Fisheries Science 掲載報文要旨

アキアミ属 Acetes intermedius Omori 1995 卵の孵化に及ぼす水温と塩分の影響

陳 勇輝,陳 一鳴(中山大)

 浮遊性甲殻類アキアミ属の一種 Acetes intermedius 卵の孵化に及ぼす水温と塩分の影響を,4 段階の水温区(15~30℃ : 5℃ 区分)と 8 段階の塩分区(0~35 ppt : 5 ppt 区分)の組み合わせの下に調べた。水温 15℃ ではどの塩分区においても,また塩分 0~10 ppt ではどの水温区においても孵化は見られなかった。塩分 25 ppt 以上ではふ化率は 90% 前後であった。孵化に要する時間は水温によって大きく異なり,20, 25, 30℃ 下でそれぞれ 29, 14, 10 時間であった。これらの結果は,塩分 25~30 ppt 前後の河口域を産卵場とする台湾南西海域では,孵化に要する時間は季節的に変化することを示している。
65(6), 811-816(1999)
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干潟の二枚貝類個体群の年変動

宮脇 大,関口秀夫(三重大生物資源)

 伊勢湾西岸の志登茂川と安濃川の河口干潟における 1990 年から 1996 年の 7 年間の採集試料をもとに,干潟に多産する二枚貝類 3 種(アサリ,ホトトギスガイ,イソシジミ)の浮遊幼生,着底稚貝,稚貝と大型個体の密度の長期変動を研究した。これら 3 種の各成長段階の密度の季節・年変動は著しく,浮遊幼生の密度の季節変動は他の成長段階の季節変動と対応していたが,浮遊幼生の年変動は他の成長段階の年変動とは対応していなかった。しかし,浮遊幼生の大発生は大型個体の高い密度の出現に寄与した。
65(6), 817-829(1999)
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アユ種苗生産過程における給餌量と現存量変化の関係

滝澤 敬(水大校),高見東洋,大橋 裕,村田作男 (山口外海栽培セ)

 種苗生産過程におけるアユ稚仔魚の成長量とワムシ・アルテミア・配合餌料の給餌量との関係について重回帰式による解析を行い,餌料効率について考察した。重回帰式は 91 の全事例中,72 例で有効であった。また配合餌料の回帰係数が,最も安定した値をしめした。各餌料ごとの回帰係数と成長量との相関関係を調べたところ,配合餌料の影響が最も大きくワムシやアルテミアの給餌量には影響されないことが推察された。またワムシはアルテミアや配合餌料に比べて餌料効率が著しく低いことが示唆された。
65(6), 830-834(1999)
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東シナ海産キントキダイの生殖特性

沖 大樹,多部田修(長大海生研)

 以西底曳網漁業により,1995 年 5 月~1998 年 2 月に漁獲されたキントキダイ 2,863個体を用い,生殖腺の発達状態を調べ,以下の結果を得た。生殖腺熟度指数の月変化より産卵盛期は 5, 6 月と結論した。発達段階別の卵巣卵の卵径組成,組織学的観察より,卵巣の発達様式は卵群同期発達型で,2 回以上の産卵を行うことが示唆された。成熟体長は満 2 歳の 190 mmFL で,成熟卵数は 190 mmFL で約 7 万,満 3 歳の 250 mmFL で約 23 万と推定された。
65(6), 835-838(1999)
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イソシジミ水管の組織構造と水管伸長時の状態の変化

佐々木浩一,工藤 真,伊藤絹子(東北大院農)

 イソシジミの入水管と出水管は,ほぼ同じ組織配列を持つ。環状筋 4 層と縦走筋 6 層が同心円的に並び,筋繊維は結合組織の網目構造の中に緩く保持されている。放射状筋は水管壁を放射状の小区画に区分している。入水管には 6 本,出水管には 8 本の縦走神経索があり,水管先端の触手に達する。伸長した水管では,縦走筋の筋繊維は,それ自体が伸長するとともに,筋繊維同士が縦方向にずれて組織の密度が著しく低下し,その隙間を血リンパが満たした状態になる。水管の大きな伸長性はこのような筋組織の変形に依存するが,同時にこれが水管の組織を,イシガレイ稚魚による食いつきのような小さな力でも容易に切断されるものにしている。
65(6), 839-843(1999)
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性成熟に伴うニジマス抗体産生細胞の変動

