宋 偉華(浙江海洋学院,中国海洋大,東大生産技術研), 梁 振林,万 栄(中国海洋大), 趙 芬芳(中国海洋大,東大生産技術研), 木下 健(東大生産技術研),黄 六一(中国海洋大), 馬 家志(浙江海洋学院),陳 伯海(中国海洋大) |
網糸直径と目合の異なる 10 種類のポリエチレン製平面網地を 0.9 m×0.8 m の枠に張り付けて造波水槽において,波浪方向に傾けて置かれたときの網地に働く水平波力を調べた。周期 0.8~2.0 s,波高 50~250 mm の規則波中における網地に働く水平波力は,波と似た周期性が観測され,波浪方向に対して網地が前傾と後傾した場合では水平波力の波形に大きな違いがあった。網地に働く水平波力は網地の網糸直径や目合,波高や波長および波浪方向に対する網地の設置角度などに関係することから,重回帰分析法により網地に働く水平波力を求める実験式を得た。
松裏知彦(海洋大),内川和久(水研セ日水研), 澤田浩一(水研セ水工研) |
2008 年夏季の道東陸棚域において,亜寒帯域で優占するトドハダカとツノナシオキアミの日周鉛直移動パターンを波長別の水中放射照度と関連付けて把握した。これらの種が嗜好する水中放射照度は異なっており,波長 490 nm の平均値で見ると,トドハダカは-59.3 dB,ツノナシオキアミは-45.3 dB の等照度線を追って,夜間に中層から表層に浮上していた。以上の結果は,周波数 120 kHz と 38 kHz の音響体積散乱強度の差等とともに,水中放射照度が日周鉛直移動を行う種の判別,定量化に有効であることを示唆している。
Young-Ung Choi,Heung-Sik Park, Soo-Jin Heo(韓国海洋研) |
本研究では,ミクロネシア,チュークラグーンのウェノ島に棲息するホソスジマンジュウイシモチの産卵期等を明らかにする目的で,生殖巣の組織学的観察を行うとともに,GSI の変化を調べた。本種の性比はおよそ 1:1 であり,50% の個体が成熟に達する標準体長は雄 49.0 mm,雌 46.9 mm であった。生殖巣は雌雄とも多回産卵魚の特徴を示し,メスでは第一次卵黄球期,核移動期もしくは成熟期の卵の共存が,またオスでは非同期的な精子形成が観察された。月ごとの GSI および生殖ステージの変動は産卵・放精が 1 年を通して行われることを示唆した。(文責 都木靖彰)
黒木洋明(水研セ増養殖研),望岡典隆(九大院農), 岡崎 誠,高橋正知(水研セ中央水研), Michael J. Miller,塚本勝巳(東大大気海洋研), 安倍大介(水研セ中央水研),片山知史(東北大院農), 張 成年(水研セ増養殖研) |
2008 年 9 月,北緯 13~22 度の東経 136 度ライン上での仔魚調査により,北緯 17 度で全長 5.8, 7.8 mm のマアナゴ前葉形仔魚が採集された。全長 5.8 mm の個体は孵化後 3~4 日と推定され,これまで得られている同種仔魚の中で最も若い段階の個体であった。北緯 18 度および 21 度では 18 個体のマアナゴ葉形仔魚が採集され,全長 18.6 mm から 40.0 mm の範囲にあった。前葉形仔魚の採集位置と海流から,九州パラオ海嶺に沿った沖ノ鳥島の約 380 km 南方の海域がマアナゴ産卵場の一つと特定された。
田上英明(海洋政策研究(財)), 小松輝久,辻野拓郎,鈴木一平(東大大気海洋研), 渡辺真良,後藤秀樹(NHK), 宮崎信之(海洋政策研究(財),東大大気海洋研) |
ハイスピードカメラと小型 3 軸加速度データロガーによってアカメの摂餌イベントを調べた。飼育下のアカメの摂餌行動をカメラで撮影し,背中に装着したロガーから摂餌イベントの検出に必要な加速度の変化を記録した。四万十川に放流したアカメ 3 個体 129.7 時間のロガーの記録から飼育下の摂餌時に得られた加速度の変化と同様の記録が昼 5 回,夜 13 回得られた。
河辺元子(東大院農水実), 末武弘章(福井県大海洋生資), 菊池 潔,鈴木 譲(東大院農水実) |
天然レプトセファルスでは,T 細胞の分化・成熟に関わる胸腺が顕著に発達している。そこで,仔魚の耐病性を評価する指標として T 細胞マーカーである lck 遺伝子の同定を試みた。人為催熟で得られた受精後 3 日目・7 日目のプレレプトセファルス,及び天然レプトセファルス個体で lck 遺伝子の発現が見られ,in situ ハイブリダイゼーションでシラスウナギの胸腺内リンパ球での発現を確認した。本研究は仔稚魚期において T 細胞が関わる生体防御機構の存在を示し,免疫システムの発達と初期生残や成長過程との関連に着目した解析に繋がるものである。
