Fisheries Science 掲載報文要旨

大西洋サケ Salmo salar 浮上稚魚のマンガン要求

A. Maage, B. Lygrem, A. F. A. El-Mowafi (Directorate of Fisheries, Norway)

 標記浮上稚魚用初期飼料中のマンガン(Mn) 要求量,Mn の魚体への取り込みおよび細菌 Vibrio anguillarum を用いた攻撃試験の影響について調べた。硫酸マンガンを用いて,飼料 kg 当たり 0, 3, 6, 9, 12,および 24 mg 添加した飼料(1.1 mgMn/kg 含有カゼイン-ゼラチン飼料)で平均体重 0.18 g の浮上稚魚を 12 週間,水温 10℃ で飼育した。その結果,成長,生存率さらに細菌による攻撃試験を含め,各試験区の間に差は見られなかった。しかし,飼料中と全魚体中の Mn 含量は相関し,6 mgMn/kg で最大に達した。本実験の結果から,大西洋サケ初期飼料中の最小 Mn 要求量は飼料 kg 当たり 7.5-10.5 mg であると推察された。
66(1), 1-8 (2000)
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Pagrus major と P. auratus における mtDNA 調節領域の違い

田畑和男(兵庫水試),谷口順彦(東北大院農)

 日本沿岸,東シナ海,南シナ海産マダイ Pagrus major とニュージーランド(NZ),オーストラリア(AUS) 産ゴウシュウマダイ P. auratus の遺伝変異レベルを mtDNA 調節領域の PCR-RFLP 分析とダイレクトシーケンス分析とによって比較した。二種間および NZ-AUS 間には遺伝的異質性が認められたが,塩基多様度の差は種のレベルにしては低かった。二種間には上後頭骨の隆起に有意差がみられたほかには他の外部形態に差がなかった。総合的に判断して,P. major と P. auratus の差は亜種の段階程度と示唆され,P. major は P. auratus major とする可能性が示唆された。
66(1), 9-18 (2000)
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飼育条件下におけるイセエビの幼生期間と脱皮

関根信太郎,島 康洋(日栽協),伏見 浩(福山大),野中 忠(東水大)

 日栽協南伊豆事業場では 1989 年からイセエビのフィロゾーマの飼育を開始し,8 年間に 325 尾をプエルルスまで,うち 136 尾を稚エビまで飼育できた。これらの飼育データに基づき,フィロゾーマの成長について検討した。フィロゾーマの期間は 231 日から 417 日で,脱皮回数は 20 回から 31 回,最終齢フィロゾーマの体長は 27.9 mm から 34.2 mm,その期間は 11 日から 26 日であった。プエルルスの期間は 9 日から 26 日であった。以上の結果と既報のプエルルスの採集データから,飼育条件下におけるフィロゾーマの成長には期間と大きさに幅のあることが示唆され,天然においても同様であると推察した。
66(1), 19-24 (2000)
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マダイ,ブリおよびヒラメ稚魚の体脂質蓄積

奥 宏海,尾形 博(養殖研)

 マダイ,ブリおよびヒラメ稚魚に脂質含量の異なる(11, 16 および 20%) 飼料を給餌して飼育試験を行い,体脂質蓄積の特性を比較した。稚魚を用いた実験条件では,以下のような脂質蓄積特性が明らかとなった。マダイは最も高い脂質蓄積率(体脂質増加量/脂質摂取量)を示し,内臓部と胴体部に等量の脂質が蓄積し,他 2 種に比べて内臓部の脂質蓄積量が極めて大きかった。ブリは主に胴体部と頭部に脂質を蓄積し,内臓部の脂質蓄積量は小さかった。ヒラメは他 2 種に比較して,体脂質蓄積量は小さかった。
66(1), 25-31 (2000)
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異なる炭水化物含有飼料を摂餌したティラピア稚魚 Oreochromis niloticus x O. aureus における絶食の影響

S.-L. Hsieh, S.-Y. Shiau (台湾海洋大)

