鄭 肇雄,川崎 健, 國平,何 權浤(台灣海洋大)
ニューギニア島西のアルー海におけるタチウオ Trichiurus lepturus の分布と移動について,台湾のトロール漁船 4 隻の記録をもとに解析を行った。資源量指数,資源密度指数,CPUE と漁獲努力量のそれぞれの分布の変動について考察した。漁獲月,漁場,タチウオの銘柄を考慮に入れ,一般化線形モデル(GLM)を用いて CPUE を基準化した。漁期は 3 つの生活サイクル,すなわち 3, 4 月の集合期,5, 6 月の分散期,7-12 月の 2 度目の集合期に分けられた。漁期における資源量の分布には 2 つの季節的なピークがみられ,タチウオの集合―分散のパターンを反映している。3, 4 月の最初のピークは越冬回遊として説明できる。10-12 月の第 2 のピークは産卵のための集合と考えられる。難波謙二,松尾龍志,二村義八朗(東大農)
青潮は嫌気的な底層海水に由来し,コロイド状硫黄が着色の原因であることが明らかにされている。このコロイド状硫黄の形成時には金属イオンによる硫化物の自動酸化促進が起きている可能性がある。そこで, 10 μM の金属イオンを含む人工海水を用いて硫化物酸化速度を測定した。Fe2+, Fe3+ および Ni2+ は反応硫化物量を増大させ,白濁形成が認められた。東京湾湾奥底層海水の硫化物の自動酸化速度は重金属を添加しない人工海水に比較して 13-19 倍の酸化速度を示した。この高い速度の少なくとも 15% は同海水中の溶存態鉄濃度で説明できるものであった。Ari Purbayanto(ボゴール農科大学),角田篤弘,秋山清二,有元貴文,東海 正(東水大)
漕ぎ刺網で漁獲されたシロギスと混獲魚 9 種を水槽に収容し,漁獲から 4 日目までの生残率を経時的に記録した。シロギスについて,漁獲状態によって 4 日間経過後の生残率は異なり,袋掛かりの場合は 27% であったのに対して,掛かり,刺さり,絡みで漁獲されたものはそれぞれ 18%, 7%, 5% と低かった。死亡したシロギスの 60% の個体で魚体の損傷や鱗の損失が観察された。一方,混獲魚ではヒメジ,ウミタナゴ,ギンポに魚体表面の損傷が見られたが,それ以外の種では死亡するものはなかった。以上より,漕ぎ刺網漁法では,羅網個体の放流後の生残性は魚種と漁獲状態によって異なり,シロギス小型個体について放流による保護方策は効果が低いと結論した。Che-Tsung Chen, Sz-Ying Huang(台湾海洋大),Sin-Che Lee(中央研究院動物研究所)
中部日本および台湾由来の Mustelus manazo の遺伝子構造をデンプンゲル電気泳動法を用いて解析を行った。総計 20 の酵素遺伝子座の内,2 つの遺伝子座(CK-A および sSOD-1)のみが,集団構造解析に有用と思われるアレルの変異性を伴う遺伝子多型が認められた。台湾産試料は,日本産試料には見られない CK-A 52 および sSOD-1 40 の特徴的なアレルが存在していた。異型(ヘテロ)接合性の平均値は,2 つの台湾産試料では 0.027 および 0.055 で,日本産の 2 つの試料に対して 0.008 および 0.013 であった。中部日本産と台湾産の試料とは,カイ二乗検定によって 2 の独立集団であることが認められ(P<0.001),中程度に分岐(Fst=0.063)していることが示された。また,二国間の集団分岐についても考察した。片野 修,青沼佳方,松原尚人(中央水研)