Hyun Suk Shin(韓国海洋大), Jehee Lee(済州大・韓国), Cheol Young Choi(韓国海洋大) |
クマノミの成長ホルモン(GH)cDNA を下垂体から単離し,異なるスペクトルの LED 光(赤,緑,青)が GH 遺伝子の発現に及ぼす影響を解析した。緑色および青色光で照射した際に,赤色光で照射した際より有意に高い GH の発現量を示した。これらの結果は短波長の光照射によりクマノミの成長を促進できる可能性,および通常の白色蛍光灯より短波長の LED 光を用いることが成長促進に有効であることを示唆している。さらに,メラトニンの投与により GH の発現上昇が観察されたことから,メラトニンがクマノミの成長に関与していると考えられた。
(文責 吉崎悟朗)
渡邉 光(水研セ国際水研), 岡崎 誠(水研セ中央水研), 田村 力,小西健志(日鯨研), 稲掛伝三(水研セ中央水研), 坂東武治,木和田広司(日鯨研), 宮下富雄(水研セ国際水研) |
時空間を同一にして行った鯨類目視,捕獲,海洋環境,餌料環境調査データに基づき,夏季の北西太平洋で優占する大型鯨 3 種の分布特性を分析した。ミンククジラ,イワシクジラ,ニタリクジラはそれぞれ亜寒帯及び移行領域北縁,移行帯北縁,移行帯から黒潮前線にかけて高密度分布が見られ,これらの海域には各鯨種が嗜好していた餌(サンマまたはカタクチイワシ)が周辺域に比べ有意に多く分布していた。以上の結果から,各鯨種の主分布域は海洋物理環境に基づき概ね予測可能であること,各鯨種の分布パターンは餌嗜好性と密接に関連していることが示唆された。
杉原奈央子(東大院農),風呂田利夫(東邦大理), 岡本 研(東大院農) |
移入二枚貝であるホンビノスガイ Mercenaria mercenaria の遺伝的構造を明らかにし,移入源を推定するために,本種が生息する東京湾湾奥部の 5 ヶ所から個体を採取し,ミトコンドリア DNA の COI 領域(528 bp)を解析した。また既知の原産地データと比較を行った。東京湾では全ての地点でハプロタイプ 1,ついでハプロタイプ 3 の出現頻度が高かった。お台場,船橋,横浜のハプロタイプ多様度は原産地と同様に高かったが,新富運河,京浜運河では低くなった。統計解析の結果を総合的に考察すると,東京湾個体群の遺伝的構造はフロリダ半島と類似性が示された。
堀之内正博(島大汽セ), Prasert Tongnunui(RUT,タイ), 古満啓介(長大水),中村洋平(高知大院黒潮), 加納光樹(茨城大広域水圏セ),山口敦子(長大水), 岡本 研,佐野光彦(東大院農) |
タイ国トラン県の海草藻場に出現した 42 種の魚類の餌利用パターンを調べたところ,13 種で体サイズあるいは季節によって餌利用パターンが異なることがわかった。一般に,これらの小型個体は小型浮遊動物あるいは底生/葉上性甲殻類を捕食していたが,大型個体は長尾亜目やデトライタスなどを摂餌していた。本海草藻場の魚類群集は 8 つの食性ギルドによって構成されていた。これらのうち,構成種数が最も多かったのは,大型底生/葉上性甲殻類,デトライタス,浮遊動物をそれぞれ主に利用する 3 グループであった。
佐藤慎一(東北大博物館),千葉友樹(東北大院理), 長谷川裕美(鵬翔高校) |
外来捕食者サキグロタマツメタの移入に伴う貝類相への影響を調べた。本種は 2002 年から 2004 年に宮城県東名浜で急激に増加した。同時に,餌となるアサリなどは減少したが,ウメノハナは減少しなかった。その後,アサリなどが少なくなるとウメノハナも減少した。飼育実験では,サキグロタマツメタはウメノハナよりもアサリなどを好んで捕食し,これらが少なくなるとウメノハナも餌とすることが分かった。本研究はタマガイ科捕食者の移入により,貝類の密度や群集構造などが変わり,海岸生態系に影響を及ぼすことを明らかにした。
古川史也,渡邊壮一,金子豊二(東大院農) |
