Cosmas Munga(Ghent 大,ベルギー/KMFRI,ケニア), Stephen Ndegwa(Fisheries Dept.-Kenya,ケニア), Bernerd Fulanda(KMFRI/鹿大院連農), Julius Manyala(MOI 大,ケニア), Edward Kimani(KMFRI),大富 潤(鹿大水), Ann Vanreusel(Ghent 大) |
ケニア Malindi-Ungwana Bay の Formosa 漁場と Malindi 漁場では,商業エビトロール漁業と零細な職商的漁業との間で資源をめぐる対立や漁獲量の減少がみられ,2006 年に商業漁業が禁漁となった。本研究では,禁漁開始前後で漁獲量と漁業の動態について解析を行なった。職商的漁業による水揚げ量は禁漁以前には減少していたが,禁漁開始後 2 年以内に急速に回復した。しかし,エビ類の水揚げ量は依然少ない状態にあった。SIMPER 分析の結果,Formosa 漁場ではヒレナマズ科など 6 グループで,Malindi 漁場ではアジ科など 16 グループで類似度の 90% 以上を占めた。
森岡伸介(国際農研セ), Philippe Cacot(フランス国際農業開発研究センター), 茂木正人(海洋大), Vilakone Thipvantong, Somphanh Philavong, Latsamy Pounvisouk, Phonenaphet Chantasone(ラオス水生生物資源研究センター), Vienvily Thaphysy(ラオス国チェンパサーク県立 KM8 水産実習所) |
Cirrhinus microlepis 仔魚の孵化後約 200 時間の成長は急成長期と緩成長期,卵黄吸収パターンは急速吸収期,緩吸収期,消失期,後消失期に分けることができた。摂餌開始は卵黄緩吸収期の末期(孵化 71.5 時間)に観察され,その際脊索屈曲,尾鰭支持骨/鰭条,背鰭原基,腸管の coiling も観察された。同所的に分布する他 3 魚種仔魚と本種仔魚の摂餌開始期の形態比較の結果,内部栄養から外部栄養の転換パターンの違いは,生息環境と繁殖戦略に関連するものと推察された。
安田十也(水研セ西海水研,近大院農), 米山和良(鹿大水),家戸敬太郎(近大水研), 光永 靖(近大農) |
小型回流水槽を利用してマダイの酸素消費量と加速度データロガーの計測値との関係式を求めた。この式から小型生簀内のマダイの代謝率を推定したところ,13.9~14.8 kcal/(kg・日)となり,給餌で与えたエネルギーの 15~19% に相当した。データロガーは,遊泳活動の日周性や滞在深度の選好性といった生簀の時空間利用特性に関する情報も記録した。行動・生理情報の計測結果は,養殖環境を魚目線で捉えることができるだけでなく,飼料効率といった主要な飼育要因の効果を正確に推定することにも役立つと考えられる。
横尾俊博(海洋大), 加納光樹(茨城大広域水圏セ), 茂木正人,河野 博(海洋大), Prasert Tongnunui(Rajamangala 大,タイ), 黒倉 寿(東大院農) |
タイ王国南部トラン県シカオのマングローブ水域において小型ハゼ亜目魚類の群集構造を調査した。研究期間中に 3 科 19 属 36 種,11183 個体のハゼ亜目魚類が得られ,種数と個体数はマングローブ水路の上・中流域に位置する泥底・低塩分の定点で特に多かった。これは,多様な生活様式を備えたハゼ亜目魚類がそこに存在する複数の微細生息環境に集中的に棲み込むことが一因と考えられた。マングローブ水域内の環境によって群集構造が変化したことから,マングローブ水域の保全・再生事業で環境指標としてハゼ亜目魚類が活用できる可能性も指摘した。
岩本健輔(琉球大院理工), 張 至維(台湾海生博), 竹村明洋,今井秀行(琉球大理) |
北西太平洋産ゴマアイゴ Siganus guttatus の遺伝的集団構造と個体群履歴を明らかにするため,ミトコンドリア DNA 調節領域を含む部分塩基配列を分析した。結果,沖縄諸島内でも遺伝子流動が制限されるなど狭い範囲で遺伝的分集団化していることが示された。また個体群履歴の推定から,間氷期における個体群サイズの急拡大が非分散型の生態によって制限されたことが推察された。海流や稚仔魚の分散戦略などから地域間の遺伝子流動が制限されている集団が示されたことは,資源管理の基礎データとして役立つと考えられる。