侯亜義,鈴木 譲,会田勝美(東大農)

 ニジマスの皮膚,頭腎,脾臓,抹消血における免疫グロブリン(IgM) 産生細胞数,および血漿,体表粘液中の IgM 量の性成熟に伴う変化を調べた。雌雄とも産卵期には白血球数の減少と共に,その中に占める IgM 産生細胞の比率の低下が認められた。この免疫抑制は雌では血漿中のコルチゾール(F),テストステロン(T),エストラジオール 17β の上昇と,雄では F, T, 11-ケトテストステロンの上昇と一致していた。組織別では,皮膚における IgM 産生細胞数と体表粘液中 IgM 量の低下が顕著だった。性成熟に伴う免疫抑制が広く体内で起こっていることが示された。
65(6), 844-849(1999)
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ニジマスリンパ球の抗体産生能におよぼすステロイドホルモンの影響

侯 亜義,鈴木 譲,会田勝美(東大農)

 未成熟ニジマスの抹消血,頭腎,脾臓および皮膚から分離したリンパ球の in vitro における IgM 産生能,TNP-LPS に対する特異抗体産生能におよぼすステロイドホルモンの影響を調べた。性成熟時に増加するコルチゾール,テストステロン,エストラジオール 17β, 11-ケトテストステロンは,いずれも顕著な抗体産生細胞数の低下を引き起こした。頭腎,脾臓のリンパ球については IgM 分泌量の低下も合わせて観察された。TNP-LPS は胸腺非依存性抗原として知られており,成熟時の抗体産生能の低下が,B 細胞に対するステロイドの直接作用による可能性が示された。
65(6), 850-855(1999)
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大槌湾砂浜域砕波帯に生息する潮間帯潜砂性フクロエビ類の魚類餌料としての重要性

高橋一生,廣瀬太郎,川口弘一(東大海洋研)

 三陸海岸砂浜域砕波帯において卓越するフクロエビ類(甲殻類)に対する魚類の捕食を調査した。最もよく捕食されていたのはコクボフクロアミで,とくに夜間クロソイ,カタクチイワシ,ヒラメ,オキタナゴ,メジナによく捕食されていた。ナミノリソコエビは昼間クサフグ,オキタナゴ,トビヌメリによく捕食されていた。本研究の結果から砂浜域波打際に生息するフクロエビ類が砕波帯に出現する魚類の餌料の大部分を占めることが明らかとなり,この領域が沿岸性魚類の餌場として重要である可能性が示唆された。
65(6), 856-864(1999)
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LHRHa およびピモザイド投与されたアジアナマズの卵母細胞と血中ステロイドホルモン量の変化に及ぼす季節の効果

J. D. Tan-Fermin, C. L. Marte (SEAFDEC/AQD),上田 宏,足立伸次,山内晧平(北大水)

 アジアナマズ Clarias macrocephalus の天然での産卵盛期は 8 月で,非産卵期は 2 月である。しかし,飼育魚は自然産卵しないため,雌では周年卵巣が発達している。そこで,2 月と 8 月に飼育雌魚に対して生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログおよびピモザイドを投与し,卵母細胞と血中ステロイドホルモン量の経時的変化に季節差があるかどうか調べた。その結果,両時期とも,ホルモン処理後12時間で卵成熟,16 時間で排卵が誘導された。しかし,ホルモン処理魚の血中ステロイドホルモン量は 8 月の個体の方が高値で推移した。
65(6), 865-870(1999)
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合成ペプチドを用いたニホンウナギ GTH, TSH 特異抗体

池内俊貴,長江真樹,Pieter Mark Lokman,足立伸次,山内晧平(北大水)

