Meng-Hsien Chen, Dah-Jye Wen
(Sun Yat-sen 大),
Chiee-Young Chen (Kaohsiung 海洋工学研)
西村 明(北水研),長澤和也(遠洋水研),
浅沼 徹,青木英剛,久保田正(東海大海洋学部)
松永浩昌,中野秀樹(遠洋水研)
外洋性サメ類の CPUE と種組成を 1967~70, 92~95 年に 140°E~140°W 間の 0°~20°N の太平洋で行われた公庁船の調査結果から解析・検討した。また CPUE の長期変動を見るために,種別に分けられていない 1973~93 年のデータを使用した。4 等分した全ての海域でヨシキリザメが優占種であったが,種組成には両期間で若干の変化が見られた。各魚種の CPUE を両期間(1967~70, 92~95) で比較すると,ヨゴレとクロトガリザメが 3 つの海域で減少傾向,オナガザメ類が全海域で増加傾向を示したが,漁具深度の違いによる漁獲効率の差を考慮すると変化は小さかった。また全海域で 1968~95 年の間にヨシキリザメの資源量には顕著な変化が無いものと推測された。Ricardo Perez-Enriquez,谷口順彦(高知大農)
マダイの集団の地理的分化に関する知見を得るため,日本,中国,オーストラリアおよびニュージーランドのそれぞれの沿岸より 8 標本群を採集し,3 つのマイクロサテライト DNA ローカスについて多型分析を行った。変異性の指標である平均対立遺伝子数および平均異型接合体率は日本および中国標本群では高く,オーストラリアやニュージーランドの標本群ではやや低かった。AMOVA による集団分析の結果,マダイ集団はニュージーランド,オーストラリア,日本・中国の 3 つのグループに,また,日本・中国グループはさらに 3 つのサブグループに細分された。宮嶋俊明,浜中雄一(京都海洋セ),豊田幸詞((株)関西総合環境セ)
クルマエビ尾肢着色域の減少を指標とする標識法を開発した。尾肢切除後,切除尾肢は無切除尾肢とほぼ同じ長さまで回復したが,黒色系色素の着色域は回復しなかった。切除時の体長が大きい程,着色域の減少が大きくなり,この標識方法は体長 30 mm 以上の個体に適していることが示唆された。切除部位は尾肢基節直下の切除が効果的で,生残や成長に対する影響は無かった。また,天然海域における試験から,1~2 年間にわたり識別可能な標識手法であることが分かった。芝 恒男,伊藤智広,村上正忠,前田俊道(水大校)
長さ 30 cm,直径 3.6 cm の海浜砂堆積物で 100 μg/ml の酢酸を含んだ人工海水をろ過したところ,ろ液中には,ろ過液量が 125 ml に達した時点までは酢酸は検出されなかった。その後急激にろ液中の酢酸濃度が増大し,ろ過液量 200 ml の時点で 83.5 μg/ml の濃度にまで達し,緩やかな増大の後,ろ過液量 2,000 ml の時点で濃度が 100 μg/ml に達した。試みにろ過中に人工海水から除去された酢酸量を計算したところ,10.9 mg の値が得られた。加熱滅菌した海浜砂堆積物を用いてろ過実験を行ったが,堆積物の酢酸の除去能力に変化は見られなかった。したがって非生物学的過程によって,かなり有機物が海浜砂堆積物によって除去されることが解かった。片野 修,前川光司,井口恵一朗(中央水研)
実験水路において,アユとウグイは同種の個体をしばしば攻撃し,両種が出会った場合にはアユがウグイを一方的に攻撃した。アユの摂食活動はウグイによって影響されなかったが,ウグイはアユがいると藻類をあまり食べなくなり主に動物を食べていた。ウグイの成長率はアユによって影響されなかったが,これはウグイが柔軟に食性を変化させたためだと考えられる。一方,アユの成長率はウグイがいた方がいない場合に比べて高かったが,これはウグイが水生動物を食べることによって藻類を増加させたためであると推測された。西 栄二郎(千葉県立中央博物館),西平守孝(東北大)
