Fisheries Science 掲載報文要旨

Summer flounder 漁船における遊漁者の漁獲記憶の偏りと保持量・サイズ規制に対する好み

Eleanor A. Bochenek, Eric N. Powell (IMCS, Rutgers Univ., USA),
John DePersenaire (Recreational Fishing Alliance, USA)

 Summer flounder 遊漁船において,遊漁者の満足感を保ちつつ投棄が減少するように設計した 3 つの保持量・サイズ規制を,ニューヨークとニュージャージーの 2006 年の保持量・サイズ規制と比較して評価した。遊漁者の漁獲を記録し,帰港中に行ったアンケート結果と比較したところ,遊漁者は保持数と投棄数を過大推定しており,年齢,性別,経験年数が精度に影響した。投棄数の精度は,規制シナリオの影響を受け,船,性別,経験年数でも異なったが,偏りは性別,年齢,経験などに関係しなかった。遊漁者は長細い穴を通過する魚体を放流する規制を好み,2006 年の保持量・サイズ規制を好まなかった。
(文責 松下吉樹)

78(1), 1-14 (2012)
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フィリピンのパヤオネットワークとキハダ幼魚の関係

光永 靖,遠藤周之(近大農),安樂和彦(鹿大水),
Cornelio M. Selorio Jr, Ricardo P. Babaran(UPV,フィリピン)

 フィリピンのパヤオ(浮魚礁)ネットワーク内で,キハダ幼魚の腹腔内に超音波発信機を挿入して放流し,パヤオのアンカーラインに装着した受信機で行動をモニタリングした。キハダ幼魚は,夜間は比較的浅く狭い層を遊泳し,昼間は深く広い層を遊泳する日周鉛直移動や,複数尾が同時に昼間にパヤオに接近し,夜間にパヤオから離脱する日周水平移動など,これまでに報告されている成魚とよく似た行動を示した一方,成魚のようにパヤオネットワーク内には長くとどまらず,成長途上であると同時に,回遊の途中であることが示唆された。

78(1), 15-22 (2012)
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トロール漁具用円錐型クラゲ分離排出網の性能に関する研究

朴 倉斗,李 坰勲,金 成勲(国立水産科学院,韓国),
藤森康澄(北大院水)

 円錐型クラゲ分離排出網の性能を調べるために,カバーネットを装着したトロール網による試験操業を韓国南海岸で行った。漁獲された生物の種類はエチゼンクラゲ,シログチ,キグチ,ムシガレイ,タチウオなどであった。コッドエンドで保持されたエチゼンクラゲの重量の割合は 0.005 から 0.027 の範囲であり,残りは網外への排出された。一方コッドエンドで漁獲された魚類の数及び重量の割合は,各々 0.835 と 0.793 であった。この結果は円錐型クラゲ分離排出網の優れた性能を示している。

78(1), 23-32 (2012)
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東シナ海に優占するサガミハダカとヒロハダカの現存量変動と環境との関わり

大下誠二,安田十也,田中寛繁,
佐々千由紀(水研セ西海水研)

 東シナ海において夏季にマイクロネクトン(ハダカイワシ類・キュウリエソ)を対象とした音響調査を実施した。マイクロネクトンの現存量は小型浮魚類のそれよりも大きく,同海域ではマイクロネクトンが生態系において重要な役割を果たしていると推測された。ハダカイワシ類の現存量と冬季の南方振動,モンスーン指標,黒潮流量と春季の北極振動には相関が認められた。モンスーン指標と北極振動は基礎生産量に,南方振動は黒潮の流路に影響を与えると考えられ,基礎生産力と輸送環境の変動により加入量が決定されると考えられた。

78(1), 33-39 (2012)
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過程誤差と観測誤差が再生産曲線に与える影響および再生産関係としての比例モデルの妥当性

桜本和美,鈴木直樹(海洋大)

 過程誤差と観測誤差が再生産曲線の選択に与える影響をシミュレーションにより検討した。真の再生産モデルが比例モデルの場合,誤差により Ricker または Beverton-Holt(B-H)モデルが選ばれる可能性は高い。真の再生産モデルが Ricker または B-H モデルの場合,誤差により比例モデルが選択される可能性はほとんどない。太平洋系群マイワシの再生産関係には密度効果は検出されず,比例モデルが妥当と思われる。資源の管理を考える場合は海洋環境要因等を考慮した 2 変数以上の再生産モデルを使う必要がある。