 ニホンウナギの生殖腺刺激ホルモン(GTH) の蛋白レベルでの動態を調べるために必要な特異抗体の作製は,脳下垂体中の GTH が微量なため,困難である。そこで,合成ペプチドを抗原として GTH IIβ,甲状腺刺激ホルモン(TSH) β および GTH/TSHα 抗体を作製した。得られた抗体の特異性をウェスタンブロットにより検討したところ,それぞれ対応する分子量の蛋白のみを認識した。また,免疫組織化学染色の結果,TSHβ および GTH IIβ 抗体陽性細胞と異なる α 抗体陽性細胞が多数観察された。これらは,その数と,初期の卵黄形成の進行と相関があることから,GTH I 産生細胞であると考えられた。以上の結果より,解析に有効な抗体が得られた。
65(6), 871-877(1999)
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コビレゴンドウにおける性成熟と血中及び精巣中テストステロン濃度の関係

喜多祥一,吉岡 基,柏木正章 (三重大生物資源)

 日本の太平洋沿岸で捕獲された南方系のコビレゴンドウから,精巣と血液を採取し,EIA 法によりテストステロン(T) 濃度を測定した。血中及び精巣中 T 濃度は,それぞれ 0.27~22.0 ng/ml, 14.4~287.1 ng/g の範囲にあり,精巣中 T 濃度は,血中濃度より 5~180 倍以上高かった。性成熟に達するまで,血中及び精巣中 T 濃度は,精巣重量と精細管直径との間に有意な正の相関を示した。しかし,性成熟後は有意な相関が見られず,成熟個体の生殖細胞密度との間にも明瞭な相関は見られなかった。
65(6), 878-883(1999)
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マツカワの性分化に及ぼす飼育水温の影響

後藤理恵(北大水),森 立成,川真田憲治(道栽培セ),松原孝博(北水研),水野伸也,足立伸次,山内晧平(北大水)

 異体類では,稚魚期の飼育水温が性比に影響を与えることが知られている。そこで,マツカワの性決定に及ぼす飼育水温の影響を調べた。その結果,全長 10 mm から昇温し,20 mm 以降 18℃ で飼育するとほとんどの個体が雄となり,形態的性分化開始(全長 30-40 mm) までを 14℃ で飼育すると性比は 1 : 1 となることが明らかとなった。このことより,本種の性決定は水温の影響を受けることが示された。
65(6), 884-887(1999)
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アユ 3 標本群における遺伝的分化の AFLP 分析

関 伸吾(高知大農),Jeremy J. Agresti, G. A. E. Gall (University of California, Davis),
谷口順彦(高知大農),Bernie May (University of California, Davis; Cornell University)

 アユ 3 標本群,両側回遊型(AM),琵琶湖産陸封型(LL),奄美産リュウキュウアユ(RK) について蛍光標識を用い AFLP 法による分析を行った。19 のプライマーセットを用い,全体として 745 の DNA 断片を得た。多型的遺伝子座率および平均ヘテロ接合体率は AM で 0.550 と 0.107, LL で 0.521 と 0.095, RK で 0.135 と 0.022 となり,RK は他の 2 標本群に比べ遺伝変異保有量が低かった。Nei の遺伝的距離は AM ・ LL 間で 0.017, AM ・ RK 間で 0.410, LL ・ RK 間で 0.414 であった。これらの結果は遺伝的多様性および遺伝的分化を評価する手法としての AFLP 法の有用性を示唆していた。

65(6), 888-892(1999)
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クロダイ飼料へのカルシウム剤補足の必要性

M. Amzad Hossain,古市政幸(九大農)

 環境水および第 3 リン酸カルシウム(TCP) 中のカルシウム(Ca) の利用性を調べるために,クロダイ幼魚(体重 8 g) を乳酸 Ca 添加のカゼイン飼料(対照区)と Ca 剤無添加飼料および TCP 添加飼料で 10 週間飼育した。Ca 無添加飼料区および TCP 添加飼料区の魚は対照区の魚と同程度の成長,飼料効率を示し,脊椎骨の無機成分組成にも大きな違いはなかった。これらの結果から,クロダイは環境水 Ca を良く取り込むことが示唆された。また,飼料 TCP はクロダイの成長と脊椎骨の無機成分に影響しないと考えられた。
65(6), 893-897(1999)
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アメマスおよびオショロコマの産卵における堰堤の影響

斎藤寿彦,中野 繁(北大苫演)

