Fisheries Science 掲載報文要旨

底引網設計のための漁具模型実験と実物網海域試験の比較

Loris Fiorentini, Antonello Sala(イタリア海洋科研),
Kurt Hansen(デンマーク北海セ),
Giulio Cosimi, Vito Palumbo(イタリア海洋科研)

 トロール漁具の新規開発に際して,イタリアで底引網として使われている漁具を原型として,1/4 縮尺模型による実験を大型回流水槽によって実施した。新型漁具の特性として,漁獲性能に影響を及ぼさない範囲で大目網を採用し,十分な網口高さ,海底との接触状況,さらに曳網抵抗を低くすることが要求される。従来型と新型の模型漁具について,設計条件別に回流水槽で漁具形状と抵抗を測定し,その後に実物網を試作して調査船による漁具測定を行った。結果として,回流水槽による模型実験の場合に,ポリアミド製のラッセル網地を用いたことで模型の精度を高めることが困難となり,海域試験との比較に際して問題となることがあげられた。
(文責 有元貴文)

70(3), 349-359 (2004)
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マハタの卵巣発達と最終成熟

Ni Lar Shein(長大水),
中田 久,荒川敏久(長崎水試),
水野かおり,征矢野清(長大水)

 人工飼育したマハタの卵母細胞の成熟過程を明らかにするため,卵黄形成開始前の 1 月から産卵期の 5 月にかけて卵巣の組織観察を行った。また,エストラジオール-17β(E2 )の血中濃度を測定した。その結果,3 月までに卵黄形成が開始され,4 月から 5 月にかけて急速に成熟が進むことが分かった。この時期,生殖腺体指数の増加と血中 E2 濃度の上昇が認められた。卵母細胞の最終成熟は人工飼育下では起こり難いが,生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログを投与することにより,投与後 42 時間以内に最終成熟を誘導することができた。

70(3), 360-365 (2004)
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コイ補体 C3 アイソフォームの多型性

中尾実樹(九大院農),近藤昌和(水大校),
矢野友紀(九大院農)

 コイには 5 種類の補体成分 C3 のアイソフォームが存在する。最も血中濃度の高いアイソフォーム(C3-H1)に特異的なモノクローナル抗体を用い,コイ C3-H1 タンパク質の多型性をアガロースゲル電気泳動-イムノブロッティング法で解析した。その結果同定された 4 種の変異 C3(I~IV)を血清から精製し,それらの溶血活性を比較したところ,最大 4 倍の差が認められた。以上の結果から,コイ C3 はアイソフォーム間で機能に差があるだけでなく,ひとつのアイソフォームに活性の異なるアロタイプが存在することが示唆された。

70(3), 366-371 (2004)
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雌クルマエビの自然成熟過程と眼柄切除による成熟誘発過程における血中ステロイドホルモン量

奥村卓二(水研セ養殖研),
崎山一孝(水研セ百島)

 雌クルマエビの血中ステロイドホルモン量と卵巣発達との関連を調べ,その役割を検討した。自然成熟過程でホルモン量を測定した結果,エストラジオール-17β (E2 ),エストリオール(E3 ),プロゲステロン(P),テストステロン,11-ケトテストステロンの血中量と卵巣発達との間に有意な関連はみられなかった。また,両眼柄切除により卵巣発達を誘発した場合でも,E2 , E3 , P の血中量と卵巣発達との間に有意な関連はみられなかった。以上から,これらのホルモンは雌クルマエビの卵巣発達に関与しないことが示唆された。

70(3), 372-380 (2004)
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高周波超音波を用いた超小型魚群探知機の開発

宮本佳則,堺 珠美,古澤昌彦(海洋大),
内藤靖彦(極地研)

 近年,小型行動記録計(マイクロ・データ・ロガー)の開発により潜水性動物の潜水行動が明らかになってきているが,捕食行動は適切な観察ツールの不足のために十分に検討されていない。そこで,一般的な魚群探知機よりも周波数の高い 1 MHz の高周波魚群探知機と深度計を組み合わせた海生動物搭載型超小型魚群探知機を試作した。そして,メダカを用いた水槽実験でその有効性を確認するとともに探知範囲を評価した。その結果,この魚群探知機のビーム幅は 5.9° であり,最大探知距離は対象生物の TS が-50 db の場合 34 m となった。