淡水魚が一時的な水路をどのように利用するのかを知るために,私たちは 2 本の人工水路を用意し,その一方に隠れ場所を設置した後,隣接した恒久的に流水のある水路から侵入する魚について調査した。合計 6 種,220 個体の魚が 5 月から 9 月までの 4 期間に採捕され,その 75% をウグイが占めた。ウグイは隠れ場所のない水路よりもある水路に多く侵入し,その体長と肥満度も隠れ場所のある水路で大きな値を示した。ウグイは 7 月には水路で増殖したユスリカの幼虫を主食にしていたが,8 月以降にはその摂食率や消化管充満度は低下した。この傾向は隠れ場所のある水路で顕著であったが,その理由は多くのウグイが主に底生生物を食べることによって,ユスリカの個体数が減少したためであると考えられた。ウグイによる一時的水域の利用様式はユスリカ幼虫の豊富さと隠れ場所の有無に応じてダイナミックに変化した。Lee Sang-Min, Kim Kyoung-Duck, Park Huem-Gi,Kim Chang-Hwa (Kangnung National Univ.), Hong Kwan-Eui (Natl. Fish. Res. Dev. Agency of Korea) |
滝井健二,川村幸嗣,中村元二,熊井英水(近大水研),吉澤康子(昭和産業)
Kunitz および Bowman-Birk トリプシンインヒビター(K-SBTI および BB-SBTI)による消化阻害の一端を明らかにし,大豆粕飼料の開発に必要な基礎知見を得ようとした。一腹仔のトラフグ(体重:12~199 g)とブリ(体重:7~672 g)のトリプシン様およびキモトリプシン様酵素の活性は,K-SBTI および BB-SBTI によって阻害された。一方,両 SBTI に対するトラフグのトリプシンとキモトリプシン様およびブリのキモトリプシン様酵素の感受性には,成長に伴う大きな変化は認められなかったが,BB-SBTI に対するブリのトリプシン様酵素の感受性は,体重が 7~57 g に成長する間に有意に低下した。後藤孝信(沼津高専),高木修作(愛媛水試),市来敏章,境 正,延東 真,吉田照豊(宮崎大農), 宇川正治(丸紅飼料),村田 寿(宮崎大農) |
Praneet Damrongphol, Pleanphit Jaroensastraruks, Boonserm Poolsanguan (Mahidol Univ.)
テナガエビの体外における胚の培養の効果は培養開始時の胚の日齢および培養保存液中のさまざまな組成の濃度に依存した。産卵後 0.5 日で培養し始めた胚は産卵後 10.5 日で培養し始めたものより培養液組成により敏感であった。最適 NaCl レベルは胚の発達,生残,ふ化,そして新しくふ化した幼生の生残に大きく関与した。NaCl または KCl レベルの変化によって胚の発達が劇的に変わり,また MgCl2+MgSO4 レベルの変化によって早い発達段階で培養を開始した胚の生残は有意に低かった。一方,CaCl2 レベルの変化は胚の発達の変化には影響を及ぼさなかった。胚のふ化には KCl または MgCl2+MgSO4 ではなく,NaCl と CaCl2 の存在が必要であった。新しいふ化幼生のイオン要求は発達中の胚のそれとは異なっていた。MgCl2+MgSO4 ではなく,NaCl, KCl, CaCl2 レベルの変化は新しくふ化した幼生の生残に影響を及ぼした。Perez-Enriqez, Ricardo (CIBNOR),竹村昌樹(高知大農),田畑和男(兵庫水試),谷口順彦(東北大院農)
四国周辺の 7 カ所で採集した標本群を用いて,マダイ集団の遺伝的多様性および集団構造について調べた。マイクロサテライト DNA マーカの分析結果は日本沿岸のマダイ集団が単一のメンデル集団に属するとする仮説を支持したが,この海域では一部サンプルにハーデイ・ワインベルグ平衡からの逸脱や固定指数における海域間差が検出され,種苗放流がこのような遺伝的不安定さの原因となっている可能性が示唆された。西堀尚良(四国大短),湯浅明彦,酒井基介(徳島水試),藤原伸介(四国農試),西尾幸郎(四国大短)