78(1), 41-54 (2012)
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日本海北部新潟県の砂浜海岸砕波帯におけるアユ仔稚魚の滞在様式

井関智明(水研セ日水研),宮内康行(水研セ北水研),
藤井徹生(水研セ本部)

 日本海北部の開放的な砂浜では,主に 10,11 月生まれのアユ仔魚が順に砕波帯に出現し,翌 1 月中下旬まで滞在するが,水温が 10℃ を下回るその後の短期間で体長や日齢によらず移出する。このため砕波帯での滞在期間は早生まれの個体ほど長く,早生まれ群の短期滞在と遅生まれ群の長期滞在が知られる他海域とは対照的である。また日本海北部では 10 月末までにふ化する早生まれ群のうち,水温が 10℃ を下回る前に砕波帯での最大滞在体長(約 40 mm)に達する成長の速い個体は 12 月以降の早期に移出し,滞在期間が短いと考えられた。

78(1), 55-65 (2012)
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チュウゴクモクズガニの脱皮周期と肝膵臓の脂質・グリコーゲン・無機イオン含量

Zhihuan Tian, Xiangjiang Kang, Shumei Mu(河北大,中国)

 チュウゴクモクズガニの脱皮周期は 4 つのステージ(脱皮後期,脱皮間期,脱皮前期,および脱皮期)に判別することができた。さらに脱皮前期を 3 つのサブステージに分けられることが判明した。また,肝膵臓の脂質・グリコーゲン・無機イオン含量は脱皮周期と相関関係があり,脱皮直前に総脂質の含量がピークに達し,グリコーゲンが減少する傾向にあった。無機イオンは複雑な変動パータンを示したが,脱皮周期との関連が認められた。
(文責 マーシー・ワイルダー)

78(1), 67-74 (2012)
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French Polynesia の Rangiroa 環礁における甲殻類 2 分類群のポストラーバ供給の時系列パターン

Raphael Santos (CRIOBE, French Polynesia),
Craig A. Radford (Leigh Mar. Lab., Univ. Auckland, New Zealand),
Joseph Poupin (IRENav, France), Christophe Brié (Tropical Fish Tahiti, French Polynesia),
Suzanne C. Mills, René Galzin (CRIOBE),
David Lecchini (CRIOBE, IRD, France)

 French Polynesia の Rangiroa 環礁において,礁縁に設置したネットを用い,礁内への短尾類と口脚類のポストラーバ供給を 3 カ月齢にわたって調べた。総計 37,068 個体の短尾類と 12,697 個体の口脚類が採集された。ポストラーバ供給は,両分類群とも暖かい季節(2~4 月)に多く,寒い季節(6~7 月)に少なかった。また,供給は短尾類では下弦で多く,口脚類では新月で多かったが,両分類群とも満月と上弦で最も少なかった。本研究によって,Rangiroa 環礁における短尾類と口脚類のポストラーバ供給は季節と月の位相によって調整されていることが示された。
(文責 浜崎活幸)

78(1), 75-80 (2012)
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ヒメマスの降河・遡上行動における性ホルモン,LH および甲状腺ホルモンの関与

棟方有宗(宮城教育大),天野勝文(北里大水),
生田和正(水研セ研究推進部),北村章二(水研セ中央水研),
會田勝美(東大農)

 ヒメマスの降河・遡上行動における性ホルモン,生殖腺刺激ホルモン(LH)及び甲状腺ホルモンの関与を水路において調べた。銀化魚ではテストステロン(T)の投与によって降河行動が抑制された。親魚では遡上行動時に T や 11-ケトテストステロンが高値を示し,T 投与によって未成熟魚の遡上行動が誘起されたことから,T はヒメマスの降河・遡上行動の調節因子と考えられた。また甲状腺ホルモンであるサイロキシンは降河・遡上後に減少したことから,同じく行動への関与が示唆された。一方,LH の関与は示されなかった。

78(1), 81-90 (2012)
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石垣島の礁斜面におけるサンゴ礫間隙棲生物群集の変異

高田宜武(水研セ日水研),阿部 寧(水研セ国際水研),
澁野拓郎(水研セ増養殖研)

 サンゴ礫の間隙は小型生物の生息場所として利用され,サンゴ礁魚類の摂餌場として重要である。本研究では,サンゴ礫を詰めたカゴを深度の異なる 3 地点の礁斜面に設置し,間隙棲の移動性動物の群集組成の変異を調査した。主に十脚類と腹足類からなる比較的大型の動物は,3 m 地点では 71 種で平均 260.3 個体,11 m 地点では 53 種で 95.3 個体,22 m 地点では 37 種で 57.8 個体となった。従って,礁斜面のサンゴ礫間隙棲生物群集は浅いゾーンで多様性が高く,また深度によって特徴的な群集組成を示すことが明らかとなった。