 移植放流されたアメマスとオショロコマの産卵活動への堰堤の影響を比較した。やなによる調査では,堰堤を遡上する親魚は殆ど確認されなかった。アメマスの産卵は堰堤の上-下流で観察されたが,上流の親魚は河川型であり,下流の親魚には降湖型が含まれていた。また,性比は上流では雄へ偏っていたが,下流ではほぼ等しかった。オショロコマの産卵は堰堤の上流に限って観察され,その性比は 1 : 1 に等しかった。アメマスは降海性を有する系統だったがオショロコマは河川型であり,その系統の違いが異なる反応をもたらしたと考えた。
65(6), 898-903(1999)
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ペルー海域において船上人工受精により得たアメリカオオアカイカの稚仔

谷津明彦(中央水研),Ricardo Tafur ・ Carol Maravi (ペルー海洋研)

 アメリカオオアカイカの幼生の形態と成長に関する知見を得ることを目的として,1997 年 11 月にペルー海域から得た成熟交接雌 4 個体(外套長 320~407 mm) を用いて船上人工受精を行った。水温 18℃ に保った約 3600 個の卵から 167 個体がふ化した。近縁種であるアカイカ輸卵管腺は本種の囲卵腔形成に有効であった。卵は受精後 6~9 日目にふ化し,稚仔はふ化後 10 日間生存したが,摂餌は認められなかった。外套長はふ化時に 0.9~1.3 mm (平均 1.1 mm) で,7 日目には 1.1~1.5 mm (平均 1.4 mm) に成長した。融合触腕の吸盤の大きさに分化は認めれなかった。平衡石の長径はふ化時の約 40 μm から 4 日目には約 60 μm となり,10 日目まで 63~67 μm に留まった。平衡石に明瞭な日周輪は見られなかった。
65(6), 904-908(1999)
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1H-NMR スペクトル法で測定したアルギン酸塩のグルロン酸含量と重量平均分子量との関係

篠原雅史,加茂野秀樹,青山貴子(共成製薬),坂東英雄(北海道薬科大),西澤 信(共成製薬)

 1H-NMR スペクトル法により得られたアルギン酸塩のグルロン酸(G) 含量(G%) の信頼性を評価する目的で,重量平均分子量(WAMW) 150-200 k のアルギン酸ナトリウムをオートクレーブ中で加熱して調製した WAMW 15 k, 30 k, 45 k, 60 k および 100 k の部分加水分解物について,G% と WAMW の関係を調べた。1H-NMR 法で測定した部分加水分解物の G% は,アルギン酸塩の G% が 70% 以下の場合には WAMW に依存しないことがわかった。オートクレブで部分加水分解した試料を用い,1H-NMR 法でアルギン酸塩の G% を測定する方法は,簡便で信頼性が高いと考えられる。
65(6), 909-913(1999)
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酸処理オゴノリ中ロイコトリエン B4 の高まりについて

佐二木順子(千葉衛研)

 オゴノリ(Gracilaria asiatica) 中のエイコサノイド濃度に及ぼす熱や酸処理の影響を調べた。4 % の酢酸(食酢と同等の濃度)を加え加熱した場合,オゴノリ中のロイコトリエン(LT)B4 とプロスタグランディン(PG)A2 は増加したが,PGE2 は減少した。標品 LTB4 およびオゴノリを酸処理した際,HPLC クロマトグラムに現れた 2 つの LTB4 異性体は,6-trans LTB4 および 6-trans-12-epi-LTB4 と同定された。抽出オゴノリを加熱後 4% の酢酸を添加し,37℃, pH 2(胃酸と同等の pH) に 30分放置したところ,LTB4 濃度が増加した。また,オゴノリ抽出物では LTB4 と同様なマウス多核白血球の細胞遊走能が観察された。LTB4 50 μg を含むオゴノリ抽出物を経口投与したマウスで下痢が認められたが,致死毒性はなかった。
65(6), 914-918(1999)
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クルマエビプロフェノール酸化酵素の精製とその性質

足立亨介,平田 孝,永井克宜,藤澤 諭,木下政人,坂口守彦(京大院農)