 飼料中 40%のスターチ(S) またはグルコース(G) 含有飼料を用いてティラピア(体重,0.8 g) を 8 週間,水温 26℃ で飼育した後,3 週間絶食させ,絶食期間中における体組成変化等を調べた。G 含有飼料区の魚の方が,成長が遅く,絶食後の体重の減少も大きかった。肝臓のグリコーゲン含量は S 含有飼料区の魚の方が高かったが,絶食に伴い,両区の魚とも減少した。一方,血漿トリグリセリドは絶食に伴い増加し,その増加量は絶食前に S 含有飼料を摂餌した魚で高かった。絶食期間中のティラピアにおける生理学的対応は,絶食前の飼料中炭水化物の種類により影響されることが明らかになった。
66(1), 32-37 (2000)
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海産微細藻類増殖抑制因子の性状の比較

生地 暢,澤辺智雄,絵面良男(北大水)

 1993 年~1995 年の 3 年にかけて北海道噴火湾の沿岸海水から検出された海産微細藻類増殖抑制因子 18 試料について,それぞれのスクリーニング時の宿主を用いて様々な特性を比較検討した。いずれの藻類増殖抑制因子も 0.10 μm 以上の粒子径を有し,易熱性,DNase 耐性であるが,RNase 感受性で,10倍希釈で増殖抑制効果が著しく低減した。また,本因子はエーテル耐性で,酸処理(pH 3, pH 5) では増殖抑制効果が低減し,さらに UV 照射(5.0×104 μW・s/cm2) によりその効果は著しく低減した。しかし,プロテアーゼ処理に対して,G. mikimotoi 由来の 7 試料のみが耐性を示した。従って,藻類増殖抑制因子には G. mikimotoi 由来と Tetraselmis sp. および A. catenella 由来の少なくとも 2 つのタイプが存在する可能性が示唆された。
66(1), 38-43 (2000)
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水環境中におけるノニルフェノール(NP)分解微生物について

藤井克彦,浦野直人,木村 茂(東水大),野村陽子,軽部征夫(東大)

 NP は魚介類に強い毒性を示す内分泌撹乱物質であるが,環境中での微生物分解が進行しにくい事も知られている。私共は,NP の微生物分解について調べる為に,様々な水圏から試料を採集し,試料中の微生物の NP 分解活性を検討した。その結果,東京湾底泥および都内下水処理場の流入原水中の微生物に NP 分解活性が認められた。後者は継代培養も可能であり,継代に伴い分解活性も上昇した。また,後者は NP と等量のグルコースを含む培養液でも分解活性が抑制されなかった。
66(1), 44-48 (2000)
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キンギョの 2 種類のサケ型生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンの cDNA クローニングと遺伝子発現

末武弘章,吉浦康壽,菊池 潔,玄浩一郎,芦原基起,小林牧人,会田勝美(東大農)

 キンギョの脳から 2 種類のサケ型生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(sGnRH) cDNA を単離し,その全塩基配列を決定した。これら cDNA の演繹アミノ酸配列は 86.2% の同一性を示した。また,サザン解析によりこれら 2 種類の sGnRH 遺伝子がキンギョゲノム中に存在することが確認された。キンギョの脳,下垂体,生殖腺での 2 種類の sGnRH 遺伝子の発現パターンは雌雄や成熟度により異なることから,これら遺伝子は異なる発現調節を受けていることが示唆された。
66(1), 49-57 (2000)
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CAT 遺伝子ホモ接合体のカラドジョウ Misgurnus mizolepis における系の作出

南 潤權,趙 永善(釜慶大海洋産業開発研),張 栄振,趙 載潤,金 東秀(釜慶大)

 コイの β アクチン遺伝子プロモーターおよび調節領域を組込んだ CAT レポーター遺伝子をカラドジョウの受精卵に導入し,さらに本ヘテロ接合体のトランスジェニック F2 の雌雄を交配させた。試験した 28 トランスジェニック魚のうち,5 個体では 100%, 4 個体では 80-91%,残りの 19 個体では約 50%の子孫に目的遺伝子が取込まれた。ホモ接合体の肝臓および脾臓の CAT 発現レベルはヘテロ接合体に比べて,それぞれ 1.8 および 1.6 倍高かった。なお,ホモ接合体の発現レベルには多少の個体差がみられた。
66(1), 58-62 (2000)
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胎生魚カダヤシの卵巣周期中の卵母細胞および胚の発達動態