78(1), 91-98 (2012)
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酵母 Saccharomyces cerevisiae 細胞表層におけるヒラメ成長ホルモン安定的発現と稚魚への経口投与による成長促進効果

Bin Liu(中国水産科学研究院),
Xiao-Nan Zang(中国海洋大学),
Xin-Fu Liu(中国水産科学研究院),
Xue-Cheng Zhang(中国海洋大学),
Ji-Lin Lei(中国水産科学研究院)

 コスト効率の良い方法で組換え成長ホルモン(GH)を生産・利用するために,酵母 Saccharomyces cerevisiae の細胞表層にヒラメ成長ホルモン(r-JfGH)を発現させ,その生物活性をヒラメ稚魚への酵母の経口投与により評価した。トランスジェニック酵母 y-E2 による r-JfGH の発現は 50 世代まで確認され,y-E2の総タンパク質 1 mg あたり 0.98 μg 以上の r-JfGH 発現が認められた。凍結乾燥酵母を飼料に 0.5 および 1 % 添加してヒラメ稚魚に 7 週間投与したところ成長が有意に向上し,対照区に比べて specific growth rate および飼料転換効率が 0.5% の投与で 23.07 および 21.57%,1 % の投与で 28.85 および 41.18% それぞれ増加した。
(文責 家戸敬太郎)

78(1), 99-107 (2012)
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ベタ Betta splendens 仔魚の初期餌料としての淡水ワムシ Brachionus angularis の利用

緒方悠香,黒倉 壽(東大院農)

 淡水ワムシ Brachionus angularis ラオス株,Paramecia sp.,アルテミア幼生を用いて,ベタ Betta splendens 仔魚に対する給餌効果を比較した。対照区として無給餌で飼育した仔魚は孵化後 12 日までに全個体が斃死したのに対し,各生物餌料を与えた仔魚は孵化後 18 日で生残率 97.5~100% と高い値を示した。初期にワムシ,その後アルテミア幼生を与えた実験区では,孵化後 18 日で体長 11.3±1.2 mm に成長し,孵化後 3 日目に比べて 282% の成長が見られた。ワムシのみを給餌した仔魚は孵化後 18 日で 158%(7.6±0.5 mm)の成長が見られた。また,Paramecia sp. を与えた仔魚は同期間に 54.3%(4.6±0.1 mm)しか成長しなかった。

78(1), 109-112 (2012)
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東京湾の砂浜域における離岸堤の設置がいそ波帯の魚類群集構造に及ぼす影響

三上翔太,中根幸則,佐野光彦(東大院農)

 砂浜海岸における離岸堤の設置がいそ波帯の魚類群集構造に及ぼす影響を明らかにするために,千葉県富津市の大貫海岸において,離岸堤の陸側に位置する区域,隣接する離岸堤の間に位置する区域,離岸堤のない区域の 3 箇所で 2009 年 9,12 月と 2010 年 3,6 月に調査を行った。物理環境(波高,濁度,水深)は前 2 者と後者の間で異なっていたが,魚類の種数や個体数密度,種組成,体長組成などには区域間で差が認められなかった。本調査地における離岸堤の存在は魚類群集構造にほとんど影響を及ぼしていないことが示唆された。

78(1), 113-121 (2012)
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日本および韓国沿岸の養殖漁場堆積物中の硫酸還元細菌の分布

近藤竜二,重松孝太朗,川原直城,
岡村嵩彦(福井県大),尹 良湖(全南大,韓国),
坂見知子(水研セ東北水研),
横山 寿(水研セ増養殖研),小泉善嗣(愛媛水研)

 2006 年から 2008 年にかけて,日本および韓国の魚貝類養殖場ならびに非養殖場の底泥堆積物を採取し,亜硫酸還元酵素の α サブユニットをコードしている遺伝子の一部を標的とした定量 PCR によって硫酸還元細菌数を見積もった。底泥堆積物中には,2.8×107~2.5×109 copies/g 乾泥の遺伝子が検出された。この遺伝子数と全細菌数には有意な関係は認められなかったが,有機物量ならびに酸揮発性硫化物量と有意な相関関係が認められた。この結果,海底堆積物中の硫酸還元細菌数は,有機物汚染によって影響を受けていることが示された。