70(3), 381-388 (2004)
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東シナ海における夏期の計量魚探を用いた浮魚類の分布と現存量推定

大下誠二(水研セ西海水研)

 東シナ海において 1997~2001 年の夏期(7~9 月)に計量魚群探知機を用いた調査を実施した。中層トロールにより,カタクチイワシ,ウルメイワシ,マアジ,ハダカイワシ類およびキュウリエソが多く漁獲され,魚群探知機の映像から,1)カタクチイワシとウルメイワシ,2)マアジとサバ類,3)ハダカイワシ類とキュウリエソの三つのグループに分けられた。それぞれのグループの面積後方散乱強度を中層トロールによる漁獲重量の割合をもとに,魚種別の現存量指標値を推定したところ,イワシ類について推定された現存量指標値と漁獲量に正の相関が見られた。

70(3), 389-400 (2004)
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網地形状シミュレータ “NaLA” の刺網への適用

清水孝士(北大院水),高木 力(近大農),
鈴木勝也,平石智徳,山本勝太郎(北大院水)

 著者らは既に開発した網地形状シミュレータ “NaLA” を刺網に適用した。本手法では刺網の構造と操業環境を考慮して網地以外の構造物を新たにモデル化し,定常流に加えて水面波動の境界条件を取り入れた。この手法の妥当性を検証するため造波水槽において模型実験を行ない,モデルによる計算値と実験値を浮子綱・沈子綱の運動,網深さ,網傾き,網目の形状,係留点負荷について比較した。計算値と実測値はよく一致し,本手法により操業時の刺網の形状や運動などの物理的状態を再現できることが確認された。

70(3), 401-411 (2004)
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ミトコンドリア DNA シークエンスによる揚子江産サッカーMyxocyprinus asiaticusの集団構造

Yuhua Sun,Siyang Liu,Gang Zhao(武漢大),
Shunping He,Qingjiang Wu(中国科学アカデミー),
谷口順彦(東北大院農),Qixin Yu(武漢大)

 中国固有でエンチュイの名で知られる揚子江産サッカーMyxocyprinus asiaticusの遺伝的多様性と集団構造を評価するため,ミトコンドリア DNA コントロール領域の塩基配列データによるハプロタイプ分析を行った。検出した塩基配列は 920 で,その内 223 のポジションで変異が認められ,39 のハプロタイプが決定された。これらのハプロタイプには,採集地による特異性と高い遺伝的多様度が明らかとなった。平均ハプロタイプ多様度は 0.958,平均塩基多様度は 0.052 で,地理的距離と遺伝的距離の間に相関が認められ,分集団の存在が示唆された。

70(3), 412-420 (2004)
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光ファイバーを用いた低照度光の供給による,貧酸素化した底層環境での光合成促進と酸素生産

アチャリー・ルアンディ,深見公雄(高知大農)

 貧酸素化した内湾底層環境に酸素を供給する目的で,光ファイバーを用いた低照度の光照射による光合成促進の可能性について調べた。各季節に採取した底層水を底泥とともに培養したところ,暗条件では常に DO 濃度が減少したのに対し,最も顕著な効果の見られた 6 月の試料では,7 μEm-2 sec-1 のハロゲン光供給により DO 濃度が約 3.6 mg L-1 から 6.9 mg L-1 へ増加し,クロロフィル a 量も増加した。これらの結果から,低照度の光を光ファイバーにより供給することで,内湾底層の貧酸素化を改善できる可能性が示唆された。

70(3), 421-429 (2004)
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東京湾における外来種チチュウカイミドリガニ Carcinus aestuarii の食性

陳 融斌,渡邊精一,横田賢史(海洋大)

 東京湾における外来種チチュウカイミドリガニの食性の調査を行なった。2000 年 5 月から 2001 年 10 月まで採集した 367 個体を用い,胃内容物について同定可能な餌生物の出現率と占有率を求めた。11 カテゴリーの餌生物と砂が検出された。砂と同定不可能な有機物を除くと,二枚貝類の出現率が最も高く,端脚類と多毛類も高い出現率を示した。占有率では,多毛類が最も高く,二枚貝類と端脚類も高かった。その他,蔓脚類など甲殻類,魚,海藻などの植物質も見られた。この結果から,本種は動物性の餌生物を主体とした雑食性であると考えられる。