Jae-Sang Hong(Inha 大,韓国), 関野正志(水研セ東北水研), 佐藤慎一(東北大博物館) |
カキ類は,貝殻形態の可塑性から外観での種同定が難しく,生息範囲が曖昧な種が多い。韓国順天湾で採集された 50 個体のカキについて,mtDNA の COXI 遺伝子塩基配列と核 DNA の ITS1 による種判別を行ったところ,20 個体がシカメガキと同定され,韓国沿岸で初めて本種が発見された。さらにシカメガキとマガキのハイブリッドも検出された。DNA 解析によりシカメガキとマガキは識別可能であったが,形態の違いは認められなかった。シカメガキの新たな生息域が見つかったことは,東アジアのカキ資源保全上,重要な発見である。
高橋宏司,益田玲爾,山下 洋(京大フィールド研セ) |
群れ行動がマアジの学習に与える効果を検討した。まず,単独または集団で学習の過程を比較した。その結果,学習した行動を示す個体の割合は集団区の方が単独区よりも多かった。集団区では,未学習個体による学習個体への追従が生じ,情報が共有されたと考えられた。次に,学習個体の行動を水槽越しに観察する観察区と非観察区の学習過程を比較した。その結果,学習成立は観察区 3 試行,非観察区 6 試行であり,観察によって餌場に関する情報の伝達が促進された。マアジの群れでは,情報の共有と伝達により,学習が促進されると考えられた。
巣山 哲,中神正康,納谷美也子(水研セ東北水研八戸), 上野康弘(水研セ中央水研) |
2006 年 6,7 月に,北太平洋の 160°E 以西と 170°E 以東で採集されたサンマ 1 歳魚のふ化時期,年輪半径および年輪が形成された日齢を光学顕微鏡および電子顕微鏡による微細輪紋の計数・計測結果から比較した。体長モードおよび年輪半径は 160°E 以西の方が大きかったが,ふ化時期と年輪が形成された日齢に差はなかったため,両者は 1 年目の成長率に差があったと考えられた。
杉本親要,池田 譲(琉大院理工) |
アオリイカの群れの発達過程を,飼育下の個体を対象に孵化時より経時的に観察した。アオリイカ稚仔は,孵化時には各々がランダムな方向を向き,かつ互いに離れて遊泳しており群れを形成していなかった。20 日齢では,他個体と近接して遊泳するようになったが,個体間の方向はランダムであった。40 日齢では,隣接個体との距離がより縮まって互いに平行に遊泳するようになった。さらに,60 日齢では,隣接個体同士が平行遊泳しながら横並びに整列する明確な群れが形成された。
山根広大(東大大気海洋研), 白井厚太朗(東大院理), 長倉義智(水研セ東北水研), 大竹二雄(東大大気海洋研) |
耳石中の微量元素組成がニシンの個体群構造の解析に有用であるか検討するため,バルク組成,生活史に沿った組成およびコア部分の組成(Li : Ca, Na : Ca, Mg : Ca, P : Ca, K : Ca, Mn : Ca, Sr : Ca, Ba : Ca)を LA-ICP-MS を用いて分析した。供試魚は尾駁沼,宮古湾および厚岸湾からサンプルを採集した。耳石微量元素のバルク組成およびコア部分の組成は,それぞれ 6 つの元素カルシウム比においてサンプル間で有意な差が認められた。以上の結果から,耳石の微量元素組成は生息場所が異なるサンプルにおいて異なる組成を示し,個体の生息場所の違いを反映できることが示唆された。
早川 淳,黒木洋明(水研セ増養殖研), 河村知彦,大土直哉,渡邊良朗(東大大気海洋研), 大橋智志(長崎水試) |
サザエ稚貝の生息場である有節サンゴモ群落内の肉食性巻貝類の種組成を継続的に調査した。群落内で優占する肉食性巻貝 6 種の内,ヒメヨウラクとレイシガイがサザエ稚貝を捕食することが室内実験により明らかになった。加えて,ヒメヨウラクは他の小型巻貝類よりもサザエ稚貝を好んで捕食することが示された。ヒメヨウラクによる穿孔痕はサザエ稚貝の貝殻の軸唇上部に集中しており,野外から採集された多数の死殻にも同様の穿孔痕が認められた。これらの結果から,ヒメヨウラクによる捕食はサザエの初期生残に強く影響すると考えられた。
有瀧真人(水研セ西海水研), 田川正朋(京大フィールド研セ) |
異体類は栽培漁業の対象として多様な種類が扱われてきたが,飼育環境下では白化や両面有色等の形態異常が頻発し問題となっている。本研究では 6 種のカレイ科魚類人工種苗について,両体側の眼位・体色・鱗・両顎歯を天然魚と比較した。その結果,検討した全ての魚種に共通して,白化魚では両体側とも天然魚の無眼側と同様の形質を,逆に両面有色魚では有眼側と同様の形質を,それぞれ発現していることが確認された。即ち白化や両面有色は変態期における左右性発現の異常であると一般化が可能であるため,変態異常と捉えることを提唱する。