沖縄本島のサンゴ礁で採集したハマサンゴの骨格中に現れる成長縞を軟 X 線を用いて計測し,サンゴの骨格中に埋在する内在生物の年齢推定と寿命の推定を行った。対象とした種は,イバラカンザシ(多毛類),カンムリゴカイ科の一種(多毛類),オオヘビガイ(腹足類),ウミギクガイモドキ(斧足類),サンゴヤドリフジツボの一種(甲殻類)の 5 種である。2 種の管棲多毛類とオオヘビガイはさまざまな方向に成長し,寿命はそれぞれ 15-20 年(イバラカンザシ),8 年(カンムリゴカイの 1 種),15 年(オオヘビガイ)程度と推定される。他方ウミギクガイモドキやサンゴヤドリフジツボはほとんどの個体が満 7 年未満であり,また成長方向がサンゴの成長方向とほぼ一緒であるため,サンゴの成長量から直接推定することが可能である。この論文においてイシサンゴの骨格中に棲む種の年齢推定法を紹介し,その有用性について議論し,また多毛類を中心とした無脊椎動物の寿命についてのコメントを加えた。ナラシマル ラジェンドラン,芳之内一美,松田 治(広大生物生産)
沿岸魚類養殖海域における堆積物中の微生物バイオマス,群集構造の地域的な違い及び短期間の変動をリン脂質構成脂肪酸を指標としてバイオマーカー分析を行い明らかにした。その結果,魚類養殖場の微生物バイオマス量には徐々に増加する傾向が見られた。堆積物中のリン脂質量はブリ養殖場,広島湾沿岸,ヒラメ養殖場,養殖場周辺部,カキ養殖場の順に高かった。またリン脂肪酸組成の統計解析の結果,魚類養殖場において約 40 日間での微生物群集構造の短期変動が明らかになった。魚類養殖の影響を受けている堆積物においては微生物群集構造の著しい変化が見られ,硫酸還元菌を主体とするグループの割合が高かった。井口恵一朗(中央水研),谷村有紀,武島弘彦,西田 睦(福井県大)
両側回遊型アユの遺伝的な変異と地理的な集団構造を知る目的で,日本列島から 6 つ並びに韓半島から 1 つ,合計 7 つの標本について,ミトコンドリア DNA 調節領域の塩基配列を調べた。日韓標本間の純塩基置換率は大きく,さらに近隣結合法による解析では韓半島産の個体はほぼ 1 つのクラスターを形成したことから,韓半島産の標本は本邦産の標本とは異なる個体群に属すると考えられた。本邦産の標本では,標本間の純塩基置換率はわずかで,しかも遺伝的距離と地理的距離の間には有意な相関関係が認められなかったことから,これらが単一の大きな個体群に含まれると考えられた。しかし,本邦産の標本間には,微細ではあるが有意な塩基多様度の差異や特定のサイトにおける塩基置換頻度の差異が検出され,本邦産両側回遊型アユがメタ個体群構造を形成していることが示唆された。小路 淳(京大農),前原 努(愛媛中予水試東予),田中 克(京大農)
瀬戸内海中央部におけるサワラ仔魚の出現,食性,初期成長および餌料環境を 1995 年と 1996 年に調査した。本種仔魚の出現盛期は 5 月下旬-6 月上旬であり,主食となるニシン目仔魚も高密度であった。仔魚の胃内容物の体高は口径の概ね 30% 未満であり,環境中の魚類仔魚のうちで体高が最も小さいニシン目仔魚は,サワラ仔魚にとっては捕食しやすい重要な初期餌料であると考えられた。飼育標本により確認された耳石輪紋形成の日周性に基づき,天然海域におけるふ化後 20 日までの仔稚魚の成長速度は 1.03 mm/day と推定された。歌川憲一,谷内 透(東大農)