70(3), 430-435 (2004)
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レチノイン酸投与時のアルテミア幼生およびヒラメ仔魚におけるレチノイド含量の変化

芳賀 穣(COMB),竹内俊郎(海洋大),
青海忠久(福井県大)

 ヒラメ仔魚とアルテミア幼生(Ar)に全トランスレチノイン酸(atRA)を投与してレチノイド含量の変化を調べた。Ar は atRA で強化した後,飢餓状態とした。Ar 中の atRA は,飢餓後 6 および 18 h に極大値を示し,飼育水への排泄と再取り込みを繰り返すことが示唆された。また,Ar 中のレチノイン酸(RA)は,常に全トランス型が 98% 以上であり,Ar は atRA をその他の異性体に代謝しないことが示唆された。Ar では RA とレチニルエステル含量の変動に相関性が見られたが,ヒラメでは見られなかった。ヒラメ仔魚において atRA 含量は速やかに減少し,摂餌後 18 h で最大値の 50% となった。

70(3), 436-444 (2004)
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マコガレイ仔稚魚の捕食者としてのエビジャコ Crangon uritai の空間分布と食性

中屋光裕,高津哲也(北大院水),
中神正康(水研セ東北水研),
城 幹昌,高橋豊美(北大院水)

 エビジャコによるマコガレイ仔稚魚の被食を見積もるためエビジャコの空間分布と食性を調査した。エビジャコはマコガレイ仔稚魚を含む様々な小型動物を餌とするため,密度の高い餌ほど,被食頻度も高くなる可能性が示された。エビジャコの分布水深と海底水温の間には負の相関が認められた。水温上昇の遅い年にはエビジャコよりも深所に着底するマコガレイ仔稚魚との分布の重複が高まり,被食機会が増すことが示唆された。

70(3), 445-455 (2004)
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ワカメを原料としたマリンサイレージの大量調製とアコヤガイ初期稚貝に対する飼料効果

内田基晴(水研セ瀬戸内水研),
沼口勝之,村田昌一(水研セ中央水研)

 マリンサイレージ(MS)は海藻を単細胞化しながら乳酸発酵させて調製する新しい水産飼料素材である。ワカメを原料として MS の大量調製と長期保存試験を実施した。10 L 規模で 20°C 8 日間の発酵で直径 2.9~22.5 μm の海藻粒子を 108 個/mL 以上で含有する飼料素材が調製され,18 ヶ月の保存期間後も,粒子数の減少,非乳酸菌の混入等の問題が認められなかった。7 ヶ月経過した MS について,アコヤガイ初期稚貝に対する飼料効果が認められ,また少量の微細藻類餌料との併用により,飼料効果が改善されることが示唆された。

70(3), 456-462 (2004)
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エビ類におけるゼノバイオティックスの強制経口投与法の検討

クールバラ・サングラングラング (クンクラベン湾水研開発セ),
延東 真(海洋大),上野隆二(三重大生物資源)

 エビ類におけるゼノバイオティックスの強制経口投与法の検討を行った。ウシエビを用いて,高濃度(50 mg と 100 mg/体重)のオキシテトラサイクリンとオキソリン酸を投与したところ,オキソリン酸において後腸部に重篤な下痢症状が観察された。そこで,低濃度(5 mg と 10 mg)に調製し,胃に強制経口投与した。その結果,投与後の血リンパ中の濃度は投与量に比例した。従って,本方法はエビにおける抗菌物質などのゼノバイオティックスの体内動態研究に有効だと判断した。

70(3), 463-466 (2004)
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ウシエビにおけるオキシテトラサイクリンの比較薬物動態と生体利用率

クールバラ・サングラングラング,アモーンセップ・チョッチュアング (クンクラベン湾水研開発セ),
上野隆二(三重大生物資源)

