Fisheries Science 掲載報文要旨

珠江に建設された常州ダムの上流・下流域における魚群の密度,空間分布,行動に関する音響調査

Xichang Tan(珠江水産研,中国),
Myounghee Kang(Myriax Ltd.,豪州),
Jiangping Tao(中国水生態系研),
Xinhui Li(珠江水産研),
Daoming Huang(中国水生態系研,中国)

 中国珠江の常州ダムの排水路開閉に伴う魚群の密度,空間分布,行動に関する音響調査を行った。2010 年 6 月 24 日に排水路が開かれたとき,上流域には平均密度 0.22 個体/m3 の魚群が観察されたが,翌日に閉鎖されると密度は 0.007 個体/m3 となった。排水路を開く前の 2010 年 5 月 24 日の下流域の密度は 0.28 個体/m3,閉鎖後の 6 月 26 日は 0.08 個体/m3 であった。6 月 24 日に上流域で観察された魚群は,6 月 25 日の魚群と比べて遊泳速力が大きく,分布水深は様々であった。下流域で 6 月 26 日に観察された魚群は 5 月 24 日の魚群に比べて活発ではなかった。排水路を開くことで多くの魚類が上流域に移動したことが示唆された。
(文責: 松下吉樹)

77(6), 891-901 (2011)
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現場と実験室におけるキハダ稚魚のターゲットストレングスの測定

Hsueh-Jung Lu(台湾海洋大,台湾),
Myounghee Kang(Myriax Ltd.,豪州),
Hsing-Han Huang(台湾海洋大),
Chi-Chang Lai,Long-Jin Wu(台湾水研,台湾)

 浮魚礁に集まるキハダの体長と現存量を推定するために,現場と実験室でターゲットストレングス(TS, dB re 1 m2)を測定した。実験室で 200 kHz の魚群探知機と 2 台のカメラを同期させて,遊泳するキハダの TS を測定した結果,TS は実験個体の傾斜角が-15から-20°の範囲で最大となり,尾叉長(FL, cm)との関係は TS=27.06 log(FL) - 85.04 で表せた。また浮袋の容積(V, ml)は,V=0.000213FL3 で表せた。現場での測定では,キハダの傾斜角は-10から15°の間にあり,漁獲結果から得た尾叉長を上記の実験式に当てはめた結果は現場測定の結果と良く一致した。
(文責: 松下吉樹)

77(6), 903-913 (2011)
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西表島におけるノコギリガザミ類の漁業生物学:種組成,漁獲,成長および成熟サイズ

Cynthia Yuri Ogawa,浜崎活幸(海洋大),
團 重樹(水研セ瀬水研),北田修一(海洋大)

 2001 年 9 月~2005 年 8 月に西表島でノコギリガザミ類の漁獲調査を実施した。また,成長を把握するために人工種苗の放流再捕調査を実施した。アミメノコギリガザミとアカテノコギリガザミの 2 種が漁獲され,前者が 95% 以上を占めた。漁獲加入は 12・1 月~4・5 月にみられ,夏期には高い CPUE と高い成長率を示した。アミメノコギリガザミの外部形態から推察した 50% 成熟甲幅は,雌 132.4 mm,雄 150.7 mm であった。未成熟個体が漁獲物の約半数に達したことから,アミメノコギリガザミの持続的利用のためには,50% 成熟サイズに基づいた漁業規制が必要である。

77(6), 915-927 (2011)
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クルマエビのヒートショックタンパク質 40, 70 および 90 について

トリーチャダ ダンワッタナヌソーン,
フェルナンド ファグタオ,設楽愛子,
近藤秀裕,青木 宙,野崎玲子,廣野育生(海洋大)