夏季瀬戸内海のブルーム発生期間中のポリアミン濃度および無機栄養塩濃度を測定した。この結果,プトレシンとスペルミジンが海水中の主要なポリアミンであることが明らかになった。表層でのこれらの濃度はそれぞれ 2.0~32.6 および 1.0~14.1 nM であり,スペルミンの濃度はこれらに比べ低かった。これら 3 種のポリアミンに加え,ジアミノプロパン,カダベリン,ノルスペルミジン,ホモスペルミジンおよびノルスペルミンが検出された。胡 夫祥,松田 皎,東海 正(東水大)
網漁具の研究には,田内則やフルード則に基づく水槽実験がよく行われている。しかし,これらの模型相似則は,いずれも網の抵抗が速度の自乗に比例する,つまり網の抵抗係数が常に一定であることを前提としたため,模型実験の結果から推定された網の抵抗は実測値に比べてかなり大きい。そこで,本研究ではレイノルズ数に対する網の抵抗係数を実験的に求め,これに基づいて田内則およびフルード則を修正した。全長 61 m の中層トロール網を実物網として,修正後の田内則およびフルード則に従い,縮尺比 1/ 12, 1/ 20, 1/ 50 の模型網を製作し,実物および模型実験を行った。その結果,縮尺比の異なる模型による網抵抗の推定値と実測値との差がいずれも 10% 以内に止まり,修正後の各模型相似則の妥当性が確かめられた。渡邉哉子(東水大),栗山 功(三重水技セ),佐藤公一(大分水試),キロン・ヴィスワナス, 佐藤秀一,渡邉 武(東水大) |
宇田川美穂(中央水研)
餌中のフィロキノン(PK)・メナジオンソディウムビサルファイト(MSB)量による椎骨への影響を,マミチョグ Fundulus heteroclitus を用いて調べた。ビタミン K 欠乏餌料では MSB や PK を添加した餌にくらべ,有意(p<0.01)に骨異常個体が増加した。これらの結果は,ビタミン K はマミチョグの成長に必要であることを示唆している。PK と MSB:1. MSB の大量投与は高い骨異常率を引き起こしたが,PK では大量投与によっても変わらなかった。2. 椎骨自体の異常はビタミン K 欠乏区や MSB 区では PK を添加した区にくらべ有意(p<0.01)に多かった。これらの結果は,MSB より PK の方がビタミン K 源として適していることを示唆している。塩出大輔,藤森康澄(北大院水),胡 夫祥(東水大),清水 晋,三浦汀介(北大院水)
ワープ長を操作した時の曳航型中層刺網の網水深応答特性を調べるために模型実験を行い,網の沈下・浮上の過程を調べた。すべての実験条件においてオーバーシュート現象が見られ,その大きさはワープ巻き上げ時よりも繰り出し時の方が大きかった。また,ウインチ出し入れ速度が速いほど,整定時間が短かった。実操業において,曳航型中層刺網の投網や操業中の網水深調節を行う際には,船速と潮流速の相対速度を確認した上で,ウインチ速度を出来るだけ速くする方が良いという結果を得た。井上 潤(東大海洋研),宮 正樹(千葉中央博),青山 潤,石川智士,塚本勝巳,西田 睦(東大海洋研)
ウナギ Anguilla japonica のミトコンドリアゲノム全塩基配列を,ロング PCR のテクニックと 60 個の魚類汎用プライマーおよび 6 個の種特異的プライマーを用いて直接法により決定した。本種のミトコンドリアゲノムは全長 16,685 塩基対(bp)で,他の脊椎動物と同様に 2 個のリボゾーム RNA 遺伝子,22 個の転移 RNA(tRNA)遺伝子,ならびに 13 個のタンパク質遺伝子から構成されていた。また,遺伝子の配置も他の一般的な脊椎動物のものと同一であった。tRNAPro 遺伝子と tRNAPhe 遺伝子の間にみられた 967 bp の非コード領域は,いくつかの特徴的な保存的領域を含むことから,調節領域(D-loop 領域)に相当すると考えられた。宮腰靖之,永田光博,杉若圭一(道孵化場),北田修一(東水大)