相模湾東部,三浦半島佐島において 1996 年 7 月から 1998 年 7 月に採集された 359 個体のメバルを用いて年齢と成長を調べた。年齢形質には耳石を用いた。耳石の透明帯は年に 1 本形成され年輪であることが確認された。標準体長と耳石半径との間には明瞭な直線関係が見られたが,この関係は雌雄間で有意に異なったため,von Bertalanffy の成長式は雌雄別に求めた。標本中の最高年齢は雄では 6 歳,雌では 7 歳であった。雌雄は 3 歳程度までは同じように成長するが,その後は雌の成長が雄を上回ることが示唆された。厚田静男,渡辺 翼(北里大水),中村弘明(東京歯科大),河野迪子(東大水実),
古川 清(東大農)
菱田泰宏,石松 惇,小田達也(長大水)
ブリを Chattonella marina に曝露(細胞濃度 4000 cells/ml) し,動脈血酸素分圧が 30 mmHg 以下に低下した時に環境水の酸素飽和度を 100% から 300% に上昇させた。実験 1 では C. marina に 210 分間,実験 2 では 420 分間曝露した。実験 1 ではその後に通常海水に移し,210 分間置いた。その結果,実験 1 (N=7) では全ての個体が生残したが,実験 2 (N=7) では約半数が斃死した。酸素過飽和環境下で一部の供試魚では呼吸運動の減退が観察された。鰓の組織障害が一部の個体で観察されたが,組織障害の観察されない斃死魚も存在した。ラファエル・ペレス,田川正朋,青海忠久,平井慈恵,高橋康子,田中 克(京大農)
スズキの個体発生初期における甲状腺ホルモン(T4, T3) とコルチゾルの動態を飼育魚と天然魚について調べた。内分泌器官が分化する以前の卵黄仔魚における母体由来ホルモンとしては T3 が顕著に認められた。T4 は稚魚への移行直後にピークを形成したのに対し,コルチゾルのピークは仔魚期の半ばであった。天然魚の T4 は飼育魚とほぼ同レベルであったが,コルチゾルは飼育魚より 1 桁高い値を示した。また,その値は同じ発育ステージであっても淡水環境下では著しく低かった。これらの特定の発育期に対応した動態より,本種の個体発生初期において,両ホルモンは発育に伴う生理生態変化に深く関わっていると考えられた。上坂裕子,田川正朋,田中 克(京大農)
アラメガレイ Tarphops oligolepis の生殖年周期を,成育場に新規に加入する稚魚の出現状況と雌の成熟度合より調べた。体長組成から,7 月と 10 月に小型個体が出現することが示された。雌の GSI は春季には 10.8 であったが,次第に減少して 9 月には 1.1 に低下した。11 月には再び上昇して 8.3 に達した後,冬季には 2.5 に減少した。卵巣の組織切片観察により,成熟卵が 4 月から 6 月と 10 月から 12 月の年 2 回確認された。これらの結果から,若狭湾におけるアラメガレイは,春季と秋季の年 2 回,産卵期を持つことが示唆された。また,生後約半年ですでに産卵に加わっていると推測された。水田浩之,二村和視,山本弘敏(北大水)
マコンブ胞子体片を用いて子﨡斑形成の最適条件を把握するため,異なる栄養塩,水温,光条件下で培養し,子﨡斑形成の誘導を試みた。その結果,子﨡斑形成は,5 および 10° に比べ 15° で早く,その面積も大きかった。長日条件(16:8LD) の子﨡斑形成条件は短日条件(8:16LD) に比べ遅いが,温度を上げることにより大きな子﨡斑を形成することができた。また子﨡斑面積は高光強度ほど広かった。栄養塩無添加培地では子﨡斑形成が遅れ,その面積も極めて小さかった。以上の結果はマコンブの子﨡斑形成は高水温,高栄養塩濃度,短日,高光強度が適していることを示した。特に,水温と栄養塩濃度は子﨡斑形成時期やその面積に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。
古澤昌彦,浜田光利,青山千春(東水大)