 クルマエビのヒートショックタンパク質 40, 70 および 90 (MjHSP40, 70, 90)の cDNA をクローン化し構造解析を行った。これらの分子は HSP ファミリータンパク質としての特徴的な構造を保存していた。これらの遺伝子の内,HSP90 遺伝子の発現は 32℃ にて誘導された。さらに,クルマエビ類の病原ウイルスであるホワイトスポット病ウイルスの感染により,免疫関連臓器にてこれら遺伝子の発現上昇が見られた。

77(6), 929-937 (2011)
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野生サクラマスの回収率に対するスモルトサイズと降河時期の効果

宮腰靖之(道さけます内水試),齊藤誠一(北大院水)

 北日本を中心に分布するサクラマス Oncorhynchus masou は,増殖を目的として研究が盛んに行われてきたが野生魚の生残率に関する知見は少ない。野生のサクラマスの海洋での生残率に対するスモルトサイズと降河時期の効果を調べるため,過去に行われた標識放流のデータを解析した。その結果,河川下流域での標識放流時期が回収率に対して有意であり,降河時期はサクラマスの海洋での生残率を左右する要因であることが示唆された。一方,スモルトサイズは回収率に正の効果を持つと推定されたが有意ではなかった。

77(6), 939-944 (2011)
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ミトコンドリア DNA とマイクロサテライト DNA 分析による韓国沿岸域のマダラ Gadus macrocephalus の遺伝的変異と集団構造

郭 又皙(慶尚大,韓国),
中山耕至(京大フィールド研セ)

 韓国沿岸域におけるマダラの遺伝的集団構造を調べるため,産卵場と想定される 5 ヶ所(西海岸 Boryeong,南海岸 Jinhae,東海岸 Bangeojin, Jookbyun, Jumunjin)から産卵期の個体を採集し,ミトコンドリア DNA の調節領域(584 bp)とマイクロサテライト DNA5 座を用いた分析を行った。両分析の結果から,韓国沿岸には少なくとも 3 つの遺伝的に異なる集団(Boryeong 群,Jinhae+Bangeojin 群,Jukbyeon 群)が存在することが示され,また Jumunjin には独立した産卵群は存在しないことが示唆された。

77(6), 945-952 (2011)
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タコ型生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(oct-GnRH)の時間分解蛍光免疫測定法の確立

天野勝文,阿見弥典子,横山雄彦,
高草木葉子(北里大海洋),
南方宏之(サントリー生科財団生有研)

 タコ型生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(oct-GnRH)の機能を解明する基礎として,時間分解蛍光免疫測定法を確立した。oct-GnRH 濃度 0.31 ng/ml~40 ng/ml で標準曲線が得られた。アッセイ内・アッセイ間変動係数および最小検出量は 6.8% (n=10), 2.7% (n=5), 4.9 pg/well であった。ヤリイカ,ケンサキイカ,ミズダコの脳抽出物の競合曲線は標準曲線と平行になった。これら 3 種の脳抽出物を HPLC に付した結果,oct-GnRH の保持時間と一致するフラクションに oct-GnRH が検出された。以上より,本測定系が頭足類の oct-GnRH の測定に有効であることが示唆された。

77(6), 953-959 (2011)
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マガキ餌料としての微小動物プラクトン:消化管内での季節的変動と餌料としての有効性

神山孝史(水研セ瀬水研)

 宮城県石巻湾のマガキ消化管内に出現した微小動物プランクトンの季節的変動を調べた。殻をもった原生動物の出現量は周辺海水中の各出現密度と有意な相関を示したが,後生動物については有意な相関が認められなかった。室内実験において安定同位体で標識した繊毛虫をマガキが捕食した後にその体内の同位体比が高くなったことから,マガキが繊毛虫の栄養素を体内に同化することが確認された。以上から微小動物プランクトンはマガキの餌料として貢献し,特に,植物プランクトン等他の餌料が少ない時期に重要になると考えられた。

77(6), 961-974 (2011)
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日本列島太平洋岸におけるクロムツ成魚および幼魚個体群の遺伝的均一性