北海道西岸において 2 段抽出の市場調査を実施し,サクラマスの放流効果の推定を試みた。日本海側に位置する民間ふ化場から放流された標識サクラマスは翌年冬から初夏にかけて太平洋側を含む北海道沿岸の広い範囲で水揚げされ,主要な水揚げ場所は時期により移り変わった。サクラマス 1+スモルトの沿岸漁業による回収率の推定値は 0.18~3.50% であり,放流群間で大きく変動した。漁獲尾数の推定に際して,各市場の漁獲尾数の規模および地理を基準として層別することにより推定精度は著しく向上した。適切な精度での推定が可能となるようサンプルサイズ(調査市場数,調査日数)について検討を加えた。宮腰靖之,永田光博(道孵化場),北田修一(東水大)
北海道沿岸における市場調査から推定されたサクラマス 1+スモルトの漁業による回収率と放流時点での体重との関係を解析した。放流時の体重が大きな群ほど回収率が高くなる傾向が見られ,回収率が最高の群と最低の群とでは約 20 倍の違いが見られた。体重と回収率の関係の解析にあたっては回収率の推定誤差を考慮し,最尤法を用いて 8 つのモデルのパラメータを推定した。独立変数(放流時点の体重)を自然対数変換したモデルにおける AIC が最小値を示したので,これを最も適切なモデルとして選択した。上野良平,浦野直人,木村 茂(東水大)
伊豆・蓮台寺の温泉排水( 35.5℃ と 40.0℃)から,エタノール産生能を持つ耐熱性酵母 8 株を分離し,それらのうち RND13, 14,および 17 の 3 株の形質について,中温性酵母のそれと比較した。この 3 株は液体培地中で 42~45℃ の高温まで生育し,最大増殖速度は 37℃ または 35℃ で得られた。グルコースから発酵が可能な上限温度はさらに高く,48~55℃ であった。特に,RND13 株は 40℃ の高温においてグルコースからエタノールへの変換効率が 24 時間で 72.1% を示し,25℃-120 時間におけるビール酵母による変換効率の 57.0% より高かった。生理学的な特徴により,RND13, 14,および 17 株はそれぞれ,Torulaspora delbrueckii, Dekkera sp. および,Candida albicans と分類された。本論文は 51℃ 以上で発酵性を持つ酵母および高温水圏における耐熱性酵母の分離に関する初めての報告例である。邱 思魁, 孟美,蕭 泉源(台湾海洋大)
オゴノリと配合飼料で飼育したトコブシを 1997 年 9 月から 1 年間にわたって採集し,一般成分,ATP 関連化合物(ARC),遊離アミノ酸(FAA),グリコーゲン(GN)を分析した。筋肉の占める割合は冬,春に多かった。10 月の試料では筋肉,内臓ともに ARC, FAA および GN 量が著しく少なかった。配合飼料投与群の筋肉中の GN 含量はオゴノリ投与群のそれより多かった。両群の筋肉では,総 FAA および重要な呈味成分とされる Gly, Glu, AMP などの総量が冬から早春にかけて比較的多かった。この時期はトコブシの美味な時期と推定された。杉田 毅,示野貞夫,大久保康典,細川秀毅,益本俊郎(高知大農)
グルカゴン投与したコイでは,肝膵臓の cAMP 濃度と glycogen phosphorylase 活性は増大し,グリコーゲン含量は減少した。また,血糖値は肝膵臓の G6Pase と FBPase の活性とともに増大し,筋肉の PFK 活性とグリコーゲン含量は増大した。5 時間後には多成分は回復傾向にあったが,筋肉の解糖は高く推移した。以上の結果から,グルカゴン投与時の肝膵臓ではグリコーゲン分解と糖新生が促進されて筋肉にグルコースを供給しており,筋肉ではこのグルコースを用いた解糖とグリコーゲン合成が活発に行われていると推察された。塩見一雄,横田 博,長島裕二,石田真己(東水大)