計量魚群探知機を用いた水産資源調査では,普通,計測対象の魚がパルス長やビームの広がりに比べ遠距離にいると仮定する。しかし,この仮定は魚や較正球が送受波器の近くにある場合には成立せず,近距離誤差が生ずる。近距離誤差のうち,パルス長が 0 でないことによる時間遅延誤差は,特に計量魚群探知機を較正球のエコー積分器出力によって較正する場合,重大になることがある。本論文は,筆者らの理論を近距離誤差に重点を置いて展望し,計量魚群探知機の距離補正機能に時間遅延を織り込むべきことなど,近距離の測定に対する実際的な知識と対策を示す。Sulistiono,横田賢史,北田修一,渡邊精一(東水大)
館山湾において 1993 年 10 月から 1995 年 1 月にかけて漕ぎ刺網により採集したシロギス 908 個体を用い,年齢と成長を調べた。年齢形質として耳石を用い,耳石の縁辺部における透明帯の出現率の月別変化を調査した結果,輪紋は年に 1 回,3 月から 4 月に形成されることが明らかになった。標本はほとんどが 2, 3 年魚で 4 年魚はわずかであった。耳石輪紋が明瞭な 532 個体を用いて成長曲線を求めた。耳石半径の成長曲線および耳石半径と全長の相関関係を組み合わせて推定した全長(Lt) の成長曲線は,雄 Lt=602.5(1-e-0.125(t-0.02)),雌 Lt=530.2(1-e-0.149(t-0.04)) で示され,雌雄の成長に差異は見られなかった。上記の新しい方法で推定した成長曲線と back-calculation により推定した成長曲線を比較し,推定されたパラメタ値の差異について議論した。Suwidji Wongso,潮 秀樹,山中英明(東水大)
ヒオウギガイ,イタヤガイ,ホタテガイの横紋筋,平滑筋,外套膜,足,中腸線,生殖腺における解糖系に関与する酵素活性を比較した。3 種貝類の酵素活性ではヘキソキナーゼを除いて横紋筋が一番高い値を示した。横紋筋のピルビン酸リダクターゼ活性の中ではオクトピンデヒドロゲナーゼが最も高かった。また,イタヤガイ科の特徴としてピルビン酸キナーゼ活性が高く,ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性が低かった。中腸腺と生殖腺にかなり高いリンゴ酸デヒドロゲナーゼ,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ,アラニンアミノトランスフェラーゼ活性が測定された。栗原秀幸,後藤百合江,会田雅彦,細川雅史,高橋是太郎(北大水)
乾燥フクロフノリからミュータンス連鎖球菌に対する抗菌性物質が各種クロマトグラフィーによって得られた。抗菌性物質は各種機器分析の結果から遊離脂肪酸混合物と同定できた。遊離脂肪酸のミュータンス連鎖球菌に対する最小阻害濃度は 25~50 μg/ml だった。遊離脂肪酸は Streptococcus sobrinus のゲルコシルトランスフェラーゼによる不溶性グルカンの生成も阻害した。この阻害は,飽和脂肪酸に比べ,不飽和脂肪酸で強かった。
木下政人,中田隆博,足立亨介,矢部泰二郎(京大農),横山芳博(武庫川女大),
豊原治彦,平田 孝(京大農),高山英次(防医大),
美川 智,木岡紀幸,坂口守彦(京大農)
中原千秋,埜澤尚範,関 伸夫(北大水)
標記酵素による筋原繊維タンパク質の架橋重合を 0.1 M および 0.5 M NaCl (pH 7.5) 中,25° で比較した。コイの酵素(CTGase) はミオシン重鎖を特異的に架橋重合した。微生物酵素(MTGase) もミオシン重鎖を架橋したが,CTGase とは架橋部位が異なっていた。コネクチンはさらに速やかに架橋された。両酵素ともにアクチンを架橋できなかったが,アクチンへのアミンの取り込みを示した。MTGase はコネクチンとアクチン,コネクチンとミオシン間にヘテロ重合体を形成した。橋本寿史,竹内壱明,松尾禎之(京大院農),