糸井史朗,小高純平,野口俊輔(日大生物資源),
野田 勉(水研セ宮古),
湯浅航平,村木俊彦,田辺太一,髙井則之,
吉原喜好,杉田治男(日大生物資源)

 岩手県沖で定置網およびトローリングにより採捕したムツ属幼魚を対象に遺伝子分析を行い,クロムツ幼魚を選別した。これらクロムツ幼魚および伊豆諸島周辺海域で採捕されたクロムツ成魚について,チトクローム b 遺伝子配列をもとに両個体群の遺伝的集団構造について調べた。その結果,両個体群間に遺伝的な有意差は認められず,均一な個体群であることが明らかとなった。本研究の結果は,クロムツが幼魚期を岩手県沖ですごした後深場に移動し,その成長に伴って伊豆諸島周辺海域へと大規模に回遊することを示唆する。

77(6), 975-981 (2011)
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西部北太平洋で採集したニホンウナギ卵の遺伝的種査定と形態的特徴

吉永龍起(北里大海洋),
Michael J Miller,横内一樹,大竹二雄,木村伸吾,
青山 潤,渡邊 俊(東大大気海洋研),
篠田 章(東京医科大),
大矢真知子,宮崎幸恵,銭本 慧,須藤竜介,高橋鉄哉,
安 孝珍,眞鍋諒太朗,萩原聖士,森岡裕詞,
板倉 光,町田真通(東大大気海洋研),
伴 和幸(東海大海洋),塩崎麻由(東大大気海洋研),
阿井文瓶(日本さかなの会),塚本勝巳(東大大気海洋研)

 西部北太平洋で採集したニホンウナギの天然卵を遺伝的に種査定した。2009 年 5 月に西マリアナ海嶺付近で計 43 個の魚卵を採集した。一部を種特異的 PCR で解析したところ,15 個が陽性を示した。航海後に 16s rRNA 遺伝子の塩基配列を決定し,計 31 個がニホンウナギであることが分かった。その他は中深層に生息するノコバウナギ科とクビナガアナゴ科のものであった。ニホンウナギの卵径(1.6 mm)は同所的に産卵するノコバウナギのそれ(2.1 mm)よりも小さく,形態による種査定に有用な形質と考えられた。

77(6), 983-992 (2011)
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クロマグロ幼魚の相関ランダムウォーク解析

門田 実,鳥澤眞介,高木 力(近大農),
米山和良(鹿大水),福田漠生(近大農)

 クロマグロ幼魚の遊泳パターンを確率過程と捉え,運動予測を行うための確率モデルを構築する事が本論文の目的である。実験室に設置された水槽内におけるクロマグロ幼魚の遊泳行動をビデオカメラを用いて観察し,その遊泳軌跡から毎秒の首振角度を算出した。首振角度の解析結はクロマグロ幼魚が 78% の確率で 0°から22.5°,10% の確率で 22.5°から 45°の間で首振を行う事を示した。これらの結果に基づき,首振角を一次マルコフ過程と仮定し,幼魚の行動パターンを予測する相関ランダムウォークモデルを構築する事に成功した。

77(6), 993-998 (2011)
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桿状ウイルスに感染した日本海産ズワイガニの血リンパ白濁症

今  攸(元福井水試),一色 正(三重大院生資),
宮台俊明(福井県立大),本間義治(新潟大)

 血リンパが乳白色化し,外骨格が黄色ないし象牙色を呈したズワイガニが日本海から採集された。病ガニの病理組織学的所見は,核膨化を伴った間質結合織の変性であった。電顕観察では,膨化核内に WSSV や IBVs に類似する桿状ウイルスが認められた。しかし,PCR 検査,標的組織および疾病流行水温などにより,WSSV や IBVs とは区別された。本報告はズワイガニ属カニ類に感染するウイルスの初記載であり,便宜的に本ウイルスを Chionoecetes opilio bacilliform virus (CoBV) と呼称したい。

77(6), 999-1007 (2011)
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アスコルビン酸の長期高濃度投与によるニジマスへの効果