アゴハタの体表粘液から溶血性と魚毒性を示す 6 種のペプチド(グラミスチン Pp 1, Pp 2a, Pp 2b, Pp 3, Pp 4a および Pp 4b)を単離し,アミノ酸配列を決定した。Pp 1, 2a および 2b は 13 残基,Pp 3 は 25 残基,Pp 4a および 4b は 24 残基で構成され,これまでの推定とは異なりいずれも単純ペプチドであった。CD スペクトル,ヘリックス軸投影図および Eisenberg プロットから,各グラミスチンは両親媒性の α-ヘリックス部分に富む surface seeking ペプチドと判断された。宮崎多恵子,中原元和,石井紀明,青木一子,渡部輝久(放医研)
動物の必須微量元素であるコバルトの仔ダコにおける取り込みを 57Co を用いたミクロオートラジオグラフィーにより調べた。孵化直後の仔ダコを 57Co 添加海水に曝露すると,1 分後には 57Co は仔ダコの肝臓と鰓心臓に取り込まれた。肝臓では全体が濃く造影され,鰓心臓では内側周壁が造影された。鰓心臓の内部に顆粒状の造影が現れたことから,57Co は鰓心臓の内側周壁に吸着されたのではなく,細胞内に取り込まれたものと推定された。Md. Younus Mia(東水大),諸喜田茂充(琉大),渡邊精一(東水大)
タイワンアシハラガニ Helice formosensis とミナミアシハラガニ H. leachi の食性を沖縄の大保川,大浦川の 2 河川において夏と冬に調査した。胃内容物は藻類,維管束植物,粘土,動物質の 4 つのカテゴリーに分けられた。胃内容物は,夏,冬ともにタイワンアシハラガニでは主として動物質で占められ,ミナミアシハラガニでは,主として植物質で占められており,季節による違いは認められなかった。前者は,肉食性であり,後者は草食性であることが示された。奥村誠一(北里大水),古川末広(マリーン開発),河合敏雅,高橋信太郎,山森邦夫(北里大水)
核小体数を指標とした簡便な 3 倍体判別法の適用を目的とし,受精卵のカフェイン処理により誘起したエゾアワビ 3 倍体幼生の核小体数分布を 2 倍体と比較した。染色体の計数により判別された 2 倍体および 3 倍体ベリジャー幼生の核小体数分布は,特に最大核小体数(2 倍体:4 または 5, 3 倍体:6 または 7)において両者間で明らかに異なっていた。この結果より,最大核小体数が本種幼生期における 3 倍体の判別指標として有効であることが示唆された。森田健太郎(北大水),山本祥一郎(北大演習林)
北海道南部の原木川において,同河川の遡上不可能な堰堤上流と下流からそれぞれ捕獲したイワナ 0 才魚を 730 m の調査区間に放流し,0 才の 6 月から 1 才の 10 月にかけての移動距離を集団間で比較した。その結果,雌雄間で有意差は認められなかったが,堰堤上流と下流の集団間で有意差が認められ,堰堤上流集団の方が下流方向への移動距離が短かった。堰堤上流部では,堰堤の下流へ降下した個体が再生産に加われないことから,遺伝的に下流方向へ移動する性質の弱い個体に選択が働いたことが考えられた。Marcy N. Wilder, Do Thi Thanh Huong,奥野敦朗,Muharijadi Atmomarsono, W-J. Yang(国際農林水産業研究センター)
オニテナガエビの胚発生に伴う,卵の Na/ K-ATPase 活性の動態を調べた。複眼が出現するまでの胚発生の前半は酵素活性が低く,その後ふ化直前まで急激に上昇することが判明した。この結果は,稚エビがふ化後の環境変化に適応するため,酵素活性が特異的に高まることが必要であることを示唆している。田中礼士,澤辺智雄,田島研一(北大院水),Johan Vandenberghe(ジェント大学),絵面良男(北大院水)