横山芳博(武庫川女子大バイオ研),豊原治彦,坂口守彦(京大院農)
滝井健二,北 栄一,中村元二,熊井英水(近大水研),八木 隆(昭和産業)
ナタネ濃縮タンパク質(RPC) を,10, 20 および 30% 含む飼料でマダイ稚魚を 52 日間飼育した。終了時における 10% 区の平均体重は,沿岸魚粉主体の 0 % 区に比べて若干優れていたが,20 および 30% 区は有意に劣った。摂餌率,飼料効率,タンパク効率,血液性状および血漿総タンパク・アルブミン・コレステロール・Mg ・ Zn 含量に区間差はなかったが,0 % および 10% 区の血漿 P 含量とタンパク質・糖質消化率は 30% 区より高かった。以上の結果から,マダイ用配合飼料への RSC 最大配合許容量は 10% 付近であることが示唆された。杉田治男,山田昇吾,小長谷幸史,出口吉昭(日大生物資源)
河川魚類の腸管および環境から分離した Aeromonas 属細菌 283 株の β-GlcNAcase およびキチナーゼ生産能を測定した。各菌種の 91~100% の菌株が β-GlcNAcase, exo 型および endo 型キチナーゼのいずれか 1 つ以上を,また 58~80% がすべての酵素を生産した。酵素活性は細菌種および菌株によって差があるものの,A. hydrophila, A. jandaei および A. sobria の 20~55% が高い活性を示した。池田 譲,荒井修亮,坂本 亘(京大農),村山達朗(島根水試)
夏季に日本海より採集したスルメイカ成熟雄個体(外套背長 243 mm,体重 283 g, 276 日齢)より,背丘部に二次成長中心と考えられる構造を有した平衡石が得られた。二次成長中心は直径 260 μm,短径 210 μm で,楔状および帆立貝貝殻様構造より成り,内部に平衡石本体に見られるのと同様な同心円上に発達する輪紋が 64 本観察された。同時に採集された他の雄 34 個体と比較したところ,二次成長中心を有する平衡石の成長過程は,伸長した翼部を除き正常であった。池田 譲,荒井修亮,坂本 亘(京大農),三橋正基(稚内水試),吉田紘二(京大工)
夏季に北海道北部日本海側から採集したミズダコ成体の平衡石表面の微量元素を PIXE で分析した。その結果,主成分の Ca の他に,微量元素の Cr, Mn, Fe, Cu, Zn, Br および Sr が検出できた。Cr, Mn, Fe, Cu, Zn, Br は数 10~数 100 ppm 程度含有されていた。一方,Sr は 12000 ppm 前後と高濃度含有されていた。さらに,ミズダコ平衡石中の Sr 濃度と生息水温は負の相関を示し,平衡石がタコ類の経験した生息水温の推定に有効な記録計と成り得る可能性が示唆された。林 文慶,棚瀬信夫(鹿島建設)
二枚貝における coded wire tag 標識法の適用性について,標識をアサリの靭体に装着し,その影響を求める飼育試験を行った。272 日間の飼育では,標識保持率は 93% で,標識区と対照区におけるアサリの生残率(95%),体重,殻長と肥満度は有意の差はなかった。従って,この標識法はアサリに適用できることを確認した。安藤清一(鹿大水)
天然ニホンウナギ血漿 1 ml 中には 37 mg のリポタンパク質が存在し,主要成分は高密度(HDL3) および超低密度リポタンパク質(VLDL) であった。分析したウナギ三尾のうちの一尾から,これまで魚類では報告例のない超高密度リポタンパク質(VHDL, 1.21<密度<1.28 g/ml) が少量(血漿 1 ml あたり 0.15 mg) 検出された。VHDL はリン脂質とコレステロールエステルに富む分子量 120,000 の粒子であり,アポ A-I,A-II様の成分の他に,分子量 15,000 のアポリポタンパク質が存在した。密度と脂質およびアポリポタンパク質組成の違いから,VHDL は HDL3 とは明らかに異なる粒子であると判断された。山田彰一,山下伸也(日本水産中央研究所)