我々は先行研究において,海水適応ティラピア鰓でのカリウムイオン(K+)排出機構の存在とそのメカニズムを明らかにした。本研究では,生体内において K+ と類似した挙動を示すことが知られているセシウム(Cs)ならびにルビジウム(Rb)イオン排出の可能性を検討した。その結果,海水飼育ティラピアの鰓塩類細胞から両イオンが排出されることが明らかとなった。過去の知見にみられる海水魚における放射性セシウムの短い生物学的半減期には,本研究により示された鰓塩類細胞からの排出機構が関与すると考えられる。
Enrique Blanco Gonzalez(福山大生命工), 有瀧真人(水研セ西海水研),谷口順彦(福山大生命工) |
マイクロサテライト DNA マーカーによるマダイの集団遺伝学的分析を効率よく進めるため,20 マーカー座の PCR プライマーセットの組み合わせによるマルチプレックス PCR パネルの開発を試みた。開発したマルチプレックス PCR パネルの利用により,5 海域から採集したマダイ 200 個体による集団分析を実施したところ,著しく高い遺伝的多様性が確認され,集団間の異質性分析においてもマーカー座の増加に伴い集団間差の検出感度の向上が確認された。
Bo Liu(南京農業大,中国水産科学研究院), Jun Xie(中国水産科学研究院), Xian-ping Ge(南京農業大,中国水産科学研究院), Ling-hong Miao(中国水産科学研究院), Guangyu Wang(南京農業大,中国水産科学研究院) |
パイユに炭水化物含有飼料を給餌した際の影響を調べた。27 および 34% 炭水化物含有飼料を給餌した区では,14% 区に比べて血清コルチゾルレベル,血糖レベル,アラニンアミノ基転移酵素活性およびマロンジアルデヒド量が有意に高かった。血清リゾチーム活性,全抗酸化力およびスーパーオキシドディスムターゼ活性は 14% 区で有意に高かった。肝臓における HSC70 タンパク質の mRNA 発現量は,27% 区で絶食 48 時間後に,34% 区で摂食 48 時間後に,21 および 14% 区に比べて有意に高くなった。以上のことから,27 および 34% の炭水化物投与はパイユの免疫力を高め,代謝にも影響を与えることが明らかとなった。
(文責:潮 秀樹)
有田香穂里(近大農), 磯和 潔,石川 卓(三重県栽培セ), 青木秀夫(三重水研),太田博巳(近大農) |
アコヤガイ精子の凍結保存後の運動能力や受精能力に大きな差が認められるため,冷却速度と解凍後の精子の運動率,受精率との関係を詳細に調べた。その結果,本種の精子は適切な冷却速度の幅が狭く,解凍後の精子で受精卵を得るための冷却速度は-20℃/分付近に限られていた。液体窒素上の一定の高さに保存容器を固定するという現行の冷却方法では,冷却速度の制御が不完全であることが明らかとなった。
澤山英太郎(まる阿水産), 酒本秀一(オリエンタル酵母工業), 高木基裕(愛媛大南水研セ) |
保存法の異なるナンノクロロプシスでワムシを培養し(通常培養区,冷蔵保存区,冷凍保存区),ヒラメ仔魚に与えた。形態異常率はそれぞれ 14.5,34.5,38.5% であり,下顎の伸長が全体の 68~89% と高頻度で確認された。下顎伸長個体の DNA 親子鑑定により遺伝要因の推定を行ったところ,通常培養区と冷蔵保存区では下顎伸長個体に有意に関与している親魚が確認された。以上の結果から,ヒラメの下顎伸長はワムシに与えるナンノクロロプシスの影響を受けるものの,一部の個体では遺伝要因の影響を受けることが示唆された。
Teeyaporn Keawtawee,深見公雄(高知大院黒潮), Putth Songsangjinda(タイ国海洋エビ養殖研究所) |
Noctiluca scintillans による養殖エビの高い斃死率を軽減するために,養殖池から分離された,同藻を殺滅する細菌を用いて,その改善効果を調べた。体長 1.5~1.8 cm の Penaeus monodon 及び Litopenaeus vannamei に N. scintillans を加えると,7 日以内に約 80% の個体が斃死したのに対し,N. scintillans 殺滅細菌 Marinobacter salsuginis BS2 株を添加すると,2 日以内にほぼすべての N. scintillans が殺滅され,7 日目のエビの生残率は 87% まで回復した。しかしながら,BS2 株はエビには全く影響を及ぼさなかった。以上の結果から,殺藻細菌を用いることで,N. scintillans のエビに対する悪影響を軽減し,安定的なエビ養殖が期待されることが分かった。