 ビブリオ病などに罹患したウシエビに投与されるオキシテトラサイクリンの経口および血リンパ投与後の薬物濃度変化を薬物速度論的に解析した。その結果,血リンパ投与では 2-コンパートメントモデルで解析できた。オキシテトラサイクリンの分布半減期(0.89 h)は,消失半減期(23.1 h)よりかなり速かった。経口投与では 1-コンパートメントモデルで解析できた。これらの結果から,生体利用率を算出したところ,59.9% であった。また,投与後の最大吸収到達時間は 9 h であった。

70(3), 467-472 (2004)

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ティラピア Oreochromis niloticus 稚魚の成長に対する共役リノール酸および共役ドコサヘキサエン酸の影響

A. Yasmin,竹内俊郎(海洋大),林 雅弘(宮崎大),
廣田哲也,石塚倭一,石田修三(太陽油脂)

 ティラピア稚魚(平均体重 3 g)の成長および魚体脂質組成に対する共役リノール酸(CLA)および共役ドコサヘキサエン酸(CDHA)の影響を調べた。試験区は市販飼料にそれぞれ 5 % の割合で,リノール酸(LA), CLA,ドコサヘキサエン酸(DHA), CDHA をそれぞれ添加した 4 区とし,水温 25°C で 9 週間の飼育を行った。その結果,ティラピア稚魚に対して 5 % の CLA は成長や脂質組成に影響を及ぼさないが,CDHA は成長の低下と肝臓の脂質含量および極性脂質中の脂肪酸組成に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。

70(3), 473-481 (2004)
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実験条件下におけるタマカイ稚魚の友食いに関する形態学的研究

許 晉榮(台湾水試),黄 鵬鵬(Academia Sinica),
丁 雲源(台湾水試)

 タマカイの種苗生産では,共食いが大量斃死の原因となる。本研究では,形態学的な計測結果から,捕食魚の体長と被食魚の最大体長の関係式(TLprey =0.83TLcannibal -2.48)が得られた。つづいて,体長の異なる一対での実験 136 例を行った。共食いの発生した 36 事例のうち,33 例で被食魚の体長は,捕食魚の体長から関係式によって求められる体長以下であった。以上のことより,タマカイの種苗生産では,大型魚の体長が,小型魚の体長を 30% 以上を超えた場合には,大型魚を分離すべきことが示された。
(文責 黒倉 寿)

70(3), 482-486 (2004)
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アカザラガイ Chlamys farreri 雌性発生の誘起および精子構造に及ぼす紫外線照射の影響

潘  英,李 琪,于 瑞海,王 如才,
包 振民(中国海洋大)

 アカザラガイ精子の遺伝的不活性化と構造に及ぼす紫外線照射の影響を調べた。卵割率,幼生の染色体数,フローサイトメトリー分析の結果,線量 256 erg/mm2 /秒で 30 秒間照射が雌性発生半数体を最も効果的に誘起した。紫外線照射線量の増加に伴って卵割率と D 型幼生発生率は低下するが,トロコファー幼生の生残率は紫外線照射 20 秒後に回復がみられ,“Hertwig 効果”を示唆した。紫外線照射による精子の構造変化を電子顕微鏡で観察したところ,紫外線照射精子の先体,細胞膜,核膜,ミトコンドリアのクリステと鞭毛の破壊が認められた。

70(3), 487-496 (2004)
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鹿児島湾産ソコイトヨリの年齢と成長

Vladimir Puentes Granada(鹿大連合農),
増田育司,松岡達郎(鹿大水)

 鹿児島湾産ソコイトヨリ 1,359 尾の耳石横断薄層切片をもとに,本種の年齢と成長を検討した。縁辺成長率の経月変化から,耳石輪紋(不透明帯外縁)は年 1 回,5-8 月に形成されると考えられた。輪紋数に応じて個体毎に年齢を割り振り,von Bertalanffy, Gompertz, Logistic の 3 つの成長式を当てはめた結果,von Bertalanffy の成長式が最も適合し,雄は FLt =274.7(1-exp (-0.341(t+0.762))),雌は FLt =231.0(1-exp (-0.161(t+4.405)))で表された。両式は有意に異なり,1 歳時を除いて雄は雌より大きい体サイズを示した。