古屋康則,井上睦美,成瀬輝正,澤口小有美(岐大教育)

 カダヤシを約 22 日間隔で出産する条件で飼育し,出産から次の出産までの卵母細胞と胚の発達動態を調べた。出産後 0 日目には,卵黄形成期の卵母細胞には大小 2 群が見られた。大型群は活発に卵黄蓄積を行ない,2 日目には成熟を開始した。受精は同一個体でも同期的には起らず,2-5 目にかけて大型群の成熟に伴って順次起った。一方,小型群は受精には至らず,10 日目までに退化・消失した。8 日目には油球期の卵母細胞が周辺仁後期から補充され,10 日目には油球期の卵母細胞の一部が次の妊娠のための卵黄蓄積を始めた。
66(1), 63-70 (2000)
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電顕免疫組織化学法によるニジマスふ化仔魚の内耳における耳石可溶性基質の分布

都木靖彰(東大海洋研)

 耳石有機基質の産生と耳石への沈着機構を調べるため,ニジマスふ化仔魚小嚢における EDTA 可溶性基質(OSM) の分布を電顕免疫組織化学法を用いて調べた。OSM は移行上皮細胞と扁平上皮細胞中の大小二種類の分泌顆粒に内包されていた。これらの細胞から内リンパ液に向かって開口分泌が観察されたほか,空胞状の分泌物や細胞質の突出も認められた。内リンパ液中には OSM を含む繊維状の物質が存在し,これが耳石表面に沈着してゆく様子も観察された。耳石中の有機基質は OSM を含む網目状の繊維物質であった。
66(1), 71-77 (2000)
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設計の異なる定置網の蓄積性能の解析

秋山清二,有元貴文(東水大)

 千葉県館山湾の小型定置網の漁獲資料を用いて,落網から二段落網への網型変更にともなう漁獲量と蓄積性能の変化を調べた。網型変更にともない,1 網あたり漁獲量は有意に増加した。蓄積指数(休漁翌日の漁獲量/通常日の漁獲量)は落網が 1.10,二段落網が 1.52 となり,網型変更により蓄積性能が向上した。また,マアジのように漁獲量が増加した魚種では蓄積指数も上昇し,逆に,ヤマトカマスのように漁獲量が減少した魚種では蓄積指数も低下した。漁獲量と蓄積指数の変動が良く一致したことから,網型変更にともなう漁獲量の増減は定置網の蓄積性能の変化に起因するものと考えられた。
66(1), 78-83 (2000)
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海洋性ラビリンチュラ類のコロニー形成と菌体脂肪酸組成

坂田泰造,藤澤 健,吉川 毅(鹿大水)

 沿岸海域より分離したラビリンチュラ類分離株は珪藻含有重層寒天平板上では溶藻帯(プラーク)を形成したが,細菌細胞から調製した死菌体または菌体抽出液を添加した寒天平板上では薄膜状のコロニーを形成して増殖した。腸炎ビブリオ菌体成分のうち,リン脂質画分がコロニー形成を顕著に促進した。SSU rDNA の塩基配列に基づく分子系統樹から,Labyrinthulida 目の代表種とクラスターを形成することが分かったが属および種の特定には至らなかった。L95-2 株の菌体脂肪酸組成として DHA の含有率が高く,培養条件によっては全脂肪酸の 80% を占めることが明らかになった。
66(1), 84-90 (2000)
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マガキ精子の遺伝的不活性化および形態構造に及ぼす紫外線照射の影響

李  旗,尾定 誠(東北大農),柏原 勝,広橋 憲(バイオメイト),木島明博(東北大農)