稲垣祐太,髙津哲也,蘆田雄毅,高橋豊美(北大院水) |
噴火湾海盆部のマクロベントス密度の経年的変化を調べ,それに影響を及ぼす要因を明らかにした。2007 年以降貧酸素水が発生し,強熱減量値は 12% 以上に上昇した。長命種とシダレイトゴカイは 2001~2004 年に比べて 2007~2010 年に低密度化した。長命種は津軽暖流水の流入による水平的な熱と酸素の供給が密度回復に重要であり,シダレイトゴカイは間隙水の交換減少に伴う溶存有機物の供給の滞りが密度低下の要因であった。一方,短命種は貧酸素耐性が低いため,一貫して密度が低く,変化は小さかった。
劉 文,豊原治彦(京大院農) |
東海,近畿及び九州地方の 5 河川(筑後川,緑川,浜戸川,淀川,田中川)の河口域底泥のセルラーゼ活性を測定した結果,活性レベルは河川により異なっていた。抗生物質で殺菌処理しても底泥は強いセルラーゼ活性を示したことから,セルラーゼの底泥成分への吸着が推測された。上記 5 河川の底泥のカビ由来セルラーゼの吸着能には違いがあったが,それは底泥中の植物残渣量の違いによるものであった。本研究は,河川底泥においてセルラーゼが植物残渣等の底泥成分に吸着して分解機能を発現している可能性を示唆するものである。
池口弘毅,金子 元,渡部終五(東大院農) |
クロマグロ Thunnus orientalis 普通筋から組織型トランスグルタミナーゼをコードする全長 2,872 塩基の cDNA をクローニングした。演繹アミノ酸配列 678 残基から算定された分子サイズおよび等電点は,それぞれ 74 kDa および 7.39 であった。本アミノ酸配列は他魚種の相同分子と 38~75% の同一率を示し,活性部位の Cys269,His326 および Asp349 が保存されていた。サザンブロット解析により,クロマグロの TGase 遺伝子はゲノム上に複数コピー存在することが示唆された。
Joko Santoso(ボゴール農科大,インドネシア), 石塚有香(海洋大),吉江由美子(東洋大) |
青森県産ホタテガイの様々な pH における無機質,特に Cd の溶出を調べた。2 価の無機質ならびにタンパク質の中腸線からの溶出はアルカリ側もしくは酸性側で高かったが,Mg の溶出には pH 依存が認められなかった。Cu,Fe はすべての pH でタンパク質と同時に溶出するという相関が認められ,アルカリ側 pH における Cd の溶出はタンパク質の溶出と強い相関が認められた。サイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)によって,酸性,アルカリ性,中性 pH において Cd は分子量 327~1355 のペプチドもしくはタンパク質と強力に結合して溶出することが認められた。
Ji Young Cho(ソンチョンヒャン大学,韓国) |
シリカゲルカラムクロマトグラフィーと HPLC により,紅藻付着性の糸状菌ロイコスリックス属から,抗生物付着活性を有するステロイドを単離した。NMR とマススペクトル解析により,その構造を,17-(1,2-dihydroxyl-5-methyl-hexane)-2,3-dihydroxyl-cholest-4-en-6-one(化合物 a)と 13-acetate-17-(1,5-dimethylhexane)-cholest-7-en-3,5,6,15-tetraol(化合物 b)と同定した。生物付着阻害能について緑藻 Ulva pertusa,珪藻 Navicula annexa 及び 2 種の細菌 Pseudomonas aeruginosa KNP-3 と Alteromonas sp. KNS-8 を用いて調べたところ,2 化合物共に緑藻の胞子の付着と珪藻の成長を阻害した。今回その構造を同定した二つの化合物のうち,化合物 a は新規のものであった。
(文責 宮下和夫)
魚類血糖値の測定が可能なメディエータ型バイオセンサを製作した。センサに用いるグルコースオキシダーゼ(Gox)は溶存酸素量の影響をしばしば受ける。そこで作用電極上(Pt-Ir 線)に,フェロセンをメディエータとしてキトサンを用いてメディエータ(フェロセン)を Gox と共に固定化したところ,試料中の溶存酸素に影響されないバイオセンサを構築することができた。本センサを魚の眼球外膜間質液(EISF)中に挿入し,遊泳状態における血糖値のリアルタイムモニタリングを試みたところ,約 48 時間にわたる連続測定が可能であった。