石川孝典(栃木水試),
間野伸宏,中西照幸,廣瀬一美(日大生物資源)

 アスコルビン酸(AsA)の長期高濃度投与が,ニジマスに及ぼす影響について調べた。AsA が 0, 100, 1000, 5000 mg/kg となるように添加した市販餌料を 100 日間摂餌させた結果,添加濃度の違いにより成長への影響は確認されなかった。一方,5000 mg/kg 投与区の腎臓貪食細胞の NBT 活性は有意に向上し,高水温飼育試験でも有意な死亡低減効果が認められた。これらの結果は,高濃度の AsA を長期間投与してもニジマスに悪影響はなく,生体防御能やストレス耐性向上効果も期待できると推察された。

77(6), 1009-1014 (2011)
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消毒したワムシ複相単性生殖卵を用いたヒラメ止水式飼育の有効性

友田 努(水研セ能登島セ),
團 重樹(水研セ玉野セ),中村猛利(東レテクノ)

 グルタールアルデヒドで消毒したワムシ単性生殖卵(消毒卵)を用いて,ヒラメの止水式飼育(実験区)を行った。仔魚の成長と生残は標準的な流水式飼育(対照区)と比べて遜色がなかった。実験区では飼育水中ワムシの n-3 HUFA 含量が対照区で給餌する栄養強化ワムシよりも高くなり,ヒラメ仔魚の脂肪酸組成もそれを反映した。飼育水中ワムシの生菌数は栄養強化ワムシよりも低く,出現細菌群(属レベル)も少なかった。量産規模で消毒卵のみを用いた止水式飼育を実証し,かつ栄養学・細菌学的見地からその有効性がうかがわれた。

77(6), 1015-1031 (2011)
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ベトナム沿岸域におけるアカガイ属(軟体動物:二枚貝綱)中の微量元素濃度,特に地域間の比較及び健康リスク評価について

Nguyen Phuc Cam Tu(愛媛大農),
Nguyen Ngoc Ha(愛媛大沿環研),
阿草哲郎(島根大医・愛媛大沿環研),
池本徳孝(愛媛大農),
Bui Cach Tuyen(Nong Lam 大),
田辺信介(愛媛大沿環研),竹内一郎(愛媛大農)

 ベトナムの中部沿岸域(CCZ),南部経済重要地域(SKEZ)及びメコンデルタ(MRD)から採集したアカガイ属二枚貝中の 21 種の微量元素濃度を分析した。As, Sr, Mo, Sn や Pb は CCZ から採集した試料が最も濃度が高く,Hg は MRD が最も高い濃度を示した。これらの要因として,CCZ では造船業が,MRD では農業が主要産業であることが関連すると推察された。本研究の二枚貝中の微量元素濃度は欧州委員会(EC)や米国食品医薬品局等の食品の安全基準以下であったが,一部の試料は Cd が EC の基準以上であった。また,本種を摂取する地域住民に対して無機 As による発がんのリスクが比較的高いことが推定された。

77(6), 1033-1043 (2011)
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ラットにおけるプロタミン塩酸塩の脂質代謝に及ぼす効果

髙橋義宣,小西達也,江成宏之((株)マルハニチロ中央研究所),
リ ホンシク,リ ウォンキョン,リ ヨンソン,朴 炯國((株) LG 生活健康技術院,韓国),
山本 茂(十文字学園女子大)

 シロサケ白子由来のプロタミン塩酸塩はリパーゼ阻害活性を示し,ヒト臨床試験により高脂肪食負荷時における血中中性脂肪上昇抑制効果を確認している。本研究では,ラットを用いて脂質代謝に及ぼす効果を検証した。単回経口投与時のコーン油負荷試験で中性脂肪吸収抑制効果を確認し,さらに高脂肪食負荷時の 7 週間の強制経口投与試験で,糞便中への脂質排出の増加,体重,肝臓,腹腔内脂肪組織量の増加抑制を確認した。これらはプロタミンが胆汁と難消化性の複合体を形成してミセル形成を阻害し,脂質の吸収が抑制されるためと考えられた。