 マガキ精子の遺伝的不活性化および形態構造に及ぼす紫外線照射の影響を調べた。紫外線照射線量の増加に伴って受精率と D 型幼生の発生率は低下した。72 erg/mm2/秒の線量で 60 秒間照射するのが精子の遺伝的不活性化には最も効果的であった。遺伝的に不活性化した精子と受精した卵は D 型幼生に変態できなかった。紫外線照射による精子の形態変化を走査型電子顕微鏡で観察したところ,紫外線照射精子の先体と鞭毛の破壊が認められた。紫外線照射線量の増加に伴って,精子は先体が先に壊れ,その後,鞭毛がとれるという傾向が示された。これらの構造の異常が精子紫外線照射による卵の受精率低下を引き起こす一因と考えられた。
66(1), 91-96 (2000)
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シロギスに対する漕ぎ刺網の網目選択性

Ari Purbayanto,秋山清二,東海 正,有元貴文(東水大)

 シロギスに対する漕ぎ刺網の網目選択性を調べるため,内網目合を通常の 27.5 mm に対して,31.0, 33.5 mm に拡大し,3 種類の内網目合を用いて比較操業実験を行った。目合相対体長(l/m) として網目選択性のマスターカーブを求め,50%選択レンジは刺網の選択曲線より 5.4-7.4 と広くなることが分かった。これは,内網のたるみの影響により,網目に刺さって漁獲される個体に比べ,網地に絡まったり,袋掛かりで漁獲される個体が多いためである。また,網目内周相対胴周長(G/P) として網目選択性のマスターカーブを求め,胴周長が網目内周の 1.31 倍のときに相対効率が最大になることが分かった。
66(1), 97-103 (2000)
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イトマキヒトデ幽門盲のうホスホリパーゼ A2 のアミノ酸配列

岸村栄毅,尾島孝男,田中啓之,林 賢治,西田清義(北大水)

 イトマキヒトデ幽門盲のうホスホリパーゼ A2 (APLA2) の全アミノ酸配列(137 残基,分子量 15,300.1) を決定した。そのアミノ酸配列によると,APLA2 は分子内 S-S 結合に関与し得るシステインを 14 残基含み,さらに Ca2+ 結合部位,触媒部位および pancreatic loop と考えられる領域を保存しており,I型のホスホリパーゼ A2 (PLA2) に分類された。しかしながら,APLA2 とブタすい臓 PLA2 のアミノ酸配列の相同性は 47%であり,APLA2 の pancreatic loop 部位に 2 残基のアミノ酸の欠損と β-ウィング部位に 16 残基のアミノ酸の挿入および 3 残基の欠損が認められた。
66(1), 104-109 (2000)
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乾海苔と焼海苔の 5'-AMP デアミナーゼの存否とその諸性質

中島 歩,桜井武麿,乾佳奈子,荒木 繁(山本海苔研究所)

 乾海苔および焼海苔の 5℃-AMP デアミナーゼの存否とその諸性質について検討したところ,乾海苔,焼海苔共に 5℃-AMP デアミナーゼが存在し,その活性は焼海苔の方が乾海苔より小さかった。酵素の諸性質は乾海苔,焼海苔において基本的に違いはなかった。至適 pH,至適温度はそれぞれ 7.0~8.0,30~50℃ の範囲であった。酵素の活性化には Ca2+ が最も効果的であった。Ca2+ は酵素の温度安定化にも有効で,0.1 M Ca2+ が存在すると 50℃ においても比較的安定であるが,Ca2+ が存在しないと 50℃ で完全に失活した。本酵素は 5'-AMP にのみ作用した。5'-AMP に対する Km は 2.77 mM であった。
66(1), 110-116 (2000)
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コイ表皮由来培養細胞のタンパク質合成に対する高浸透圧および低浸透圧ストレスの影響

竹内壱明,豊原治彦,坂口守彦(京大院農)

 魚類細胞の浸透圧応答機構を明らかにするために,コイ表皮由来の培養細胞 EPC を用いて浸透圧ストレスがタンパク質合成に及ぼす影響を二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて調べた。低張処理(150 mOsm/kg) により 5 種のタンパク質合成の構成的増加と 1 種のタンパク質合成の一時的増加,および 1 種のタンパク質合成の構成的減少が認められた。一方,高張処理(450 mOsm/kg) によって 3 種のタンパク質合成の一時的増加が認められた。浸透圧ストレスにより誘導が認められたこれらのタンパク質のうち 2 種は膜画分,細胞質画分の両方に検出されたが,6 種は細胞質のみで検出された。
66(1), 117-123 (2000)
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カルボキシル基およびアミノ基を修飾したコイミオシンロッドのフィラメント形成