Mohammad Abu Jafor Bapary,今村 聡, 竹村明洋(琉球大理) |
高輝度長残光性蓄光顔料(ルミノーバ)を光源として利用して長日条件を作り,産卵期のルリスズメダイの生殖活性に与える影響を調べた。ルミノーバを用いない対照水槽と比べ,ルミノーバシートで側面を被った実験水槽で飼育した魚の生殖腺体指数は有意に高くなった。実験水槽の魚の卵巣内には卵黄形成途上の卵母細胞が観察されるとともに産卵も確認された。エネルギー消費を抑えた魚類の性成熟誘導にルミノーバは利用可能と判断された。
武部孝行(水研セ西海水研・長大院生産), 栗原健夫,鈴木伸明(水研セ西海水研), 井手健太郎(水研セ増養殖研), 二階堂英城,田中庸介,塩澤 聡(水研セ西海水研), 今泉 均(水研セ増養殖研), 升間主計(水研セ日水研),阪倉良孝(長大水) |
クロマグロ雌親魚 1 個体から得られた受精卵を用いて飼育試験を行い,その仔稚魚の耳石日輪紋を観察し,成長過程と成長差の発現時期について調査した。19 日齢に採集したクロマグロを全長によって 3 グループに分けて,耳石径から全長を逆算推定した結果,3 日齢の段階から成長差が発現する可能性が示された。特に,成長が良好であった大型個体群は摂餌によって成長が促進されたと考えられた。また,3 日齢から 8 日齢にクロマグロ仔魚の沈降現象による摂餌行動への影響によっても成長差は発現し,助長されることが推察された。
ターマー・ファウジイ・イスマイル(宮崎大農), 中村充志,中西健二,南 隆之(宮崎水試), 村瀬拓也,柳 宗悦(鹿児島水技セ), 伊丹利明,吉田照豊(宮崎大農) |
サルファ剤 4 薬剤,培地の種類,接種菌数を変え,REMA 法によりノカルジアの MIC 測定を行った。その結果,MIC は接種菌数により,MIC 値が変化した。また,イオン調整した 1/2 濃度のミューラーヒントン液体培地が測定には優れていた。SMM に対する MIC 値は,野外分離株 190 株で 4~32 μg/mL であった。また,同時に治療試験を,カンパチを用いて行った。MIC 値 4 μg/mL および 32 μg/mL の分離株で感染した後,SMM を餌料と混合し投与した。その結果,治療効果が得られた。
山本剛史,松成宏之,杉田 毅, 古板博文(水研セ増養殖研),益本俊郎(高知大農), 岩下恭朗,天野俊二,鈴木伸洋(東海大院) |
発酵大豆油粕(発酵 SBM)主体の無魚粉飼料へ添加する必須アミノ酸(EAA)を適正化するため,魚粉飼料,EAA 無添加無魚粉飼料(未発酵または発酵 SBM 配合),メチオニン・リジン添加飼料および魚粉飼料に比べて不足する全 EAA を添加した飼料をニジマスに 10 週間与えた。EAA 無添加飼料では発酵 SBM の配合により胆汁や組織の異常が改善されたが飼育成績は改善されず,EAA 添加飼料ではいずれも飼育成績は同等に改善された。以上の結果から,発酵 SBM 主体飼料へはメチオニンとリジンの添加で十分であると考えられた。
シャリファ・ノル・エミリア,江口 充(近大院農) |
活発に増殖しているクロレラ Chlorella vulgaris の培養ろ液で Roseobacter グループの海洋細菌 Sulfitobacter sp. と魚病細菌 Vibrio anguillarum を共培養すると,V. anguillarum の生菌数が 1 週間以内に検出限界以下まで減少した。一方,市販の濃縮クロレラのろ液では,Sulfitobacter sp. の存在に関係なく V. anguillarum は増殖した。本研究から V. anguillarum に対する Sulfitobacter sp. の抗菌作用には活発に増殖する生きたクロレラの培養ろ液の存在が重要である。
本田貴史,吉田天士(京大院農), 広石伸互(福井県大海洋生資), 左子芳彦(京大院農) |
我々はこれまでに Microcystis aeruginosa では,ftsZ の転写制御により DNA 複製と細胞分裂が協調していることを明らかにした。本稿では,ftsZ の転写調節を行う因子を想定し,その上流配列に対しゲルシフトアッセイを行った。その結果,ftsZ の直上流 35bp に特異的に結合する因子を見出した。複製阻害により ftsZ の転写が抑制され,分裂が阻害された細胞においては,結合が見られなかったことから,本因子が ftsZ の転写調節を行い,複製と分裂を協調させる因子である可能性が示唆された。