 クルマエビ血球細胞溶解液から,ブルーセファロース,DEAE セルロース,ヒドロキシアパタイト,ブチルセファロースカラムクロマトグラフィーを用いてプロフェノール酸化酵素を精製した。本酵素前駆体は分子量 72000, 78000 のサブユニット構造をもつヘテロテトラマーであり,トリプシン,SDS,メタノールによってフェノール酸化酵素へと活性化した。活性化した本酵素の至適 pH は 9 前後,至適温度は 37℃ で,50 mM のカルシウムイオン存在下で最も活性が高くなることが分かった。また PO はモノフェノール類,オルトジフェノール類からドーパクロムを生成することから,モノフェノール類の水酸化反応とオルトジフェノール類の脱プロトン反応の連続した 2 段階の反応を触媒する酵素であることが示唆された。
65(6), 919-925(1999)
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クルマエビ血球細胞におけるプロフェノール酸化酵素活性化に及ぼす β-1,3 グルカンの影響

足立亨介,平田 孝,藤澤 諭,永井克宜,坂口守彦(京大院農)

 β-1,3 グルカンであるラミナリンは血球細胞溶解液(HLS) 中のプロフェノール酸化酵素(proPO) を活性化したが,精製した proPO は活性化しなかった。また,HLS へのセリンプロテアーゼインヒビター添加によりラミナリンによる proPO 活性化,及びラミナリン誘導性プロテアーゼの活性は阻害された。以上の結果から,proPO の活性化は糖鎖の認識,セリンプロテアーゼ反応,proPO のプロセシングの三段階を経ると考えられる。
65(6), 926-929(1999)
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大変形理論による魚肉ゲルにおけるデンプンの添加効果

孔 昌淑,小川廣男,磯 直道(東水大)

 魚肉ゲルにおけるデンプンの添加効果を,圧縮特性と動的粘弾性により検討した。試料として,糊化デンプンと生デンプンを添加した魚肉ゲルと,デンプン無添加魚肉ゲルおよびデンプンそのものを用いた。圧縮実験においては,大変形弾性理論による Mooney-Rivlin 式に,圧縮過程における体積変化を考慮した式を用いることにより得た定数 C1 と C2 を中心にして解析を行った。その結果,生デンプンを添加した魚肉ゲルは 80℃ で一番大きい C1 と C2 の値を示した。しかし,動的粘弾性測定の結果では,すり身自体の弾性率が 80℃ より 90℃ で大きくなることを示した。この 80℃ における弾性率増加の効果をデンプンの内圧による密閉効果と考えた。
65(6), 930-936(1999)
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海洋細菌 Vibrio sp. CA-1004 の産生するカラゲナーゼの精製と性質

荒木利芳,東本吉史,森下達雄 (三重大生物資源)

 海藻表面から単離された Vibrio sp. CA-1004 の産生するカラゲナーゼは培養上澄液から硫安塩析ならびに種々のクロマトグラフィーで 58 倍まで精製され,SDS-PAGE で均一であることが確認された。本酵素は分子量が 35 kDa,至適 pH 8.0,最適反応温度は 40℃,等電点は 9.2, Km 値は 3.3 mg/ml であった。また,1 mM の Zn2+, Pb2+, Hg2+, NBS でほぼ完全に活性が阻害された。本酵素はカラゲナンやネオカラテトラオース以上のオリゴ糖を分解し,主にネオカラビオースとテトラオースを生じた。
65(6), 937-942(1999)
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ウナギおよびメバチのアレルゲンとしてのパルブアルブミンと高分子成分について

塩見一雄,濱田友貴,関口香織,嶋倉邦嘉,長島裕二(東水大)

 魚類アレルギー患者(1-5) の血清を用いた ELISA では,9 魚種のアレルゲン性は魚種間だけではなく患者間にも著しい差がみられた。ウナギおよびメバチの抽出液をゲルろ過に供すると 2 つのアレルゲン画分(溶出順に Fr. I, II) が認められた。患者 1 と 2 に対するアレルゲンは Fr. II に,患者 3 と 4 に対するアレルゲンは Fr. I に,患者 5 に対するアレルゲンは両画分に溶出され,ウナギとメバチの主要アレルゲンは患者によって異なることが判明した。Fr. II のアレルゲンを逆相 HPLC により単離し,その分子量,アミノ酸組成およびパルブアルブミンのモノクローナル抗体との反応性からパルブアルブミンと同定したが,Fr. I のアレルゲンはパルブアルブミンより分子量の大きい物質であることが明らかとなった。
65(6), 943-948(1999)
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モスクガニ Eriocheir japonicus の遊離 D-, L-アラニンおよびその他のオスモライト濃度に対する海水順応の影響

