
ロドニー・D. ロバーツ(コースロン研究所),
辻 邦郎(静岡県大薬)

 アワビ幼生は紅藻無節サンゴ藻(CCA)に特異的に着底・変態することが知られている。CCA に含まれるアワビ幼生の変態を促進する低分子物質を明らかにするため,伊豆近海で採集した CCA の一種サモアイシゴロモ Hydrolithon samoense について,アワビ幼生の変態促進活性を指標として分離・精製を行なった結果,活性物質として δ -aminovaleric acid を得た。このものは,アミノ酸関連物質のランダムなスクリーニングによりアワビ幼生の変態を促進することが知られていたものの海藻の成分としては報告されていない。

70(2), 342-344 (2004)
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近赤外分光法による凍結・解凍マサバ脂肪量の非破壊測定(短報)

嶌本淳司,長谷川薫(静岡水試),
佐藤 実(東北大院農),河野澄夫(食総研)

マサバの凍結・解凍魚を用いて,近赤外分光法による脂肪量の非破壊測定を行った。インタラクタンス方式により魚体背部中央部で測定した近赤外スペクトルの 2 次微分値と魚体全体の脂肪量を基に重回帰分析を行った結果,第 1 波長として 926 nm の脂肪の吸収バンドを含む良好な検量線が得られた。測定精度の指標である RPD 値は凍結魚で 2.9,解凍魚で 3.9 と高かった。また,凍結・解凍魚の両者に適用可能な温度補償型検量線の精度は RPD 3.1 と高かった。

70(2), 345-347 (2004)
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