Nak-Yun Sung, Pil-Moon Jung, Minchul Yoon, Jeong-Soo Kim, Jong-il Choi(韓国原子力研究所,韓国), Hye Gwang Jeong(忠南大學校,韓国), Ju-Woon Lee, Jae-Hun Kim(韓国原子力研究所) |
アユタンパク質および加水分解物,特にトリプシンおよび α キモトリプシンによる加水分解物が,リポ多糖によるマウスマクロファージ RAW264.7 細胞の炎症誘発時における一酸化窒素,炎症性サイトカインおよびプロスタグランジン E2 の産生を著しく抑制した。これらの抑制作用は,炎症性転写因子 NF-κB の核移行と MAP キナーゼ経路の抑制を介するものであった。以上のことから,アユタンパク質のトリプシン・α キモトリプシン加水分解物は抗炎症作用物質として有用であるものと考えられた。
(文責 潮 秀樹)
遠藤英明,村松忠佳,吉崎悟朗,任 恵峰, 大貫 等(海洋大) |
魚類の卵成熟ホルモン 17, 20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one(DHP)を測定するための非標識免疫センサを試作した。本システムは,電極上での DHP に対する免疫反応による電気化学的変化を測定する原理に基づいている。金電極表面に自己組織化単分子膜を形成させ,これに抗-DHP 抗体を固定化して免疫センサを製作した。本センサの出力電流値と DHP 濃度(7.8~500 pg mL-1)との間には直線的相関が得られた。また,キンギョ血漿中の DHP 測定に本システムを適用したところ,従来法(ELISA)による測定結果との間に良い相関が認められた。
水田尚志,浅野千聡,横山芳博(福井県大海洋生資), 谷口 基(宮崎水試) |
シロチョウザメ筋肉部および脊椎骨部よりペプシン可溶化コラーゲンを調製し,これを酸性条件下または中性条件下での塩分画に供することにより,2 つの画分(メジャーおよびマイナーコラーゲン画分)を得た。これらに含まれるコラーゲンは SDS-PAGE およびアミノ酸組成分析において,それぞれⅠ型およびV型コラーゲンの特徴を示した。これらの結果は,シロチョウザメ筋肉部および脊椎骨部にI型およびV型に相当するコラーゲン分子種が存在することを示唆している。
山下由美子,藪 健史,東畑 顕,山下倫明(水研セ中央水研) |
クロマグロ Thunnus orientalis 血合筋から GPx1 を精製し,酵素的性状を明らかにした。酵素活性の至適 pH は pH 7.4 であり,過酸化水素に対する Km 値は 6.7 μM であった。cDNA は,188 残基のアミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。推定アミノ酸配列の分子系統樹から,これまで魚類で報告された GPx1 は GPx1a および GPx1b の二種類に分類されたが,哺乳類では一種類だけであった。精製した酵素は,GPx1bに分類された。
冨永紘志,Daniel A. Coury,天野秀臣,幹 渉, 柿沼 誠(三重大院生資) |
不稔性アナアオサから Hsp90 および Hsp60 の cDNA をクローニングした。Hsp90 および Hsp60 はそれぞれ,705 および 573 アミノ酸残基からなり,各々細胞質局在型およびミトコンドリア局在型であることが示唆された。各 Hsp 遺伝子は不稔性アナアオサ・ゲノムに少なくとも 2 コピー存在し,両遺伝子発現は培養の明暗周期や温度条件で大きく変動した。両 Hsp 遺伝子は,不稔性アナアオサの環境応答・適応に重要な役割を果たしていると考えられる。
ウィチュラダ サバロイ(北大院水), ナンティパ パンサワット(カセサート大,タイ), 今野久仁彦(北大院水) |
ナマズ(CF)筋原線維(Mf)(0.1 M NaCl, pH 7.5)の Ca2+-ATPase 失活速度は,ティラピア(T)Mf と同じであったが,サブフラグメントー 1(S-1),ロッド(Rod)変性様式は大きく異なった。CF では S-1 より Rod 変性が速く,T では逆であった。加熱時の pH(6~9)は S-1 変性をあまり変えないが,Rod 変性は高 pH で促進された。その結果,T の加熱 pH を 1 単位高くすると CF のパターンとほぼ同じとなった。また,両 Mf の pH を変えたキモトリプシン消化から,CF の方が T よりフィラメント構造が弱く,これが変性様式を決定すると結論した。