加藤早苗,今野久仁彦(北大水)

 グリシンエチルエステルをアミノ供与体としてカルボジイミドを利用してコイミオシンロッドのカルボキシル基を修飾した。修飾され,負の電荷が減少したことは尿素ゲル電気泳動の移動度が小さくなることで確認できた。この修飾によりロッドのフィラメント形成能,特にアルカリ性での形成能は著しく向上し,pH を低下させた場合や,Mg2+ を添加した場合と同レベルとなった。逆に,同様の手法でロッドのアミノ基にギ酸を導入させたところ,修飾にともないフィラメント形成能,特に酸性域での形成能は著しく低下し,カルボキシル基修飾の逆の効果が得られた。これらの結果から,ロッド表面の電荷がフィラメント形成に重要な役割を果たしていることが明かとなった。そして,負の電荷を減少させる因子,例えば pH の低下,Mg2+ の添加は同じ原理でフィラメント形成を促進すると結論した。
66(1), 124-129 (2000)
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再構築肉製品の結着材としての凍結感想サバ筋肉タンパク質の利用

鍾 雲琴(静宜大食品),MING-LONG HO,何 明朗,江 善宗(台湾海洋大食品)

再構築製品の結着材として用いたサバ筋肉タンパク質の品質を調べる目的で解凍サバに 0.1% 量の還元剤(システイン,NaHSO3 およびこれらの混合物)を加えて,凍結乾燥した。アクトミオシンの溶出性,Ca+2-ATP アーゼ活性,反応性 SH 基および総 SH 基は還元剤を加えると増加した。2.5% 以上の結着材を添加したブタ肩肉を 40℃,60 分間坐らせて得られた再構成ステイックの引っ張り強度は無添加のもののそれに比べてかなり大きかった。
66(1), 130-135 (2000)
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ゴニオトキシン類のチオール化合物によるサキシトキシン類への還元反応における中間体の生成

坂本節子,佐藤 繁,緒方武比古,児玉正昭(北里大水)

 細菌抽出物の持つゴニオトキシン類のサキシトキシン類への変換は細胞中のグルタチオンによることが明らかとなった。この変換は膜結合タンパクの抽出に用いたメルカプトエタノールによっても起こることが確認された。これらチオール化合物はゴニオトキシンの N-1 位の OH 基は還元しなかった。また,本反応の過程で毒成分とチオール化合物は安定な複合体を生成し,本反応が毒とチオール化合物の複合体の生成,および同複合体のチオール化合物による分解の 2 段階からなることが明らかとなった。
66(1), 136-141 (2000)
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イカ塩辛由来 Micrococcus および Staphylococcus の分別法の比較

呉 友欽,木村 凡,藤井建夫(東水大)

 伝統的イカ塩辛からは Micrococcus および Staphylococcus が多く分離される。これら両菌群の分類法にはこれまで,glucose 発酵性(OF test) が簡便法として広く用いられている。本研究では,これら両菌群の type strains および Gram(+), catalase(+)の球菌分離株について,OF test, FP agar, SK agar を用いて分類を試みた。その結果,FP agar および SK agar では,すべての type strains が本来の種類と一致したのに対し,OF test では,半分以上の Staphylococcus が Micrococcus に分類された。また球菌分離株 530 株から無作為に選んだ 55 株について,FP agar および SK agar による分類を行った結果では,GC 含量による結果と100% 一致したのに対して,OF test による分類結果では一致率は僅か 24% と正確性に欠けた。
66(1), 142-146 (2000)
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コイ背部筋の深さ方向の部位による筋タイプと K 値変化の差違

矢田 修,槌本六良,Qin Wang,Paula Andrea Gomez Apablaza,Abdul Jabarsyah,橘 勝康(長大海研)