阿部宏喜(東大農),大熊恵美子(国際医療センター研),天野秀臣,野田宏行(三重大生物資源),渡辺勝子(東大農)

 淡水モクズガニの海水順応中に未成熟群の筋肉では D-, L-アラニン(Ala) 以外にグリシンおよび L-プロリンが増加したが,成熟群では D-, L-Ala のみが増加を示した。無機イオンの増加は成熟群で大であった。成熟群では淡水中でも D-, L-Ala および無機イオン含量が高く,海水順応に伴ってこれら以外のアミノ酸の蓄積は必要ないものと考えられた。一方,血リンパのイオン濃度と浸透圧も海水順応で上昇するものの,未成熟および成熟群間で差は認められず,成熟に伴う浸透調節能の調整はないと考えられた。
65(6), 949-954(1999)
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ゼブラフィッシュの増殖細胞核抗原(PCNA) : クローニングおよび構造解析

J-S. Lee (Seoul Univ.),M. C. Gye (Kyonggi Univ.)

 受精後 48 時間から 72 時間目のゼブラフィッシュ胚の cDNA ラィブラリーよりヒトの増殖細胞核抗原(PCNA) 遺伝子を DNA プローブとして,ゼブラフィッシュの PCNA 遺伝子をクローニングした。クローン化したゼブラフィッシュの PCNA 遺伝子は 5℃と 3℃の非翻訳領域,およびオープンリーディングフレーム(261 アミノ酸)を含めて 1,247 bp で,アミノ酸の相同性はヒト(94.6%),マウス(92.7%),ラット(93.5%),Xenopus (91.6%) および Drosophila (71.6%) と高かった。頭部,肝臓,腸管,卵巣および培養線維芽細胞で約 1.3 kb の転写産物を確認した。本論文は魚類の複製開始フォークおよび伸展においての PCNA の役割を理解するために有効である。
65(6), 955-958(1999)
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DL-α-トコフェロール酢酸を摂餌したティラピア組織中のビタミン E の貯蔵型は DL-α-トコフェロール酢酸のみではない(短報)

T.-S. Hsu, S.-Y. Shiau(台湾海洋大)

 体重約 1.53 g のハイブリッドティラピア(Oreochromis niloticus×O. aureus) に DL-α-トコフェロール酢酸(DL-α-TOA) 270 mg/kg 含有飼料を 8 週間与えた後,血液,肝臓および筋肉中のビタミン E の存在形態を HPLC を用いて調べた。その結果,ティラピア肝臓中には主に DL-α-トコフェロール(DL-α-TOH) のピークが見られた。一方,血液と筋肉中には DL-α-TOA のピークが主であったことから,ビタミン E の存在形態は組織により異なることがわかった。
65(6), 959-960(1999)
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赤色酵母 Phaffia rhodozyma はニジマス稚魚肝臓ホモジネートの脂質過酸化感受性を低下させる(短報)

中野俊樹(東北大院農,℃財かき研究所),三浦美幸,和沢美歩,佐藤 實,竹内昌昭(東北大院農)

 アスタキサンチンを豊富に含む赤色酵母 Phaffia rhodozyma の細胞壁を物理・化学的に処理し,それをニジマス稚魚(平均体重:10 g) に与え,肝臓における脂質過酸化に対する感受性におよぼす影響を調べた。肝臓ホモジネートを用いて,Fe2+-アスコルビン酸系により in vitro で脂質過酸化を促進させた結果,対照(赤色酵母非投与)区に比べ赤色酵母投与区において,脂質過酸化(TBARS 生成)の抑制が認められた。特に,過酸化促進反応 180 分後では,対照区に比べ赤色酵母投与区の TBARS 生成量が有意に低かった。これらの結果より,赤色酵母には,ニジマス稚魚肝臓の脂質過酸化に対する感受性を低下させ,その抗酸化能を向上させるという生物活性の存在が示唆された。
65(6), 961-962(1999)
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ヒラメ稚魚の胃腺における空胞変性(短報)