山田京平,豊原治彦(京大院農) |
寒冷地湿地帯のセルロース分解機構を明らかにする目的で,北海道の湿地帯 17 か所の底泥のセルロース分解活性を測定した。その結果,泥炭湿地が特に活性が高く,海跡湖,河口域の順に活性は低下した。活性の定性分析の結果,メグマ沼(泥炭湿地),野付湾(泥炭湿地)及びウトナイ湖(海跡湖)では微生物が,長節湖(海跡湖)ではメイオベントスが分解に関わっていることが示された。以上の結果から,寒冷地湿地帯底泥のセルロース分解には微生物がやメイオベントス由来のセルラーゼが重要な働きを果たしていることが示唆された。
Bodin Techaratanakrai,岡﨑惠美子,大迫一史(海洋大) |
スルメイカ外套膜筋から調製した坐りゲルおよび酸誘導ゲルの形成に及ぼす有機酸塩(酢酸ナトリム,グルコン酸ナトリウム,クエン酸ナトリムおよびコハク酸ナトリウム)およびそれに対応する有機酸の影響について検討した。酢酸ナトリウムを用いて調製した坐りゲルは低い破断強度を示したが,その他の有機酸塩から調製した坐りゲル間では有意差が見られなかった。クエン酸ナトリウムで調製した坐りゲルをクエン酸水溶液に浸漬して調製したゲルが最も高い破断強度を示したことから,これらの組み合わせが最も実用性があると推定された。
時村陽子(佐賀大海浜セ),山下優毅(産業医科大医), 亀井勇統(佐賀大海浜セ) |
海藻類由来の新規抗腫瘍剤の探索を目的に,日本沿岸海藻 334 種について,インビトロ腫瘍壊死因子-α(TNF-α)生産促進活性をスクリーニングした結果,褐藻ナガマツモに強力な TNF-α 生産促進活性を見いだした。褐藻ナガマツモから分離した 3000 kDa 以上の分子量を有する活性多糖は,濃度依存的に TNF-α の生産を促進すると共に,その分子構造はフコイダンと類似した。また,180~370 kDa になるまで加水分解しても活性を示し,新規抗腫瘍剤としての開発に有望であることが示唆された。
塩谷 格,竹村秀平,石塚梨沙(日水中研), 山口高弘(東北大院農) |
ブリの筋肉の特徴を把握するため主要な 5 種の筋肉の一般成分の差異および筋肉の脂質含量とテクスチャーの季節変動を明らかにした。脂質含量と水分はタンパク質含量と比べ筋肉間の含量の差異と筋肉毎の変動が大きかった。背側筋の脂質含量は,背側竜骨筋,腹側筋,腹側竜骨筋および血合筋の脂質含量と相関があった。背側筋の脂質含量は 11 月から 1 月に多く,3 月から減少し,4 月から 6 月に少なかった。養殖ブリでは背側筋の脂質含量から他の筋肉の脂質含量を予測でき,背側筋の脂質含量とテクスチャーの季節変動は似た傾向にあった。
小坂康之,大泉 徹(福井県大海洋生資) |
抗生物質の存在下で,へしこの熟成中における乳酸,遊離アミノ酸(FAA)および酸可溶性ペプチド(ASP)の生成を検討した。その結果,クロラムフェニコール,ペニシリン,およびシクロヘキシミドの 3 種の抗生物質の存在下では,熟成中の好塩性乳酸菌の増殖が阻害され乳酸はほとんど生成しないが,FAA と ASP は大きく増加した。それらの生成量に抗生物質の存否による有意差はみられなかった。これらのことから,FAA と ASP は微生物の作用ではなく,主に魚肉内在性のプロテアーゼの作用により生成することが示唆された。
Do-Hoon Kim,Ju-Nam Seo(NFRDI), Hyung-Seok Kim(釜慶大), Kyounghoon Lee(NFRDI,韓国) |
1997 年から 2009 年にかけての 12 種の韓国の近海漁業の生産性の変化を,Malmquist productivity index によって分析した結果,生産性は 6.0% 低下していた。さらにこれらを,効率性と技術的な進歩の要素に分けたところ,効率性は 0.2% 向上していたが,技術的な進歩による生産性は 6.2% 減少していた。すなわち,技術的向上努力が不活発であったことが生産性の低下の原因であり,効率性と技術の進歩は,全体の生産性の向上に独立に影響を与えていることが示された。このことから,政府の適正な政策と企業・著長団体の努力が一体となることが,漁業の生産性の向上に必要であることが明らかになった。
(文責 黒倉 寿)