 コイを用い,背部普通筋部へのピンク筋の介在が死後の K 値変化に及ぼす影響を明らかにしようとした。深さ方向の筋タイプの構成は,血合筋部が赤筋のみ,中間筋部がピンク筋のみ,普通筋部が白筋の IIa or IIb+ピンク筋,または IIa+IIb+ピンク筋で,最深部は IIa+IIb の白筋のみからなっていた。K 値変化は,血合筋,中間筋,普通筋の順位で速く,普通筋部にピンク筋が介在した部位は白筋のみの部位よりも明らかに速かった。
66(1), 147-152 (2000)
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タンパク質凝集法による加熱クロカジキ肉の最終到達温度の測定

Musleh Uddin,石崎松一郎,田中宗彦(東水大)

 加工食品が何度まで加熱されていたかを製造後あるいは流通の過程で測定できることは,食品の安全性の確保にあたって重要である。本研究では,加熱したクロカジキ肉の最終到達温度(EPT) を冷却後に測定する方法としてタンパク質凝集法を採用し,その実施条件を検討した。50 から 70℃ で加熱したクロカジキ肉から 0.9% 食塩水で抽出して得た濾液を再加熱し,濾液中のタンパク質が凝集する温度が EPT とよく一致したので,これを EPT とした。本方法により 67℃ までの加熱であれば,正確に EPT を測定できることが明らかになった。また,SDS-PAGE 並びに酵素活性を測定した結果,EPT に対応して凝集するタンパク質は乳酸脱水素酵素であることが判明した。
66(1), 153-160 (2000)
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鮮度判定紙を用いた K 値の測定とその速度論的解析による各種温度条件下に貯蔵された魚の鮮度予測

上西由翁,中庭好一郎,国本正彦(水大校),御木英昌(鹿大水)

 鮮度判定紙を用いて対象 6 魚種の K 値を測定し,カラム法で測定されたそれらとの比較を行った。その結果,両者の間に高い相関が得られたが,メバチマグロ,トビウオ,マアジにおいて鮮度判定紙で得られた K 値はカラム法のそれらより低い値を示した。鮮度判定紙によるカンパチとメバチマグロの鮮度低下速度に対する-1℃ から 20℃ までのアレニウスプロットから活性化エネルギーと頻度因子を算出し,これらのパラメーターを用いることで,各種温度に貯蔵された両魚種の鮮度が予測できることを明らかにした。
66(1), 161-165 (2000)
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エビ白斑病ウイルス(WSSV) に対する一重項酸素の不活化効果(短報)

鈴木喜隆(水大校),水本 巖(富山商船高専),伊丹利明,高橋幸則,田中竜介,幡手英雄(水大校),野本健雄(三重大),小沢昭弥(ITE 研究所)

 エビ白斑病ウイルス(WSSV) に対する一重項酸素(1O2) の不活化効果を検討した。WSSV を懸濁した海水を 1O2 処理した後,クルマエビの筋肉内へ接種しても,クルマエビは本病により死亡しなかった。また,WSSV で汚染させたヒライソガニの卵に 1O2 処理を行うと正常に孵化するとともに,処理を行った卵の磨砕ろ液をクルマエビの筋肉に接種しても本病により死亡しなかった。この結果,海水中に懸濁した,また,卵に付着した WSSV は 1O2 処理によって不活化され,卵そのものも損傷を受けないことが確認された。
66(1), 166-168 (2000)
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エドワジェラ・タルダ感染に対するヒラメ体表カテプシンの応答(短報)

荒西太士,間野伸宏(中央水研)

 Edwardsiella tarda 生菌液にヒラメ未成魚を浸漬後,表皮中のカテプシン L および B のタンパク当り活性(比活性)の動態を有眼側と無眼側で比較した。7 日間の試験期間中,対照区では有眼・無眼側ともに両酵素比活性レベルはほぼ一定であった。一方試験区では,感染 1 日後に両側ともに酵素比活性が上昇し,特に有眼側カテプシン L の活性化が有意に認められた(p<0.01)。以上の結果から,E. tarda 浸漬感染に対しヒラメ有眼側表皮中のカテプシン L が強く応答することが明らかとなった。
66(1), 169-170 (2000)
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回遊性個体群の資源変動推定のための状態空間モデルの導入(短報)

大西修平(東海大海洋),松宮義晴(東大海洋研)