アワビ消化管内優占菌 Vibrio halioticoli の種特異的同定を行うため,16S rDNA PCR/ RFLP 法を応用した。Vibrio 属および Photobacterium 属標準株 27 菌種について DNA 抽出後,24F および 1540R プライマーを用い,アニーリング温度 55℃ で 16S rDNA の増幅を行ったところ,V. halioticoli および 10 菌種の供試標準株で増幅が認められた。これら増幅産物を制限酵素 Eco57 と AccI で処理し,アガロース電気泳動によりフラグメントパターンを比較すると,V. halioticoli のみに,それぞれ 220bp および 180bp の特異的なフラグメントの生成が確認でき,V. halioticoli の種特異的同定が可能であった。遠藤康弘,荒木隆宏,本田雅明,長谷川靖(室蘭工大応化)
ここ数年,様々な種,そして組織からアンコンベンショナルミオシンと呼ばれる多くのミオシンファミリーが同定されてきている。私たちは,ホタテ外套膜組織の total RNA を鋳型とし,様々なミオシンでよく保存された 2 カ所の領域の縮重プライマーを用いて RT-PCR を行った。増幅された断片のシークエンスは,ミオシンⅦA に高い相同性を示した。さらにより長い遺伝子を cDNA ライブラリーよりクローニングしたところ,ヒトミオシン VIIA に高い相同性を示すおよそ 1.4 kb の遺伝子がクローニングされた。この結果はホタテ外套膜組織にミオシン VIIA 遺伝子の存在を示している。糸井史朗(東大院農),稲野俊直(宮崎水試),木下滋晴,平山 泰,中谷操子(東大院農),
柿沼 誠(三重大生物資源),渡部終五(東大院農)
柿沼 誠,朴 贊善,天野秀臣(三重大生物資源)
緑藻タマゴバロニアとオオバロニアを含む 37 藻種の細胞液中の遊離システインとグルタチオン(GSH)含量を測定し,相互に比較した。乾燥藻体 100 g あたりタマゴバロニアで 55 mg,オオバロニアで 16 mg のシステインが検出され,他藻種では検出されなかった。GSH 含量は乾燥藻体 100 g あたりタマゴバロニアでは 6 mg,オオバロニアでは 2 mg であったが,紅藻ピリヒバを除く他藻種では 19~3082 mg であった。システインを蓄積する両藻種は GSH 含量が低く,システインを蓄積しない藻種は一般に GSH 含量が高いことがわかった。朴 贊善,柿沼 誠,天野秀臣(三重大生物資源)
ノリ養殖場における赤腐れ病病原菌 Pythium spp. の早期検出方法確立のため,病原菌に特異的な PCR プライマーを作製した。病原菌から抽出した全 DNA を鋳型として,5.8S rDNA を含む internal transcribed spacer (ITS)領域を PCR により増幅し,塩基配列を決定後,種特異性の高い ITS1 および ITS2 領域で,それぞれ病原菌に特異的なプライマー PP-1 および PP-2 を作製した。他種 Pythium 属を対象として,これらプライマーの種特異性を調べたところ,赤腐れ病病原菌のみが PCR により検出された。本 PCR は,ノリ養殖場海水中の赤腐れ病病原菌を検出する有効な方法であることが示された。山口敏康,宮本和明,八木茂雄(東北大院農),堀金 彰(農研センター),佐藤 実,竹内昌昭(東北大院農)
アユ血漿リポ蛋白質中におけるプラスマローゲンの存在を明らかにした。リン脂質画分より得られたアルデヒドをダンシルヒドラジン誘導体とし,LC/ MS により分離・同定した。標品として脂肪酸クロライドより調製した長鎖アルデヒドを用いた。その結果,分析に用いたアユ血液より 70.9 nmol/ mL のプラスマローゲンを検出した。リポ蛋白質中の主要アルデヒドとして C16:0 (32%), C18:0 (41%)および C18:1(27%)を認め,微量成分としてテトラデカナール(C14:0),テトラデセナール(C14:1)およびヘキサデセナール(C16:1)の存在を確認した。炭素数 20 以上のアルデヒドは検出されなかった。