77(6), 1045-1052 (2011)
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重合状態におけるコイ骨格筋アクチンの熱安定性

大井淳史,岡垣 壮(三重大院生資)

 重合の喪失を指標としてコイ F-アクチンの熱安定性を調べたところ,対照としたニワトリ F-アクチンに比して変性速度が 10 倍以上大きいことが明らかになった。この変性の速さはトロポミオシンの結合によって,活性化エネルギーを変えることなく抑制され,フィラメントを形成するアクチン分子間の結合の強さが熱安定性に影響することが示唆された。また,蛍光消光法を用いてフィラメント上でのヌクレオチド結合領域を比較したところ,コイ F-アクチンにおいては,より溶媒と接触しやすい開いた構造をとることが明らかになった。

77(6), 1053-1059 (2011)
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スルメイカ外套膜筋から調製した可食性フィルムの機械的特性に及ぼす可塑剤およびその濃度の影響

Akasith Leerahawong(海洋大),
田中宗彦(国学院栃木短大),
岡崎恵美子,大迫一史(海洋大)

 スルメイカ外套膜筋から調製した可食性フィルムの機械的特性に及ぼす可塑剤(glycerol, sorbitol, glucose および fructose)およびその濃度の影響ついて検討した。可塑剤の種類に関わらず,これらを添加することによりフィルムの引っ張り強度は低下し,引っ張り伸び率は上昇した。水蒸気透過性は glycerol および sorbitol を添加することにより上昇したが,glucose および fructose を添加することにより低下した。可塑剤のうち,glycerol を添加したフィルムが最も高い可塑性を示したが,透明度は低い値を示した。

77(6), 1061-1068 (2011)
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食用褐藻マコンブ Laminaria japonica のタンパク質糖化およびラット水晶体アルドース還元酵素に対する阻害活性

You Kyung Son,Seong Eun Jin,Hyeung-Rak Kim,
Hee Chul Woo(釜慶大,韓国),
Hyun Ah Jung(全北大,韓国),
Jae Sue Choi(釜慶大,韓国)

 糖尿病合併症の発症には,アルドース還元酵素(AR)が介するポリオール代謝経路の活性化と,それにより生成される終末糖化産物(AGE)が関係している。マコンブのメタノール抽出物について,ラット水晶体 AR (RLAR)および AGE 生成の阻害効果を調べたところ,ポルフィリン誘導体のフェオフォルバイド a に強い阻害活性が認められたが,フェオフィチン a は同等な活性を示さなかった。ポルフィリン誘導体の構造と阻害活性との関係を調べたところ,ポルフィリン C-172 位のフィチル基が脱離しカルボキシル基となっていることが,RLAR および AGE 生成の阻害効果に重要であった。
(文責: 柿沼 誠)

77(6), 1069-1079 (2011)
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コレステロール負荷食マウスにおける食餌性ナマコ由来グルコシルセラミドが血漿および肝臓脂質に与える影響

Zakir Hossain(京大院農,バングラディシュ農大),
菅原達也(京大院農),間 和彦(日本製粉(株)),
平田 孝(京大院農)

 ナマコ由来グルコシルセラミドの摂取が血漿および肝臓脂質に与える影響について評価した。ICR マウスを 4 種類の食餌(コントロール食,グルコシルセラミド食,高コレステロール食,高コレステロール+グルコシルセラミド食)で飼育した。食餌性グルコシルセラミドは総コレステロールを有意に低下させた。肝臓の LDL 受容体の発現はグルコシルセラミド摂取で有意に増加し,CYP7A1 の発現は有意に低下した。肝臓のコレステロール代謝に関わる遺伝子の変動はコレステロール低下作用によることが示唆された。

77(6), 1081-1085 (2011)
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