成長ホルモン遺伝子の転写因子である Pit-1 の発現機構を魚類において明らかにするため,ニジマスのゲノムから Pit-1 遺伝子をクローン化し,塩基配列及び転写開始点を決定した。ニジマス Pit-1 遺伝子は 7 つのエキソンと 6 つのイントロンから成っていた。ラットやマウスの場合,ニジマスの第 3 エキソン領域が欠失していた。プロモーター領域には Pit-1 が結合する配列が 2 カ所推測され,Pit-1 遺伝子の発現に autoregulation が示唆された。T-S. Hsu and S.-Y. Shiau(National Taiwan Ocean University)
飼料 100 g 中に 100 mg の DL-α-トコフェロールアセテート(DL-α-TOA) を添加した精製飼料で,平均体重 0.79 g のウシエビを 8 週間飼育し,飼育終了後の筋肉および肝膵臓中のビタミン E の貯蔵形態を HPLC を用いて測定した。HPLC のチャートから DL-α-トコフェロール,DL-γ-トコフェロール,DL-δ-トコフェロール,および DL-α-TOA がそれぞれ分離できていることを確認した。次に,両組織の分析を行ったところ,唯一 DL-α-TOA のピークしか観察されなかった。すなわち,ウシエビの場合には DL-α-TOA を与えると,組織中でもビタミン E は DL-α-TOA の形態で貯蔵されることが明かになった。黄登福,蔡永祥,廖萱蓉(台湾海洋大),松崗數充,野口玉雄(長大水),鄭森雄(台湾海洋大)
1996 年 2 月から 1997 年 4 月にかけて,台湾南部の 2 地域の養殖池と沿岸 4 水域で毎月有毒プランクトンの調査を行なったところ,1996 年 12 月から翌 3 月にかけて,養殖池および沿岸水域の各 1 箇所から,有毒プランクトンが検出された。その形態的な性状から,いずれも渦鞭毛藻 Alexandrium minutum と同定された。このプランクトンの産生する毒を HPLC 分析した結果,麻ひ性貝毒が検出され,その主成分は GTX3 (>96%) であった。津島己幸,松野隆男(京都薬大)
アルテミア A. franciscana の休眠卵より得られるカロテノイド成分を検討の結果,canthaxanthin が全カロテノイドの 97.5% を占めた。Canthaxanthin は all-E (トランス体,58.4%) のほか,9Z (4.1%), 13Z (30.1%), 15Z (3.1%), di-Z (1.8%) などのシス異性体の混合物であった。その他に all-E-, 9Z-β, β-carotene と all-E-, 9’Z-β-echinenone が少量認められた。深尾 正(日本新薬),太田欽幸(広大生物生産)
Pseudomonas fluorescens の菌対外プロテアーゼ活性および増殖に及ぼすトリポリリン酸ナトリウム(TP) の影響を調べた。本菌が産生する菌体外プロテアーゼの活性は,0.5%TP により 83% に低下した。また,TP は,普通ブイヨンでの本菌の増殖にまったく影響を及ぼさなかった。一方,0.5%TP の配合により,本菌の蒲鉾上での増殖が 1/10~1/100 に抑制され,ネト発生の遅延効果も認められた。すなわち,TP は本菌に直接抗菌性を示さないものの,蒲鉾のような固形食品での増殖に必要な栄養源の調達手段であるプロテアーゼの活性を低下させることにより本菌の増殖を抑制していると考えられた。