 個体群の回遊を伴った,いわゆる開放性の漁場における,来遊量の短期的な変動特性の推定方法をとりあげる。データとなる CPUE 時系列は観測誤差を持つため,来遊量変動を直接反映するわけではない。そこでこの直接測定することが不可能な来遊量の変動を状態空間モデルの中で記述し,観測誤差を分離して扱う。本研究では一つの試みとして,個体群の逸散が日ごとの滞留率で規定され,来遊量の短期的な変動が自己回帰モデルで表現される場合について,漁獲方程式をもとにモデリングの方法を提案する。
66(1), 171-173 (2000)
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外因性甲状腺刺激ホルモンに対するニジマス甲状腺応答の季節変化(短報)

佐藤理一,山田英明,千葉洋明(北里大水),神戸川明(神戸川研),岩田宗彦(北里大水)

 サイロキシン(T4) の時間分解蛍光免疫測定法を開発し,ウシ甲状腺刺激ホルモン(bovine TSH) に対するニジマスの甲状腺応答を血中 T4 量から調べた。3~7 月の間,対照群の血中 T4 量は変化しなかったが,実験群のそれは 1 年魚で 4 月に,2 年魚で 6 月に最も高くなり,甲状腺応答に季節変化が認められた。降海型サケ科魚類は銀化期に TSH に対する反応が高まることが知られているが,非降海型のニジマスでも同様の時期に TSH に対する反応が高まることが示された。
66(1), 174-176 (2000)
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ベトナムにおける有毒渦鞭毛藻 Alexandrium minutum の初発見(短報)

吉田 誠(東大農),緒方武比古(北里大水),Chu Van Thuoc (HIO, Vietnam),松岡數充(長大水),福代康夫(東大アジアセ),Nguyen Chu Hoi (HIO, Vietnam),児玉正昭(北里大水)

 ベトナム北部のハロン湾奥部において 1997 年 9 月に採集されたプランクトン試料より,麻痺性貝毒原因渦鞭毛藻 Alexandrium minutum が観察された。同試料の毒組成を分析した結果,gonyautoxin 1 および 4 が確認された。ベトナムではこれまで麻痺性貝毒による中毒の報告はなかったが,今回原因種の発生が初めて確認された。
66(1), 177-179 (2000)
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北海道北部沿岸における若齢トドの衛星追跡(短報)

馬場徳寿(遠洋水研),日登 弘((株)小樽水族館),新田 朗(日本エヌ・ユー・エス(株))

 北海道北部沿岸おけるトド Eumetopias jubatus の分布回遊を調べるため,1993 年 6 月 14 日同沿岸の定置網に入網し約 5 ヶ月間飼育された若齢雌トド(推定 1 歳)に電波送信機(T-2050 および T-2038) を 2 液混合エポキシ樹脂で装着し,1993 年 11 月 25 日捕獲地で放流した後アルゴスシステムで 1994 年 1 月 16 日まで 52 日間同獣を追跡した。放流後,標識獣は樺太南部の岬に上陸した後,北海道稚内沿岸に再来遊し,同域で徘徊した。北海道北部沿岸への樺太系のトドの来遊と沿岸域での徘徊が確認された。
66(1), 180-181 (2000)
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数種イカの肝臓プロテアーゼ活性の比較(短報)

幡手英雄,田中竜介,鈴木喜隆(水大校),濱 洋一郎(佐賀大農)

 イカ肝臓のプロテアーゼ供給源としての適性を知る目的で,国内外で漁獲された 9 種イカの肝臓のプロテアーゼ活性を比較した。イカ肝臓のアセトン粉末から 0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.0) で抽出された粗酵素液のプロテアーゼ活性を pH 4.0 および 7.0 で測定した。いずれの種も pH 4.0 で強いプロテアーゼ活性を示したが,種間で活性の強さや肝臓の重量に差異が認められた。比酵素活性および肝臓重量を勘案すると,ミナミスルメイカ,アメリカオオアカイカ,トビイカおよびスルメイカの肝臓がプロテアーゼの供給源として優れていることが推察された。
66(1), 182-183(2000)
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