S. M. A. モビン,金井欣也,吉越一馬(長大水)

 投餌量の異なるヒラメ稚魚を用意し,正常および空胞変性を呈する胃腺細胞を光顕・電顕を用いて観察した。胃腺はペプシノーゲンと胃酸を分泌する 1 種類の細胞(oxynticopeptic cell) から構成されていた。電顕観察の結果,空胞変性に際して細胞内に出現した大型空胞は細胞内分泌細管の拡張と融合によって生ずることが明らかになった。この空胞変性は胃酸分泌機能の低下をもたらすとともに,その細胞傷害作用を通じて消化機能に障害をもたらすものと推察された。
65(6), 963-964(1999)
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中禅寺湖の流入河川におけるホンマス稚魚の成長(短報)

棟方有宗(東大農),天野勝文(北里大水),生田和正,北村章二(養殖研日光),会田勝美(東大農)

 中禅寺湖の流入河川に生息するホンマス(ビワマスとサクラマスの交雑種)稚魚の体長,体重,肥満度及び胃内容物量・組成の変化を 5 月から 9 月まで調べた。実験期間中体長及び体重は増加した。同一採集日の胃内容物組成に個体差はみられなかったが胃内容物湿重量の体重比には顕著な個体差がみられた。肥満度は 6 月から 7 月にかけて減少し,7 月から 8 月にかけて増加した。以上の結果からホンマス稚魚は夏季に成長するがその間の捕食活動は安定していないことが示された。
65(6), 965-966(1999)
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リボース修飾によるコイ筋原線維タンパク質の抽出性変化(短報)

佐伯宏樹,田邊 學(北大水)

 コイ筋原線維タンパク質(Mf) のリジン残基をメイラード反応を介してリボース修飾し,その抽出性の変化を調べた。リボース修飾によって Mf 中のミオシン,アクチンが低イオン強度溶媒に対して溶解し,Mf の抽出性は著しく改変された。ただしメイラード反応が進行するとミオシンの抽出率が速やかに低下し,その結果リボース修飾によって改変された Mf の抽出率も低下した。以上の現象は Mf のリジン残基をグルコース修飾した場合と全く同じであったので,Mf を単糖修飾することによって得られる一般的効果と思われる。
65(6), 967-968(1999)
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ナマズ目及びサケ目淡水魚の皮と鰭の β-carotene triol 及び tetrol(短報)

津島己幸,生野芳博,松野隆男(京都薬大)

 ギギ,ギンザケ及びシロザケの β, β-carotene triol 及び tetrol を検討した。Triol 画分より(3S, 4SR, 3'R)-β,β-carotene-3,4,3'-triol を主成分として単離した。一方,tetrol 画分はギギでは検出されず,2 種のサケから(3S, 4R, 3'S, 4'R)-β,β-carotene-3,4,3',4'-tetrol を主成分として認めた。これらは(3S, 3'S)-astaxanthin から(3R, 3'R)-zeaxanthin に至る還元的代謝の中間体と考えられる。
65(6), 969-970(1999)
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スピルリナから調製したフィコシアノビリンのラジカル捕捉活性(短報)

平田 孝,田中幹也,大池正樹,角村哲平,新関紀文,坂口守彦(京大院農)

 スピルリナ Spirulina platensis より抽出したフィコシアニンからフィコシアノビリン(PCB) を調製し,その抗酸化活性を数種の抗酸化性ファイトケミカルと比較検討した。PCB は水溶性ラジカル発生剤(AAPH) によるリノール酸の酸化を効果的に抑制し,その活性の強さはケルセチン,コーヒー酸,クロロゲン酸などのファイトケミカルに匹敵した。しかし,PCB の酸化抑制作用は誘導期以後にはほとんど認められなかった。これは捕捉可能なラジカル数が他の抗酸化性化合物と比べて少ないためと推察された。
65(6), 971-972(1999)
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