70(3), 497-506 (2004)
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マリンサイレージの調製に適した乳酸菌と酵母の組み合わせ

内田基晴(水研セ瀬戸内水研),
甘粕英子,佐藤洋子,村田昌一(水研セ中央水研)

 異なる乳酸菌と酵母の組み合わせでマリンサイレージを調製し,発酵過程において混入菌の生育を抑制する能力の高い菌種の組み合わせを調べた。試料中の乳酸菌相の解析は,菌種特異的プライマーを開発して,PCR 法によりおこなった。その結果,乳酸菌単独使用でもスターターとして良好に機能するが,酵母の単独使用では,好塩性の混入菌の生育を充分抑制できないことが明らかとなった。また,食品産業で実績のある乳酸菌種も使用が可能であると考えられたが,海藻試料から分離した乳酸菌株に比べ,混入菌の生育抑制の点でやや劣っていた。

70(3), 507-517 (2004)
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オニテナガエビ幼生の Na/K-ATPase 活性の変化および様々な塩分濃度における生存率(短報)

Do Thi Thanh Huong, Vidya Jayasankar,
Safiah Jasmani,坂中(西堂)寿子(国際農研セ),
Andrew J. Wigginton(ケンタッキー大),
Marcy N. Wilder(国際農研セ)

 オニテナガエビ幼生の発達過程において Na/K-ATPase 活性はふ化後数日間上昇し,その後変態するまで減少した。また,ふ化 10-15 日後の幼生は低塩分においても生存する能力を獲得していた。この結果は,ふ化後の幼生には高い Na/K-ATPase 活性が必要であり,発達が進むにつれ,その活性の必要性が減少することを示唆している。

70(3), 518-520 (2004)
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ブリより分離した Lactococcus garvieae 分離菌株は,異なった長さの線毛を細胞表面に保持している(短報)

廣川祐介,入江剛史(宮崎大農),大山 剛,安田広志,中村 充(宮崎水試),
陳 徳姫(江陵大),チャイバット・キッチガル(カセサート大),吉田照豊(宮崎大農)

 Lactococcus garvieae 菌株で発達した莢膜,微細莢膜保有株および莢膜非保有菌株を液体培地および 100% のブリ血清で培養し,透過電子顕微鏡を用いて表面構造を観察した。その結果,ブリ血清で培養した菌体表面には散在している長線毛と周毛状の短線毛が良く観察された。莢膜を保有していなかった菌株を,血清で継代培養することで細胞表面に新しい微細層が新たに確認された。しかし,微細層が認められた菌株でブリを免疫した後,莢膜を保持する強毒株で感染させた場合感染防御は認められなかった。

70(3), 521-523 (2004)
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サクラマスの目尻に打ち込まれた CWT 標識の脱落率及び成長への影響の評価(短報)

安藤大成,永田光博,北村隆也,神力義仁(道孵化場)

 コーディットワイヤータグ(CWT)を目尻に打ち込んだサクラマスのスモルトを河川に放流し,標識の脱落率と成長への影響を調べた。放流前の CWT 挿入魚の斃死率は 2.4% であり,未挿入魚の 2.0% よりも有意に高かった。CWT の脱落率は放流時の 7.2% に対し回帰時は 14.0% であったが,両者の間で有意差は認められなかった。また,回帰時のサイズは CWT 挿入魚と未挿入魚との間で差は見られなかった。目尻は CWT 挿入部位として適していると考えられたが,脱落率を抑えるためには標識技術の向上が必要であると考えられた。

70(3), 524-526 (2004)
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ホッカイエビ筋肉脂質のイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸含量の季節的変動(短報)

笠井孝正,境 博成(東農大)

 ホッカイエビ筋肉脂質のイコサペンタエン酸(IPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)含有率の季節的変化を調べた。全脂質とリン脂質の IPA および DHA 含有率の変化は雌・雄それぞれほぼ同様の傾向を示した。中性脂質では雄と雌は著しい差異が認められ,雄の IPA および DHA 含有率は 9 月に,雌の IPA および DHA 含有率は 6 月に最小値を示した。

70(3), 527-529 (2004)
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