日本水産学会誌掲載報分要旨

PNA クランピングを用いたヒラメ稚魚と稚アオリイカにおける食性解析の試み

手賀太郎(福井水試),丹羽健太郎(水研セ増養殖研),
張 成年(水研セ中央水研)

 ヒラメとアオリイカの 16S rDNA 領域で設計した各種特異的オリゴペプチド核酸(PNA)を加えた PCR 反応系では各種 16S rDNA 断片は増幅されなかった。ヒラメ稚魚と稚アオリイカ胃内容物抽出 DNA に PNA を加えた PCR 産物のクローンはほぼ全て異種 16S rDNA を持っていた。ヒラメ稚魚 11 個体中 9 個体からハゼ類が検出され,他の 2 個体でそれぞれクロサギとカタクチイワシが検出された。稚アオリイカ 9 個体中 2 個体からもカタクチイワシが検出されたが,他の 7 個体では解読配列が短く魚種特定できなかった。

日水誌,82(2), 102-111 (2016)

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深海性ヒメダイ Pristipomoides sieboldii の氷温保存下の卵巣組織と血中性ホルモン値の変化

高岡博子,躍場秀兵,村雲清美(沖縄美ら海水族館),
野津 了,中村 將(沖縄美ら島財団総合研究センター)

 深海魚ヒメダイの資源回復にむけた基礎研究として,氷温保存下における卵巣組織と血中性ホルモン値の変化の検討,産卵期の卵巣組織観察,卵巣の 3 部位による成熟度の差の検討を行った。沖縄県伊江島沖で釣獲したヒメダイ雌 12 個体から釣獲直後とその 24 時間後に血液と生殖腺を採取した。24 時間後の血中性ホルモン値は釣獲直後と差が出る一方で,卵巣は組織学的に概ね差はないことが示唆された。また,卵原細胞から排卵後濾胞に到る 8 つの発達段階が認められ,卵巣のどの部位を採取しても組織学的に成熟度を判断できると示唆された。

日水誌,82(2), 112-118 (2016)

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クエおよびマハタ仔魚のワムシとアルテミアに対する摂餌選択性

岩崎隆志(水研セ西海水研),
井手健太郎(水研セ中央水研),
佐藤 純(水研セ増養殖研),浜崎活幸(海洋大)

 クエおよびマハタ種苗生産におけるアルテミアの適正給餌時期を把握する一環として,仔魚のワムシとアルテミアに対する摂餌選択性を調べた。両種とも体長が 8 mm 以上になるとワムシよりアルテミアへの摂餌選択性が強くなることが分かった。また,アルテミア(平均全幅 0.66±0.11 mm)を摂餌した最小サイズの口幅はクエが約 0.55 mm,マハタが約 0.60 mm でアルテミアの全幅に近似しており,両種とも仔魚の口幅がアルテミアに対する摂餌制限要因であると推測された。

日水誌,82(2), 119-127 (2016)

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オイカワとウグイの相互作用が互いの成長に及ぼす影響(短報)

小川 拡(海洋大),片野 修(水研セ増養殖研)

 オイカワとウグイが互いの成長に及ぼす影響について,ポンプで流れをつくった 12 面の実験池を用いて調べた。5 匹のオイカワと 0-10 匹のウグイをそれぞれの池に放流し 20 日後の成長率を算出した。また,オイカワとウグイの個体数を逆にして同様の実験を次の年の同じ時期に行った。オイカワの個体数,またはウグイの個体数が増加するにしたがい,もう一方の魚類の成長率は減少し,また両種の食性が類似していることから,両種間に取り合い型競争が生じることが示された。

日水誌,82(2), 128-130 (2016)

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魚肉タンパク分解物を主原料とする飼料によってニホンウナギ Anguilla japonica 仔魚のシラスウナギまでの飼育が可能である(短報)

増田賢嗣,谷田部誉史,松成宏之,古板博文,
鴨志田正晃,島 康洋,桑田 博(水研セ増養殖研)

 初めて人工シラスウナギが得られて以来,ニホンウナギ仔魚はサメ卵を主原料とする飼料でのみ給餌開始期からシラスウナギまでの安定した飼育が可能であった。サメ卵以外の飼料原料も探索されており,既に魚肉タンパク分解物(FPH)を主原料として,ニホンウナギ仔魚がわずかに成長することが報告されている。本研究では,既報の FPH を改良した飼料によりニホンウナギ仔魚を摂餌開始期から変態期以降まで飼育し,シラスウナギを得ることができた。

日水誌,82(2), 131-133 (2016)

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