78(1), 123-131 (2012)
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湿地帯に生息するメイオベントスのセルラーゼ活性

豊原治彦,朴 煐華,土屋佳奈子,
劉  文(京大院農)

 湿地帯におけるセルロース分解に関わるメイオベントスの役割を明らかにする目的で,琵琶瀬川と風連湖(北海道),知内川(滋賀県),加古川(兵庫県)の底泥に生息するメイオベントスのセルラーゼ活性を測定し,ほとんどのメイオベントスに活性を認めた。とくに風蓮湖,琵琶瀬川および知内川ではザイモグラフィー分析により,底泥とメイオベントスの活性バンドのサイズが一致したことから,これらの湿地帯においてはセルロース分解にメイオベントスが主要な役割を果たしていると考えられた。

78(1), 133-137 (2012)
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異なる硫化物濃度下にあるシチヨウシンカイヒバリガイにおける共生硫黄酸化細菌量の FISH 法による比較

藤ノ木 優,小糸智子(東大大気海洋研),
根本 卓,北田 貢(新江ノ島水族館),
山口陽子,兵藤 晋(東大大気海洋研),
沼波秀樹(東京家政学院大),宮崎信之,井上広滋(東大大気海洋研)

 深海の熱水噴出域に棲む多くの無脊椎動物の体内には硫黄酸化細菌が共生し,環境中の硫化水素を利用して合成した有機物を宿主に供給している。本研究では,シンカイヒバリガイ類の共生硫黄酸化細菌に特異的なプローブを設計し,蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法により共生菌量を比較する方法を確立した。環境硫化物濃度の異なる場所から採集した個体を比較すると,硫化物濃度の高い所に由来する個体の方が,また,硫化物添加/不添加水槽で飼育した個体を比較すると,硫化物添加区の方がそれぞれ共生菌量が有意に多かった。

78(1), 139-146 (2012)
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養殖ブリやけ肉における筋原線維タンパク質分解:筋原線維結合型 EDTA 感受性プロテアーゼの影響

梁  簫,吉田朝美(長大院生産科学),
長富 潔(長大水),王 亜軍(長大院生産科学),
曹 敏傑(集美大,中国),原 研治(長大水)

 飼育水温 29℃ において,苦悶死ブリは保存 2 時間後に,即殺死ブリは保存 4 時間後にやけ肉(L*≥55)が起こった。飼育水温 17℃ において,苦悶死ブリは保存 4 時間後にやけ肉が起こったが,即殺死ブリは 12 時間保存してもやけ肉は起こらなかった。やけ肉発生に伴い,ミオシン重鎖(MHC)は他の筋原線維タンパク質に比べ分解された。調製した筋原線維を用いて MHC の分解に関与する酵素を検討したところ,EDTA がその分解を抑制したことから,ブリでは筋原線維結合型 EDTA 感受性プロテアーゼ(MBESP)の存在が示唆された。MBESP の最適 pH は 5.0,最適温度は 50~60℃ であった。

78(1), 147-153 (2012)
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フィッシュミールおよびフィッシュソイリュブル中のヒスタミン含量とヒスタミン生成菌の単離

Yih-Mon Jaw (NKUHT), Yun-Yun Chen (NKMU),
Yi-Chen Lee (NPUST), Pei-Hsia Lee (NKMU),
Chii-Ming Jiang (NTTU),
Yung-Hsiang Tsai (NKMU,台湾)

 台湾に輸入されたミッシュミール 40 検体およびフィッシュソリュブル(FSC)5 検体に含まれるアミン類とヒスタミン生成菌を調べた。プトレッシン,カダベリン,ヒスタミン,およびチラミン含量の平均値は,トリプタミン,2-フェニルアミン,スペルミジンおよびスペルミンのそれらより高かった。4 検体のフィッシュミールおよび 1 検体の FSC から 20 mg/100 g を超えるヒスタミンが検出された。ヒスタミン生成菌として,Bacillus licheniformis, B. amyloliquefaciens,および B. subtilis が検出された。
(文責 大迫一史)

78(1), 155-162 (2012)
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スルメイカ筋原線維の加熱によるミオシン・サブフラグメント-1 およびロッド変性に対する Ca2+ の影響

阿部一世(北大院水),木下康宣(北海道工技セ),
今野久仁彦(北大院水)