Wiyada Mongkolthanaruk(Khon kaen 大,タイ), 永瀬光俊(島根産技セ),河井祥子, 谷川幸佑(鳥取大農),李 燕(鳥取大院連農), 山口武視,会見忠則(鳥取大農) |
サバ塩辛から,Tetragenococcus halophilus A116 株および A124 株を分離した。ヒスタミン生産に関係する hdcA 遺伝子は,A124 株のみに確認され,染色体 DNA に位置していた。qRT-PCR を用いて hdcA 遺伝子の転写を調べたところ,pH 3.0 から pH 7.0 の範囲では,発現に有意差がなかった。一方,菌株の生育は pH 5.5 以下では非常に悪く,培地中のヒスタミン蓄積が低いことがその証拠であった。ヒスタミン生産をコントロールできる機構としては,HdcA タンパク質活性に至適な pH と同様に,hdcA 遺伝子を持つ T. halophilus 細胞の総量が挙げられる。
福間康文(近大農), 山根昭彦(株式会社氷温研究所), 伊藤智広,塚正泰之,安藤正史(近大農) |
魚肉の過冷却状態を作り出し,物性・組織構造・タンパク質組成の変化を調べた。1.0℃ 群では-3.5℃ 付近,0.5℃ 群では-5.0℃ 付近で凍結が始まった。破断強度の低下は 1.0℃ 群の方が遅い傾向にあったが,コラーゲン線維の崩壊は 1.0℃ 群の方が早く進行した。SDS 電気泳動ではわずかにバンドパターンの変化が認められたが,物性・構造変化との関係は不明であった。
本研究結果は魚肉において 0℃ を大きく下回る過冷却状態を作り出すことが可能であることを示したものであり,新しい長期保存の方法として期待される。
小坂康之(福井県大海洋生資), 里見正隆,舊谷亜由美(水研セ中央水研), 大泉 徹(福井県大海洋生資) |
2.5% NaCl-GYP 寒天培地で測定した市販マサバへしこの生菌数は 104~107 cfu/g の範囲にあり,16S rRNA の塩基配列からそれらの 80% 以上が Tetragenococcus halophilus であることが示された。製造過程中の変化を検討した結果,原料および塩漬けマサバの生菌数は 103~104 cfu/g であったが,糠漬けとともに,乳酸生成を伴って 106 cfu/g まで生菌数が大きく増加して T. halophilus が優占種となり,5 ヶ月目以降は本種以外の菌種は検出されなかった。
ビモル・チャンドラ・ロイ,安藤正史(近大農), 中谷正宏,岡田貴彦,澤田好史(近大水研), 伊藤智広,塚正泰之(近大農) |
3.0 kg から 54.3 kg までの養殖クロマグロ(PBT)の成長に伴う背部普通筋(DO),腹部普通筋(LO),血合筋の筋線維タイプと増加パターンを調べた。DO と LO の全筋線維は NADH-diaphorase 活性が低く,塩基性で安定な myosin ATPase(mATPase)活性を示した。血合筋と接した LO は,pH 4.5 か 5.0 で予備加熱すると筋線維に 3 段階の mATPase 活性が認められた。血合筋の線維は好気的代謝を示す強い NADH-diaphorase 活性を示した。38.4 kg までは筋線維数の増加と肥大の両方が,54.3 kg では筋線維の肥大のみが成長に寄与した。
Hyun Kyung Kim, Young Ho Kim, Yun Ji Kim (KFRI,韓国), Hyun Jin Park (Korea Univ.), Nam Hyouck Lee (KFRI) |
スズキ Lateolabrax japonicus の皮からの酸可用性コラーゲン抽出に及ぼす超音波処理の影響について調べた。0.5 M の酢酸を用いて 24 時間かけて抽出する方法と,0.5 M の酢酸に浸漬した後超音波処理する方法を比較した。超音波処理によりコラーゲンの収量は向上し,抽出速度は超音波の振幅を上げることにより上昇した。得られたコラーゲンを SDS-PAGE により確認したところ,α1(α3), α2,および β 鎖が確認された。また,これらはペプシン処理をしても低分子化しなかった。
(文責 大迫一史)