 スルメイカ筋原線維の ATPase 失活は Ca2+ 存在下で著しく抑制された。Ca2+ 存在下での ATPase 失活より速い単量体ミオシンの減少は,速いロッドの変性で説明できた。一方,EDTA 中では,単量体ミオシンの減少は Rod 変性より速い S-1 の変性に対応した。同一温度での S-1,Rod 変性速度の比較から,Ca2+ による安定化は S-1 に限定されると推定した。これは Rod の加熱に伴うヘリックス崩壊に Ca2+ は影響を与えないことから確認した。それゆえ,イカミオシンの変性様式は Ca2+ による S-1 の大きな安定化により発現したと結論した。

78(1), 163-168 (2012)
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食用緑藻アオノリ属(Enteromorpha)からのタンパク質

Ganesan Kandasamy, Suresh K. Karuppiah, P. V. Subba Rao(インド塩・海洋研[CSMCRI],インド)

 3 種のアオノリ属(E. compressa, E. linza, E. tubulosa)からタンパク質を分離濃縮し,塩濃度と pH の変化に対する挙動を分析した。濃縮物中のタンパク質含量は,E. compressa, E. linza, E. tubulosa で,それぞれ,60.35±2.0%,53.83±0.70%,33.36±1.04% であった。いずれの濃縮物でも pH 4.0 で最小の窒素溶解度を示した。保水能力,油脂の包含力,乳化性,乳化液の安定性はいずれも pH と塩濃度の影響を受けた。本研究で得られた知見は,アオノリ属タンパク濃縮物の食品素材への有効利用の可能性を示すものであった。
(文責 宮下和夫)

78(1), 169-176 (2012)
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凍結貯蔵メバチ Thunnus obesus の解凍硬直の防止と肉質評価

今村伸太朗,鈴木道子(水研セ中央水研),
岡崎惠美子(海洋大),
村田裕子,木村メイコ,木宮 隆(水研セ中央水研),
平岡芳信(愛媛産技研)

 凍結メバチの解凍硬直は多量のドリップ流出や硬化によって商品価値を低下させる。-60℃ で保存された魚肉を解凍前に-7℃ で 1 日間もしくは-10℃ で 7 日間温度処理することによって解凍硬直が防止された。温度処理により ATP, NAD,グリコーゲン,クレアチンリン酸含量が低下し,NAD の急激な減少は硬直と強く相関した。一方,色調は温度と処理時間によって褐変化し,メトミオグロビン(met-Mb)生成率を反映した。met-Mb生成率は NADH 含量の減少に依存して上昇した。以上から-7℃ で 1 日間もしくは-10℃ で 7 日間の温度処理は解凍硬直と met-Mb 生成を防止した。

78(1), 177-185 (2012)
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インドネシアの伝統的魚醤バカサンの物理化学特性と官能学的特性の相関性の検討

シルヴァナ・ハリクドゥア(ボゴール農大,サンラトゥランギ大),
ハニー・ウィジャヤ,ディーディー・アダウィヤ(サンラトゥランギ大,インドネシア)

 インドネシアの伝統的魚醤であるバカサンの物理化学的特性と官能学的特性の相関性をピアソン相関分析と部分最小二乗回帰分析を用いて統計学的に調べた。その結果,二つのモデル,すなわち,塩分含量,アミノ態窒素,水分含量と塩味,旨味,苦味,苦い後味の間の相関性を示唆するモデル,および硫黄様風味,発酵過多チーズ様風味,甘味,アンモニア様風味と水分含量,塩分含量,総揮発性塩基含量との相関性を示唆するモデルが得られた。なお,今回テストしたバカサンは,いずれもインドネシアの微生物検査基準を満たすものであった。
(文責 豊原治彦)

78(1), 187-195 (2012)
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ブリ近縁種及び類似魚種の種判別法

井口 潤,高嶋康晴,浪越充司(消費技セ),
山下倫明(水研セ中央水研)

 ブリ属 4 種(ブリ,ヒラマサ,カンパチ,ヒレナガカンパチ)のミトコンドリア DNA の全塩基配列及び Seriolella 属 3 種(ブルーワレフー,ホワイトワレフー,シルバーワレフー),メダイ及びスギの計 5 種のミトコンドリア DNA チトクロム b 遺伝子の塩基配列を決定した。この解析結果から,ブリ属 4 種,Seriolella 属 3 種・メダイ及びスギの 3 種類の長さに増幅する種特異的なプライマーを作製した。HinfI 及び FspBI による制限酵素切断型によって,これら 9 種の判別が可能であった。

78(1), 197-206 (2012)
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